Mageneからペダル型パワーメーターのMagene P715が登場した。
±1%という極めて高い測定精度と120時間という驚異的な稼働時間を両立し、先行する競合製品を技術的・コストパフォーマンスの両面で凌駕しようとしている。
析出硬化型ステンレス鋼のスピンドルと複合カーボンファイバー製ボディを採用することで、軽量性と100万回の使用に耐えうる堅牢性を確保している。プロライダーの過酷なトレーニングから精密なパワーデータの分析まで、求められる全ての要求に応えようとするデバイスだ。
今回のレビューは、Magene P715を実際に用いペダル型パワーメーターの王者であるAssioma RS PROとの比較も行った。
Magene P715ペダル型パワーメーター
パワーメーターの歴史を紐解けば、かつてそれは高価なクランクセットやハブに限定された特権的な機材であった。しかし、Mageneはパワーメーター市場に価格破壊をもたらした。
同社が得意としてきた、クランクの歪みを計測するスパイダー型とは異なり、ライダーが直接パワーを入力するペダルそのものにセンサーを内蔵したデバイスである。
これにより、力の入力点に最も近い場所でのデータ収集が可能となり、伝送時の損失やエラーを最小限に抑えることに成功している。
技術的な側面で見れば、P715は単なる計測器のように思える。しかし、それは内部に高度な演算処理を行うジャイロスコープと温度補償アルゴリズムを備えた、一つの小型コンピューターとも呼べる存在である。
両足のパワーを独立して測定するデュアルサイド・スピンドル方式を採用しており、左右の出力バランスだけでなく、ペダリングの滑らかさやトルク効率といった、ライダーのバイオメカニクスを詳細に解明するためのデータを提供する。
日本市場においては、信頼性の高い代理店であるGROWTAC(グロータック)が取り扱いを開始したことで、技術サポートや保証体制が整備されている点も、ユーザーにとっては大きな安心材料となっている。
単なる安価な中国製デバイスという枠を超え、パワーメーターという計測器としての地位を確立しようとしているのが、このMagene P715の正体だ。
王者Favero Assioma PRO RS:何が勝敗を分けるのか?


現在、ペダル型パワーメーターの市場において王として君臨しているのが、イタリアのFavero社がリリースしたAssioma PRO RSだ。Magene P715を評価する上で、この王との比較は避けて通れない。
表1:Magene P715とFavero Assioma PRO RSの主要スペック比較
| 項目 | Magene P715 S | Favero Assioma PRO RS-2 | 備考 |
| 測定精度 | ±1.0% | ±1.0% |
両者ともに業界最高水準 |
| Q-Factor | 55 mm | 53 mm |
Assiomaの方が標準的ペダルに近い |
| 重量(片側) | 159 g (実測157g〜) | 123.5 g |
Assiomaが圧倒的に軽量 |
| スタックハイト | 13 mm | 10.5 mm |
Assiomaの方がダイレクト感が高い |
| バッテリー寿命 | 最大120時間 | 60時間以上 |
Mageneが2倍の持続時間を誇る |
| 充電方式 | マグネット式リチウム充電 | マグネット式リチウム充電 |
共通の利便性 |
| 計測項目 | 7項目(PCO除く) | フルダイナミクス(PCO含む) |
AssiomaがPCO計測で一歩リード |
| 日本国内価格 | 89,650円(税込) | 約14万円前後〜 |
Mageneのコスト優位性が高い |
Q-Factorとスタックハイト:「感覚」の差異

最も注目すべきはQ-Factorだ。
Assioma PRO RSが53mmという、シマノの標準的なロードペダルと同等の数値を実現しているのに対し、Magene P715は55mmに設定されている。この2mmの差は、ミリ単位でフォームを調整するプロのライダーにとっては無視できない違いとなる場合がある。
Q-Factorが広がると、足のスタンスがわずかに外側に開くため、股関節や膝の動作軌道に変化が生じる可能性がある。

ASSIOMA RS2
しかし、55mmという数値自体はマウンテンバイクやグラベルバイクのペダルに近い設定であり、多くのサイクリストにとっては許容範囲内、あるいは安定感に寄与する設計とも評価できる。SRAM EAGLE XXSLのXC用クランクのQ-ファクターも55mmである。
スタックハイト(ペダル軸からシューズ底面までの距離)においても、P715 Sは13mmと、Assiomaの10.5mmに比べて厚みがある。これはセンサーモジュールの配置や保護構造に起因するものと考えられるが、サドル高を数ミリ上げる調整が必要になることを意味する。
感覚的な評価として、スタックハイトが低いほどペダリングのダイレクト感が増し、回転の円滑さが向上するとされるため、この点ではAssiomaが競技者向けの哲学をより強く反映していると言える。
軽量化と堅牢性のトレードオフ

重量に関しては、Assioma PRO RSの片側123.5gという数値は驚異的であり、パワーメーター非搭載のハイエンドペダルと遜色ないレベルに達している。対するMagene P715は片側159g(KEOモデルは157g)であり、ペアで約70gの差が生じる。
この重量差をどう捉えるかはライダーの哲学に依存する。
登坂性能を極限まで追求するクライマーにとって、回転体の外周部に近いペダルの重量増は敏感な問題だが、Mageneはあえてこの重量を「120時間という超長寿命バッテリー」と「堅牢な保護構造」に割り振ったと考えられる。
両側パワーメータースピンドル
Magene P715の核心技術は、両側のパワーメータースピンドルにある。
従来のパワーメーターの多くは、クランクアームの歪みやスパイダー部分の捻れを計測していた。しかし、力学的な視点で見れば、ペダルから入力された力はシューズ、ペダルボディ、そしてペダル軸(スピンドル)を介してクランクへと伝達される。
この過程で、ペダルボディの微細な変形やクランクとの接合部での摩擦など、計測誤差の原因となるノイズが介在する余地がある。
P715は、このパワーの出力点に最も近いスピンドルそのものにひずみゲージを配置している。これは、ボクサーがパンチの威力を測る際、サンドバッグの揺れ(クランク側)を見るのではなく、グローブの中の手(ペダル軸)で直接圧力を測るようなものである。
力の伝達経路における損失を物理的に排除することで、よりダイレクトで、かつエラーの少ないワットデータを抽出することが可能となるのだ。また、左右独立したスピンドルにセンサーを配置することで、両足のパワーをリアルタイムで同時計測する。
これにより、多くのスパイダー型メーターが行っている「片側のデータを2倍にする」あるいは「一回転の波形から左右を推定する」といった疑似的な計算ではなく、右足と左足がそれぞれどれだけの仕事をしたかを100%忠実に描写できるのである。
エンジニアの視点で見れば、この左右の独立性こそが、ペダリング矯正やレース終盤の疲労度分析において最も信頼できるデータソースとなる。
リアルタイム角速度計測
「パワー(W) = トルク(N・m) × 角速度(rad/s)」
この物理学の基本公式が、パワーメーターの計算根拠である。多くのパワーメーターは、一回転の平均的なケイデンス(角速度)を用いて計算を行うが、実際の人間のペダリングは、一回転の中で速度が常に変化している。
特に坂道でのダンシングや、疲労が溜まった際の不均一なペダリングでは、ペダルが速く動く瞬間と、死点(上死点・下死点)付近で遅くなる瞬間が交互に現れる。Magene P715に組み込まれたジャイロスコープは、この一回転の中での瞬時瞬時の角速度をミリ秒単位で計測する。
これを例えるなら、「1分間に何回ブランコが往復したか」という平均スピードを見ていたのに対し、P715は「ブランコが一番速く振れている瞬間」と「頂点付近で止まりそうになっている瞬間」の速度を正確に捉えている。
この精密な計測により、以下のメリットが生まれる。
- 不安定なペダリング時の精度向上:スプリントや荒れた路面での走行中、ケイデンスが激しく上下する状況でも、正確なパワー出力を算出できる。
- 楕円チェーンリングへの完全対応:楕円リングを使用すると、一回転の中で角速度が意図的に変化させられるが、ジャイロスコープ搭載のP715であれば、アルゴリズムの修正なしに正確な値を維持できる。
実走において、特に高トルクでのスプリント時には、ペダルが踏み込まれる瞬間に角速度が微妙に低下し、抜き去る瞬間に加速する。この微細な変化をジャイロスコープが捉えることで、計算上の「推定」を排除し、物理的な「実測」へと昇華させている。
温度補償機能
なぜ、気温の変化でひずみゲージは狂うのか?
金属という素材は、温度が変われば膨張・収縮する性質を持つ。パワーメーターの心臓部であるひずみゲージは、金属の微細な伸び縮みを電気信号に変えるデバイスだが、このゲージ自体も温度変化によって伸縮してしまう。
これを放置すれば、極寒の早朝に走り出し、日中の直射日光で気温が上がった際、実際には同じ力で踏んでいても、メーターが示すワット数が勝手に増減してしまうという現象(温度ドリフト)が起きる。
Magene P715が導入しているアクティブ温度補償は、センサー周辺の温度を常にモニタリングし、温度変化による金属の物性変化をアルゴリズムで自動的に相殺する機能である。
標高1000mを越える峠の頂上(低温)から、一気に下界(高温)まで下りてくるような状況においても、P715は高度と気温の変化を即座に計算に組み込み、一貫した±1%の精度を維持する。
100万回の耐久性
Magene P715の設計において、技術的に注目すべきは素材の選択である。ペダルボディには複合カーボンファイバーを、そしてスピンドルには析出硬化型(PH)ステンレス鋼を採用している。
析出硬化型ステンレス鋼(17-4PH等)
スピンドルに使用されている析出硬化型ステンレス鋼は、航空宇宙産業や医療用手術器具にも用いられる特殊な合金である。一般的なステンレス鋼(SUS304等)と比較して、以下の特性を持つ。
- 極めて高い疲労強度:繰り返しの負荷に非常に強く、Mageneラボによる100万回の踏み込みテスト後も正常動作を維持するという驚異的な耐久性を支えている。
- 優れた耐食性:冬場の塩カル(融雪剤)や海沿いの塩分、ライダーの汗に晒されても、内部のセンサーを腐食から守り抜く。
- 高い硬度と剛性:踏み込んだ際のたわみを最小限に抑え、ダイレクトなパワー伝達を実現する。チタン合金の方が軽量ではあるが、剛性や疲労強度のバランスにおいては、この特殊ステンレス鋼がパワーメーターの軸として理想的な選択と言える。
カーボンファイバー製のボディは、これら堅牢な内部構造を包み込みつつ、全体重量を157g(片側)に抑える役割を果たしている。
金属とカーボンのハイブリッド構造は、現代のフレームそのもののミニチュア版とも言える構成であり、機能美と性能を高い次元で両立させている。
表2:パワーメータースピンドルに使用される金属素材の特性比較
| 素材 | 密度 (g/cm³) | ヤング率 (GPa) | 耐力 (MPa) | 耐食性 | 備考 |
| 析出硬化型ステンレス (17-4PH) | 7.8 | 196 | 1100+ | 非常に高い |
P715に使用。剛性と耐久性のバランス |
| 6-4チタン合金 | 4.4 | 113 | 880 | 最高 |
軽量だがヤング率が低く、たわみやすい |
| クロムモリブデン鋼 (4130) | 7.8 | 205 | 400-600 | 低い |
安価なペダルに使用。錆びやすく重い |
| 一般的なステンレス (SUS304) | 7.9 | 193 | 200-300 | 高い |
強度が不足し、パワーメーター軸には不適 |
バッテリー寿命120時間
多くのサイクリストにとって、電子機器の充電はストレスの源である。先行するAssioma PRO RSのバッテリー寿命は約60時間であり、これでも十分に実用的だが、週に10~15時間乗るシリアスなライダーであれば、月に1度は充電を気にする必要がある。
Magene P715が達成した120時間という稼働時間は、このパラダイムを完全に変える。フル充電すれば、毎日3時間乗っても40日間、つまり1ヶ月以上も充電の手間から解放される。
これは、ブルベのような超長距離イベントや、数日間にわたるステージレースにおいて、バッテリー切れのリスクという心理的不安を完全に取り除くことを意味する。
マグネット式充電の合理性とリチウム電池の保護
P715は、USB-C端子を直接ペダルに差し込むのではなく、専用のマグネット式端子を採用している。これには二つの大きな理由がある。
- 防水性の向上:抜き差しするコネクタ穴を廃止することで、IPX7という高い防水性能を維持し、雨天時の浸水リスクを最小化している。
- 物理的保護:リチウム電池本体を密閉構造の中に完全に保護できるため、振動や衝撃による電池トラブルを防ぐことができる。クリップ式充電のように接点に無理な力がかかることもなく、ボタン電池交換のようにパッキンを傷めるリスクもない。
3時間でフル充電が完了するという急速充電性能も、忙しい現代のライダーにとっては大きな利点である。
±1%のパワー精度
Magene P715が謳う±1%の一貫した精度は、ひずみゲージの配置、ADC(アナログ-デジタル変換器)の分解能、そしてノイズ除去アルゴリズムの三位一体によって実現されている。
一般的に、ペダル型パワーメーターはクランク型に比べて振動の影響を受けやすい。タイヤが路面の凹凸を拾うたびに、ペダル軸には瞬間的な衝撃荷重がかかる。P715の信号処理プロセッサは、これらの路面ノイズと、人間が踏み込む有効トルクを高精度に分離するという。
これは、高級なノイズキャンセリングヘッドホンが周囲の騒音だけを消し去り、音楽の旋律だけを届けるのと同様のプロセスである。
また、前述のジャイロスコープと温度補償がこの精度を支える番人として機能している。
エンジニアの視点で見れば、120時間という長時間駆動を維持しながら、これほど高頻度のサンプリングと演算を行う省電力設計には、Mageneが長年培ってきたセンサー技術の蓄積が色濃く反映されていると言える。
インプレッション
客観的な数値データも重要だが、実際にペダルを踏んだ主観的な感覚も、機材選びにおいては決定的な要素となる。
P715を今回試した際、まず驚いたのはクリートの脱着感の自然さである。安価な互換ペダルにありがちなバネが硬すぎる、あるいはクリック感が曖昧といった感触は一切ない。
シマノ純正のSPD-SLクリートとの相性は完璧で、ステップインした瞬間の「カチッ」という乾いた音は、高精度な金属加工を想起させる。
ペダルを強く踏み込んだ際の剛性感もPD-R9100と遜色ない。違いを見分けるのは不可能だろう。析出硬化型ステンレス鋼の芯が通っているため、スプリントにおいても、足裏でペダルがしなるような感覚は一切ない(しならせるほうが無理だと思う)。
この硬さは、パワー伝達効率の最大化にも直結しているように思う。
ジャイロスコープの効果が発揮されるのはダンシングだ。バイクを左右に大きく振る動作は加減速を伴う。パワーメーターが測定を苦手とする動きも、確実に追従しながら計測しているようだ。
パワー値の更新が極めてスムーズに行われる。データが乱れることなくリアルタイムでサイコン上に描写される様子は、機材がライダーの動きを完全に理解しているような動きをする。しかし、実際にデーターを解析すると欠損がいくつか発生することを確認した。
肝心の測定精度の話
Magene P715のメーカー公称精度は±1%だ。P715は市場投入までに長い開発期間を経ており、その間に何度もファームウェアの改訂が行われたという。最新のファームウェア(v106)は信頼できる測定精度を提供している。
あのGPLamaのテストでも「tests relatively well(比較的良好)」と評価されている。
弱点ではないのだが、 ペダルのどこを踏んでいるかを測定するPCO(プラットフォームセンターオフセット)機能は測定できない。この点は、旧型のFavero Assioma Duoと同様の仕様だ。
SRMやLookのペダル型パワーメーターは、踏む位置によって測定値が変動してしまう精度上の重大な欠陥がいまだ残っているが、Magene P715についてはPCO測定機能自体はないものの、現時点のファームウェアで良好な結果が得られている。
今回、ホームトレーナーでSRM並みの測定精度を誇るCYCPLUS T7に取り付けて測定を行った。比較の際に”https://analyze.dcrainmaker.com/“にデーター読み込ませている。
一定走行ではそれほど大きな差は生じなかった。概ね1%の誤差といったところだ。しかし、データー欠損が生じている箇所が気になる。
100W付近から一気に600Wまで上げるようなパワーのかけ方をすると、P715は立ち上がりがわずかながら遅かった。データーが0Wで欠損している箇所がある。通信もしくは測定が不安定な印象を受けた。
結論としては、パワーデーターの平均値には大きな差が生じない。しかし、ダイレクトドライブ式の室内トレーナーは、大型かつ高精度のひずみゲージを実装できる余裕があるのと、ZWIFTなどで使用されるシチュエーションに対応するため反応速度が優れている場合が多い。
全体を通してP715は測定精度は満足が行く。しかし、データーの欠損が多く見られた。データー欠損を含めると精度は落ちるだろう。サイクルコンピューターとの相性が問題なのか、通信環境など様々な原因が考えられるが、測定機として考えると少々不安ではある。
ペダル型パワーメーターは確かに踏力を最も近い場所で測定できる。しかし、実際の反応速度はやや遅れる傾向にある。とはいえ、実走中にこの遅延を感じることは無いだろう。僅かに遅れながらも、比較的精度の高い測定をするP715は使えるパワーメーターと言える。
ただし、P715はユーザーによるメンテナンス(ベアリング交換など)が不可能であり、これを行うと保証が無効になるというリスクが残っている。また、Favero Assioma Pro RSと比較すると約70g重く、精度や機能の面ではAssioma Proよりも旧型のAssioma Duoに近い製品である。
日本国内のサポート体制:「安心」という価値
海外ブランド、特にMageneのような中国の新進気鋭メーカーの製品を購入する際、最大の懸念は「故障時の対応」である。かつては、不具合があれば中国本国へ高額な送料をかけて送り返す必要があり、そのハードルの高さから購入を断念するユーザーも少なくなかった。
しかし、P715に関しては日本国内のGROWTACが総代理店となっていることが、その懸念を払拭している。
- 24ヶ月の長期保証:パワーメーター本体に対して、2年間のメーカー保証が付帯する(軸部やケーブル等は12ヶ月)。
- 日本語マニュアルとサポート:GROWTACが作成した日本語のクイックスタートガイドやFAQが整備されており、設定に迷うことはない。
- 迅速な修理体制:万が一のトラブルの際も、国内の窓口で対応が受けられる体制は、10万円近い投資をするユーザーにとって、製品スペック以上に価値のある「保険」と言える。
正規輸入品であれば、シリアルナンバー管理によってGROWTACの万全なサポートが約束される。これは、レース現場で機材トラブルを即座に解決しなければならないプロフェッショナルやレースエンジニアにとって、何物にも代えがたい安心材料である。
Magene Utilityアプリ
P715の性能を100%引き出すためには、単にペダルを交換するだけでは不十分である。導入時に押さえておくべきステップを以下に記す。
- Magene Utilityアプリのインストール:スマートフォンに専用アプリをダウンロードし、メールアドレスでアカウントを作成する。
- 製品の有効化:アプリ経由でP715とペアリングし、アクティベーションを行う。これを忘れると計測が始まらない。
- クランク長の入力:パワー計算の基数となるクランク長(170mm, 172.5mm等)を正確に入力する。これが1mm狂うだけで、データには数%の誤差が生じる。
- キャリブレーション(ゼロオフセット):取り付け直後、および温度が大きく変化した際は、アプリまたはサイクルコンピューターからキャリブレーションを実行する。
物理的な取り付けの注意点
P715の取り付けには、8mmのヘックスレンチを使用する。ここで最も重要なのは「ペダルワッシャー」の活用である。P715は軸の根本にセンサーポッドを配置しているため、クランクアームの形状によってはポッドが干渉し、致命的なダメージを受ける可能性がある。
付属のワッシャーを適切に挟み、クランクとセンサーの間に十分なクリアランスを確保する。
また、推奨締付トルクは30~40 N・mである。トルクが不足すると、ペダリング中に微細な「遊び」が生じ、ひずみゲージが正しく力を検知できなくなる。逆に締めすぎるとネジ山を傷めるため、トルクレンチの使用が望ましい。
Magene P715は何を目指すのか
Mageneのキャッチコピーに「Lead You to the Ridge of Cycling(あなたをサイクリングの頂へと導く)」という言葉がある。
これは、単に最高級の製品を作るという意味ではないだろう。筆者がこの製品を通じて感じるのは、高精度なデータというかつての特権を、より多くのサイクリストに解放しようとする民主化の哲学である。
±1%という精度は、数年前までは20万円を超える製品でしか得られなかった。それが今、耐久性に優れた素材と洗練されたアルゴリズムによって、より手の届きやすい価格帯で提供されている。
これは、テクノロジーが一部のエリート層だけでなく、自身の限界に挑むすべてのライダーに寄り添う時代になったことを象徴している。P715は、ライダーに「あなたの努力は1ワットも無駄にしない」というメッセージを投げかけている。
析出硬化鋼の硬い芯と、カーボンボディの軽やかさ、そしてデジタル回路の冷徹な正確さが組み合わさったこのペダルは、単なるパーツではなく、ライダーの肉体とデジタル世界を繋ぐインターフェースだ。
まとめ:P715かAssioma PRO RS2か
P715かAssiomaのどちらかを選べと言われたら、私はFavero Assioma PRO RS2を選択する。ポッドレス型、スマートな見た目、軽量性、そしてこれまでの信頼と実績があるからだ。P715はデーター欠損が多いのも非常に気になる。ここは価格とのトレードオフと考えたほうがよさそうだ。
しかし、あなたがもし、自己ベストを更新したいと願いながらも、パワーメーターを所有しておらず金銭的なハードルを抱えているライダー、あるいはできるだけ機材変更をせず既存のペダルを交換するだけでパワーメータを使いたいと思うのならば、Magene P715を無視することはできない。
Favero Assioma PRO RSが「軽さと圧倒的な実績」という王道を行くなら、Magene P715は「120時間の持続力、堅牢な航空宇宙素材、そして緻密な環境補正」という新しい合理性を提示している。
重量の数十グラムを削るか、それとも120時間の安心と、最新のジャイロ計測によるデータの信頼性を取るか。その選択は、あなたの走りのスタイルと、勝利への哲学に委ねられている。
Magene P715は、パワーメーターの価格破壊で市場の頂を視界に捉えている。



























