模型実験で判明!同重量のホイールでも転がり方が違う理由

まずは動画をご覧頂きたい。ホイール重量「1000gのA社のホイール」と「1000gのB社のホイール」がある。カタログ上とても軽いホイールだ。ではどちらのほうが転がるのだろうか。単純には判断できない。しかし「重量の散らばり」で転がり方は変わる。それらはこの動画が全てを物語っている。

ホイールは「完組みホイール」と呼ばれる場合、リムとハブそしてスポーク全ての重量を表記したカタログスペックが一般的だ。例えば1200gといえどその1200gがホイールのどの部分に分散しているのかで、転がり方が全く異なる。

この動画は簡単な実験だったが、非常に衝撃的だった。今回はホイールの重量バランスが及ぼす転がり易さについて考察していきたい。

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全ては外周部の重量に影響する

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ホイールを究極に簡素化していった場合、何が残るのだろうか。素材も関係ない、銘柄も関係ない、リムハイトも関係ない。物質として1000gのホイールが有ったとして、その1000gが円の「どこに」「どれくらい」バランスよく分散しているのかで転がり方を考えてみる。

ただ単に「重量の分散」それだけにホイールを簡素化した場合、見えてくるものとはなんだろうか。この動画の興味深い実験結果は、ある重量(全て統一された)の重りをつけて、坂を転がる円盤といったシンプルな構造である。

まるで小学校の理科の実験のようだが、ホイールの重量バランスがいかに転がりに影響するかが理解できる。今までは、ホイールを「完成重量」だけにフォーカスして見ていたわけだが、ところが外周部の重量もどれくらいの重さなのかを気にする必要が出てきた。

外周部が軽ければよいのか

では、外周部が軽ければよいのだろうか。私は必ずしもそうとは言い切れないと考えている。そもそも単純に「外周部(リム)が軽ければ良いとは必ずしも言えないのではないか?」と疑問に思った。自転車で走れる場所は、ヒルクライムから平地のタイムトライアルまで様々である。

その中であまりにも軽すぎるリムや、重すぎるリムはシチュエーションに寄っては合わない場合があるのではないか。それらを次の2つの例「外周部が重い場合」と「外周部が軽い場合」2つに分けて考えてみよう。

外周部が軽い場合

外周部が軽いホイールは、20mm-25mm程のローハイトの軽量ホイール等を想定している。私が持っていたGIGANTEXのリムは250gだった。ヒルクライム用に作ったのだが、このようなリムはどのような特徴と、どのようなシチュエーションに合うのだろうか。外周部が軽量ならば慣性を考えると、「踏み出しが軽く」、「ダイレクト」になる。

ということは、動画のように素早く回しやすいということになる。ところが軽い力で回すことができるが、安定性がなく横ブレなどの影響により失速の原因になる場合がある。これらは慣性が低い(ディープなどに比べて)ために起こる。従って常にペダルからパワーを入力し続けないとスピードが落ちてしまうと言い換えられる。

従って、必ずしも極限まで軽ければ良い、というわけではないのがホイールの深みだ。また慣性が小さいという事は、回転がすぐに落ち、止まってしまうというデメリットも有る。肝心なのはリムの重量と、使うレースのシチュエーションなのだ。

外周部が重い場合

次に慣性の力が大きくなる、外周部が重いホイールについて。軽いディープリムもあるが、外周部はリムハイトが高くなればなるほど重くなっていく。このようなホイールのメリットとデメリットはなにか。

外周の重量が重くなると慣性が大きくなる。踏み出しの軽さは先程のローハイトのリムが勝るだろう。しかし、自転車はトップスピードに乗った際の巡航性能も重要になってくる。高速で移動するロードレースを考えてみる。

その高速な集団の中で足を休める場合には、スピードに乗ると減衰せず、常に回り続ける続けるホイールのほうが良い。慣性が大きくなれば少しの力で高速を維持しやくすなる。プロの高速レースでディープリムが使われる理由は、高速巡航しながらの温存に有るのだろう。

しかし、コーナーの立ち上がりやゼロ発進を考えると話は違う。慣性が大きければ加速時にはローハイトの軽量ホイールよりも余計にパワーを消費し無くてはならない。やはり外周部が重いホイールも、軽いホイールも一長一短なのだ。

ホイールの重量に関する個人的な感想

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エアロダイナミクスを切り離し、重量という要素だけにフォーカスして考察してみる。個人的な感想になるが、ホイールのリム重量別シチュエーションについて。タイムトライアルの場合はリアはディスク一択だ。ではフロントは?

先日の実業団の栃木は1箇所以外はブレーキングが必要ないとあった。このような場合は、慣性が大きいほうがスピードを維持しやすくタイムを期待できるのではないだろうか。従ってある程度重い方が有利な可能性がある(出力との関係も大きいが)。減速する要素が少ないタイムトライアルというシチュエーションの場合は、特に慣性を有効に使いたい。

フロントは(空力を抜きにした場合)コリマの3バトン、LightweightのVR、ZIPP404-808、C75と色々考えられる。

また、アタックがかからず高速巡航する場合を考えてみる。エンデューロ等の場合も同様にスピードの維持が鍵だ。外周部がやや重いリムを試してみたい。

ではヒルクライムはどうだろうか。乗鞍の場合を考えてみると、純粋にローハイトの軽いホイールよりも長い時間巡航しなくてはならないので実際のところ、あまり軽すぎず、重すぎずオールラウンドな35-47.5mm(50mmまではいらない)が望ましいのではないか。

具体的なモデルを上げるならば、コスミックカーボンアルチメイト(40mm)、ENVE 1.45(45mm)、LightweightG3(47.5mm)、C35、BORA35といったところだろうか。実際に乗鞍でM選手のゴキソ(前後でリムハイトが異った)やY選手(アルチメイト)もある程度のリムハイトを確保しているが、もしかしたらその辺を考慮しているのだろうか。

各社リム重量

ここまで長い文章を読んでくれた方へ、私が知りうる限りのリム重量データを紹介したい。

  • WH-9000-C24-CL 24mm ~383g
  • WH-9000-C24-TL 24mm ~420g
  • WH-9000-C35-CL 35mm ~439g
  • WH-9000-C35-TU 35mm ~362g
  • MAVIC COSMIC 40C 460-470g
  • MAVIC KSYRIUM 395-420g
  • ROVAL CLX40 CL 419g
  • Zipp 202 Firecrest Carbon Clincher Rim (X32) 414g (18h)
  • Zipp 202 Firecrest Carbon Clincher Rim (X32) 406g (24h)
  • Zipp 404 Firecrest Carbon Clincher Rim (Zipp X45) 525g
  • ZIPP 303 FireCrest Carbon Clincher Rim (Zipp X58) 500g
  • Zipp 202 Firecrest Carbon Tubular Rim (Zipp 255) 295g
  • Zipp 404 Firecrest Carbon Tubular Rim (Zipp 360FC) 426g
  • ZIPP 303 FireCrest Carbon Tubular Rim (Zipp 285v4) 352g
  • 2014 Reynolds Assault SLG Carbon Clincher Rim 445g
  • 2014 Reynolds Attack Carbon Clincher Rim 380g
  • 2014 Reynolds Strike SLG Carbon Clincher Rim 550g
  • ENVE 3.4 Tubular Front 372g
  • ENVE 3.4 Tubular Rear 393g
  • ENVE 3.4 Clincher Front 452g
  • ENVE 3.4 Clincher Rear 465g
  • ENVE 6.7 Tubular Front 488g
  • ENVE 6.7 Tubular Rear 531g
  • ENVE 6.7 Clincher Front 520g
  • ENVE 6.7 Clincher Rear 545g
  • ENVE 8.9 Tubular Front 573g
  • ENVE 8.9 Tubular Rear 579g
  • ENVE 8.9 Clincher Front 645g
  • ENVE 8.9 Clincher Rear 656g
  • ENVE Tubular 1.25 250g
  • ENVE Tubular 1.45 295g
  • ENVE Tubular 1.65 360g
  • ENVE 45 Clincher 440g
  • LIGHTWEIGHT G3 TU 340-360g(海外の怪しい情報)
  • FFWD F2R TU 250g

まとめ:カタログ重量だけで判断できない

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ここまでで、ホイールの外周部の重量は回転に大きな影響を及ぼすことがわかった。確かに実践ではエアロダイナミクスや、剛性といった複数の要素が絡み合い総合的な性能を決める。それらはスポークテンション、エアロダイナミクス、剛性、とあげたらキリがない。

今回はホイール重量がどこに分散しているか?で転がりが変わるという、非常に狭い範囲での話をした。単純にホイールを1300gとした場合、「どこに」「どれくらいの重量」が分散しているかが重要である。

重量だけ見ても「中心部が重く外周部が軽い」場合と、「中心部が軽く外周部が重い」場合とではホイールの特徴が全く異なる。とすると、ハブ部を鉄で作っているシマノのホイールは優秀かもしれない。また、ハブ部をカーボンにしているCampagnolo等はもしかしたらシマノホイールよりも外周部が重いかもしれない。

そのような事を考えだすと、使うシチュエーションによって「ホイール」というものを選択するための最適解は無限にある。まさに終わりのないホイール沼だ。だがそこに楽しみがあり、尽きない探求がある。

結局のところ、使って自分に合う合わないは千差万別だろう。しかし非常に大きな要素を占めているのが外周部の重量である。様々なホイールを使って、リム重量の数値を知り、レースに出て自身にあった最適なホイールを見つける手がかりにして欲しい。

場合によってはやや重いアルミクリンチャーが最適解かもしれないのだ。この動画を見て、改めてホイールへの探究心は尽きないと思わされた。