SOUNDPEATS H3レビュー|強力な-55dBノイズキャンセリングと高音質

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SOUNDPEATS H3は、-55dbのノイズキャンセリングを実現した完全ワイヤレスイヤホンである。これまでSOUNDPEATSのイヤホンをいつくか使ってきたが、音質は群を抜いて良い。そしてH3のノイズキャンセリングは周りの音がほぼ聞こえなくなる。

子供に呼ばれても聞こえないほどだった・・・。

H3は、先進的なハイブリッドドライバー構成とハイレゾコーデック対応を特徴とし、オーディオ愛好家をターゲットに開発された。

形状も独特でプロが使用するインイヤーモニター(IEM)から着想を得た人間工学的なデザインを採用している。この形状は、耳にしっかりと収まり、高い遮音性と安定した装着感を提供することを目的としている。

今回のレビューはSOUNDPEATS H3を実際に試し、ノイズキャンセリングや使い勝手など多角的に検証した。

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SOUNDPEATS H3の仕様

SOUNDPEATS H3の性能を理解するためには、まずその根幹をなす技術仕様を客観的に把握する必要がある。ドライバー構成から対応コーデック、筐体デザインに至るまで、各要素がどのように連携し、製品全体の特性を形成しているのか。

ドライバー構成と音響設計の核心

H3は、ハイブリッド方式のトリプルドライバー構成を採用している。この構成は一般的に、低音域を担当するダイナミックドライバーと、中高音域を担当するバランスドアーマチュアドライバーを組み合わせる。

この設計思想は、各ドライバーの長所を活かし、広帯域で高解像度なサウンドを実現することを目的とする。しかし、異なる種類のドライバーを滑らかに繋ぎ合わせるクロスオーバーの調整は技術的に極めて難しい。

H3の音質に対する賛否両論の評価は、このドライバー統合の難しさを示唆している。ハードウェアの潜在能力が、工場出荷時のチューニングによって十分に引き出されていない状態である。

Snapdragon SoundとLDAC対応の詳細

本機は、LDACやSnapdragon Soundといった高音質コーデックに対応している。LDACは最大990kbpsのビットレートでデータを伝送でき、標準的なコーデックよりも遥かに多くの情報量をワイヤレスで扱うことが可能である。

この仕様は、特にAndroidユーザーや高音質を求める層を明確なターゲットとしている。ただし、この機能の価値は、イヤホン側がその高品質な信号を忠実に音へ変換できるかどうかにかかっている。

初期設定のチューニングはニュートラルな基準であるためEQ調整が必要になる。H3は高品質な信号を「受信」したあとにユーザーがEQで介入する必要があるのだ。

-55dB ANCの技術的実装

H3は、最大-55dBのノイズ低減を謳う強力なアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載する。この数値は、仕様上では市場のトップクラス製品に匹敵するものである。実際に電車内のような低周波の定常騒音に対しては、その効果を十分に発揮することが確認できている。

一方で、このANCシステムは風の音に対しても強力である。室内トレーニング中の工業用扇風機からの強い風の音を消してくれる。ANC機能が十分に働いている結果だ。

このANCは、外部マイクの物理的な配置や、風切り音と環境音を区別する処理アルゴリズムによるもので、H3のANCが強力である証拠にもなっている。

バッテリー性能と充電仕様の実測値

公式仕様ではイヤホン単体で最大7時間、ケース併用で合計37時間の再生が可能とされている。しかし、これはANCをオフにし、SBCのような標準コーデックを使用した場合の数値である。

LDACとANCを同時に有効にした実際の使用環境では、バッテリーは4時間から6時間程度で消耗する。これは、製品の主要な特徴である高音質再生とノイズキャンセリングを両立させると、再生時間が大幅に短くなることを意味する。

ユーザーは音質や静寂性と、長時間の使用を両立できず、どちらかを犠牲にする選択を迫られる。

IEMに着想を得た筐体デザインと装着性

H3の筐体は、インイヤーモニター(IEM)から着想を得た人間工学的なデザインを採用している。この形状は、耳にしっかりと収まり、高い遮音性と安定した装着感を提供することを目的としている。

快適であると評価できる一方で、筐体が比較的大型であるため、耳の小さなユーザーには合わない可能性がある。適切な装着(フィット)は極めて重要であり、完璧な密閉性が得られない場合、低音域の量感やANC性能が損なわれる。

このデザインは、万人に合う快適さよりも、理想的な条件下での性能を優先した結果である。

マイク性能と通話品質の客観的評価

通話機能にはcVc 8.0ノイズリダクション技術が採用されている。静かな室内での通話品質は明瞭で、相手の声を問題なく聞き取ることが可能である。

表1: SOUNDPEATS H3 主要技術仕様一覧
項目 仕様
ドライバー ハイブリッド構成 (10mmダイナミック + Knowles製バランスドアーマチュア)
Bluetoothバージョン 5.3
対応コーデック LDAC, aptX Adaptive, aptX, AAC, SBC
チップセット Qualcomm QCC3071 (Snapdragon Sound対応)
ノイズキャンセリング 最大-55dB (ハイブリッド方式)
再生時間 (イヤホン単体) 最大7時間 (SBC, ANCオフ時) / 約4-6時間 (LDAC, ANCオン時)
総再生時間 (ケース込み) 最大37時間
防水性能 IPX4
マイク 片側3基 (合計6基), cVc 8.0 ノイズリダクション
重量 (イヤホン片側) 約6g
その他 マルチポイント接続対応 (LDACオフ時)
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レビュー|H3が提供する音響体験

技術仕様を基に、SOUNDPEATS H3が実際の使用環境でどのような体験を提供するかを検証する。特にデフォルトの音質、イコライザー(EQ)による変化、そして実環境におけるノイズキャンセリングの効果と限界点に焦点を当てる。

ここでは、客観的なスペックが主観的な実用体験にどう結びつくのかを明らかにする。

デフォルトチューニングの音質

H3の評価において、最も意見が分かれるのが初期設定の音質である。今までのSOUNDPEATSイヤホンにおいて最も音質が良いと感じた。バランスが取れており、音楽的で自然な音色を持つ。刺々しさや耳障りな音がなく、心地よく聴ける。

その一方で、全く逆の評価も存在する。他の使用者のレビューでは「AMラジオのようだ」と酷評し、特に中高音域が「叫ぶように」聞こえ、明瞭さが全く感じられないという厳しい意見である。

この極端な評価の乖離は、単なる個人の好みの問題ではない。人間の聴覚が敏感な2kHzから5kHzの周波数帯域に、チューニング上の大きなピーク(突出)が存在することを示唆している。

この帯域への感度が高いユーザーにとっては耐え難い音となり、そうでないユーザーには「存在感がある」と認識される可能性がある。これは、意図された音作りではなく、調整次第と見るのが妥当である。

EQ調整による音質の変化と可能性

H3の真価は、イコライザー(EQ)の調整によって解放される。初期設定の音質を酷評したユーザーでさえ、専用アプリの10バンドEQを用いて特定の周波数帯域(2kHz周辺を下げ、5kHz周辺を上げる)を調整したところ、「昼と夜ほどの違い」があったと報告している。

この調整により、サウンドは「美しく」なり、サウンドステージが広がり、快適な音響体験に変化する。この事実は、H3に搭載されているハイブリッドドライバーや音響設計自体は、非常に高いポテンシャルを持っていることの証明である。

つまり、H3は完成品というより、ユーザー自身が最後の仕上げを行う「素材」としての側面が強い製品と言える。

実環境におけるノイズキャンセリングの効果

ノイズキャンセリングの効果はこれまで試したイヤホンで最も強力だ。室内で使用しても、子供の騒ぎ声が聞こえない。妻がしゃべりかけても聞こえない。音楽やゲームに没頭できる。これでは家庭崩壊の危機である。

冗談はさておき、静的な環境、例えば電車内やオフィスなどでは、H3のANC機能は公称値通り非常に強力である。「SOUNDPEATS史上最強ノイキャン」という謳い文句に偽りなく、低周波の騒音を効果的に遮断する。

この性能は、システムのアルゴリズムが予測可能で一定のノイズパターンに対して最適化されていることを示している。

しかし、その効果は使用する環境に完全に依存する。特定の条件下では最高の性能を発揮する、極めて専門化された、あるいは「脆い」システムである。汎用的なツールではなく、特定の用途に特化した道具と考えるべきである。

外音取り込み機能の明瞭度

周囲の音を取り込むアンビエントモードの品質は、機能をオンにすると「サー」というヒスノイズが目立ち、周囲の音を無差別に増幅するため、元々騒がしい場所ではかえってうるさく感じられる。

良質な外音取り込み機能は、人の声のような重要な音を分離し、不要な背景雑音を抑制する高度な処理を必要とする。H3のシステムは、単に外部マイクの音をそのまま流すだけの単純な仕組みである可能性が高い。結果として、この機能の実用性は低く、状況認識や短い会話のために使うには不快感が伴う。

接続安定性とアプリケーションの操作性

専用アプリ「PeatsAudio」の動作は不安定さが指摘されている。例えば、アプリ上でLDACを有効にしても、スマートフォンの設定ではaptXで接続されていると表示されるなど、挙動に一貫性がない場合がある。

さらに、イヤホンの着脱を検知して再生・停止を自動で行う「インイヤー検出」のような、現代のワイヤレスイヤホンでは標準的となりつつある便利な機能が搭載されていない。

複数のデバイスに同時接続できるマルチポイント機能も、高音質なLDACコーデックをオフにしなければ利用できないという制約がある。これらのソフトウェア面の未熟さや機能不足は、H3が持つ高いハードウェア性能とは対照的であり、全体的なユーザー体験を損なう要因となっている。

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SOUNDPEATS H3の利点と課題点

これまでの技術的分析と実践的レビューを基に、SOUNDPEATS H3が持つ明確な利点と、購入前に必ず認識しておくべき課題点を整理する。この製品は長所と短所が極めてはっきりしており、それらを天秤にかけることが、購入判断において不可欠となる。

H3が持つ明確な利点

  • EQ適用後の優れた音響ポテンシャル
  • 静寂環境下での強力なANC性能
  • ハイレゾワイヤレス対応
  • 良好な装着感(個人差あり)

購入前に認識すべき課題点

  • デフォルト音質
  • 機能利用時の短いバッテリー持続時間
  • 未成熟なソフトウェアと機能不足
  • 実用性の低い外音取り込み機能
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総括|SOUNDPEATS H3は誰におすすめか

SOUNDPEATS H3は、その性能と機能において著しい矛盾を内包する製品である。最終的に、このイヤホンがどのようなユーザーにとって価値ある選択肢となるのか、そしてどのようなユーザーは避けるべきなのかを明確にする。

SOUNDPEATS H3は、対照的な要素が同居するイヤホンである。その内部には、卓越した音響体験を提供する可能性を秘めた高性能なオーディオハードウェアが搭載されている。しかし、その潜在能力は、著しく調整不足なデフォルトの音質によって封印されている。

さらに、洗練されていないソフトウェア体験といった実用上の大きな問題によって、その価値は大きく損なわれている。H3は、あらゆる状況に対応できるバランスの取れた製品ではなく、妥協点を多く含む専門的なツールである。

この製品を推奨できるのは、ごく一部のニッチな層、すなわち「オーディオホビイスト」や「EQ調整を楽しむユーザー」に限られる。具体的には、主にAndroidデバイスを使用し、箱出しの利便性よりもオーディオの潜在能力を重視する人物である。

10バンドのグラフィックイコライザーを駆使し、時間をかけて音質を追求することに喜びを感じる必要がある。また、主なリスニング環境が屋内や公共交通機関の内部であることも重要な条件となる。

上記で特定したユーザー像に合致するならば、SOUNDPEATS H3は魅力的な価値提案となる。それは、ユーザー自身が最終的なチューニングを施す手間を惜しまなければ、手頃な価格でプレミアムクラスに迫るオーディオ性能を手に入れる機会である。

もし自身がこの条件に当てはまり、屋外での使用やバッテリーに関する大きな制約を理解できるのであれば、H3は使用する価値のある製品になる。

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