サイクルモードにインフルエンサーは必要か否かについてアンケートを行ったところ33万インプレッション、7000名近い方から回答を頂いた。Xのトレンドにもランクインし、多方面から様々な意見が寄せられることになった。
サイクルモードに自転車系インフルエンサーは….
— IT技術者ロードバイク (@FJT_TKS) April 21, 2025
結果は、『必要』が49%、『不要』が51%だった。
当初の予想では、『不要』が優勢だった。しかし、票が増していくにつれてその差はどんどん縮まっていった。2日の投票期間の終盤では、必要が50%、不要が50%と綺麗に分断される結果になった。最終的には7000名を超える方の票が投じられた。
インフルエンサーがサイクルモードに必要か不要の議論に関しては、どの切り口によって答えが変わる。インフルエンサーを必要としている、目当てとしている方が確実に居るという点では、インフルエンサーは今回のサイクルモードにおいて、必要とされていた、ニーズがあったと言えるだろう。
一方で、不要派も多数居た事も確かだ。
接戦であったが、半分以上が不要派である。そして、必要派では見られなかった傾向として、一部の不要派の方は過激な発言内容や、個人を中傷するような表現があった。不要の原因が、怒りや、恨みのような感情によって生み出されていたことは、興味深い。
様々な意見があるにせよ、インフルエンサーは玉石混交、程度の大小はあるが、いまや情報発信には欠かせない存在になりつつある。そこで今回は、インフルエンサーの存在意義や、影響、販売への影響、問題点など、多角的に検証しまとめた。
インフルエンサーの存在とその役割
インフルエンサーは、主にSNS上で多くのフォロワーを持ち、特定の分野(今回であれば自転車分野など)で影響力を持つ人物をさす。サイクルモードのような自転車展示会では、サイクリング系、機材レビュワー系、プロサイクリストなどに関連するインフルエンサーが主に起用される事が多い。
彼らは、自身のSNSアカウントを通じてイベントの告知、製品のレビュー、会場レポートなどを行い、フォロワーに対してダイレクトな情報発信を行う。これにより、サイクルモードなどのイベントの認知度向上、特定ブランドの製品プロモーションが期待される。
インフルエンサーは、特に若年層やSNSを情報収集の主要手段とする若い層に対して強い訴求力を持ち、従来の慣例的な広告ではリーチしにくいターゲット層にアプローチできる点で価値がある。
これまでの広告が、未踏だった領域にリーチするという意味では、インフルエンサーたちは非常に重宝され、必要な存在と言えるだろう。
集客への影響
インフルエンサーの起用は、サイクルモードの集客に一定の効果をもたらすと考えられる。以下に、その影響でポジティブな観点を整理した。
- 認知度向上:インフルエンサーの投稿やライブ配信により、イベントの存在が広く拡散される。特に、XやInstagramなどで万単位のフォロワー数が多いトップインフルエンサーや、特定の自転車コミュニティで信頼されるマイクロインフルエンサーは、ターゲット層に直接リーチできる。
- ターゲティングが高精度:「自転車に関心を持つ」という、ターゲットが明確化されたフォロワー層を持つインフルエンサーを選定することで、当該イベントに興味を持ちそうな来場者を効率的に集められる。たとえば、自転車機材や新商品のレビューに特化したインフルエンサーは、サイクリングの愛好者を惹きつける可能性が高い。
- エンゲージメントの向上:インフルエンサーの投稿は広告感が薄く(問題にもなっているが)、フォロワーとの信頼関係を基盤としているため、イベントへの興味や参加意欲を高めやすい。実際、インフルエンサーマーケティングはエンゲージメント率が高いとされており、イベントへの動員に寄与する可能性がある。
一方で、問題やデメリットも生じる。以下に、インフルエンサーの影響でネガティブな観点を整理した。
- 来場者の質:インフルエンサーを目当てに来場する層は、自転車にそれほど深い興味を持たないいわゆる「ライト層」である可能性があり、イベントの本来の目的(自転車文化の普及や製品販売)に必ずしも貢献しない。一方で、この層が全ての間口であるため、長期的に見れば、自転車文化の普及や製品販売につながる。ただし、長期的に居続ける労力を要し、即効性はない。
- 地域的制約:サイクルモードは大阪や東京など、大都市の特定の会場で開催されるため、インフルエンサーのフォロワーが遠方に住む場合、実際に来場につながらない可能性がある。
販売への影響
インフルエンサーの起用が、サイクルモード後の製品販売に与える影響は以下のように考えられる。
- 購買意欲の促進:インフルエンサーが製品を実際に使用したレビューや体験談を発信することで、フォロワーの信頼を得て購買意欲を刺激する。特に、公式サイトへのリンクやショッピング機能を活用した投稿は、直接的な販売促進につながる。
- ブランドイメージの強化:インフルエンサーとのコラボレーションや商品の紹介は、ブランドの魅力を高め、長期的な顧客ロイヤルティの向上に寄与する。
- ライブコマース:サイクルモードではあまり見られなかったが、インフルエンサーが会場からライブ配信を行い、リアルタイムで製品を紹介するライブ配信は、即時性の高い販売促進策として注目されている。サイクルモードでの製品紹介や、試乗体験をライブで共有することで、購買意欲を高められる。遠方で、サイクルモードに来場できない多くの地方ユーザーにリーチする大きな可能性がある。
インフルエンサーの販売への影響に関してはネガティブな面もある。
- 費用対効果の不確実性:インフルエンサーの起用には報酬や製品提供のコストがかかる。販売実績への直接的な影響は、インフルエンサーの選定やフォロワーの属性に左右される。適切なインフルエンサーを選ばないと、コストに見合った成果が得られない。
- 短期的な効果に偏りがち:インフルエンサーの投稿は一時的な話題性を生むが、継続的な販売促進にはつながらない場合が多い。メーカーは公式アカウントの運用や他のマーケティング施策との連携が必要になってくる。
問題点
インフルエンサーの起用には、以下のような問題点が存在している。
- ステルスマーケティング(ステマ)のリスク:広告であることを明示せずに製品を宣伝すると、フォロワーからの信頼を失い、ブランドやイベントの評判を損なう可能性がある。日本の景表法でも、ステマは問題視されており、適切なPR表記が求められている。
- 炎上のリスク:インフルエンサーの不適切な発言や行動がSNS上で拡散されると、イベントや出展ブランドに悪影響を及ぼす。特に、自転車に詳しくないインフルエンサーが不正確な情報を発信した場合、コミュニティからの反発を招く可能性がある。
- 選定の難しさ:自転車業界に精通し、ブランドやイベントの価値観に合致するインフルエンサーの選定は容易ではない。『フォロワー数だけ』で選ぶと、親和性が低く効果が薄れるリスクがある。
- コミュニティの反発:熱心な自転車愛好者(ガチ勢)は、ライト層を惹きつけるインフルエンサーの存在を「不要」と感じる場合がある。これにより、イベントの硬派なイメージが薄れ、従来の来場者層の満足度が低下する可能性がある。
まとめ:サイクルモードにインフルエンサーは必要か
サイクルモードにおけるインフルエンサーの必要性は、イベントの目的やターゲット層によって異なる。結論としては、インフルエンサーは必要になる可能性が高い。その条件を述べる。
集客力の強化や若年層・ライト層へのリーチ、販売促進の観点から、インフルエンサーの起用は有効になる。特に、SNSの普及に伴い、自転車に興味を持ち始めた新規層を取り込むためには、インフルエンサーの影響力が不可欠な存在になっている。
主催者や出展企業が彼らのビジネスメリットを重視する限り、インフルエンサーの存在はイベントの賑わいと話題性に貢献する。ただし、条件付きの活用が重要であり、インフルエンサーの効果を最大化するには、次の点に留意する必要がある。
- 適切な選定:自転車業界に精通し、ターゲット層と親和性の高いインフルエンサーを選定する。マイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーは、コストパフォーマンスとエンゲージメント率の観点で有効になる。
- 透明性の確保:ステマを避けるため、PR表記を徹底し、フォロワーとの信頼を維持する。
- コンテンツの工夫:インフルエンサーの独自性を活かし、硬派(ガチ勢)な自転車愛好者も納得するような実用的で信頼性の高いコンテンツ(例:試乗レビュー、技術解説)を発信する。
- 他の施策との連携:インフルエンサーの投稿を起点に、公式アカウントでの情報発信やECサイトへの誘導を強化し、継続的な集客・販売につなげる。
- バランスの考慮:インフルエンサーの活用はライト層の取り込みに有効だが、従来の自転車愛好者層のニーズも無視できない。マニアックな展示や技術セミナーなど、いわゆるガチ勢向けのコンテンツを充実させることで、両者の満足度の両立を目指す。
最終結論としては、 サイクルモードにおけるインフルエンサーは、集客力の向上、販売促進、イベントの話題性確保に貢献するため「必要」といえる。
ただし、インフルエンサーの選定ミスや不適切なPRが、炎上やコミュニティの反発を招くリスクを考慮し、自転車業界に精通したインフルエンサーを慎重に選び、透明性のあるPRや、ガチ勢や古参向けのコンテンツを組み合わせることが成功の鍵といえる。
インフルエンサーの活用を、他のマーケティング施策と連携させ、ライト層とガチ勢の両方を満足させるバランスを取っていくことで、サイクルモードの価値は最大化できる余地がまだ十分に残されている。
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