Cannondale Super Six EVO インプレッション 第5世代は「全ての環境で最速」

4.5
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キャノンデールが世に送り出した第5世代のSuperSix EVO、特にその頂点に位置する「LAB71」を試した。

この最新鋭のマシンに乗っていくと、そこには伝統的なロードバイクの概念を覆す革新が随所に散りばめられていた。

レビューでは、重量、空力、ジオメトリ、剛性、操作性、そして独自のデルタステアラー機構に至るまで、多角的な視点からその本質を解き明かしていく。

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Series 0カーボンと軽量化への執念

LAB71だけに使用が許されたSeries 0 Carbon.

キャノンデールの技術的なミッションは常に明快だ。この第5世代においても「比類なきスピードとハンドリングを維持しながら、あらゆる箇所で重量を削ぎ落とすこと」が最優先事項とされた。

その回答として提示されたのが、LAB71に採用された「Series 0」カーボンレイアップである。

フレームレイアップの進化と重量

トップチューブにはCarbonの模様が見える。

第5世代のSuperSix EVOは、LAB 71(Series 0)、Hi-MOD、そしてスタンダードカーボンの3つの階層で構成されている。

LAB71にのみ許されたSeries 0は、キャノンデール史上最も軽量なディスクブレーキ用フレームであり、塗装済みで全てのパーツを含むサイズ56において、わずか728gという驚異的な数値を達成した。

これは、単に軽量なカーボンシートを使用するだけでなく、レジンの含有量や積層の向きを極限まで最適化することで、構造的な完全性を保ちながら極限の薄さを実現した結果である。

ヘッドチューブはさらに細くなった。

グレード フレーム重量 フォーク重量
Series 0 (LAB71) 728g(-42g) 392g
Hi-MOD 781g(-29g) 414g
スタンダードカーボン 910g(-5g) 427g

この数値の背後には、第4世代からの着実な進歩がある。LAB71、Hi-MOD、カーボンの各レイアップにおいて、それぞれ42g、29g、5gの軽量化が前世代比で達成されている。

一見するとLAB71の42gという削減幅は小さく見えるかもしれないが、空力性能を維持、あるいは向上させながらこの域に到達することは、工学的には「乾いた雑巾を絞る」ような困難な作業である。

コンポーネント重量の削減

LAB71モデルの金具はすべてチタン製になった。

フレーム単体の軽量化に留まらず、キャノンデールはシステム全体での軽量化を追求している。LAB71には、チタン製のシートポストハードウェアが採用されており、安全性を妥協することなく数グラムの単位で重量を削っている。

さらに、完成車のSL(Super Light)モデルの導入は、軽量志向ライダーに向けた戦略的な一手である。

新開発の一体型ハンドル。

特に注目すべきは、新たに開発された「SystemBar Road SL」コクピットだ。これは、グラム単位で重量を追跡するライダーのために設計された超軽量な一体型ハンドル・ステムであり、重量はわずか265gに抑えられている。

第4世代で採用されていたSystemBar R-One(415g)と比較すると、実に150g近い軽量化をこのパーツのみで実現している事実は特筆に値する。

コクピット・モデル 重量 特徴
SystemBar Road SL 265g 超軽量仕様、ラウンドトップ形状
SystemBar Road 375g 空力最適化仕様、翼断面形状

エアロボトルは改良され軽量化した。

また、細かい部分では、新型の「CarbonGrip Aero Cages」が従来のReGripから26%の軽量化を達成しており、Gripper Aero Bottleとの組み合わせにより、重量削減とドラグ低減を同時に実現している。全LAB71およびHi-MODモデルに標準装備している。

これら小さな減量の積み重ねにより、LAB71の完成車重量は、箱出し状態で6.35kgというUCI規定を大きく下回る数値を叩き出している。

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空力性能:時速15km/hから始まるスピードの科学

最も薄い部分の暑さはわずか1cmだ。

キャノンデールの開発哲学の根幹には、「Aerodynamics = Speed」という確固たる信念がある。彼らは、空力性能、質量、剛性を独立したターゲットとして捉えるのではなく、ライダーの全体的なパフォーマンスを最大化するための統合的な効率として最適化している。

空力の支配

ホワイトペーパーにおいて、キャノンデールはMartin et al. (1998) のパワー方程式を引き合いに出し、走行抵抗の正体を科学的に証明している。

$$\eta.P_{Athlete}=P_{NET}=P_{Aero}+P_{RR}+P_{WB}+P_{PE}+P_{KE}$$

この方程式において、空気抵抗は速度の3乗に比例して増大する。しかし、多くのライダーが誤解しているのは、空力が重要になるのはプロのような高速域だけであるという点だ。

キャノンデールのデータによれば、平坦な道路において、時速わずか15km/hという低速域ですら、空気抵抗は全抵抗の過半数を占めるようになる。

走行速度 全抵抗に占める空気抵抗の割合 (推定)
15 km/h 約 50%
50 km/h 約 90% 以上

翼断面形状の最適化

第5世代SuperSix EVOのチューブ形状は、CFD(数値流体力学)と風洞実験を繰り返すことで、実世界でのドラグ低減を実現するように洗練された。

各チューブはNACA翼断面形状をベースに、後端を大胆に切り落とした「トランケーテッド・エアロフォイル(切り詰められた翼断面)」を採用している。これにより、構造的な効率(剛性対重量比)を損なうことなく、気流の剥離を最小限に抑えている。

具体的には、第5世代は第4世代と比較して、時速40km/h走行時のヨー角毎の加重平均計算において0.003m^2(CdA値)の削減を達成した。これは出力に換算すると、時速45km/hにおいて旧モデルから約5.7ワットの節約に相当する。

この進歩は、特にフロントエンドの洗練によるものが大きい。フォーククラウンやヘッドチューブから余分な素材を削ぎ落とし、前面投影面積を最小化することで、空気の「壁」をより鋭く切り裂く形状へと進化したのである。

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剛性感:パワー伝達の最適化

TOUR誌やSILCA研究所が「バーチカルコンプライアンス」という言葉も使っているが、垂直方向の柔軟性、サドルに対してある力を加えたときに、BBからシートポスト付近がどれくらい変形するのか、という意味で理解しておくといい。

以下の剛性データは、シートポストがある変形量に達するまでにどれくらいの力を要するのかを示している。

  • VENGE:261N/mm
  • AEROAD CFR:188N/mm
  • TARMAC SL7:156N/mm
  • TARMAC SL8:146.64N/mm
  • SuperSixEVO4:120N/mm
  • (参考)CANYON ENDURACE:68N/mm

SuperSix EVO Gen5のデータはまだないが大きくはズレないだろう。

「エアロ形状=乗り心地が悪い」という通説は決して間違えていない。垂直方向の剛性値にも現れている。VENGEやAEROADは特に数値が高く(≒硬く)コンフォートではない。SL8は146.64 N/mm程度だ。

キャノンデールはパワー伝達を真剣に捉えている。すべてのチューブ形状とカーボンレイアップは、それぞれのフレームサイズに合わせてエンジニアリングされており、これが最適な剛性と効率を実現している。

プロポーショナル・リジディティ(比例剛性)

ホワイトペーパーに示されたデータによると、ヘッドチューブ剛性とボトムブラケット剛性は、フレームサイズの増大に合わせて累進的に強化されている。

これは、大きなサイズのフレームに乗る、より体重が重く高出力なライダーに対しても、小さなサイズのライダーと同じような剛性感覚を提供するための工夫である。

  • ボトムブラケット剛性: ペダリングパワーを推進力に変える中核部分であり、サイズが上がるにつれて線形的に剛性が高められている。
  • ヘッドチューブ剛性: ステアリングの精度を司る部分。ここも同様にサイズごとに最適化されており、ハイスピードなコーナーでもフロント周りがよれることなく、狙ったラインを正確にトレースできる。

重要なのは、これらの剛性特性が Series 0、Hi-MOD、スタンダードカーボンの3つのレイアップ間で共通化されている点だ。つまり、どのグレードのEVOを選んでも、キャノンデールが意図した「爆発的な加速感」と「正確なハンドリング」という乗り味の本質は変わらない。

今回はLAB71しか試せなかったが、本当にHi-MODやスタンダードカーボンでも同様の乗り心地なのかは後日確認したい観点ではある。

ホワイトペーパー上の情報を信じるのならば、厳密には上位モデルとの差は、同じ剛性をより少ない材料(=軽量)で実現しているかどうかだけだ。

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ジオメトリ

Gen5 ジオメトリ比較

下段の ( ) 内はGen4(同サイズ)との差を表している。 Gen5の 50, 52 サイズについては、Gen4の 51 サイズと比較できないため、Gen4数値は記載していない。

項目 44 48 50 (新) 52 (新) 54 56 58 61
Wheel Size 700c 700c 700c 700c 700c 700c 700c 700c
A Seat Tube Length 40.0
(±0)
42.9
(-0.9)
44.8 46.7 49.0
(-2.5)
51.0
(-2.4)
53.2
(-3.5)
57.0
(-3.0)
B Top Tube Horizontal 51.0
(-0.2)
52.2
(+0.2)
52.9 53.6 54.4
(-0.2)
56.0
(-0.2)
57.7
(-0.1)
60.0
(-0.3)
C Top Tube Actual 49.2 50.3 51.1 51.9 52.7 54.3 55.9 58.2
D Head Tube Angle 70.9°
(±0)
71.2°
(±0)
71.2° 71.2° 71.2°
(±0)
73.0°
(±0)
73.0°
(±0)
73.0°
(±0)
E Seat Tube Angle 74.5°
(+0.2)
74.0°
(-0.3)
74.0° 74.0° 74.0°
(+0.3)
73.5°
(+0.2)
73.0°
(+0.1)
72.5°
(+0.2)
F Standover 69.4
(-0.4)
71.7
(-1.0)
73.3 75.2 77.0
(-1.8)
79.0
(-1.7)
81.2
(-2.4)
84.6
(-2.0)
G Head Tube Length 8.9
(-1.1)
10.1
(-1.3)
11.4 13.0 14.3
(-1.1)
15.4
(-1.1)
17.8
(-1.0)
20.9
(-1.1)
H Wheelbase 98.0
(-0.1)
98.5
(-0.2)
99.3 100.2 101.0
(±0)
99.5
(+0.1)
100.7
(±0)
102.4
(±0)
I Front Center 58.2
(±0)
58.6
(-0.3)
59.4 60.2 61.1
(±0)
59.5
(+0.1)
60.7
(±0)
62.4
(±0)
J Chain Stay Length 41.0
(±0)
41.0
(±0)
41.0 41.0 41.0
(±0)
41.0
(±0)
41.0
(±0)
41.0
(±0)
K BB Drop 7.4
(±0)
7.4
(±0)
7.4 7.2 7.2
(±0)
7.2
(±0)
6.9
(±0)
6.9
(±0)
L BB Height 26.9
(+0.1)
26.9
(+0.1)
26.9 27.1 27.1
(±0)
27.1
(±0)
27.4
(+0.1)
27.4
(+0.1)
M Fork Rake 5.5 5.5 5.5 5.5 5.5 4.5 4.5 4.5
N Trail 6.0 5.8 5.8 5.8 5.8 5.8 5.8 5.8
O Stack 49.5
(-1.0)
50.8
(-1.2)
52.0 53.2 54.5
(-1.0)
56.5
(-1.0)
58.5
(-1.0)
61.5
(-1.0)
P Reach 37.3
(+0.3)
37.6
(+0.2)
37.9 38.3 38.7
(+0.3)
39.3
(+0.4)
39.8
(+0.3)
40.6
(+0.3)
Q Axle to Crown 37.6 37.6 37.6 37.6 37.6 37.6 37.6 37.6

ジオメトリ改善ポイント

  1. 「レース・ジオメトリ」への回帰: 全てのサイズでStackが低く、Reachが長くなっている。より空気抵抗の少ない、深く低い前傾姿勢が可能になっている。
  2. サイズ展開の適正化: 従来の「51」サイズが廃止され、「50」と「52」に分割された。これにより、日本人の平均身長ゾーン(165-175cm)において、より精密なサイズ選びが可能になっている。
  3. ハンドリング特性の維持: ヘッド角やトレイル量はGen4を踏襲しており、定評のあるハンドリングバランスは維持されている。

純粋なレーシングバイクへの回帰

Gen5のジオメトリ最大の特徴は、「低く、遠い」プロフェッショナル・フィットへの移行にある。Gen4と比較して、スタックが全サイズで約10mm低く設定されており、リーチも数ミリ伸長している。

筆者の場合、Tarmac SL8でハンドルベタぞこにセッティングしていたが、SSE Gen5では15mmのスペーサーを噛ませている。本来は7mmでよいが実際に合わせると15mmに落ち着いた。

  • 攻撃的なエアロポジション: ヘッドチューブ長が短縮され、ライダーは深い前傾姿勢を強いられる。これはエアロダイナミクスを最優先した設計であり、UCIワールドツアーを戦うプロ選手の要求をダイレクトに反映した「ピュアレーシングバイク」の性格を帯びている。
  • 柔軟性の要求: 一般ライダーにとっては、Gen4よりも深い前屈柔軟性が求められる。アップライトで楽なポジショニングを好む場合、コラムスペーサーを多用するか、ワンサイズ上を選択する必要が出てくる可能性がある。

熟成された「中庸」バランス

ジオメトリ数値から読み取れるハンドリング特性は、奇をてらわない王道のレーシングハンドリングだ。

  • 直進安定性 (Trail 58mm): 多くのサイズでトレイル量を58mmに設定。これはクイックすぎずダルすぎない絶妙なバランスで、高速コーナーでの安定感と、集団内での微修正のしやすさを両立している。
  • 旋回性能 (チェーンステー 410mm): 全サイズで410mmという極めて短いチェーンステー長を採用。これにより、ダンシング時の反応性(振りの軽さ)や、鋭いコーナーリング性能が確保されている。
  • 重心位置 (BB Drop): Gen4と同等のBBドロップ(7.2cmなど)を維持しており、低重心によるコーナリングの安心感も健在。

結論としては、ハンドリングの「味付け」はGen4から大きく変えておらず、乗り換えても違和感なく操作できる。変更点はあくまで「ライダーの乗車姿勢(空力)」に集中している。

 Gen4からの移行

① サイズ選び

Gen5は実質的に「ワンサイズ小さく感じる(低くなる)」設計になっている。

  • Gen4でスペーサー無し(ベタ下げ)の場合: Gen5ではハンドルがさらに1cm下がるため、同じ落差を維持するには1cm分のスペーサーが必要になる。
  • Gen4で既にスペーサーが多い場合: Gen5ではさらにスペーサーが必要になるため、見た目(コラム長)や剛性の観点から、ワンサイズ上のフレームも検討視野に入れたほうがよい。

② 「幻の51サイズ」ユーザーへ

Gen4で「51」に乗っていた方は、最も悩ましい選択となっている。

  • 攻撃的に乗りたいなら「50」: スタックは1.5cm下がるが、リーチはほぼ同じ。落差を出したい、よりレーシーに乗りたい場合は50を選び、ステム長で調整する。
  • ポジション維持なら「52」: スタックはほぼ同じ(-3mm)、リーチが5mm伸びる。ステムを10mm短くすることで、Gen4の51に近いポジションを再現可能。

③ コックピット調整

リーチが伸びているため、Gen4と同じステム長を使うとハンドルが遠くなる。柔軟性に余裕がない場合は、ステムを10mm短くする等の調整が推奨される。

(参考) 廃止されたGen4 サイズ51との比較

新設された50, 52サイズが、旧51サイズと比較してどのような位置づけになるかを確認した。 Gen4 Size 51: Stack 53.5 / Reach 37.8

  • Gen5 Size 50: Stack 52.0 (-1.5) / Reach 37.9 (+0.1)
    • 旧51より明確にハンドルが低くなる。リーチはほぼ同じ。
  • Gen5 Size 52: Stack 53.2 (-0.3) / Reach 38.3 (+0.5)
    • 旧51に近い高さ、ハンドルが少し遠くなる。

旧51サイズに乗っていたライダーにとって、「52」サイズが最も近い選択肢となるが、それでもよりアグレッシブ(遠い)ポジションになる。「50」サイズはかなり落差を出したいライダー向けとなる。

TARMAC SL8 (52) → Gen5 (50)

筆者の場合、Tarmac SL8 (Size 52) から Gen5 (Size 50) への乗り換えは非常にスムーズに行える。リーチがほぼ同じであるため、極端なポジション変更やステムの買い直しをせずに移行できた。主な違いは「ハンドルの高さ」と「安定志向のハンドリング特性」の2点だ。

私の例を参考に、ご自身のバイクから乗り換える際の要点をつかんでほしい。

 ポジションのマッチング

項目 Tarmac SL8 (52) Gen5 (50) 差分 対策
Reach 380 mm 379 mm -1 mm (ほぼ同じ) ステム長は変更不要。
現在のステム長そのままで、違和感なく同じ距離感を出せる。
Stack 527 mm 520 mm -7 mm (低くなる) スペーサーを「5mm〜10mm」追加。
現在SL8でベタ底(スペーサー無し)でない限り、Gen5でスペーサーを積むことで全く同じ高さを再現可能。実際には15mm積んだ。

移行結果

  • ステム: 現在SL8で使用している長さをそのまま使用できる(例:SL8で100mmなら、Gen5も100mm)。1mmの差は誤差の範囲だ。
  • ハンドル: 現在のものをそのまま使用可能。
  • スペーサー: Gen5の方がヘッド位置が7mm低いため、SL8と同じ落差にするにはスペーサーを5mm〜10mmする必要がある。

乗り味・ハンドリングの違い

ポジションは似ているが、バイクの挙動(性格)には明確な違いが生じる。

項目 Tarmac SL8 (52) Gen5 (50) 変化の内容
Head Angle 72.5° 71.2° 寝ている (Slack)
Gen5の方がハンドル操作に対して穏やか。
Wheelbase 975 mm 993 mm +18 mm (長い)
直進安定性が大幅に向上。
Trail 58 mm 58 mm 同じ
低速時の切れ込み具合などは似た感覚。
BB Drop 74 mm 74 mm 同じ
コーナリングの重心感覚は同じ。

走行フィールの変化

  • 安定性の向上: Gen5はホイールベースが約2cm長く、ヘッド角も寝ているため、Tarmac SL8のような「ヒラヒラとした機敏さ(キレ)」よりも、路面に吸い付くような直進安定性を強く感じる。
  • 下り・横風: 特に高速ダウンヒルや横風区間では、Gen5の方がふらつきにくく、安心感が高まる傾向にある。
  • 反応性: ゼロ発進や急加速のキレは、コンパクトなSL8の方が鋭く感じる。Gen5もチェーンステー長は同じ(410mm)なので、反応が鈍いとは感じにくい設計になっている。
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デルタステアラー:統合設計の革命・・・か?

第5世代SuperSix EVOにおいて、踏襲されたのが「デルタステアラー」である。これはキャノンデール独自の革新的なステアラーチューブデザインであり、ピザのスライスのようなユニークなV字形状を特徴としている。

デザインの目的と空力への寄与

従来の円形ステアラーで完全内装化を行う場合、ケーブルを通すスペースを確保するためにヘッドベアリングを大型化する必要があった。しかし、ベアリングの大型化はヘッドチューブの前面投影面積を増やし、空気抵抗を悪化させる。

デルタステアラーはこの問題を解決する。ステアラーを三角形に近い形状に削ぎ落とすことで、ケーブルがステアラーの側面を通るスペースを確保しつつ、上部ベアリングに標準的な1-1/8インチ径を採用することを可能にした。

これにより、ヘッドチューブを極限までスリムに保つことができ、結果として他の内装ルーティングバイクよりも少ない空気抵抗を実現している。

素材と耐久性:Innegraの採用

Gen5でも引き続きInnegraを採用していることを確認している。

ケーブルがステアラーチューブの内部を通る際、ステアリング操作に伴ってケーブルがステアラーに擦れるという懸念が生じる。キャノンデールのエンジニアはこれに対し、ステアラーの最外層に「Innegra」という特殊繊維を採用することで対処した。

  • Innegraの特性: 極めて軽量でありながら、優れた耐衝撃性と耐摩耗性を持つ。
  • 役割: ケーブルによる摩耗(Abrasion)からステアラーの構造体を保護し、長期間の使用においても強度を損なわない。

この設計により、キャノンデールは美しさと耐久性を両立させ、フレームの生涯保証を提供している。

メンテナンス性と互換性:技術的課題

デルタステアラーは「統合と標準化」のバランスにおいて非常に興味深いアプローチをとっている。

コクピットの自由度としては、独自のSystemBarだけでなく、標準的な1-1/8インチステムとも互換性がある。これは、Conceal Stemや専用のフィラーピース(左右の埋めパーツ)を介して実現される。

調整の難易度についてはわりと高く、三角形のステアラーは円形ではないため、コンプレッションプラグ(拡張プラグ)の滑りやすさがある。プラグが適切に固定されないと、ヘッドセットのプリロードが不足し、ガタつきの原因となる。

これを防ぐためには、特定のカーボンペーストの塗布や、プラグの正確な配置が求められる。

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適したレース:全方位を制する万能性

SuperSix EVO LAB71は、特定の一場面で輝くバイクではなく、プロがステージレースのあらゆる局面で勝利を狙える完全なレーシングマシンとして開発されている。

クライミングと山岳ステージ

Series 0カーボンの軽さは、重力との戦いにおいて無類の強さを発揮する。ホワイトペーパーの「勾配の効果」において、勾配が増すにつれて位置エネルギー(PE)への要求が高まり、ドラグの重要性が相対的に低下することが示されている。

しかし、LAB71は非常に軽量なため、急勾配の超級山岳においても、ライダーの出力を一切無駄にすることなく位置エネルギーへと変換する。EF Pro Cyclingのクライマーたちが、このバイクを「登りで勝利するための究極のツール」と称するのも頷ける。

逃げと高速巡航

逃げ集団での単独走行や、集団の先頭で一定のペースで引き続ける際において、進化した空力性能が力を発揮する。

特にSystemBar Roadコクピットは前面のクリーンな気流を管理し、第4世代よりもさらにワットを節約する。長距離のステージレースにおいて、数パーセントのエネルギー節約が終盤の勝負を分けることはプロの世界では常識になっている。

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誰に適したバイクか

LAB71 SuperSix EVOは、その卓越した性能ゆえに、要求レベルの高いあらゆるライダーを満足させる。

プロフェッショナル、あるいはトップアマチュアのレーサーにとって、これ以上の選択肢を見つけるのは難しい。数値上と特性がよく似ているのは、S-WORKS TARMAC SL8だろう。しかし、SSE Gen5はSL8を空力性能で凌ぐ可能性が高い。

軽量性、空力、剛性のすべてにおいて妥協がなく、レースのどのような展開(アタック、スプリント、登坂)にも即座に対応できる「最強の武器」を求めるライダーに最適である。

デルタステアラーの精緻なメカニズムや、Series 0カーボンの薄さ、チタンハードウェアの質感など、自転車を単なる移動手段ではなく「高度な工学製品」として愛好するライダーにとって、このバイクは所有する喜びを最大限に満たしてくれるだろう。

そして、やはり軽さと快適性を両立させたいヒルクライマーに最適だ。

「登りは軽くなければならない、しかし下りや平坦も犠牲にしたくない」という贅沢な要求を持つライダーにとって、SLモデルは福音である。

6.4kgという軽さは、登坂での圧倒的なアドバンテージとなる一方で、安定したジオメトリが、その後のハイスピードな下りでも安全かつスリリングな体験に変えてくれる。

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実走インプレッション

実際にLAB71 SuperSix EVOをテストした際のフィーリングを分析した。

加速と駆動:BB付近?感じる硬さ

最初のペダリングで感じるのは、ボトムブラケット周辺の受け止め方だ。「脚にくる」ような不快な硬さではなく、入力したパワーがロスなく後輪に伝わり、即座に速度へと変換される「効率の良さ」として感じられる。

しかし、本当に効率が良くなっているかという数値的な事実は持ち合わせていない。そう感じるだけだ。

今回は写真のARC 1100ではなく、使い慣れたROVAL RPAIDE CLX IIIを使用したが、ホイールとの相乗効果により、時速30km/hから45km/hへの加速は驚くほどスムーズで、空気の壁を感じさせない。どちらかと言えば、ホイールの性能かもしれないが・・・。

このレベルのバイクになってくると、何を使っても速いと感じる。そして0.003のCdAの改善は体感できるレベルではないのだが、確実にGen4から改善されているという事実は「速いバイクに乗っている」という精神的かつ、心理的な安心感がある。

登坂性能:ダンシングの軽快さは?

勾配8%以上の登りでダンシングを行うと、フロント周りの軽さが際立つ。

SystemBarの統合システムが高剛性なのか、ハンドルを左右に振る動作に一切の曖昧さがない。バイク全体が自分の身体の延長線上にあるかのような一体感があり、急斜面でのアタックを自然と誘発するような特性を持っている。

下りと安定性:ライン・トレースの正確さ

ヒルクライム後のダウンヒルにおいて、SuperSix EVOの真価が発揮される。

Tarmac SL8が非常にクイックな反面、荒れた路面ではライダーが緊張を強いられることもあるが、EVOはどっしりとした安定感を保ちつつ、狙ったラインを寸分違わずトレースできる。

これは、フロント・センターの設計と、ヘッド周りの剛性バランスが完璧に調整されている証左なのだろう。

乗り心地:長時間の疲労は

プロが使用するのに十分な剛性を持ちながら、サドルを通じて伝わる突き上げは驚くほど丸められている。これは、最薄部が1cmの極細のシートステーと、専用設計のカーボンシートポストが微細に振動を吸収しているためだろう。

100kmを超えた後の「脚の残り具合」は、このバイクがいかにライダーに優しい(効率的である)かを証明している。

トレーニングで180km~200kmほど走ることがあるが、この距離になると最後に脚を残せるバイクと、そうでないバイクは明確にわかれる。厳密にはホイールとタイヤの影響もあるが、バイクの小さな動き、性格的な部分も影響してくる。

SSE Gen5は後半に脚を残せる私が好んでいるタイプだった。Gen4でその傾向があったため迷わずGen5も購入したが、脚を残せる、脚あたりの良さは期待以上だった。これは距離があるアマチュアのレースでも十分、いや、自分の能力以上に使える。

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まとめ:Faster Everywhereの真意

SuperSix EVO Gen 5 LAB71は、既定路線通りの進化を遂げていた。革新的なギミックも無くつまらないと言えばそれまでだが、堅実な進化である。数値上、事実上、確実に速くなったことは間違いない。

しかしキャノンデールは、単に「数値」を追い求めるだけでなく、ライダーが路面から受け取る情報、コーナーでの安心感、そしてアタックの際の一体感という「官能的な性能」を、冷徹なエンジニアリングによって裏打ちすることに成功した。

軽量性と空力のどちらかを選ぶ時代は終わり、このバイクはその両方を、UCI規定の限界さえも超えてパッケージングとして提供している。

ワットの節約、10mmのスタック低下、そしてSeries 0カーボンの繊細な積層。それらすべてが組み合わさることで、「Faster Everywhere」という言葉は、単なるスローガンから、このバイクに乗るすべてのライダーが体験する現実へと変わる。

SuperSix EVO Gen 5 LAB71は、現代のロードバイク界における技術な到達点の象徴であり、未来のレーシングマシンのあるべき姿を、今、この道の上に示している。

SuperSix EVO Gen.5 開発の裏側

Cannondale Super Six EVO Gen 5はなぜ速い?スピードを再定義するエンジニアリングの極致
キャノンデールSuperSix EVO第5世代を徹底解説。LAB71導入による軽量化と空力性能の進化、Hi-MODとの違い、実走での乗り味を凝縮。ロードバイクの次世代基準を提示する、SEO・AEOに最適化された最新レポートです。
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