「MTBバイクを買おうと思ったんですが、何を買ったら良いのかわかりません。」
MTBは走る場所や、目的によってバイクが細分化されている。ロードバイクよりもさらに細かく用途別にバイクが存在しているのだ。ロードバイクなら見た目やカッコよさだけでバイクを選んでも、何とかなるかもしれない。
しかし、MTBはそうはいかない。
そこで、実際にわたし自身がMTBを買うときに悩んだ内容をベースにして、目的に合った1台を選ぶ手立てをまとめた。
ロードで考える
MTBを選ぶ前に「走る目的」をはっきりと整理することから始める。目的が曖昧で、なんとなく買ったバイクは走る環境に適していない可能性がある。そこで、馴染みのあるロード系のバイクの種類を改めておさらいしてみよう。
- タイムトライアルバイク
- トライアスロンバイク
- トラックバイク(中距離、短距離)
- ロードバイク(エアロ、オールラウンド、軽量)
- グラベルバイク
- シクロクロスバイク
- クロスバイク
- ランドナーバイク
- 折り畳みバイク
あたり前の話だが、バンクを走りたいのにグラベルバイクを買う人はいない。グラベルを走りたければグラベルバイクを選び、TTを速く走りたいならTTバイクを選ぶ。汎用的に使いたいなら、オールラウンド向けのロードバイクを選択することが適切だ。
MTBも同じだ。下りメインで楽しんで走りたいと考えているのに、XCバイクを買うのはお門違いだ。「どのような乗り方をしたいのか」という目的をはっきりとさせて、目的に合ったバイクを選べば「こんなはずじゃなかった」という事態にはならない。
MTBのバイク選びがロードバイクと違っているのは、目的が定まったとしても「どのバイクを選んだらよいのかわからなかった」ということが多かった。そこで、先ほどのロードバイクと同じようにMTBの種類もまとめた。
- クロスカントリーバイク(XC)
- ダウンカントリーバイク(DC)
- トレイルバイク(TR)
- オールマウンテンバイク(AM)
- エンデューロバイク(EN)
- ダウンヒルバイク(DH)
- ダートジャンプバイク(DJ)
さらに細分化もできるが、今回は初心者向けなので難しくならないように大枠でまとめている。それぞれ、特徴や目的が全く異なるバイクなので、どのような目的と走らせ方をするためのバイクなのかも記載している。
クロスカントリーバイク:XC
- ストローク:100~110mm
- ホイール:29が主流
- タイヤ:転がり抵抗が低い、グリップ力が低い
- 目的:XCOレースに出る
XCバイクの目的は、クロスカントリーレースを速く走るためのバイクだ。コーステープが張られた上り下りのコースにおいて、60分前後のレースをできるだけ速く走るために使用する。
ヘッドアングルが立っているため、上りの軽快さがある。その代償として、下りの走破性とコントロール性は難易度が高く、ライダーのテクニックが特に要求されるバイクだ。例えるならTTバイクで、速いが下りの扱いは難しいバイクだ。
XCの競技を走るためのバイクであり、逆にXCの競技をしなければ必要のないバイクだ。
ダウンカントリーバイク:DC
- ストローク:120mm前後
- ホイール:29が主流
- タイヤ:転がり抵抗低め、グリップ力XCよりは高め
- 目的:登りを速く軽快に、下りもほどほどに楽しむ。
海外で徐々に人気が出てきているのがダウンカントリーバイクだ。スペシャライズドEPIC EVO、サンタクルーズBlur TR、キャニオンLUX TRAILなど各社がこのカテゴリに新型のバイクを投入している。
XCバイクに下り要素を追加しているため、ストロークは120mm、ヘッドアングルは66°前後が多い。私がXCレースで使っているバイクもストロークが120mm、ヘッドアングルが66.5°のダウンカントリーバイクだ。
近年、XCOのコースはテクニカルかつ、下りの難易度が上がっている。下りの難易度が高いコースではクロスカントリーバイクではなくダウンカントリーバイクを使うライダーも多い。スペシャライズドのファクトリーチームがそうで、EPIC8が登場するまではEPIC WCではなく、EPIC EVOを使う選手が多かった。
クロスカントリーバイクがダウンカントリーバイク寄りになってきており、双方の境界線は年々曖昧になってきている。スペシャライズドの最新型XCバイクのEPIC8は、ストローク120mm、ヘッドアングルが65.9°だ。テクニカルな下りを攻略するための設計になっており、ひと昔前のトレイルバイクのようなヘッドアングルだ。
トレイルバイク:TR
- ストローク:130~140mm
- ホイール:29、27.5(650b)
- タイヤ:転がり抵抗普通、グリップ力高め
- 目的:登りも下りも楽しみたい。トレイルまで自走する。
登りも下りもこなしたいならトレイルバイクだ。自走でトレイルまで行く場合にも向いている。近所のトレイルにふらっと行って、登り区間も良いペースで走り、下りもある程度楽しく走るのならトレイルバイクがいい。
オールマウンテンバイク:AM
- ストローク:140mm~160mm
- ホイール:29、27.5(650b)、マレット(29&27.5)
- タイヤ:転がり抵抗高め、グリップ力高め
- 目的:山で遊びたい、主に下り
登りはそれほど頑張らず、トレイルの山頂までマイペースで登ってから山遊びをするならオールマウンテンバイクだ。メーカーによっては、140~160mmレンジのストロークのバイクを「下り系トレイルバイク」や「オールマウンテン」と呼んでいる。
ストローク次第ではゲレンデを走れる。私もダウンカントリーバイクとは別に、150mmストロークでヘッドアングル64°のオールマウンテンバイクを持っている。
エンデューロバイク:EN
- ストローク:160mm~170mm
- ホイール:29、27.5(650b)、マレット(29&27.5)
- タイヤ:転がり抵抗高め、グリップ力高め
- 目的:下りメイン、エンデューロに出場する。
ロードバイク乗りが「エンデューロ」と聞くと耐久レースを想像するが、MTBのエンデューロは下り区間だけタイムを計測し、スタート地点までの移動区間(リエゾン区間)はタイム計測しないダウンヒル競技のことだ。
下り基調の「ステージ」と呼ばれる複数のコースでタイムを競う。合計タイムで順位を決定する。定められた時間内に「リエゾン」と呼ばれる、主に上り基調のスタート地点まで自走しなければならない。
言ってしまえばダウンヒルなのだが、自分でスタート地点まで登って移動する必要があることと、ステージレースである点がダウンヒルとは異なる。
ダウンヒルバイク:DH
- ストローク:180mm~
- ホイール:29、27.5(650b)、マレット(29&27.5)
- タイヤ:転がり抵抗高い、グリップ力高い
- 目的:下りがメイン
ダウンヒルバイクは下りに特化したバイクだ。ストロークも180mm以上でヘッドアングルも寝ている。登りの事はほとんど考慮されておらず、下ることを目的にしたバイクだ。
ダートジャンプバイク:DJ
- ストローク:100mm
- ホイール:26
- タイヤ:転がり抵抗低い、グリップ力低め
- 目的:ダートジャンプやパンプトラックを走りたい
ジャンプやパンプトラックを走るためのバイクが、ダートジャンプバイクだ。バイクを振り回しやすいため、バイクコントロールを磨く練習にも使えるバイクだ。ダートジャンプバイクなんて絶対に買うことは無いと思っていたが、662トレイルで使わせてもらって楽しかったため購入している。
速くて軽いバイクは必要ですか?
ロードバイク乗りは「速い」「軽い」バイクが好きだと思う。これと同じ感覚でMTBを選んでしまうと失敗する可能性がとても高い。山遊びメインでXCレースに出ないのなら、速くて軽いXCバイクは不要だ。
ロードバイクでは感じにくいこととして、バイクの重さは走行安定性につながる場合がある。下りは重さがあると、タイヤが地面に張り付いてくれるようになる。「軽さは正義」とは決して言い切れないのだ。
まとめ:目的は明確に
XCでレースを走るならXCバイクを。山で遊びたいなら、トレイルバイクやオールマウンテンバイクを。目的がまだ定まっておらず、MTBでいろんなトレイルを走ってみたいと思うならオールマウンテンバイクをおすすめしたい。
と、ここまで色々と書いてきたが1台買うと、次々と別の種類のバイクが欲しくなってくるものだ。私はダウンカントリーバイクを購入したが、次に買ったのはクロモリの下り系ハードテール、フルサスオールマウンテン、ダートジャンプバイク、eMTBと次々と生えてきた。
遊び方がそれぞれ違うので、用途に合ったバイクを用意する必要がある。まずは、目的をひとつ決めて、バイクを1台購入するほうが良いだろう。ロードバイクのように「ひとつで全てを」という、どっちつかずのバイクはMTBに存在しない。
先鋭化したバイクだからこそ、遊び方が深まり、楽しさのリターンも増すのだ。