ショートクランクがもてはやされている。前回は155mmを試したが合わなかった。今回は160mmを試した。これで、ほとんどのクランク長を試したことになる。
- 155mm
- 160mm
- 165mm
- 167.5mm
- 170mm
- 172.5mm
155mmの使い心地については先般のレビューを参照してほしい。結論としては、全くあわなかった。最終的には160mmと165mmで悩むことになった。どのクランク長が最もしっくりときたかというと、私の場合は165mmだった。
165mmは一般的にはショートクランクと呼ばれているが、私の場合は165mmを最適クランクと呼ぶべきだろう。165mmはショートでも何でもない。
160mmや155mmがわたしにとってのショートクランク、167.5mm~がロングクランクだった。クランク長というのは、実際に試さねばなにもわからない。一人一人身体的特徴が全く異なっているからだ。したがって、他人のクランク長など、まったくあてにならない。
身体的特徴以外にも、ポジション、パワー、筋肉の付き方などパラメータは無数に存在する。身長や股下が同じであっても、『最適な』クランク長は異なるほうが自然だ。
短くなるとどうなるか
おかしな話だがショートクランクと聞くと、何か特別な事が起きそうな風潮になっている。しかし、それは幻想だ。
クランク長を変えることで、確かに変化を感じる。しかし、突然ポガチャルやヴィンゲンゴーになったりしない。パワーが上がったり、スプリントが猛烈にできるようになったりはしない。
むしろ、最適なクランク長(私であれば165mm)よりも短すぎるクランクは、デメリットのほうが多い印象だった。
- トルクをかけにくい
- パワーが落ちる
- パワーをかけられる時間が短い
- 低ケイデンスで踏み抜けなくなる
- 登りでパワーがかからなくなる
- スプリント力が落ちる
- ダッシュやアタックにキレが無くなる
勘違いしてはならないのは、私の場合は165mmよりも短い160mmや155mmを使うと、上記のデメリットが生じるということだ。例えば、170mmが適正な方は165mmを使うと上記のデメリットが生じる可能性があるだろう。クランク長は、自分に合っているかどうかが重要だ。
クランク長を短くすると、何か特別な事が起きると思い込んでいた。しかし、そう上手い話はない。
ショートクランクを使うことで最も顕著だったのは、トルクがかからないことだ。これが最大のデメリットだと思う。『クランク長が短くなるとテコの原理が弱まる』という話がある。この理論に対しては、否定的な立場だった。
しかし、実際に自分で試すとわかる。これは、事実だと思う。クランク長のテストで最も痛感したことでもあるのだ。クランク長を短くすることで、確かにトルクをかけにくくなる。この結果、何が起こったか。
アタックやスプリントがかからない。ロードレースでは確実に不利になる結果だった。致命的だったのは登りだ。登りでトルクがかからない。勾配がきつくなり、ケイデンスが落ちてくるとさらに悲惨だ。登りでアタックがかかろうものなら、ショートクランクならすぐに千切れる自信がある。
そして、ギアが今まで以上に重く感じる。決定的だったのは、登りのタイムが顕著に落ちてしまったことだ。これが、155と160mmのクランクが使えないと悟った瞬間だった。
ヒルクライマーの方で、今のクランク長で問題がないのなら、ショートクランクをレース前に使うのは避けたほうがいい(事前に試すのはとても良いと思う)。
単純に『出力 = トルク x 回転』であるため、トルクが落ちればパワーも落ちる。すると、こう考えるかもしれない。「回転で補えばいい」と。しかし、現実はそう単純な話ではない。

回転で補う?
『出力 = トルク x 回転』の関係は覆らない。落ちたトルクを補うには回転を上げる必要がある。短絡的に考えるのならば、これは正しいように思う。では、実際に試しみるとどうなるのか。
160mmや155mmのクランクは確かに回転を上げやすかった。しかし、トルクがついてこないのだ。逆の言い方をすると、『トルクがすえ置きで回転を上げられない』のだ。トルクをこれからかけようというタイミングで、クランクが先に回り切ってしまう。
踏み込もうとするタイミングで、クランクの回転が終わってしまうような動きをする。トルクが飽和するような感覚がある。
この動作を繰り返していると、疲れる作業に感じてくる。そして、実際に疲れる。これらは、鍛錬やトレーニングで改善する可能性がある。しかし、あえて160mmや155mmを使いこなす訓練に価値や合理的な理由は見いだせない。
それならば、165mmでベストパフォーマンスを出し続ければ良いのだ。変える必要はない。明らかに155mmや160mmではパフォーマンスが落ちるのだから。
時間の無駄である。
『ショートクランクを使いたい』、という目的の為に、不慣れな事をあえてする必要はない。それならば、自分が適正だと感じているクランク長を使えばよいだけだ。
経験が長ければ長いほど、回しやすいケイデンスに収束し落ち着く。例えば90rpmが回しやすいのなら、このケイデンスがスイートスポットになって、この領域で最大のトルクがかかればよい。私の場合は、165mmが心地よいケイデンスかつ、思い通りのトルクをかけられる。
ケイデンスとトルクが最も良い状態に落ち着くのが165mmだ。ただし、何度も言うように「私の場合は」だ。重要なのは、最適なクランク長を色々と試して、見つけ出すことにある。
まとめ:最適なクランク長を探し出す
いま使っているクランク長は以下だ。
- ロード:165mm
- シクロクロス:165mm
- MTB:165mm
- トラック:165mm
- ダートジャンプ:165mm
- グラベル:165mm
- ママチャリ:165mm(←NEW!)
複数の種目(ママチャリ含む)を行っている場合、使い勝手の変化を極力無くす事を考えると165mmでそろえるのが入手性、ラインナップを考えて現実的な選択肢である。私はクランク長の結論は出ている。165mmだ。
まとめに移ろう。『ショートクランクが良い』というのは、今使っているクランク長が長すぎて、短くした結果『最適なクランク長』になった、だけではないだろうか。
今まで使っていたクランク(長すぎ)から、相対的に短くなったショートクランクと呼ばれるものが、あるライダーにとって最適だった。というだけではないのか。
わたしは、155mmや160mmを試すことで、相対的に『165mmが最適である』ことを再認識した。150mmがよい?145mmがよい?それは違う。短ければ、短いほどよいというわけではない。必ず下限がある。わずか10mm(1cm)のクランクなど回せない。
では、その下限はどこにあるのか。
その下限を知るために、いま使っているクランク長よりも、短くするか、もしくは長くするか、あなた自身が試すしかない。もしかしたら、今165mmを使っていても、あなたにとっては170mmのロングクランクが最適である可能性もある。
あなた自身が、試さなければ最適なクランク長など誰にもわからないのだ。
海外のプロ選手が短いクランクを使うから、流行っているから、という理由で短いクランクを使うのは賛成しないし、合理的だとは思えない。そうではなく、最適なクランク長を探すためのきっかけとして、短いクランクを試して、自分に合う合わないを見定めるほうが合理的だと思う。
様々なクランク長を試してわかったのは、万人に当てはまるクランク長など、どこにも存在していなかったことだ。あなたには、あなただけに合うクランク長がある。それは、試さずして、見つかるものではないのだ。


¥3,060 (中古品)