2018 S-WORKS TARMAC SL6 インプレッション 実重量と進化に迫る

自転車雑誌や業界関係者を除けば、一般ユーザーとして初のインプレッションになるであろう新型S-WORKS Tarmac SL6に関する記事を、これから書き記そうと思う。偶然にもいち早く新型S-WORKS Tarmac SL6を入手できたので早速解剖し、実重量から作り込みまで全てを探っていきたい。

新型TARMACは、大々的に世界同時ローンチされたことは記憶に新しい。新型Tarmacを実際に見られる機会は一般・プレス向けにはあったものの、ユーザー側が注目している細かな部品の重量や、フレームの細部に至る構造まではいまだ明らかにされていない。そこで今回は、新型S-WORKS Tarmac SL6の実機を用いて詳報をお伝えする。

S-WORKSのTARMACといえば、私自身もSL3とSL4を乗り継いでおり、非常に馴染み深いフレームだ。所有していたSL3は当時のSAXOBANKカラーが施されたモデルで、スレッド式BBを採用していた。そして、とても硬いフレームだったことを覚えている。その頃のSAXOBANKといえば、ファビアン・カンチェラーラやシュレック兄弟といったスター選手が在籍していた。その選手たちがターマックを使用していたから、当時は話題のモデルだったように記憶している。

次に私が乗ったのはTARMAC SL4だった。たまたま所有していたフレームが今季(2017年)で引退を表明しているアルベルト・コンタドールのシグネチャーモデルで、直筆のサイン入りの写真と、限定モデルナンバーが刻まれた貴重なモデルだった。ただSL4は、SL3からより剛性を上げたことで、必ずしも使いやすいフレームとはお世辞にも言えなかった。

TARMACのモデルチェンジは3~4年の周期で行われている。前作SL5(当時はモデルナンバー無しのNEW TARMAC)で大きなトピックだったのは、今までの「重量剛性比」からの脱却という設計方針の転換だった。よりサイクリストが扱いやすい剛性と、むやみやたらな高剛性化をせず、サイズ毎に剛性の味付けを調整したのだ。

あのSL5のリリースから3年が経過した。そして、今回の新型TARMAC SL6である。SL6に至るまでには、数々の名選手が使用し数々の勝利を収めてきた。そのTARMACがフルモデルチェンジしたとあれば、サイクリストが注目しないわけがない。TARMACが6世代目に進化し、いったい何が変わったのか。その全容をこれから明らかにしていこう。

スポンサーリンク

「重量剛性比」が正義の時代から・・・

TARMAC SL4までのフレーム開発は「いかに軽く、いかに硬くできるか」という設計思想に重きが置かれていた。当時はその1点が最も注目され、開発競争が盛んに行われた時代だった。この潮流に乗っていたのはスペシャライズドだけではなく、SL4がリリースされた時代のあらゆるメーカーが「重量剛性比」というキーワードを掲げていた。

その最たる例は、CannondaleのSUPER SIX EVOだった。

メーカーは軽く、硬いフレームに仕上げることに躍起になった。そしてBBまわりやヘッド周りの剛性を「前年比○○%アップ!」なんてキャッチーなカタログ表記が目立ち始めたのもこの時期だ。各社はユーザーを置き去りにした高剛性化競争にあけくれ、前年比アップ、前年比アップ、前年比アップ!、、、と毎年毎年同じ高剛性競争を繰り返していた。

昨今の2018年モデル発表を見渡しても、「誰得な高剛性化」をうたうフレームメーカーは後を絶たない。メーカーは「進化」を示すために、「前年比○○%アップ!」というわかりやすい表現と手法を使い続けてきた。無知なユーザーでもわかりやすいウリ文句として、2018年の現在も今だにユーザーを置き去りにした「前年比○○%高剛性化!」に頼り続けている(もはや笑うしかない)。ただ本当にそれらは、「ユーザーのための進化」なのだろうか。

後に引けなくなったメーカーの高剛性化の流れに対して、スペシャライズドはフレーム毎に剛性を最適化する開発方針に切り替えた。それがSL5だった。当時「画期的」と言われたフレーム毎に剛性を最適化する開発方針は注目を集めた。しかしTIMEというフレームを知る人達は「TIMEは2004年のVX SPECIAL PROで既にフレーム毎に剛性を調整している」と、今更か?となじったものだ。

新型Tarmacインプレッションもはやターマックではない
ついに新型Tarmacに試乗することが出来た。幸運にも好条件で試乗し、SL4との違いを感じられることができた。そこで得られたSL4ユーザー...

しかし、元々フレームメーカーとして別格の位置に到達していたTIMEのようなメーカーではなく、大手のメーカーが別の流れに舵を切るという点に意味がある。SL4までのTARMACはサイズによって剛性が全く異なっていた。小さなサイズはガチガチに硬く、大きなサイズはそれなりに仕上がっていた。

言うなれば、当時の雑誌のインプレッションでTARMAC SL4の56サイズの評価を信じて、49サイズを購入したユーザーは、雑誌のインプレッションと実際の乗り味に大きな剥離を感じたとしても不思議ではない。むしろサイズによって剛性が異なるのだから、間違いではないわけだ。そのような大きな剛性の剥離は、ユーザーにとって望ましいことではないし、重量剛性比をただ闇雲に突き進んだ当時の各メーカーの功罪と言える。

メーカーの「進化したい都合」と、操られる側の無知なユーザー達が入り交じる市場の情勢の中で、スペシャライズドはこれらの問題を解消するSL5を送り出した。ユーザーにとって本当に必要十分(過剰ではない)剛性を備えたフレームを作ってきたのだ。SL4に感じていた鉄板を踏みつけるような感覚はSL5では消え失せ、僅かながらもユーザーの力を受け止めるようなマイルドなフレームへと進化した。

そして、今回のSL6である。

S-WORKS TARMAC 2018

今回のSL6は「エアロダイナミクスの向上」や「軽量化」というわかりやすいアップデートの他にも、現行の機材動向に沿うような大幅なアップデートが施されている。目新しいアップデートを確認する前に、まずはエアロダイナミクスや軽量化といった基本部分について見ていく。

SL6のリーク画像が出回った時に、真っ先に目が行ったのが「リアの三角」だ。通常はトップチューブから流れるようにリア三角に合流するフレーム構造がほとんどだが、SL6のリア三角形状はTTバイクのSHIVやエアロフレームのVENGEでも採用されている構造を踏襲した。

このリア三角の部分は、エアロダイナミクスの観点から見ても有利であると予想できる。通常よりもシートステイが短くなることによって、どのような乗り味の変化をもたらすかは実際の使用で確認する。TARMACはエアロロードではないが、ダウンチューブはFOILと似たカムテール形状を採用していた(実物を見るまで気づかなかった)。

このカムテール形状は、TREK MADONEやPINARELLO DOGMA、SCOTT FOILといったフレームにも採用されている。エアロダイナミクスを追求していくと、涙型(飛行機の翼のようなD型の断面形状)に行き着くようだ。カムテール形状は涙型の細くなる後ろ部分を切り落とした形状をイメージするとわかりやすい。

カムテール形状は、涙型の形状と比べてエアロダイナミクスの差はほとんど無い事が実験により明らかになっている。なお、「カム」は発案者のウニベルト・カムさんからきている。SL5時代のTARMACはどちらかと言えば、特徴のないただの丸パイプのような形状だった。

そこからエアロダイナミクスを追求し、SL6ではカムテール形状を採用した。その結果、他社の競合モデルよりも40kmTTで45秒短縮できるという結果を、スペシャライズドは自社の風洞実験から得ている。おそらくこの競合モデルはTREKのエモンダだと思われるが、やはり「~よりも○%優れる」という文句はこの先の開発競争において、切っても切れない表現の1つなのだろう。

実際にフレームを見渡して最も大きく変更された点といえば、ダイレクトマウントブレーキの採用だ。ダイレクトマウントブレーキをざっくり言ってしまえば、今まで1本だったボルト固定方式から、2本の固定方式を採用しているにすぎない。

直接フレームに固定するという点に違いはないが、1つのメリットとしてブレーキがフォークの一部かのように設計することもできる(TREK MADONEのように)。フォークやフレームと一体化した形状を採用すれば空力性能向上も見込める

ただし、ダイレクトマウントブレーキにはデメリットも存在している。2点でブレーキを支え、リムを挟み込むことでブレーキをかける。その際に外に広がろうとする力をフォークやシートステーが受け止める必要が出てくる。

この広がりを抑えられるか否かで、ブレーキの効きが全く変わってしまう。この特有の問題を解決するソリューションとして、SL6にはダイレクトマウントブレーキ用のカーボン製のブレーキブースターが備わっている。

元々このブレーキブースター(実重量4.2g)は、パリルーベで先行投入していたギミックだ。使用されていたフレームはTARMACではなくルーベだったが、過酷な状況を走り抜ける必要があるパリ・ルーベの為にプロ選手のみに供給されていたものと同じシステムである。

SL6はこのように細部に至るまで細かな配慮が施されていた。細かな部分の設計以外にも、大きなアップデートにも目を向けてみたい。1つはBB周辺のフレーム形状だ。

BBの規格はOSBBを引き続き採用(少しばかり残念ではあったものの)している。OSBBはSL4、SL5と今回も継続しており、期待していたスレッド式の採用は実現されなかった。当ブログで海外リーク情報を掲載したときも、その張り出したBB形状から「まさかスレッド式では?」と期待したものだが、実際にはOSBBのままである。

スレッド式BBへの回帰は、PINARELLOが最も積極的だ。圧入式のフレームのデメリットは「音鳴」にある。踏むとカチカチと音が鳴ってしまう事案が、周りのサイクリストの間でも結構な報告例として上がっている。多くの原因は施工するメカニックの腕にも原因があるようだが、私はプラクシスワークスのBBを好んで選択しており今回のSL6にも採用した。

プラクシスワークスのBBは、スペシャライズドのマウンテンバイクS-WORKS EPICにも標準装備されていたこともあり信頼性も高い。私はOSBBを使用して一度も音鳴を経験したことがない。任せているメカニックの腕と、プラクシスワークスのBBの良さが引き出された結果だろう。このような実績もあるため、同梱しているセラミックスピードのBBの使用は見送った。

コーヒーを飲みながら記事を書きつつ、ぼんやりとパーツが組み付けられる前のフレームを眺めていると、もう一つ気づくことがある。「BBが大口径化した!?」と見間違えるほど、前作と同じはずのBBの穴がとても大きく見える。理由はBB周りの贅肉を落としたためだ。

前作までのモデルは、BB周りの剛性を上げるためにBB周辺を肉厚にしていた。例えばTREK MADONEのBB86は、クランクアームとフレームの隙間がまったく無いほどBB周辺が張り出している。それとは対象的にSL6は、ふたまわり程BBまわりの形状が削ぎ落とされている。結果的に、非常にコンパクトな印象を受けた。

SL6ではカーボンの工法がFact 12rに刷新された為、ある程度のフレーム剛性を維持しつつ全体的にコンパクトに見えるフレームへと進化した。実物は見た目以上に華奢な印象を受けた。SL5時代までのやや流線型で、丸みを帯びたフォルムとは一線を画しており、全体的にソリッド感が強い印象である。

SL6は見た目だけでも軽量化がなされた事がはっきりと分かるフレームだが、実際の重量はどれほどなのだろうか。次章からは実重量を測定して検証していきたい。

実重量

重量面は相当な軽量化を果たしている。56cmサイズにおいてマイナス200gの軽量化を達成し、メーカー公表によると733g(Ultralightの場合)という重量に仕上がっている。この軽量化を実現した背景には、刷新されたカーボンテクノロジーFact 12rの存在がある。この技術を用いて、フレーム全体のシェイプアップと軽量化を実現した。

では気になる実重量をすっぱ抜いていこう。なおサイズは52サイズでカラーは白である。なお白色は塗装の関係上他の色に比べて僅かながら重量が増す傾向がある。

フレーム 919g

52サイズの赤白カラーのフレーム単体重量は919gだった。過剰なフレーム軽量化競争の勝負には名を連ねることはなさそうだが、十分に軽く仕上がっている。塗装分を考えると、上位機種のモデルとの重量差はおよそ+186gである。それを考えると186gにあと数万円払えるかは悩むところだ・・・。
(´-`).。oO(6.8kgに合わせるために鉛入れるのもな・・・アレや・・・。)

フォーク 352.5g

フォークはコラムカット前の重量だ。TIMEのフォークと比べても十分に軽い。ダイレクトマウントブレーキを採用したことによりある程度の重量増は避けられないと思っていたが、剛性面を考えても十分軽量な部類に入る。

シートポスト 167.5g

シートポストもカット前の重量だ。金具(カーボンレール用とアルミレール用が同梱)も込なので比較的軽い。カットすればあと数十グラムは軽量化できる。

セラミックスピードベアリング 42.2g

デフォルトでセラミックスピード社のBB用ベアリングが同梱されている。使うか使わないかは判断の余地があるが、過去の事例を勘案してもプラクシスワークスかウィッシュボーンをおすすめしたい。どちらか選ぶならプラクシスワークスのセラミック。

なお、専用のBBスリーブは3.5gだった。

ヘッドベアリング 40.9g

ヘッド用のベアリングはタンゲ製だった。こちらは上と下でサイズが異る。

ヘッドパーツ類

ヘッドパーツ類はいくつかあるが、コラムスペーサーらしきものは5.6gだった。

プレッシャーアンカーは27.2gだった。

ヘッドパーツの背の高い方はカーボン製で16.8gだった。

薄い方は5.9gだった。通常はこちらを使用する機会が多いのだろう。

フレームセット実重量:1568.5g

白の52サイズのフレームセットトータル実重量(フォーク、フレーム、シートポスト、ベアリング類、ブースター全て込み)は1568.5gだった。白は、塗装を考えると重いのかもしれない。なお黒の49サイズも注文しているので、届き次第実重量を確認しこちらの記事内で公開する。

サイズ

今回SL6のリリースで最も悩まされるのはサイズの問題だ。今まではトップチューブ長やシートチューブ長を見てサイズを決定していたが、全くあてにならない人も出てくる。今回のSL6では、スタックとリーチを参考にしてサイズ選びを行うようだ。

と、、、簡単に「スタックとリーチでサイズ選んでください」と簡単にメーカーや関係者達は言うが、現実問題非常に難しい。「それならRETULという良いフィッティングサービスがありますよ!フレームとセットなら割引します!」なんてショップからセット販売を売り込んでこられても、万人には追加で何万円も払ってフィッティングサービスを受けられない人も多い。

私の場合は、自分のフレームのスタックとリーチを全て記録していて、さらにステム長、ハンドルリーチを全てデータベース化している。そのため今回のSL6のサイズ選びにも困らなかったのだが、現実問題「スタックとリーチ」を全くわからない人達はどうしたら良いのだろうか。

そんなサイズ選び難民に対して、ぜひ知っておいてほしいのはアンカーのフレームジオメトリーの表である。アンカーのフレームのジオメトリーは、あの辛口で知られる「のむラボ」のノムさん曰く「アンカーは小さいサイズでも、最も良く考えられているフレームジオメトリー」と言わしめている。なので参考になる。

参考:アンカーRS9のジオメトリー表 スタックとリーチから適応する大体の身長、股下が把握できる。

アンカーのフレームジオメトリーには、しっかりとスタックとリーチが記載されている。そして、股下に対するフレームサイズの表が別紙で明文化されている。自分に見合うスタックとリーチがわからずとも、まずはアンカーのフレームサイズ早見表でおおよそのサイズ感を知ってから、SL6のサイズ選びの参考にしても良いだろう。

SL6のサイズ選びで間違ってはいけないのは、トップチューブ長を参考にしてサイズ選びをしてしまうことだ。49サイズに至っては、TOP508mm(リーチ:375mm)である。おそらく旧サイズであれば518mm程のサイズだろう。従ってTOPで選ばずに、しっかりとスタックとリーチをにらめっこしてほしい。

おそらく170cmで股下76.5cmほどであれば新型は49サイズだろう。その辺を基準にして考えて良い。なお私は49サイズを選択した。この記事に掲載中のフレームは52なのでおわかりだと思うが、私のフレームではない。身長172cm程の選手が乗る予定のフレームを今回先にご行為でお借りしたのである。

自分用の黒49のノーマル仕様を手に入れ次第、重量を計測してみたい。

インプレッション:8下旬予定

組み上がり次第、加筆追加して掲載する予定です。

まとめ:8下旬予定

まとめも組み上がり次第、加筆追加して掲載する予定でーす。実際に硬そうなイメージを受けるが、様々な記事を見る限りそうでもないらしい。実際の組み上げ後はROVALのホイールと組みあせて使用するため、メーカーの意図を十分に感じられることを期待したい。

関連記事

ROVAL CLX50と64と32も全部インプレ! 究極の回転体に迫るカーボンクリンチャー
昨今のレースシーンにおいて、ディープリムホイールを使用することはマストだ。レースが高速になればなるほど発揮されるエアロダイナミクスの性能...
2018 SPECIALIZED S-WORKS TARMAC SL6がついに全面改良で投入!
新型S-WORKS TARMAC SL6の実機インプレッションを別ページ「2018 S-WORKS TARMAC SL6 インプレッショ...
新型Tarmacインプレッションもはやターマックではない
ついに新型Tarmacに試乗することが出来た。幸運にも好条件で試乗し、SL4との違いを感じられることができた。そこで得られたSL4ユーザー...