今こそカーボンクリンチャーの闇の部分について語ろう

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公開日時:2014年6月10日

カーボンクリンチャーはいまだ、メジャーなホイールとしての地位を確立していない。カーボンチューブラーよりもリム重量が重く、ブレーキの利きを考えるとアルミクリンチャーで十分、という意見が大半だろう。しかし私はここにきて、「カーボンクリンチャーを使ってみたい」と思いはじめた。

理由はいくつかあるが、もちろんレースで実践投入するということを前提としてである。完組のアルミクリンチャーや、チューブラーについては、ある程度調べ特徴を理解している。ただ、得体の知れないカーボンクリンチャーを使うなら、実際に細かく調査してみないと現状はわからない。従って今回は、カーボンクリンチャーにフォーカスして調べてみることにした。

なお今回の対象は、リムがアルミでカーボンフード型のコスミックカーボンや、バレット、レッドウィンド、C35、C50といった俗に言う「アルカーボンクリンチャー」は含まれていない。全てカーボンの正真正銘カーボンクリンチャーのみ対象とする。

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カーボンクリンチャーの位置づけ

レースに出場される方のホイールパターンは、2台体制ではないだろうか。「決戦用」と呼ばれる主にカーボンチューブラー、そして日々の常用するアルミクリンチャーの2セットだ。多くの選手がこのパターンに該当している。

まれにライトウェイト等を常用する方もいらっしゃるが、使ってナンボなのでむしろ常用できることがうらやましい。私はチューブラーのタイヤが磨り減ることで、神経もすり減らしている。この辺は「レースで使う派」と「機材を使うことを楽しむ派」と二分化している。

そんな中カーボンクリンチャーを選択する理由は何か。まずカーボンクリンチャーの立ち位置から確認したい。色々調べているとカーボンクリンチャーは、カーボンチューブラーとアルミクリンチャーの間に位置しているような特徴を持っている。

いわば双方(カーボンTU, アルミCL)の長所をうまく取り込んでいるホイールなのだ。

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メリットデメリット

たとえばアルミクリンチャーの利点は何だろうか。クリンチャーなので練習中にパンクしたとしても、予備のチューブがあれば容易に修理が可能だ。また穴が開いたタイヤでも、中のチューブを交換することで「穴が開いたタイヤ」を流用することが出来る。これはチューブラータイヤには無いメリットだ。

ただし、アルミクリンチャーにもデメリットがある。それは外周のリムハイトに対する重量だ。素材がアルミなので当然リムハイトを高くすれば重量が増える。このためリムハイトが高いことによる利点の空力が犠牲になる。

ただ勘違いしてはいけないのは、ホイールの空力はリム単体で決まるわけではなく、スポーク形状やリム形状、タイヤとリムの間、リムの形状と要素は多岐に渡る。単純にリムハイトが高ければよいと言うわけではない。

事実、ドイツの基幹紙”Tour Magazine”の風洞実験室テストにおいて、CORIMAのミディアムプロファイルWiniumは、他のディープリム50mmよりも空力特性が優秀だった。ということでいくらリムハイトが高くても、トータルで考えなくてはいけないのがホイールなのである。

リムハイトの話が長くなってしまったが、カーボンならばアルミと比べて素材自体が軽い。従ってリムハイトを高くしても、カーボンの50mmがアルミの25mmと同じ重量に作り上げることも可能だ。

このアルミクリンチャーの利便性と、カーボンチューブラーの空力を兼ね備えたホイールがカーボンクリンチャーホイールと位置づけられる。

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実際に使ってみた

カーボンクリンチャーを実際に使うと、「カーボンクリンチャー」という一つの枠に収めるとどうも具合が悪い。理由は私のような「素人」でも違いがカーボンクリンチャーに明確に存在している事に驚く。私が今年使ったカーボンクリンチャーは以下の通り。

  1. MAVIC COSMIC 40C
  2. ZIPP 303 FireCrest
  3. ROVAL CLX40

試す前に私が常用しているホイールはMAVIC KSYRIUM SLR。アルミリム最高峰と言われるその構造は、Tour誌でも抜きん出た剛性結果が出ている。私は人間が機材を絶対評価できないと考えているので、今回は使ったカーボンクリンチャーをKSYRIUM SLRと相対比較した話として受け止めていただきたい。

まず、今年の頭に初めて使ったのはRoval CLX40だ。良いと聞いていたが、公園でさらりと試乗しただけなので特徴はつかめなかった。次に乗るのは四月のスペシャライズドの試乗会の時になる。

MAVIC COSMIC 40C

次はMavicのcosmic 40cである。乗ったのは非常に気になっていたホイールだ。このホイールは外装はカーボンであるが、ビード部分(外周)はアルミである。これにより剛性と放熱効果が得られている。面白い構造である。

まるで既存のコスミックカーボンのカウルがブレーキ面まで延長されたかのような構造は、実際乗ってみるとどうなのだろうか。当チームのコアンさんの私物をお借りして試乗する機会があった。

やや緩やかな登りがある、いつもの練習場で乗った。簡潔に言うと下りは伸び、登りはやや後ろに引っ張られる感覚がある(Ksyrium SLRとの相対)。高速巡行に入ったら良いが、加減速が繰り返されるクリテリウムやロードレースにおいて、エアロ効果を考慮してもKsyrium SLRに軍配が上がる。

結論から行くと、エンデューロ、高速巡行、センチュリーライドに適していそうだ。レースで使うなら空力を犠牲してもKsyriumSLRという判断になる。ただ、使う用途が明確ならばCosmic40Cも有りだろう。ただ、レースに投入したいかと問われれば答えはノーだ。

なお、Cosmic 40Cのリム重量は460-470gとのこと。ちなみにKsyrium SLRが405g-410gほどなのでやはり外周は重い。

Zipp 303 Firecrest

続いて乗る機会があったのは、Zipp 303 Firecrestだ。見た目も良いしリム幅も太い。プロがよく使用している事もレースを見ていると多い。またトライアスリートが使用している場合が多い。そのスペックを確認する。

  • リムハイト 45mm
  • ブレーキ面リム幅 26.40mm
  • 最大リム幅 28.50mm
  • ビード 17.25mm
  • スポーク Sapim CX-Ray

いかにも「数値的にも空力よさそう」と錯覚してしまいそうなスペックである。

ただし見逃してはいけない点がある。wheelbuilderに掲載されているリム重量のデーターによると、zipp 303クリンチャーのリム重量は500gだ。なお、オフィシャルには記載されていないデーターである。

実際に乗る際にその500gという重みを覚悟してZipp 303 Firecrestに乗った。しかし乗った感触は、それら事前の「数値的な」重さは感じられない。Cosmic 40Cよりも軽く感じるなぜだろうか。

考察してみると、リム重量の分布が外周なのか全体均一(現実にはありえないが)なのかで違ってくる。例えば、Cosmic40Cであれば外周のビード部がアルミであった。その分リム重量460gの分布は外周に偏る(と予想している)。

かたやリムハイト45mmで最大28mmのリム幅を持つZipp 303 Firecrestはデブ(ファットリム)だ。断面図を想像すると面積はZipp 303 Firecrestの方が40Cよりも広いと予想できる。

この影響かわからないが、Zipp303の方がよく進む感覚が得られた。レースに持って行きたいかと言われれば、西日本ロード、ツールド熊野一日目かなという印象。エンデューロやロングライドならば303が良い。むしろ常用するクリンチャーとして考えるならばZipp 202 Firecrestなのかもしれない。

ただ、総合的に考えて一本買うならエアロダイナミクスを考慮してもKsyriumSLRを選択するだろう。

Zipp303FCには欠点もある。旧型のブレーキだとリムが干渉する。さらに最新の9000のブレーキでもめいいっぱい広げる必要がある。この点は、レースでニュートラルで人の車輪を借りて復帰したときに、まず確認しなければならない重要なポイントだ。

ROVAL CLX40

最後にRovalのCLX40。このホイールをスペシャライズドの試乗会で乗った。

このホイールを一言で言うなら、「ディープリム化したKsyrium SLRかもしんない」だ。という頭出しだけして、現在記事化中である。マイナー中のマイナーのROVALのホイール。なぜこのホイールについて記事化するのかは後日報告したい。

ここまで色々印象を書いたが、タイヤの種類や空気圧を厳密に統一していない。だから同一条件下ではないことにご留意いただきたい。空気圧一つで乗り味が全く違うしグリップも違う。高い精度で相対評価する為には条件はすべて一緒がいい。タイヤの種類、チューブの種類、空気圧、全て同一条件が望ましい。

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完組カーボンクリンチャー比較

ここからは各社私が知りうる範囲のカーボンクリンチャーのリム重量と、スペックをまとめてみた。購入の際の参考データーにしてほしい。なおくどいが、リム重量が軽くてもZIPP303のように思ったよりもかるく感じる場合があるので重量を盲信してはいけない。

MAVIC

  • Model: MAVIC COSMIC 40C
  • Weight: 460-470g
  • Rim depth:
  • Rim width (outer):

ENVE

  • ENVE 3.4 Clincher Front Rim
  • Weight: 452g
  • Rim depth: 35mm
  • Rim width (outer): 26mm
  • ENVE 3.4 Clincher Rear Rim
  • Weight: 465g
  • Rim depth: 45mm
  • Rim width (outer): 24mm
  • ENVE 45 clincher rims
  • Weight: 440g
  • Rim depth: 45mm
  • Rim width: 21.6mm

ZIPP

  • Zipp 202 Firecrest Carbon Clincher Rim (X32)
  • Weight: 414g (18h)
  • Weight: 406g (24h)
  • 実測重量: 425g
  • Rim depth: 32mm
  • Aero-width: 25.4mm
  • Brake width: 24.62mm
  • Zipp 404 Firecrest Carbon Clincher Rim (Zipp X45)
  • Weight: 525g
  • Rim profile: 58mm
  • Aero Width: 27.5mm
  • ZIPP 303 FireCrest Carbon Clincher Rim (Zipp X58)
  • Weight: 500g
  • Rim profile: 45mm
  • Aero Width: 28.5mm

Reynolds

  • 2014 Reynolds Assault SLG Carbon Clincher Rim
  • Weight: 445g
  • Rim width: 25mm
  • depth: 41mm
  • 2014 Reynolds Attack Carbon Clincher Rim
  • Weight: 380g
  • Rim width: 25mm
  • depth: 29mm
  • 2014 Reynolds Strike SLG Carbon Clincher Rim
  • Weight: 550g
  • Rim width: 25mm
  • depth: 62mm

なお、Lightweight、Easton、FFWD、Xentis、Roval、GOKISO、TOKENについては追って掲載する。

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まとめ:カーボンクリンチャーは買いなのか

実はタイトルは後から変えている。長年私はカーボンクリンチャーなどまったく使えないと思っていた。なによりリム重量が重くレースには使いたくないと。ただ、闇の部分を探しまわっていたら、カーボンチューブラとアルミクリンチャーの間に一筋の光が差し込んできた(上手い言い回しだ)。

カーボンクリンチャーはもしかしたら「普段使いできる決戦ホイール」ではないかと。

早い話Lightweightのクリンチャーが良いに決まっている(かもしれない)が、正直お財布が厳しいサラリーマンサイクリストにとって現実的な選択肢ではない。各メーカーも次第にカーボンクリンチャーをラインナップしてきている。

実際に熊野3日目二位のてっちゃんのホイールはカーボンクリンチャーであった。レースでもカーボンクリンチャーを使い結果を出す(本人が強いのが98%であるが)選手が出てきているところにホイールの新しい楽しみを感じる。

今回はカーボンクリンチャーに関する話の序章であったが、今後レースでカーボンクリンチャーを使い、練習で距離を乗った結果を紹介する予定だ。やはり得体のしれないホイールであるカーボンクリンチャーは失敗したくない機材である。

買うまで4ヶ月悩んだが、いよいよ私もカーボンクリンチャーを使う決心がついた。これからはカーボンチューブラやアルミクリンチャーの良い所を兼ね備えた、カーボンクリンチャーを選択してみるのも一案かもしれない。

各社のスペックは精査中であり、後ほど更新予定。

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