大阪のオーダージャージメーカー「サンボルト」の研究開発力を探る

今や国内の4つプロチームが採用するまでになったオーダージャージメーカーがある。サンボルトだ。大阪を本拠地に構えるオーダージャージ専業のメーカーである。現在は高性能かつ最新の素材を使用しプロチームからお墨付きを貰っているが、その黎明期は決して良いとは言いがたいジャージだった。

このように辛口で書くのには理由がある。私がサンボルトのジャージを使い始めたのは今から5年前の2010年頃。さらに、当チームの実業団のジャージもサンボルトを使用している。5年前のサンボルトのジャージといえば生地はともかく、サイズも合わず改善点が散見された。

それらも今や昔の話で私は2010年〜2014年の間、毎年改良を繰り返すサンボルトジャージを購入し使用してきた(実業団ジャージを合わせると7着、ワンピは3着サンボルトだ)。あれから五年が経ち、同社は数多くの試行錯誤を繰り返して「PROfit」を発表した。このジャージは同社にとって一つの到着地点に辿り着いたように思う。

そのサンボルトの新しくなった「PROfit」ジャージを見ていく。過去のサンボルトジャージを知っている人は驚くことだろう。もちろん私もその一人で、結果こうして記事を書くに至ったのだ。

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サンボルトオーダージャージ

まず、私の身近にはサンボルトのジャージを持っている人が非常に多い。ただ過去のモデルに対して不満を持っている人も大多数居ることも否定しない。お金を出しているわけだから有る一定以上の品質と「ジャージ」としての性能を兼ね備えた物を手にしたい。消費者として当然の想いと言える。

はじめに明言しおく。今回のジャージに対して昨今のインプレ記事のような提灯記事(現代のステマ)的な内容は書くつもりはない。実際に使用すれば嘘などすぐにバレてしまうからだ。結果としてプロダクトの価値を落とすばかりか、二度とその製品を手に取らないだろう。そう前置きし、どれ程改善されたのかくまなくチェックしたい。

チームの朝練でこのジャージを使用したが、本音を言うともう過去に制作したジャージとはもはや別物であった。5年前の黎明期のジャージから、プロチームが使用する現行の「PROfit」を使った感想は「多くの不満は解消された」と言っていい。

はじめて「PROfit」を使用した人は気づかないかもしれないが、過去のジャージには次のような不満点があった。

  • 乗車ポジション時に襟が浮き、バタつく
  • 汗抜けが非常に悪い
  • パッドの縫い目が干渉し股ズレが起こっていた
  • 袖が短くワキ毛が見える場合があった
  • 裾が走行中にずり上がってくる場合があった

上記が過去に気になった改善して欲しい点だった。これらを上手く改良したPROfitジャージを次の章からは実際に紹介する。

サンボルト PROfitジャージ

まずはプロフィットジャージから見ていく。パンツも大幅に改善されているがまずは一番気になるジャージからだ。問題の襟部分は大幅に改善されている。以前はやや生地が厚めの首にまとわり着く感じがあったが、ピッタリと首にフィットするように改善されていた。

また、過去のモデルは首後部にいくらか隙間があったがそれらも解消されているようだ。写真でも判断できる通り襟部分は延長され、乗車姿勢のポジションでも空気が入ってくるということはない。どちらかと言うと薄くなりすぎている感はあるが、レースフィットということもあり窮屈に感じてしまう人も中にはいるかも知れない。

ただし私はこれくらいのほうが、スピードが出た時に襟がバタつかないので良いといえるだろう。実際に使ってみると首元にピッタリと吸い付くように着ることが出来る。使ってみるとわかるが、伸縮性に富んだ素材を使用しており、まるで弾性を持ったゴムのようである。襟については良い方向に改善されていると言って良い。

まるでインナーのようなメッシュ素材を採用

襟の裁断は改善されたが過去のサンボルトのジャージには「汗抜けが悪い」というサイクルウェアには致命的な問題が潜在していた。練習やレースで汗をかけばかくほどドッシリと重くなっていく(指数関数的に)ジャージは好まれない。さらっと快適に着れストレスがない方が良いウェアといえる。

人間は体温を下げるために発汗するが、発汗した汗はジャージに吸収される。そして気化していくわけだが、発汗に対して気化が追いつかないとどんどんジャージは水分を蓄え重くなっていってしまうのだ。これでは不快感ばかりが増し、ライディングに集中ができない。

上記写真でも見て分かる通り、小さな穴のようなものが開いているメッシュ構造となっており非常に汗抜けが良い素材を採用している。実際に真夏のライド中も過去のジャージよりも明らかに発汗性能が良く、乾きも幾分速いように感じる。なお肩の素材には採用されていないが、恐らくエアロ効果が期待されるツルツルとした素材を選択している。

私は普段CRAFTのインナーを使用しているが本ジャージを使用するときはインナーを着用していない。殆どインナーの役割をジャージが担ってくれているので不要という判断をしたのだ。事実インナーを着ない分、肌とジャージが密着しより汗を吸い上げ、タイトに着ることが可能になっている。

乗車姿勢を考慮したカッティング

過去のサンボルトのジャージは2次元であった。ようするに平面で型どられたジャージと言えるだろう。上の写真をご覧頂きたい。壁に吊るすと一目瞭然だ。PROfitジャージ(写真上)は乗車姿勢を考慮してウェアの袖が前に出るように作られている。これは実際の乗車時に違和感なく着ることが出来る配慮だ。

旧型(写真下)のジャージは立体裁断ではないため、乗車姿勢をとろうとすると背中がやや突っ張ったり、不要な隙間が出来るといった問題点が存在していた。これらの問題を解消し新たに立体裁断を施した効果は高い。実際に長時間のライドを繰り返すと小さなストレスの差が結果大きな差になる。

長い時間のロードレースやグループライドならなおさらだろう。

せっかくなので更にわかりやすく横から見てみたい。差は一目瞭然である。裁断自体が平面と立体で作られるジャージは似て非なるものである。この状態だと吊るしているのであまりわからないが、旧型は下ハンドルを持った時に背中が出てしまう問題があった。要するに丈が短かったのである。この点も上手く解消している。

PROfitジャージは乗車姿勢の状態で真価を発揮する。袖、背中部分、丈には隙間がなくライディングに集中できる環境を提供してくれるのだ。

ロングスリーブを採用

上の写真は肩から腕にかけての素材である。この部分は先程も指摘した通り、メッシュ構造ではない。理由としてエアロ効果を期待してかツルツルとした素材を採用している。また流行りのロングスリーブを使用しており、関節の少し上まで袖が延長されていた。

この袖は実際のライディングポジションに沿って裁断されているため、通常のライド中にずれ上がってくることは無い。むしろピッタリと吸い付くように吸着しているので肌と一体感がある感覚すらある。袖の末端は折り返しがないスパッと切ったような、段差が無い構造だ。まるで皮膚の一部のようである。

この画像からは確認できないが脇下にはメッシュ構造が備わっている。汗をかく脇の下にはこのメッシュ構造が良い効果をもたらす。既存のジャージの脇下はこのようなギミックが無かったが、新型のPROfitジャージには小さな作りこみが随所に見られるのだ。

PROfitビブパンツ

一番の進化はこのPROfitのビブパンツではないだろうか。上記の写真をご覧頂きたい。写真でも分かる通り脚とパンツの境目が殆ど無いのだ。今までのビブパンツはライディング中にずり上がってくることがあった。このPROfitはそのようなことは無い。むしろ肌と一体化しライディングに集中させてくれる。

このようなパンツの裾のメリットは使うまで理解できなかった。以下にそのメリットを箇条書したい。

  • 広範囲で押さえるため縫い目の跡が肌に付かない
  • 押さえつける力が分散しているので筋肉へのストレスが少ない
  • ずり上がらない
  • 見た目が良い(意外と重要)

このように幅が広い裾は見た目的にも機能的にもメリットが大きい。

またパッドも改良されている。以前はサイテック社(De marchiなどで使用)のパッドを使用していたが私は柔らかすぎると感じていた。今回のPROfitには新たに開発されたパッドが備わっている。このパッドがなかなか良い。実際に走ってみると少し肉厚だが明らかに過去のモデルよりも改善されているとすぐに判断できる。

パッドも乗車姿勢に合わせて立体的な形をしている。パッドの位置も絶妙でうまくお尻の坐骨に入り込んだ構造をしている。股の部分のパッドはやや絞られておりペダリングの妨げにならない。過去にテストしたモデルでは股ずれが発生してしまうことがあったが、このパッドに限っては無いと言って良いだろう。

過去のモデル(左)とPROfit(右)のスソの比較。差は一目瞭然である。

スソの裏側の構造。まるで「サメ肌」のようにジャリジャリとしている。別の表現をするならば「毛玉取り」のアノ部分に似ている。

まとめ:繊維メーカーの強み

ここまで、私が思うサンボルトジャージの不満点を述べ、現行のPROfitでどのように改善されたのかを綴った。普通ここまで忌憚なき文章を書くと嫌がれるかもしれない。しかしサンボルトはそうでないようだ。私のようないちサイクリストの意見を真摯に受け止め時間を書けて改善版を出してくる。

様々なサイクルウェアがあるが、ここまでR&D(研究開発)と身近な声から改善を繰り返してくれるメーカーはそう多くはないだろう。ただ、なぜサンボルトはこのように製品開発と改善のスピード(まるで家電メーカーのように)が備わっているのか。

その理由はサンボルト自体が台湾に拠点を持つ、大手繊維メーカーであるということだ。要するに東レのカーボン繊維を使ってフレームを作る場合、「繊維」と「製品」は別物である場合が多い。ただしサンボルトの場合は「繊維」と「製品」双方を作り出せる技術と資産がある。

例えるなら東レが自社繊維を使い東レブランドのフレームを作るようなものだが、やはり餅は餅屋だ。その繊維メーカーが餅屋(ジャージメーカー)になるまでに費やしたこの数年間は、長く険しいものだったに違いない。ただ、持ち前のバックボーンと開発スピードを元にPROfitジャージは一つの完成形に近づいたように思う。

私は今回のテストから、あるオーダージャージを作成することを決めた。いまだ情報は明かせないが5年前に感じていたサンボルトジャージの不満点は大方改良されている。この開発力と改善の速さはPROfitに留まらず今後もさらに改善されていくだろう。

なお気になる価格だがJプロツアー選手が使うトップグレードモデルのPROfitのジャージが9200円、ビブパンツが9800円だ。聞く所によると繊維メーカーの強みで「適正価格」なのだという。アパレルの価格は本当に値段があって無いようなものだ。この点はサンボルト社の真摯な価格設定と言える。

大阪を拠点にオーダージャージ専業メーカーとして地道な改善と開発を繰り返すサンボルトは、今後も改善を繰り返し新たなジャージを生み出していくだろう。ユーザーの声をすぐさま製品にフィードバックできる大阪の企業の開発力は侮れない。

なおサンボルトFacebookページでは今年のツールドオキナワのジャージなど様々な情報などが載せられている。ホームページよりもこちらの方が情報を得やすいだろう。