パイオニアペダリングモニターが3種類のラインナップとともに生まれ変わった。既存の左右計測型ペダリングモニターセンサー「SGY-PM910H」に細かな部品のアップデートと「セパレーション機能」という機能を追加。左右のセンサーを別々の自転車へ取り付けられる。モデル名は「SGY-PM910H2」。
また、片側計測が行えるタイプも発売される。左側計測の「SGY-PM910HL」と右側計測の「SGY-PM910HR」だ。STAGESのようなモノを思い浮かべるかも知れないが、もちろんペダリング効率を測定できる。さらに追加で反対側を揃えれば左右計測型と同等の機能を有することになる。
初めは簡易な片側計測で導入しSTAGESのような使い方もできる。パワーだけであれば片側で事足りるが、左右が欲しければ後からアップデートできるのもひとつの利点だろう。ではそれぞれの製品を見ていくことにしよう。
片側計測タイプのパワーメーター
パワーメーター市場は長らくハブ内蔵型とスパイダーアーム型の2種類が存在していた。そこからクランクアーム内部に直にセンサーを埋め込んだROTOR POWERなどが登場してきた。このいわば「パワーメーター過渡期」であった頃はお世辞にも買いやすい値段とは言い難かった。
そこに廉価版のパワーメーターが登場し始めた。センサー数を減らし、片側計測に特化したSTAGESのパワーメーターだ。チームスカイが使用していることから注目度やプロモーションが功を奏し売れ行きも好調だという。
ただ、チームスカイが使っているから良いという理由は非常に疑問が残るが、単にスポンサード中は使うだろうが契約が切れれば使うかは微妙なところだろう。どんな機材でもそうだが、プロチームが使う機材など金次第と言ったところだろうか。
ただ、一定以上の性能はやはり有していないと使うのも拒まれ、選手によってはSRMを使ってしまう場合もある。そういう意味でも片側センサーを使い続けているチームスカイのお陰で、片側センサーは一定の市民権を得られたと言える。
片側パワーメーターの意図とは
ここにきてペダリングモニターも「片側センサー」を販売することになったが意図は何なのだろうか。海外のパワーメーターを制作する企業と異なり、パイオニア社の説明に「企画意図」というものが紹介されていた。これらに目を通してみると単に「片側のパワーメーター」を作りたかっただけではないらしい。
当然STAGESが発売され、パイオニアペダリングモニターの片側を出したとしたら、二番煎じという扱いも受ける可能性は同社の開発者もわかっていることだろう。片側計測センサーを出した理由は次のように書かれている。
- 多様な車種に対応する為
- 複数の自転車を所有するサイクリスト向け
- 手軽にご購入いただける片脚クランク計測型として
大きく抜粋すると上記の3つだ。一つ目の「多様な車種」とあるが、これはクランクアーム直付センサーのパワーメーターの場合死活問題であった。理由として昨今のフレームにおいてBBまわりの大口径化が起因している。クランクアームギリギリまで広げられたBB周りはアームとのクリアランスをなくす。
このため左側のセンサーが干渉してしまったりするのだ。これは左側センサーに限った話ではあるが、右クランクの場合はアームにセンサーを取り付けるわけではなくチェーンリングに隠れた形で備え付けられる場合が多い。この場合はフレームに干渉することも少ない。
今回パイオニアペダリングモニターのドライブトレイン側センサーの単体発売は、この干渉問題を上手く回避できる可能性がある。
他社製サイコンも使用可
片側センサーで発売するに当たり、対応するサイコンはどうなるのか疑問だった。どうやら通常のANTも備えられており対応するサイクルコンピューターを使用できる。実際に片側計測であるからSTAGESのように「理論値」なのか「単に倍」なのかは定かではないが、とにかく既存のシステムが流用できるのは嬉しい。
恐らくだが、既存の発売中のSGX-CA500にペダルコピーという機能がある。実際に私も右側のセンサーの電池が切れた際に使った。動作原理は簡単で左センサーの出力を右センサーにコピーする。ただ賢いのは「比率」が決められるということだ。左右のペダリングバランスが50:50ならデフォルトの設定で良い。
ただ、48:52と言った場合でも設定で変更することが可能だ。この点を考えるとサイクルコンピューターはSGX-CA500を用いたほうが良さそうだが(左右バランスが異なる場合)既存のGARMIN500などで使えると有れば、投資を抑える為に持って来いの機能といえる。
広がる使用用途
私が今所有しているバイクはロードバイク、TTバイク、シクロクロス、MTBと様々だ。MTBを除いて他のバイクにもパワーメーターを搭載しようと何度も考えたことがある。ただ、今回のパイオニアペダリングモニターの片側計測ができるとあれば1台を「使いまわせる」事ができる。
実際TTバイクも、シクロクロスも165cmのクランクアーム長のアルテグラなので使い回しがきく。ロードはDURAなのでQ-ファクターが異なるので流用は厳しそうだ。ただすべての機材をDURAで揃えていれば既存パワーメーターもアップデートで対応できるとある。
どちらにせよ追加でペダリングモニターを買おうと検討してた私にとって朗報といえるのが今回の発売である。では次は競合パワーメーターとの比較を見ていくことにしよう。
STAGESとの比較
恐らく一番意識していると思われるのがSTAGESのパワーメーターではないだろうか。国内のInterMaxが代理店を務めるチームスカイが使用するパワーメーターだ。おそらく価格や性能と共に競合パワーメーターであることは火を見るより明らかである。
価格面は次の通り。
- 74,800円:ペダリングモニター
- 89,000円:STAGES ULTEGRA
- 99,000円:STAGES DURA
重量は次の通り。
- 40g:ペダリングモニターR
- 22g:ペダリングモニターL
- 20g:STAGES ULTEGRA
もはやホイールで考えたら誤差の範囲内である。
まとめ:センサーはどちらを買う?
私の場合は左一択である。理由はTTバイクとシクロクロスバイクでの流用を考えているからだ。ただ左を買うとドライブトレイン側の赤いバッテリーカバーを人に「見せびらかす」ことができなくなる。「俺ペダリングモニター使っているんだぜ」的な自己満足を満たすことは出来ないが、パワー測定ができれば良いのでこの辺は取るに足らない事だ。
ヒルクライムで重量面を気にしている人ならばもちろん左側で良いだろう。干渉を考えるなら右側、しなければ左側を購入。人に見せたいなら、、と、既存のシステムを流用でき、値段もいくらかお求めやすくなったと言えるパイオニアペダリングモニターはこれからますます普及していくことだろう。
肝心なことを書き忘れたので一つ補足しておきたい。パワーメーターが万が一壊れた場合も想定しておいて欲しい。水没や外的要因に寄る破損だ。実のところ一度パイオニアペダリングモニターを破損してしまっている(私の不注意で)その場合の「国内対応」と「大手電機メーカー」の対応は非常に安心した。
QUARQが壊れた時はEMSで伝票書いて・・・と本当に苦労した。そういう意味でも国内に開発拠点があり保守拠点がある事は「長くパワーメーターを使う」という事を考えたら非常に重要であり忘れがちな事ではないだろうか。国産のパワーメーターのメリットはその辺にもあるのだ。
ここで片側センサーを発売し「2台目需要」を視野に入れたパイオニアペダリングモニターはサブバイクやスペアバイク、トレーニング用に安くパワーメーターを導入したいサイクリストには朗報といえるだろう。この値段ならなんとかパワーメーターを買える人も多いのではないか。
様々なパワーメーターの移り変わりを見てきたが、「国内製品」「国内保守」そして「国内パワーメーターで一番安い」三拍子揃ったパワーメーターに死角はなさそうである。
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