TeamSkyはパワーメーターをSRMからStages Powerに変更した。発表当時はStageONEというネーミングで製品がリリースされている。Stages Powerは片方のクランクアーム(チェーンリングがついていない方)に取り付けられたひずみゲージで仮想的に出力を計測するタイプのパワーメーターだ。
なおチームスカイが2014年Stages Powerを採用した記事はこちら
通常のクランク式パワーメーターの場合はスパイダーアームと呼ばれるひずみゲージを備えている。代表的なものは、SRM、Quarq、Power2Maxだ。それらと異なる特徴はクランクアーム片側単体で計測しているという点だ。
クランクアーム片側だけひずみゲージが付いているという珍しい機構を持つパワーメーターだが、どのように計測しているのだろうか。
Stages Powerとは
Stages Powerは片側のクランクアームのひずみゲージで測定された値を仮想的に左右のパワーとして算出している。チェーンリング側で発生するパワーは仮想的な理論値で弾き出された値ということだ。Stages Powerの仮想出力計算式は次のような計算式を用いて算出される。
P2*((Fav*9.8*L)*(R*0.1047)
- P(w):ワット
- Fav(kg):回転毎の平均力
- 9.8:重力加速度
- L(m):クランク長
- 0.1047:定数
0.1047という定数についてはROTOR POWERのトルクの話で触れている。トルクと回転数の積なので、1回転が2πラジアンであり、60秒で割ると0.1047という係数が導出できる。
Stages Cyclingが語る利点
片側計測という方法は他のパワーメーターよりも劣るのだろうか。Stages Cycling社は、左クランクのみで測定する利点をこう主張している。「スパイダーアーム式と片側クランクアーム計測式では後者のほうが優れている」という。
理由はスパイダーアーム型で測定する場合、下記に記載した多くの駆動損失を考慮する必要がある。そのため複雑な計算を要するため測定誤差も大きくなりやすいという。なおメジャーなパワーメーターであるパワータップも同様に、チェーンのフリクションロス(摩擦による伝達低下)を考慮した計算結果をを表示している。
以下は駆動損失として考慮せねばならないドライブトレインのパーツ群である。
- チェーンリング
- チェーンリング固定ボルト
- スパイダーアーム
- クランク
スパイダーアーム方式は、上記のドライブ部分を構成する部品の特性や駆動損失を考慮する必要がある。それらを元に、各社独自のアルゴリズムを用いて出力を算出する。この際にチェーンリングが特に測定のネックとなっている、と同社は指摘している。
理由は、各社とも剛性が違うチェーンリングや素材を用いる場合が多いからだ。Quarq社の場合はチェーンリング交換後、専用ソフトとiphoneを用い補正が必要なモデルも存在する。左クランクで測定する利点を、Stages Cycling社はさらにこう主張する。
スパイダーアーム型はチェーンのトルク、ドライブトレインといった駆動部分の駆動損失をフィルタリングせねばならない。そのため複雑な計算式を用いる必要がある。スパイダーアーム型やハブ式のデメリットとして、不要な駆動損失をフィルタリングしなければ正確な出力を算出できない。
しかし左クランクのみならば、不要なノイズである駆動損失を計算式でフィルタリングする手間を省く事ができる。そしてスパイダーアーム型よりも計算が簡素化でき、値の信憑性も増すだろうと同社は述べている。
Stages Power側の主張は、Powertapやスパイダー型、ペダル型と比べてどうか?ということだ。ダイレクトにクランクアームでデーターを取得できるので、データーに余計なノイズが入らない、という利点を強く主張している。
そう考えると、パイオニアペダリングモニターは左右独立したひずみゲージを備え生の値を取得する。Stages Powerと異なり仮想出力ではない。ただ、今回はその点については触れないので別途パイオニアペダリングモニターの記事を参照して欲しい。
Stages Powerの測定精度
Stages CyclingのエンジニアがStages Powerの精度を実際に測定した記録がある。CycleOpsのPowerTap SL+をリアホイールにし、双方のデーター受信は別のサイクルコンピューターへ送るといった実験だ。
この方法で実験を行った平均出力の誤差は、3%発生している。Stages Powerは左側出力100ワットで90rpmで測定した際に±2%の精度を保証する。かたやCycleOps PowerTapの場合は±1.5%の測定精度だ。
値が3%食い違った可能性として先程述べたドライブトレインの損失があると結論づけている。(Stage社の報告ではPowertapの平均出力値よりも若干高い値を出す結果が得られている)以下は実験データーである。実際にStages Cycling社が発表している対外的な公式データーだ。
- Stages PowerとPowerTapの誤差:±2%
- Stages Powerとスパイダーアーム式の誤差:±2%
- Stages Powerとペダル式の誤差:±4%
上記の通り誤差が発生する結果が得られている。面白いのは他のブランドの性能諸元表に記載されている測定誤差±2%より、Stages Powerの測定誤差2%の方が確からしい値であるそうだ。
また、Stages Powerの±2%の精度は、ある特定の条件下における測定精度であると限定している。(詳細な試験環境は不明)
Stages Powerの仕様
製品仕様部分を見ていく。気になるゼロリセットや校正の必要はない。Stages Powerは校正の必要は無いと説明している。しかしゼロリセットの機能は有しており、出力データの結果をベストに保つ場合はゼロリセットを実行する事が推奨されている。
ひずみゲージは接着剤で取り付けられている。パイオニアペダリングモニターも同様だ。クランクアーム接着式と呼ぶべきか。どれくらいの力をかけても外れないか計測結果が出ている。その耐久性は4000psiだ。4000psiは281kgf/cm2に相当する。
なお、この強力な接着剤が故に問題がある。別のクランクを買った場合載せ替えはできるのか。答えはノーだ。残念ながらできない。そしてもう一つ注意がある。今使用中のクランクは使えないのだ。
Stages Cyclingの工場に送り取り付けてもらえるのは新品のクランクのみである。
Stages Powerの材質
Stages Powerの素材は防弾ガラスと同じ、ポリカーボネイト製である。クランクの内側に設置されているので、落車時の破損の心配はない。破損しにくい利点は外のメーターと比べると大きい。
Stages Powerはアルミ製のクランクアームのみ対応している。理由をStages Cycling社はこう説明している。本体は、デュポン社製ポリエステルフィルム樹脂製で覆われている。そして金属箔のひずみゲージの曲げで出力を測定をしている。
正確さと一定の精度を得るためには経年変化が少ない金属(アルミだったり、スチールだったり)を用いる。たとえば競合するシステムのSRMやQuarqのスパイダーアームはアルミである。同様にStages Powerも金属のアーム自体にセンサーを取り付けている。
金属はカーボンと比べ経年変化や特性の変化が少ないのが利点だ。そのためラインナップでカーボンは存在しない。パイオニアペダリングモニターも同様である。
Stages Powerのセンサー
センサー部の詳細なスペックは以下のとおりだ。
- 精度: ±2%
- 重量: 20g
- 駆動時間: 200+ 時間
- 電池: CR2032
- 電池交換式
- ケイデンスセンサー内蔵
- 動的ひずみセンサー補正
- ワイヤレスファームアップデート
- 出力測定幅 (Watts): 0 to 1999
- ケイデンス測定幅 (rpm): 30-220
- 取り付けフレームタイプ: ほぼすべてのフレーム
- 対応クランク: 全てのShimano Hollowtech II
- 対応無線規格: ANT+, Bluetooth Smart Ready
- 対応ソフト: Training Peaks, Strava, Garmin Training Center
Stages Powerの対応クランク
- DuraAce FC-9000:165mm, 167.5mm, 170mm, 172.5mm, 175mm, 180mm
- FC-7900,FC-7950:165mm, 167.5mm, 170mm, 172.5mm, 175mm, 180mm
- FC-6800:165mm, 170mm, 172.5mm, 175mm
- FC-6700,FC-6750:165mm, 170mm, 172.5mm, 175mm
- FC-5700,FC-5750:165mm, 170mm, 172.5mm, 175mm
- FC-7710 track:165mm, 167.5mm, 170mm, 172.5mm, 175mm
- XTR M985 785,780:Saint M825 820
- Sram X9:170mm, 175mm
- Sram raival:165mm, 170mm, 172.5mm, 175mm, 180mm
- ホローグラムSi Sl:170mm, 172.5mm, 175mm
- ホローグラムSi Sl2 ,Sl:170mm, 172.5mm, 175mm
最後に購入に関して
安価で、導入しやすいStages Cycling社のStages Power。そしてツール・ド・フランスを圧倒的な力で制したTeamSkyの採用。ここまで話題が揃えば、国内代理店がいよいよ日本で販売できるよう、触手を動かし始めていることだろう。という事を過去に書いたが現在InterMaxが国内代理店を開始している。
国内のパワーメーター事情も様変わりしてきた。ただ、パワーメーターはひとつの指標でありその得られた値を元にトレーニングをする。その際に指標として自分自身が信じられるパワーメーターならばStagesPowerは安いかもしれない。ホビーサイクリストでも当たり前の機材になりつつ有るパワーメーターを一度使ってみてはどうだろうか。
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