Galfer(ガルファー)のディスクローターは触れたら利く。
ブレーキパッドがディスクローターに接触してから、ブレーキが利くまでの立ち上りがとにかく早い。ロードバイク用とMTB用をテストしたが、どちらもブレーキの利き立ち上がりが早く、レバーを引く初動の段階で小さな力でも効き始めた。
ガルファーの名前を初めて聞いた方は多いかもしれない。同社は1952年にスペインで創業し、元々はオートバイクのブレーキパーツを製造していた。
MAGURAが初めて自転車用のディスクブレーキをリリースしたときに、ディスクローターやブレーキパッドを作っていたのはガルファーだ。約20年前からはMAGURAのOEMを行っている。黎明期からディスクブレーキシステムを作り続けている老舗ブランドだ。
実際に使用すると、長らく市場にい続けられた理由や、大手がOEMを任せる理由が見えてきた。今回は、ガルファーのディスクウェーブローターをロードとMTBで試し、使用感などを多角的にレビューした。
ガルファーディスクウェーブローター
ガルファーのディスクローターは、ブレーキを利かせるために様々な工夫が盛り込まれている。特徴的なのは、高炭素ステンレス鋼の無垢(むく)板からレーザーカットでディスクローターが切り出されていることだ。
一般的なディスクローターは、プレス機械で押し出して加工される場合が多い。圧力が加わるため僅かにたわむ場合がある。レーザーは加工コストや、大量生産に向いていないが精度と品質が高く仕上がるのが特徴だ。
そして、使用するステンレス鋼に含まれる炭素の割合を高くすることで、硬度が高い特徴がある。ステンレス鋼の炭素含有量は一般的に1.2%以下だが、1.2%ギリギリまで攻めた素材で構成されている。
全てのディスクローターに防食処理が施されている。ローター自体が大変硬いため、ひずみに対して強くなっている。
ひずみにくさと、騒音の低さ、ブレーキのタッチが「ガチッ」と食いつくガルファーの特徴は、硬度や材質にあるのだ。
そして、市場のほとんどのディスクローターよりも軽量だ。そこはスペインメーカーらしい作りと言えるだろう。
- 140mm:76g
- 160mm:98g
ガルファーのディスクウェーブローターの特徴は以下だ。
- 初動から効く
- 制動力が明らかに高い
- 振動がない
- 鳴かない
- 熱で曲がりにくい
- 雨に強い
- 優れたパッドクリーニング能力
- 軽い
- 硬い
- 頑丈
- 海外との価格差が小さい
MTBでもテストしたが、最も顕著な違いは激下りでハードブレーキングしたときだった。シマノCL-RT800や、SRAMのAVIDのディスクローターはぶるぶると震えて、ブレーキを強く握る必要があったが、ガルファーのディスクローターはそれよりもレバーを引く力が小さくても良く効いた。
ロード用のディスクローターは、MTBほどハードなブレーキングを行わないが、共通していたのは初動の効きの良さだった。パッドがディスクローターにタッチした瞬間から、効きの立ち上がりが明らかに早い。
前側にシマノCL-RT800 160mmと、リアにガルファーディスクウェーブローター140mmの組み合わせで試したが、シマノはリムブレーキに近いフィーリングで、初動が滑るような効きをする。ガルファーは明らかに「ガッ」と食いつくような効き方をする。
どちらが良いのかは好みによるし、ライディングスタイルによると思う。MTBでもシマノCL-RT800とガルファーを試した。
慣れてくるとガルファーほうが一瞬であて効きさせ、その後解放する操作も短時間で行えるためXCOではこちらの方が早く走れると感じた。
ガルファーのディスクローターは、初動を弱く引けばシマノのディスクローターのようにスーッと効かせることもできるし、立ち上がりのクセをつかんでくれば一瞬で「パンッ」と効かすこともできる。ブレーキングでもタイムに差が出るMTBにおいて、かなり使えるディスクローターだと思った。
ロード用途でも似たような使い方ができるが、緩やかなブレーキングの方が多くなる。六甲山で30分以上のダウンヒルでテストしたが、はっきりと書いておきたいのは、改良版シマノCL-RT800は熱で変形しパッドに接触し「シャンシャン音」が何度も鳴った。
先日の菖蒲谷で行われたXCOのレース中もそうだった。一気に減速してから立ち上がるとCL-RT800は鳴った。ガルファーのディスクローターに変えて再度同じラインをトレースしても一切音鳴りがしなかった。このあたりは、ディスクローターの方向性が違うからだと思う。
この違いの理由は、ディスクローターの構造が影響している可能性がある。シマノのディスクローターは複数の異なる素材をサンドイッチすることで作られている。放熱性が高い素材をローターの中央に配置して、ブレーキング時の冷却効果を高めている。
しかし、異なる素材であるがゆえ、温度が上昇したときの膨張率や放熱性、温度の上がり、下がり具合に違いが生じる。冷却効率も異なるため長時間のブレーキングで高温になると、シマノのディスクローターはひずみやすい傾向にある。
ガルファーのディスクローターは高炭素ステンレス鋼の無垢(むく)板からレーザーカットで切り出して作られている。金属の配合によりブレーキ時の熱変形も少ないのだろう。
テストがてら、下りはフロントにシマノCL-RT800の160mmと、リアにガルファーの140mmを取り付けたが、ローター径が異なっているのに初動のブレーキの利きが同等だった。それでいて、重量は76gしかない。放熱フィンや多層構造ではないため軽量だ。
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今回は試せなかったが、ガルファーのパッドを使用すると更に性能が向上するという。というのも、Galferのローターにレジンパッドを使うと、パッドがローターの硬さに負けてしまい本来のパフォーマンスを発揮できないという。
レジンパッドでもよく効いたのだが、ガルファーのセミメタルパッドに交換して本来の性能でテストを行ってみたいところだ。
まとめ:これぞ、ディスクブレーキ
ガルファーのディスクローターを使うと、「これぞディスクブレーキ」だと感じた。初動からよく効く。初動は小さな力でも速度調整がしやすい特徴がある。ダウンヒルで高温になっても、変形せず、ブレが生じない。音鳴りもテスト中一度もなかった。
ブレーキフィーリングはガルファー特有だ。シマノのフィーリングに慣れた方は、一気に効きすぎ、硬いディスクローターだと感じるかもしれない。
シマノのディスクブレーキシステムは、リムブレーキの延長線上のような効き方をする。シマノは、シマノのフィーリングで、これはこれで良い。しかし、強くて硬い効きを求めるのならばガルファーのディスクローターの方が好みに感じるだろう。
また、76gという軽さも魅力だ。軽量なディスクローターは効きが悪いがガルファーは違う。軽さを求めたわけではなく、高いブレーキ性能をベースに、高品質の材料とレーザーカットで必要なだけ軽くした。その結果が76gというだけだ。
重量だけでディスクローターを選んでいる人も、ガルファーのディスクローターを選んでみてほしい。特にヒルクライマーもガルファーを使ってみてほしい。制動の本質からブレず、それでいて高品質で軽い。ディスクブレーキシステムを黎明期から、大手に変わって作り続けている老舗メーカーが故の出来だ。
私はロードでもMTBでもガルファーのフィーリングが気に入っている。シクロクロスもガルファーにするつもりだ。ブレーキングがタイムに直結する競技ならなおさらである。
ストックしているシマノのディスクローターの予備がなくなり次第、ガルファーに移行するつもりだ。軽さ、ストッピングパワー、硬さ、熱耐性など、全てのバランスが高次元で融合したまれなディスクローターだ。

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