テクニックは問題解決能力と置き換えられる

シングルスピードなんて、どう考えても拷問だ。ギアが11枚もついたロードバイクからしてみたら、そんな考えがよぎるのも理解できる。しかし、私は室内トレーニングを続ける時はずっとピスト車に乗っている。

ピストバイクは極限まで機材を減らし、ブレーキもない。付いているのは、ハンドルとホイール、クランク、ギアだ。本当にシンプルが故に恐ろしいほど美しい。私は49×14を付けて練習している。ピストが面白いのは回転に寄与するすべての構造が一体化されていることだ。

クランクを逆回転すれば後ろに進めるし(実際は無理で転ぶ)バックを踏めば減速する。ここまで回転の構造を簡略化すると見えてくることがある。まず、自転車は地球上で一番効率良よい乗り物だ。しかし、人間が自転車をすすめるために行っている運動は実に無駄だ。

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テクニックを生む構造

なぜなら、自転車はホイールが回ることによって進むが、ホイール→ギア→クランクという回転の構造を動かすための動力は、縦方向にしか動かせない人間の脚なのである。人間の足は車のエンジンのピストンのように縦に動くことよりクランクを回転させる。ロータリーエンジンのように、回転を回転に変えられればよいが、それは人の構造上無理だ。

ピストに乗ると「すべての回転が一体」となるような不思議な感覚に陥る。じつはこの感覚と、先日のスーパーマッドコンディションの桂川の泥のトラクションのかけ方が非常に似ていた。踏み過ぎるとスタックするし、かといって軽いギアでも進まない。

ではどうしたかといえば、ピストでローラーに乗ってるイメージで走った。三本ローラーの無負荷状態で力強く踏み込むと後輪がズルっと滑る。あの独特の閾値ギリギリの踏み込みをかけ続ける。このとき、上死点だけに力をかけるわけでもなく、ペダリングにムラがでないように「力をかけ続ける」

そうすると絶妙なトラクションがかかり、するする進める(個人比)。ただ、シクロクロスの実走のほうがやはり難易度が高くて、泥の質と、水の含み具合、泥の深さという条件から、最適な最適解(スタックしないペダリング負荷)を探すのが楽しかった。

ハマれば進むが、失敗すれば遅れを取る。テクニックとは条件を的確に把握し、最適な答えを出す「問題解決能力」なのだと感じる。それは、シクロクロスに限らず戦略が物を言うロードレースにもしかりだ。だから、自転車はやめられない。とっさの状況判断で自らが選択したラインは正解とは限らない。

そういや一つシクロクロスが実生活に役に立ったことがあった。朝の出勤時に、駅の人混みの中をどのようなラインで改札までたどり着くか、とっさの状況判断で最適ラインを見つけるのはまさにシクロクロスの思考に近い。改札口まで近づく前に、順番待ちが少ない改札を見分け、通過する。

もしかしたら遠くの改札に行くほうが早いか、いやスムーズに進んでいるがお年寄りが自動改札機で戸惑っているためにロスか、、、と朝の退屈な通勤ラッシュすら戦略が物を言う。シクロクロスで養ったとっさの状況判断の積み重ねは、普段の生活を改善してしまう実践的なトレーニングなのかもしれない。

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