パワーメーターが普及し心拍計トレーニングは影を潜めていったが、身体の調子を確認するために心拍計を必ず身につけている。同じパワーでも心拍が低かったり、レース前のウォーミングアップで心拍の上がり方を見て調子や仕上がりをこまめに確認している。
特に、毎日のトレーニングで心拍が上がりやすいときはかかりもよい。対して、心拍が上がらないときはパワーもかけにくいなど調子のバロメーターとして心拍計は最高のツールだ。
長らくPolarの製品を使ってきたが、価格や使い勝手からCATEYE OHR-31を試した。胸バンド式は呼吸を妨げるため、最近は腕バンド式を愛用している。実際にPolar腕バンド式との比較を行い、心拍の測定精度や使い勝手を確かめた。
測定方法
CATEYE OHR-31の比較検証のために用意したのはPolar Verity Senseだ。測定精度は腕バンド方式ながら、チェストタイプ心拍計のPolar H10とほぼ同じ測定精度であることが知られている。polarは最も信頼のおける心拍計メーカーだ。
対するCATEYE OHR-31の精度を確認するにあたって、ZwiftPowerのデュアルレコード機能を用いた。まず、パワーメーターをPC側とサイクルコンピューター側に同時接続する。CATEYE OHR-31をPC側に接続し、Polar Verity Senseをサイクルコンピューター側に接続した。
デュアルレコードの時間にズレが生じているため、PC側のデーターはOffsetを15に設定した。パワーメーターを1台にしてデーターを揃えたのは、Polar Verity Senseで確認されている「心拍測定の立ち上がりの遅れ」の既知の弱点を確認するためだ。
チェストバンド方式で高い測定精度で知られるPolar H10と比較するとVerity Senseは立ち上がりが遅れる傾向にある。実際の心拍が後から追いかけてくるように上がってくるのだ。結果的に、心拍のラグが生じることがわかっている。
この傾向は、腕バンド式の旧型Polar OH1やWHOOPにも同様の立ち上がり遅延の傾向が見られる。
平均測定精度で話をすると、チェストタイプと腕バンド式とでは違いがない。しかし、共通して心拍測定の立ち上がりが遅れるのは宿命のようだ。
測定結果
CATEYE OHR-31とPolar Verity Senseを比較したデータは以下の通りだ。ウォーミングアップで10分流した後、30秒FTP150%、15秒レストを13本繰り返す。2分30秒レストした後2セット目を行い、90秒レストした結果だ。心拍は最大170近くまで一気に上る。
全体の測定結果の誤差は0.15%だった。平均値をみると測定の誤差がないと結論付けて間違いなさそうだ。では立ち上がりのデータはどうだろうか。まずは、10分のウォーミングアップから一気にFTP 150%にあげ、心拍も上げていく場合を確認した。
インターバルが始まった直後の50秒弱のデータの誤差は15%だ。
11:56地点では双方の心拍計の値は一致しているが、心拍の立ち上がりはPolar Verity Sense(青)が明らかに遅い。体感的にもPolar Verity Senseは後から心拍数が追いついてくる感じでラグがある。
CATEYE OHR-31(赤)は体感的にもリニアに心拍数と連動するような測定を行う。体感的な心拍の上がり方もCATEYE OHR-31のほうが近いといえる。
インターバルトレーニング中のデーターを確認する。平均の誤差は0.06%だ。しかし、CATEYE OHR-31(赤色)と比べるとPolar Verity Sense(青色)は遅れて追いかけてくるような測定傾向だ。なお、冒頭でも説明した通りラグを確認するために、パワーメータのデーターは寸分狂いなく一致している。
それぞれの心拍計の間には、明らかな測定のズレが生じているのだ。
レスト中のデータを確認する。2.23%の誤差がある。心拍が上がっていく時にもPolar Verity Senseは遅れるが、心拍が下がっていくときも測定遅延が発生している。
レストが終わり、2セット目のインターバル直後の心拍データは上グラフのとおりだ。赤色のCATEYE OHR-31は上がっていく心拍とほぼ同じように連動して測定が行われている。対して、Polar Verity Sense(青色)は遅れながらも最終的にはOHR-31に追いつくような動きをする。
OHR-31の動作の測定傾向のほうが体感的にも連動している。一定の心拍が続く場合は双方の心拍計に違いを認められないが、立ち上がり、心拍が一気に落ち着いていく場合はPolar Verity Senseのほうが遅く感じられ、後から着いてくるような感じを受けた。
局所的に見れば、5〜8%の誤差があるにせよおよそ40分間のメニュー中の測定誤差はわずか0.15%だった。この結果は心拍計のブランドとして最も有名であり、信頼あるPolarと比較して高い精度であることは間違いない。
そして、CATEYE OHR-31のほうが反応速度が早く、実際の体感的にも合っているという結果だった。とはいえ、心拍計というものはパワーメーターのように、ライド中に常時見ることはない。
しかし、日々ZWIFTで心拍計を表示しながらトレーニングを行い、心拍の反応を見ながら調子の良し悪しを確認している筆者としては、心拍計の測定精度と、心拍の立ち上がり方、心拍の上がり具合をリアルタイムで確認することが非常に重要になっている。
CATEYE OHR-31 光学式心拍センサー仕様
CATEYE OHR-31は腕や上腕に巻き付けて使用する。ひじ下の腕(注射を刺される付近)に巻き付けることが推奨されているが、上腕でも同様の値が測定できている。
センサーとバンド固定部分は一体型になっている。充電はマグネット式になっており、乗せるだけで充電が開始される。電源はCATEYEロゴをダブルクリックするだけだ。
- 通信方式:Bluetooth、ANT+
- 防水性:IPX7、30分間一定水深(1m)に水没しても内部に浸水しない
- 電源:リチウムイオンポリマー
- 取付方法:アームバンド L(対応径:約70~110mm)
*オプション:アームバンド S(対応径:約50~70mm) - 電池寿命:約24時間
- サイズ:45 x 33 x 12 mm(アームバンドは除く)
- 重量:約11g(アームバンドは除く)
嬉しいのは消耗品や保守部品が安いことだ。
■アームバンドS (OHR-31用) [1604580]
希望小売価格:¥880(税込)
■アームバンドL (OHR-31用) [1604581]
希望小売価格:¥880(税込)
■チャージングドック(OHR-31用) [1604570]
希望小売価格:¥1,430(税込)
また、アームバンドも薄く調整しやすい。Polarのバンドは生地が厚く汗を吸ってしまうため使い勝手が悪かった。Polarは交換バンドが3000円近くするため、コストも掛かる製品だった。また、Polarのバンドはベルクロの折り返し部分が弱く次第に破れてくるデメリットがあった。
実は今回、Polarとは別のアームバンド式心拍センサーを試したのにはこれらの理由があった。また、PolarはPCとの相性が悪く通信を拾わずロスすることも多かった。
CATEYE OHR-31は性能のみならず、使い続けるための保守部品のコストも抑えられた抜け目のない製品に仕上がっている。
まとめ:大阪が生んだ隠れた名品
CATEYEは大阪に本社を置くライトやリフレクターで高いシェアを持つ企業だ。ライトでは絶対的な地位を確立したブランドであるが、心拍センサーに関しては未知数だった。
しかし、実際の測定精度は心拍計ブランドのPolar製品と遜色がない0.15%、心拍計測の立ち上がりの良さ、計測の反応の良さなど勝っている部分も多かった。また、価格も実勢価格が7000円弱であり、下手な中華ブランドに迫る価格だ。
しかし、CATEYEという安心と信頼感や、バンドや充電器などの保守部品の充実性(ここが重要)と安価さは非常に魅力的な製品に仕上がっている。重量も11gとほとんど重量を感じずもはや、長年愛用してきたPolarを使わなくなってしまったほどの出来だ。
CATEYEはこれまでライトのイメージが強かったが、OHR-31腕バンド式心拍計は大阪が生んだ隠れた名品だ。安心して使っていい。それどころか、大手の腕バンド式を確実に脅かす存在に仕上がっている。