冬って進みにくい気がするわ〜 → 実際に空気抵抗が増えている

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冬になると自転車が「進まない」と感じたことはないだろうか。実際に夏と比べると進まない理由があるようだ。なぜ冬は進みにくくなるのだろうか。今回は「冬に進みにくくなる理由」についてまとめてみたい。

どうやら、進まないのは”気のせい”ではないようだ。

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サイクリストの敵「空気抵抗」

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「空気抵抗」とはなんだろうか。たとえばチームで練習をする際、隊列を組みローテーションをする。先頭の人が他の人よりも余計な力を使い、空気の抵抗をうけ犠牲になる。結果、集団は速く走ることができる。

空気の中をより速く進めば進むほど、空気に阻まれ前に進みにくくなる。

人間と自転車が速度を上げ進むことにより「空気」と「衝突」する。衝突に生じる抵抗は空気1m^(3) あたり気温20度で約1.2kgだ。なお、湿度で抵抗は微増微減する。

物体(自転車と人間)が時速20km/hを超えると、物体を進ませる為に非常に大きな力が必要になる。「空気抵抗は速度の2乗に比例する」とサイクリストなら聞いたことがある人もいるはずだ。

速度が「2倍」になることは、空気抵抗が「4倍」増える事になる。したがって「速度が上がる=空気抵抗と戦う」という関係で表せる。自転車を進める力の大半は 空気の衝突に勝つために使うのだ。

前方投影面積

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空気抵抗と前方投影面積は、綿密な関係を持っている。空気抵抗は「人間と自転車」を投影した面積(前方投影面積)に比例する。前傾姿勢をとることで投影面積が減少し、結果空気抵抗が減る。前方投影面積に関する資料を確認すると、乗車姿勢で以下のように前方投影面積が変わる。

  • アップライト: 1.000
  • 頭を下げた下ハン: 0.854
  • 頭を上げた下ハン: 0.890

冬は気温が低下し、結果空気密度が増える

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先ほど記載した内容をもう一度思い出してみる。以下のように記載した。

衝突に生じる抵抗は空気1m^(3) あたり、
気温20度で約1.2kgである。

空気の密度は気温によって変化し、空気抵抗は空気密度に比例する。では問題の冬の時期の空気抵抗を考えてみたい。

  • 冬は気温が低い、だから夏と比較して「空気密度が大きい」。
    したがって冬は「空気抵抗は大きい」
  • 夏は気温が高い、だから冬と比較して「空気密度が小さい」。
    したがって夏は「空気抵抗は小さい」

ここで、空気の抵抗(D)を算出する。冬の空気密度と、自転車に乗った人間が進む速度の関係は下記の式で導出できる。

D=(1/2)×Cd×A×ρ×V^2

  • (1/2)(Cd)(前面投影面積A)(空気密度)(速度)^2
  • Cd: 抗力係数(物体による)
  • A: 前面投影面積(m^2)
  • ρ: 空気密度=1.2(kg/m^3) ←20℃と仮定
  • V: 速度(m/s

「冬って進みにくい気がする」の理由を以下の通りまとめる。

  • 冬は気温が低くなり夏と比較して空気密度ρが大きくなる。
  • 冬は全身防寒装備で抗力係数Cdが増える。

上記関係より、「冬って進みにくい気がする」は気のせいではなく、空気抵抗が増え本当に進みにくくなっている。

サイクリストの経験からみた原因

計算上、理論上は空気抵抗が増える事は理解できた。しかし、自転車の場合は要素が多く単純ではない。他の原因も考えてみよう。その原因の一因として、当チームの監督と話したことを紹介する。

冬は、タイムが落ちる。それは仕方ない。なぜなら着ている衣類が意外と重いからだ。また、タイツは夏場のレーシングパンツと比べ動きづらい。これらもタイムが出ない原因の一つとしてあげられる。

要約すると、このように仰っていた。人生=自転車歴とも言うべき長い経験から得られた事は、計算では表せられない確からしさが有る。

まとめ:冬は本当に進みにくい

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photo credit: Steve Hunt Photo via photopin cc

選手の力は登りであれば、パワーウェイトレシオで全て表せる。残酷なほどまでに数値で表せる。しかし、スピードは前方投影面積や、気温による空気密度の影響を受ける。ロードレースは集団で走る競技だ。隊列や、風向きで人それぞれ辛さが違う。

走る上で忘れがちな大事な事を書いておきたい。それは”だれ”と戦っているのか?ということだ。自転車選手は、人と戦い、そして自然の法則と戦っている。その事実を理解するのと、していないとでは走りに雲泥の差が生まれる。

自分自身が見えない敵と戦っていないか、見えない敵に勝つすべを今一度理解し身につけたい。

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