初夢は「一富士二鷹三茄子」というように富士山や、鷹、茄子を見ると縁起が良いとされる。厳密に言うと、新年最初に見る夢ではなく、元日(1月1日)から2日の夜、もしくは2日から3日の夜に見る夢と定義づけられている。私も今年夢を見ることに成功した。なんと、日本のトップライダー2人と走る年始の夢を。
いやまて、この写真はネットから拾ってきたどこかの写真かもしれない。なぜか私の携帯の中に保存されているお二人の写真はこちらに向いて笑顔が溢れている。ただ、私はこの後引き摺り回され歓喜し、力つきる事は夢にも思わない。あ、待て、これは夢だからさらに夢を見なくてはならないので、まさに無限ループだ。
今回はMTBに関するとても興味深く、非常に多くのことを教えていただいたがここで記すことはしない(続きは有料コンテンツだ!)。むしろ、私が果たすべき役割は別にある。お二人と話し感じた事や、お二人の人柄など身近に感じて知って頂きたいと思うのだ。
走りながら感じる巧さ
うまい人に「うまい」と言うのは失礼な話だ。しかし、お二人に共通しているのは「上手い」ではなく「巧い」という事だ。おじょうずですね、というよりはどこか匠のような巧さがある。技術的に見ていてスゴイと感じてしまうのだ。話は少しそれるが、シクロクロスの会場の観客数を見た事があるだろうか。
誤解を恐れずに言えば、昨今のシクロクロスの観客数は国内のどのロードレースよりも観客数は多い。なぜだろうか。単純に原因を比較する事はできないが、テクニックや難しいセクションを魔法のようにこなして行く「レース」は単純に見ていて面白い。
目の前で二人がスルスルと下っていく様はまさに見ていて楽しく、魅せる走りだ。ただ、実際に私が走るとどうだろう。もはや命がけである。今日入ったトレイルは本当に落ちたら死ぬところだった。本当に死ぬと思う。そんなところで命がけでプロは練習することもある。
ただ、二人はまるで山を寝床とする獣(最大限の褒め言葉の意)のように山の中を遊んでいるようだった。獣がササっと山を駆け回るように、走り抜ける。沢田選手と中原選手の後ろに着かせていただき最高のお手本を目の前にしながら思った。
彼らはハードテイル(リアサスペンションが無く、ロードバイクのような後ろ三角)のバイクなのだが「リアサスついてる?」と勘違いしてしまうほどにするするとバリアを超えていく。一つの根っこも優しくコロコロと魔法のようにクリアしていく。うまい選手に共通している事がある。
後ろからリアホイールを見ていると、まるで魚の尾ひれのような動きをする。あれがいまだに不思議でならない。おそらく、ハイスピードでコーナーリングする際、後輪の内輪差によりそう見えるのだろうか。
もう一つ驚いた事がある。バイクを操る「精度」だ。パワーメーターに測定精度があるように自分が操るタイヤの位置感覚が凄まじい。私が徒歩下山した下りでも、うまく前輪を通し(まるで針に糸を通すように)てからさらに後輪も糸の穴を通していく。
二人の走りを見てある事を思い出した。f1選手が地面に置いた10円玉ギリギリにタイヤを止めるというもの。操るマシンの位置感覚とその精度はやはりプロそのものだった。自由自在に操るとはバイクの位置感覚やタイヤが今どこにあるのか、乗っている重心の位置はと、多くの要素から成り立つ。
わたしの場合はまだそこまで達していない(あたりまえだが)。ただ、お二人の走りを見てあんな風に走れたら楽しいだろうな、という期待も増える。難しいセクションもいとも簡単に降りていく。走りながら二人に感動しっぱなしだった。
初夢は儚く
今年の初夢は、あっという間の夢だった。最後はついていけるところまで付いていく。途中で待って頂いているのを申し訳なく思いながら。下のセクションで相当離れたのでメッセンジャーで離脱を告げる。おそらく今日は相当に合わせてゆっくり走ってくださっていたはずだ。
ただ、帰りの下りでもうヘロヘロになった私は不意に注意を欠き、前輪ロックの顔面着地で鼻血を出す。夢の中なのに相当痛い。そして左腰も強打だ。それでもゆるゆると下り走り終える。私は思った。二人のトッププロが共に練習するという夢の共演は、さらなる相乗効果を生み、より高みに上っていく事だろう。
オリンピックに最も近い漢達は、よくわからない私のような普通のライダーにも優しかった。それだけでも十分だ。これから冬の乗り込みをこなし、レースが本格化していく。今日走った日の事は忘れない。今年一発目のランはとても有意義で忘れられないものとなった。
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