TIME ZXRSのインプレでわかったタイムフレームの凄さ

熱心なサイクリストの間で「いつかはTIME」こんなフレーズを聞くことがある。TIMEというフレームメーカーを知らないサイクリストは居ないだろう。TIMEのフレームにいつか乗ってみたいという願望を、私も確かに持っていた。

私は長らくSPECIALIZEDユーザー(SL3~SL4)を続けてきた。しかしここにきて、TIMEに乗り換えることに決めた。選択したのはTIME ZXRSだ。このフレームを選んだ理由はいくつか有る。BB周りがラグ(パイプとパイプをつなぎあわせた構造)の数少ないトップモデルであり、そして作りが美しい。

正直、合わない機材はすぐに使うきが失せてしまう。TIMEの2015年のラインナップを確認すると、フラッグシップからラグ構造が消えフルモノコックになるようだ。もしかしたら、TIME最後のラグフレームになるかもしれない。そんな思いと、勢いでTIME ZXRSを購入した。

周りからは、私がTIMEに乗るのが似合わないと言われたが、色々乗ることで知ることもある。一方、「新型TARMACじゃないんですか?」という「私=TARMAC」という図式が勝手に成り立っていたことは単純に嬉しい。

それほどまでにTARMACを使い続けて来たわけだが、なぜここにきてTIMEを使うに至ったのか。

今回はTIME ZXRSを平坦から山岳まで乗り込んで感じたことを記そうと思う。主にTarmac SL4と新型Tarmacとの相対評価となる内容だ。機材の絶対的な評価は非常に難しいが、できるだけ細かくTIME ZXRSについて記していく。

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なぜTIMEのフレームを買ったのか

実のところ、ほぼ新型Tarmacを買うことに決めていた。候補としては5月のツールド熊野の頃からで、レースへと向かう車中でTIME ZXRSが欲しいと話していた。フレームを買う時はかなり細かく調べていたので、あれから約二ヶ月前かかってしまった。

TIMEのフレームがほしい理由の一つとして、ラグに乗ってみたかったからだ。その「ラグに乗ってみたい」流れとして、LOOK586か、C59、C60が候補に挙がっていた。ただ、コルナゴよりもLOOKよりもやはり私の中では「いつかはTIME」なのだ。

最近のフレーム事情と言えば、各社軽量化の為にモノコックフレームが主流になった。一体整形することで剛性も調整しやすく、つなぎ目に余計な部品(とは言ってもこれがキモなのだが)を必要としていない。ただ、ラグはラグの乗り味の良さがあるので、好みがわかれる。

本音を話すと一度乗ってみたかったTIME ZXRSをツナギで(とりあえず)乗って、新型ターマックに乗り換える”つもり”だった。ところが新型ターマックとTIME ZXRSを両方乗ってみて思った。TIME ZXRSの方が特徴が有って乗りやすい。使うならTIME ZXRSだと。

SL3とSL4の間に浮気したとあるフレームは、本当に合わなかった。やはりフレームには相性がある。TIME ZXRSというと、「バイクに乗るために練習に行きたい」そんな楽しみがあるフレームだ。前置きが長くなってしまったが本題に入っていこう。

TIME ZXRSの構造について

まず私が使うTIME ZXRSは電動仕様のモデルだ。フレームに穴が開いており、電動のワイヤーをルーティングすることが出来る。TIME ZXRSを手にとった瞬間、今まで使ってきたフレームとは一線を画していることがわかる。

何よりも複雑に構成されたカーボンの造形が美しい。TIMEはカーボン繊維から編み上げてフレームを作る数少ないメーカーだ。GIANTやBMCがこの「1から作るメーカ」の類である。複雑に織り込まれたカーボンと、美しく接合されたフレームに魅了される。ただその分重くなっていないだろうか。重量を見ていく。

TIME ZXRSの実測重量1491g

私の仕様サイズはXSだ。メーカー公称値は1490g(フォーク込み)とある。では、実測重量を計測してみよう。実重量は1491gであった。1gオーバしているではないか。いや、このフレーム重量詐称が当たり前に行われる自転車界において、この値は相当優秀といえる。

たとえば軽量をウリにしているあるメーカーであれば「塗装前重量が世界最軽量」であったり、「ハンガー抜き重量」であったりと非常にあざとい重量表記だ。実のところ私はあまり重量は気にしない。確かに「TIME=重い」という風潮があるのも事実である。

ただ、この1490gという重量は「重い」のだろうか、「軽い」のだろうか。この重量自体を単純に見た場合「重い」と言える。しかし、構造を配慮した場合はどうだろうか。TIME ZXRSの1490gというのは「ISP込の重量」である。他のフレームを同じ土俵に載せるならば、シートポスト込の重量として考えても良い。

昨今の自転車パーツは、技術の向上により剛性と軽量化が図られている。普通にアッセンブルしたマシンですら容易に6.8kgを切ってしまう。いわゆる「決戦仕様」の状態で7.02kgだ。不思議なことにS-WORKS Tarmac SL4の7.2kgより軽くなっている。

TIMEというフレームメーカーは、無闇やたらに軽さを追求しないモノ作りの良さがある。現代の6.8kg制限の弊害は、レース前の検量をパスする為に、余計なおもりを載せ、いびつな重心バランスのマシンになってしまう事だ。

特に機材の自由度が高く資金が有るホビーや実業団においてその傾向が顕著になってきている。そういう意味では、「一見重そうに見える」このTIMEのフレーム重量はむしろプラスに捉えても良いと言えるのではないか。

なお、TIME ZXRSのヤグラ重量は金具など全て混みで125gだ

TIME ZXRSの細かな作り込み

TIMEのフレームは細かくも、小さな嬉しい配慮が各所に盛り込まれている。全ての箇所において抜け目なく作りこまれているという印象だ。特にTIMEのフレームで感じたのは「完成車の状態」を意識してフレームを作っているのではないかと思わされる。

それは「ケーブルルーティング」もしかり「バッテリー台座」もしかりだ。秀逸なのは「ブレーキワイヤーの入出角度」である。リアブレーキへと伸びるブレーキワイヤーは、アウターケーブル丸ごとフレーム内を通ってアッセンブルされる。この構造は無駄がない。

リアブレーキアーチへ伸びるブレーキケーブルは、見事なまでのルーティングが可能だ。TARMAC SL4はブレーキ中にシートポストにワイヤーが接触して傷が付いてしまう場合があった。ところがTIME ZXRSは見事なまでの取り回しになっている。

ブレーキを掛けた状態、リリースした状態共において、ケーブルは僅かながらフレーム側に寄るが、接触することはない。ケーブルの入出角度一つとったとしても、美しさを感じられる。フロントのブレーキワイヤーのルーティングも同様で、窮屈さがないのだ。

TIMEのヘッドが長い点は気に入らない所だが、逆にフロントブレーキのワイヤー類に余裕が生まれた。この点は意外な利点である。

TIME ZXRSのISPのセンター精度

ISP方式のフレームにおける宿命は、サドルセンターの調整ができないということだ。したがって、ISP部の精度が高くなければサドルセンターは出ない。僅かながら私のZXRSもサドルセンターが出ていないようだ。しかし、それがサドル側のセンターの問題なのか、フレームのセンター精度の問題なのかは判断がつかない。

ISPの話が出たところで、やぐら部の調整の話を少ししたい。私はSELLE SMP FORMAを前上がり0.5°で調整している。調整の際にはデジタル水平器を用いている。どうしてもこの角度でSMP FORMAを乗りたい。

ヤグラの調整は縦に並んだ2つのボルトを調整して決める。リアホイール側のボルトをゆるめて、フロント側のネジを調整する。最後をはリアホイール側のボルトを閉めて終了だ。この調整が非常にシビアで苦労したが、固定力も有り安心できるヤグラである。

このヤグラの構造のメリットはいくつか有る。ネジをサドルに対して垂直に止めるため、無理な力によるサドル角度の狂いがない。例えばシートポストを横から締めるタイプだとそもそも回転するものを抑えこんでいるので無理な力でサドル角度が狂う場合がある。

TIME ZXRSはサイズで剛性が違う

TIMEマニアのある方から聞いた情報を少し紹介する。TIMEのフレームは違うサイズを並べてみると、サイズ毎にチューブの太さが全く異なっているそうだ。理由は、「サイズ毎」に「剛性値」をコントロールしているから。

剛性値のチューニングは、カーボンの積層を変えたり、太さを変えたりと様々だ。カーボン繊維1本からフレームを作っているTIMEの強みといえる。TIMEはいつ頃からこのような「サイズ別剛性値の統一」をしているのか。

「ボンジュールレプリカの頃から」

という話を聞いて驚いた。一般的なメーカー(ほとんどの)は製造コストの兼ね合いで、フレームに対して全サイズ同様のチューブ素材を使用する。結果的にフレームサイズによってフレームの剛性や性能が異なってしまう場合がある。

ところが、TIMEはすべてのサイズで同じ性能と剛性値に近づけている。その製法は非常に手間のかかる作業だと想像するに容易い。まるでサイズごとに別のフレームを設計しなおすかの如く、サイズ毎に特化した工程を経てTIMEのフレームは製造される。

この辺の手間ひまが、TIMEのバカ高いフレーム価格に乗って居るとしたら納得できる。なお、ORBEA社も同様にサイズ毎のフレーム剛性を揃える製造技術「SSN (size specific nerve)」がある。TIME社はORBEAがSSN技術を謳うより前に、当たり前のようにやっていた。

ここまで「サイズ=剛性統一」の話を書くと、次にどんな話が来るのか察しが良い人も居るだろう。2015年新型Tarmacの目玉として「サイズごとの剛性値の統一」をプッシュしている。この話題は雑誌に取り上げられ、「さすがSPECIALIZEDだ」と言われた。

ところがTIMEユーザーからすると「今更感」と「やっと追いついたのね」という感じのようだ。

私は単純にSPECIALIZEDはやっぱり凄いと書いたところ、「そんなんTIMEは昔からやってるよ」とSNSで連絡来たことは内緒だ。知らないことの方が幸せな場合も、世の中には往々にして存在している。

では、さすがに新型ターマックのように、ひずみゲージをフレームに取り付けて剛性測定をやっていないだろう!?と私は思った。しかし、ボンジュールレプリカの開発時にサイズ毎の剛性を揃えるため、既にフレームの剛性測定をひずみゲージ(のようなセンサー)を用いてテストを繰り返していたとのこと。

TIME ボンジュールレプリカ。今から12年前の2002年に発売されたバイクの話しである。

左右非対称設計

TIMEのフレームを後ろから見るとチェーンステイの形状が左右で異なっている。複雑かつ緩やかな曲線を描くチェーンステイは、どのような意味があるのか。自転車をこぐ人間は左右対称な動作をしている。しかし、実際にバイクを見るとどうだろう。

クランクは右側に取り付けられ、ドライブ類(FD,RD,チェーン)は全て右側に付いている。単純にセンターで真っ二つに割った場合、右側に重量が寄っている。

さらに細かく見ていくと、ペダリング中にかかる力は右側にしか存在しないドライブが作用し進んでいる。そうすると僅かながらも、左右差が生まれる。自転車という構造上、左右差が出来るのは必然なのだ。

それらの基本的な構造を考慮してか、TIMEのフレームは左右非対称の設計をしている。いくらか非ドライブ側のチェーンステイが太く形状が変わっている。おそらくドライブ側で発生した力を是正する為だろうか。様々な工夫がTIMEのフレームには組み込まれている。

似たような技術でホイールもリア側は左右非対称だ。スプロケットが付くドライブ側は剛性確保の為組み方が違う場合が多い。やはり左右差の是正のためにいくらか工夫がある。とするとフレームという重要な「枠」にもその概念が有っても何ら不思議ではない。

ただ、他のメーカーがそこまで考えて、TIMEの様なカーボンの組み方を変えられるだけの技術力があるのかはまた別の話だ。

TIMEが使うRTM技術ってなんだ

TIMEのフレームの製造方法で必ずと言っていいほど出てくる製造方法がある。RTM整形という技術だ。RTM成形(レジン・トランスファー・モールディング)は型の中にカーボン繊維を配置する。そして密閉の中に樹脂を圧力を掛けて流し込む(レジン・トランスファー=樹脂を輸送する)成形方法だ。

オートクレーブ製法のように、圧力釜を必要としない。フレームの形に成形された金型を利用するので、成形物の寸法安定性が高いのが特徴だ。ただ、オートクレーブ製法と比較して高い圧力をかけられない。その点をTIMEフレームのデメリットとして上げられる場合もある。

今までTIMEはラグ構造を貫いてきたが、TIME ZXRSはモノコック成型とRTM製法のチューブを接着したハイブリッド工法で作られている。モノコックの部分はヘッドを中心とした、トップ、ダウンチューブ部分。ラグ部分は、シートチューブとBBブロックラグへと繋がる部分だ

前半のまとめ:TIME ZXRSの構造

RXRから乗り継いだ方曰く、「ヘッド部の剛性が上がった」そうだ。ただ私はTarmacSL4からの乗り継ぎなのでヘッド部が硬いという印象はない。押したり引いたりすると僅かながらしなるような感覚があるが、それがヘッドの硬さなのか、フォークコラムの硬さなのかは判別がつかない。

これら、TIME ZXRSの作りは、フレームの要所要所で素材と構造を使い分けている。まさにカーボンを適材適所で特性を変えて作る事のできるメーカーの強みだろう。ではここまでで紹介したような様々な手の込んだ技術は、実際乗り味にどれくらい現れているのか。

前半は構造的な面にフォーカスした。文章数の都合上一旦ここで区切る。続きは、「TIME ZXRSのインプレ 「いつかはタイム」の意味」を参照して頂きたい。