キャノンデールのフラッグシップ、SuperSix EVOが第5世代へとフルモデルチェンジを果たした。前作Gen4において、軽量・空力・ハンドリングの三要素を究極のバランスで統合し、「これ以上の進化は困難」と思われた。
しかし、Gen5は「Faster Everywhere(あらゆる場所でより速く)」というコンセプトをさらに突き詰め、大幅な軽量化と空力性能の向上、そして大胆なジオメトリの刷新を断行している。
一見してわかるのは、スローピングがさらにきつくなったアグレッシブなシルエットと、極限までシェイプアップされたフレーム。それは、レースバイクの未来を再定義するキャノンデールの覚悟の現れである。
空力性能:CdA 0.003の改善
- 空力性能は前作Gen4比でCdAが0.003改善。
- 40km/hの速度で40km走行した場合、約12秒のタイム短縮に相当。
- 時速15kmという低速域から空気抵抗改善。
「軽量化は空力を犠牲にする」という従来の定説を、Gen5は見事に打ち砕いた。
風洞実験とCFD解析の結果、前作比でCdAを0.003改善。数値としては小さく見えるが、約2.5Wのパワー削減を意味し、40kmの距離を時速40km/hで走行した場合、Gen5はGen4よりも12秒速く先着する。
これはレーススピードにおける数ワットの節約、あるいはゴールスプリントでの数センチの差に直結する。
そして、時速15kmといった中低速域から空気抵抗が支配的になるという最新の知見に基づき、登坂時であってもそのエアロダイナミクスの恩恵を受けられる設計となっている。
計算の前提
CdAが0.003改善し、40km/hで40km走行した場合のタイム差を計算。約11.5秒の短縮になる。
- 基準速度: 40km/h
- 距離: 40km
- 改善CdA: 0.003
- 条件: 「40km/h時点と同じパワーを出力し続けた場合」のタイム差を算出
- 計算上の基準出力: 約287ワット (体重+車重80kg、平坦、無風を想定)
結果
- タイム短縮: 11.5秒 速くゴールできる。
- パワー節約: もしタイムを短縮せず「同じ40km/h」で走る場合、約 2.5ワット 楽に走れる。
わずか1cmのシェイプ
- シートポストの最薄部がわずか1cmに。
- ヘッドチューブは薄型化しつつ、側面方向に長い設計(参考:Tarmac SL8より20mm弱長い)。
- トップチューブ後方は非常に薄く、チェーンステーは両側ともにTTバイクのような極太設計。
Gen5のデザインは、エンジニアリングの機能美が凝縮されている。
極限の薄型化がフロントトライアングル側に施された。シートポストの最薄部はわずか1cmに到達。また、ヘッドチューブの前面投影面積も極限まで絞り込まれている。
ヘッドチューブの設計は側面方向(前後幅)を拡大し、スペシャライズドのTarmac SL8と比べるとさらに20mm弱長い設計になっている。見た目にもスタイリッシュに統合されており、視覚的な重苦しさがなく、まるでDogma Fのヘッド周りのように仕上がっている。
特筆すべきは「上を薄く、下を太く」という設計。極太のチェーンステーが駆動剛性を担保し、極薄のトップチューブ周辺が軽量性と快適性を担う、キャノンデール独自の計算が光っている。
軽量化:Hi-MODとGen 4 LAB 71の差は4gに
- Gen5の全てのモデルが前作比で軽量化。
- LAB71は728g、Hi-MODは781g、Carbonは910g。
- Hi-MODは、Gen4 LAB71比で+4g。
Gen5の開発において、重量削減は執念に近いレベルで行われた。
特筆すべきは、セカンドグレードである「Hi-MOD」モデルが、前作Gen4の最上位グレード「LAB71」との差はわずか4g(ほぼ誤差レベル)の軽量性を手に入れた点だ。Series 0カーボンを採用したLAB71のフレーム重量は驚異の728g(サイズ56/塗装済)で-49gの軽量化を達成している。
フォークを含めたトータルシステムでの軽量化により、UCI規定の6.8kg制限を容易に下回るポテンシャルを全モデルが備えている。これは、単なる素材の変更だけでなく、カーボンの積層構造の徹底的な見直しによる成果である。
LAB71:至高の素材とディテールへの拘り
- Series 0 カーボンを使用した最軽量・最高峰モデル。
- RAWカラーには超軽量ペイントを採用。
- シートポストの金具類にはチタンを採用し、極限の軽量化。
フラッグシップ「LAB71」は、もはや工業製品というより芸術品の域にある。
貴重な最高品質カーボン「Series 0」を使用し、RAWカラーモデルには1g単位で重量を削るための超軽量ペイントが施されている。さらに、シートポストのクランプ金具に至るまでチタン製とするなど、一切の妥協を排したスペックが与えられている。
洗練されたデルタステアラーと利便性
- デルタステアラーを継続採用し、前面投影面積の最小化と内装化を両立。
- バッテリーはBB下から挿入する方式を継続し、低重心化を実現。
- 軽量化した「ReGrip Aeroケージ」と「Gripper Aeroボトル」による一体設計。
継続採用された三角形のデルタステアラーフォークコラムは、ケーブルフル内装を実現しながらヘッド周りのスリム化に貢献。ハンドリングのダイレクト感を損なうことなく、クリーンなコックピットを提供している。
ボトル・インテグレーションフレームと専用設計された「ReGrip Aeroケージ」および「Gripper Aeroボトル」は、装着した状態が最も空力性能が高まるように設計されている。ボトル自体も軽量化され、システム全体でのパフォーマンス向上に寄与している。
バッテリー配置はBB下から挿入する方式を継承した。低重心化はもちろん、メンテナンス性の高さもプロメカニックやライダーから高く評価されるポイントだ。
パーツラインアップ:専門性と汎用性の融合
- ハンドルの刷新。エアロハンドルと軽量丸ハンドルの2系統をラインアップ。
- スルーアクスルを改良。アクスルヘッドをフラット化し、フレームとツライチに。
- UDH(ユニバーサル・ディレイラー・ハンガー)に対応。
ハンドルが刷新された。一体型のmomoデザインに代わり、空力特化のエアロハンドルと、登坂に適した軽量丸ハンドルの2系統をラインアップ。ライダーの好みやコースプロフィールに合わせた細かなセットアップが可能となっている。
スルーアクスルが洗練された。前作で課題とされていたアクスルヘッドをフラット化。フレームとのツライチ化による空力改善に加え、キャプティブ・ワッシャーの採用により、確実な固定とスマートな外観を両立した。
待望のUDH(ユニバーサル・ディレイラー・ハンガー)への対応。最新のドライブトレインへの適合性と、万が一のトラブル時におけるスペアパーツの入手性が向上している。
ジオメトリ:時代に逆行する「こだわり」の最適解
- サイズ展開を細分化。コスト削減が進む業界動向とは真逆のライダーファースト設計。
- スローピングを強めた設計思想により、低重心化と反応性を向上。
昨今のトレンドである「サイズラインアップの削減によるコストカット」に対し、キャノンデールは逆にサイズの細分化という道を選んだ。すべてのライダーが最適なポジションを得るための、メーカーとしての誠実な姿勢と言える。
また、ジオメトリは結果的によりアグレッシブなスローピング形状へと変更された。これは見た目の躍動感だけでなく、フレームの低重心化と軽量化、そして現代のレースシーンで求められる瞬発力を高めるための、キャノンデールが導き出した唯一無二の解答である。
完成車重量
| Product | Bike Weight (kg) |
| SuperSix EVO LAB71 | 6.95kg |
| SuperSix EVO LAB71 SL | 6.35kg |
| SuperSix EVO 1 | 7.3kg |
| SuperSix EVO 1 SL | 6.8kg |
| SuperSix EVO 2 | 7.6kg |
| SuperSix EVO 3 | 7.6kg |
| SuperSix EVO 4 | 7.9kg |
| SuperSix EVO 5 | 7.9kg |
ハンドルバー
SystemBar RoadおよびSystemBar Road SLも単体販売される。両モデルとも、共通のジオメトリー(リーチ 80mm / ドロップ 130mm / フレア 40mm)を採用しており、サイズ展開と重量が異なっている。
SystemBar Road
空力性能を追求したモデルで、よりナロー(狭い)なサイズが用意されている。
| サイズ (幅 x ステム長) |
|---|
| 340 x 90mm |
| 360 x 100mm |
| 360 x 110mm |
| 360 x 120mm |
| 380 x 100mm |
| 380 x 110mm |
| 380 x 120mm |
- 価格: ¥120,000(税込)
- 重量: 375g
2. SystemBar Road SL
軽量化を重視したモデルで、標準的な幅のサイズ展開となっている。
| サイズ (幅 x ステム長) |
|---|
| 380 x 90mm |
| 380 x 100mm |
| 380 x 110mm |
| 400 x 100mm |
| 400 x 110mm |
| 400 x 120mm |
| 400 x 130mm |
- 価格: ¥120,000(税込)
- 重量: 265g
(共通スペック)
共通の仕様は以下の通り。
- リーチ: 80mm
- ドロップ: 130mm
- フレア: 40mm
- ステム角: -6度
- 対応: デルタステアラー、電動変速専用設計(フル内装対応)
完成車付属:SystemBar Roadのサイズ一覧
|
サイズ (ステム長 x ハンドル幅)
|
対応フレームサイズ
|
|---|---|
|
90 x 340mm
|
44 – 52cm
|
|
100 x 360mm
|
54 – 56cm
|
|
110 x 380mm
|
58 – 61cm
|
完成車付属:SystemBar Road SL のサイズ一覧
|
サイズ (ステム長 x ハンドル幅)
|
対応フレームサイズ
|
|---|---|
|
90 x 380mm
|
44 – 52cm
|
|
100 x 380mm
|
54 – 56cm
|
|
110 x 380mm
|
58cm
|
|
110 x 400mm
|
61cm
|
価格
SuperSix EVOの各完成車モデルおよびフレームセットの価格は以下の通り。
完成車モデルの価格一覧
最上位モデルのLAB71から、手の届きやすいEVO 5までラインナップしている。プレミアムモデル(LAB71および1グレード)には、超軽量仕様のSL(Super Light)バージョンが設定されている。
- SuperSix EVO LAB71 SL: ¥2,200,000(税込)
- SuperSix EVO LAB71: ¥2,150,000(税込)
- SuperSix EVO 1 SL: ¥1,380,000(税込)
- SuperSix EVO 2: ¥1,050,000(税込)
- SuperSix EVO 5: ¥750,000(税込)
フレームセットの価格一覧
理想の一台を組み上げるためのフレームセットオプションも用意されている。
- SuperSix EVO LAB71 Frameset: ¥890,000(税込)
- SuperSix EVO Hi-MOD Frameset: ¥670,000(税込)
- SuperSix EVO Frameset (標準カーボン): ¥330,000(税込)
専用コックピットの価格
第5世代SuperSix EVOのために開発された新型ハンドルバーも用意されている。
- SystemBar Road: ¥120,000(税込)
- SystemBar Road SL: ¥120,000(税込)
第5世代SuperSix EVOの”進化”
第5世代SuperSix EVOは、先代の完成度を単に上塗りしたものではない。
ライバルとは一線を画す独自の設計思想を貫きつつ、数値化できる性能(重量・空力)と、感性に訴えるデザインを高次元で融合させた。
ロードバイクの進化が成熟期にある今、キャノンデールは再び「EVO(進化)」の名に恥じない金字塔を打ち立てたと言えるだろう。
SuperSix EVO Gen.5 インプレッション&技術詳説






























