【192gの衝撃】GOLDIX SL CNCスプロケットレビュー|アルミ製を過去にする「全スチール」の決戦用兵器

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11-34Tで、わずか192.3g。

素材にアルミを一切使用せずに、全てスチールを使用してこの重量。

結論から述べれば、GOLDIX SL CNCスプロケットは、SRAM Red XG-1190やShimano Dura-Ace R9100といったトップ製品に匹敵する軽量性を、数分の一のコストで実現した「破壊的」な製品である。

その性能は「変速調整不要」と特に「全スチール製一体成型」という仕様が目を引く。素材の真偽を確認するために、ネオジウム磁石を使ったテストを行い本製品の真価を詳細に確認した。

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GOLDIX SL CNCが目指したもの

ハイエンド・コンポーネント市場

長らくロードバイクおよびグラベルバイクの駆動系コンポーネント市場は、Shimano、SRAM、Campagnoloの「御三家」によって支配されてきた。特にスプロケットにおいては、変速性能と耐久性の観点から、純正品の優位性は揺るぎないものとされてきた。

しかし、近年のCNC加工技術の低コスト化と普及により、中国深センを中心とする新興メーカーが、この勢力図を書き換えようとしている。GOLDIXもそのうちの一つで、ZTTO、SROAD、SunshineといったブランドとOEM供給網を共有しつつ、独自のポジションを築いている。

冒頭で話の腰を折るような余談だが、Sunshineを2セット購入して使用していたが変速性能が非常に悪く、耐久性も最悪で使い物にならなかったので、捨てた。レビューもしていない。

今回はそれに懲りずGOLDIX SL CNCを使ってみた、という話である。

「192.3g」が意味するもの

自転車部品において、軽量化は常にコストとのトレードオフである。特に回転体(ホイール、タイヤ、スプロケット)の外周部重量の削減は、慣性モーメントの低減に直結し、加速性能や登坂性能に多大な影響を与える。

本製品の実測値である192g(11-34T)という数値は、スチールという素材を使って物理的な限界に挑戦した数値といえる。

モデル 歯数 重量 構造 価格
GOLDIX SL CNC 11-34T 約 192.3 g CNC一体成型 (Monoblock)
Shimano CS-R8100 11-34T 約 345 g スチールギア + アルミ/カーボンスパイダー
Shimano CS-R9200 11-34T 約 253 g チタン/スチールハイブリッド
SRAM Red XG-1190 11-32T 約 196 g スチール中空一体成型 (Powerdome) 超高

上表が示す通り、GOLDIX製品はShimanoのセカンドグレード(Ultegra)と比較して約140gもの軽量化を実現している。これはサドルやハンドルバーを高価なカーボン製品に交換する以上の軽量化効果を、はるかに低い投資額で実現できることを意味している。

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構造とエンジニアリング

全てスチール製、一体成型

ギアが一体成型になっている。

「全スチール製一体成型」は、本製品の核心技術でもある。

従来のスプロケット(Shimano 105やUltegra)は、プレス打ち抜きされた個別のスチールギアを、樹脂やアルミのスペーサーを介してピンで結合する構造を持つ。

対してGOLDIXのSLシリーズは、SRAMの最高級グレードと同様に、一つの鋼材ブロック(インゴット)からCNCマシニングによって不要な部分を削り出す「モノブロック構造」を採用している。

この構造のメリットは何だろうか。

剛性対重量比の最大化

モノブロック構造の最大の利点は、駆動力(ペダリングトルク)をスプロケット全体で受け止めることができる点にある。

個別のギア板が存在しないため、高トルクをかけた際の「ギア単体のたわみ」が発生しにくい。ドーム状の形状全体が構造体としての強度を発揮し、極限まで肉抜きされつつも高いねじれ剛性を維持している。

フリーボディーへの攻撃性

軽量スプロケットにおける懸案事項の一つが、アルミ製フリーボディーへの食い込みである。本スプロケットは上部と下部だけがフリーハブボディーのスプラインに接触するという、割り切った構造を採用している。

上部と下部だけがフリーハブボディーのスプラインに接触する

接触する部分以外の構造は、単なる円柱だ。フリーハブに一切接触しない。円柱全体でギアの負荷を受け止められるため、応力の分散も行われる。そして、フリーボディーへのゴミの侵入を防ぐ2次的なメリットもある。

フリーボディーとの接触面が広く設計されており、背面のスパイダーアーム部分でトルクを受けることで、局所的な面圧を下げ単一ポイントにかかる負荷を物理的に排除している。

これが、シマノのスプロケットのように、個別の薄いギア板の場合は、高トルク下でフリーボディーのスプラインに食い込み、取り外しを困難にするだけでなく、ハブを破損させるリスクがある。

変速ポイントの多さ

本製品は変速ポイントが目に見えて多い。冒頭で紹介したSunshineのスプロケットは表面の加工がなく起伏のない平らな板だった。GOLDIX SLは不規則な歯の形状が特徴で1/4ごとにシフトランプとゲートポイントが確認できる。

ShimanoのHyperglideシステムは、チェーンが隣のギアへ移動する際に、特定の歯がチェーンプレートを「持ち上げる」または「リリースする」ように設計されている。 GOLDIXのCNC加工は、この複雑な3次元形状を忠実に再現しようとしている。

  • ランプ加工: チェーンがスムーズに乗り移るための斜面。

  • ゲート加工: 特定の位相でチェーンを受け入れるための切り欠き。

CNCカットはやや粗い。

GOLDIXスプロケットはShimano純正よりもアグレッシブな肉抜きが行われている。一方で、変速ランプの配置はShimanoの設計を強く意識(悪く言えば模倣)したものとなっている。

欠点としては、CNCの切削痕が荒い。目視確認できるほど切削が行われたことが表面から読み取れる。これらは僅かなことかもしれないが、変速ランプの滑らかさに影響を与える場合がある。これが後述する変速性能の「癖」につながっている。

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磁石テストやってみた

ホンマにすべてスチール?

この軽さはアルミ使っているのでは・・・。

最も警戒していたのは、カタログスペックと実製品のかい離である。これまで、Aliexpressで販売されている自転車機材で幾つも説明と異なる仕様があった。悪く言えば、だまされてきた。

「全スチール製」とあるが、市場には軽量化を更に推し進めるために、ロー側の大型ギア(30T-34T等)にアルミニウム(7075-T6など)を使用した「ハイブリッドモデル」が混在している。

  • 全スチールモデル: 耐久性が高く、摩耗係数が一定。重量は若干増すが、長寿命。

  • アルミハイブリッド: 極めて軽量だが、アルミギアの摩耗が早く、スチールチェーンとの硬度差により偏摩耗が発生しやすい(最近話題のNUTON nullがこれ)。

軽量化に捕らわれすぎて忘れがちになるのは、接触する素材の相性だ。特にスプロケとチェーンという関係は非常に重要になってくる。チェーンはスプロケ上を縦横無尽に移動する。しかも、高トルクがかかる。もうここまで言えば何が起こるかは想像できよう。

スチールのチェーンとアルミスプロケの組み合わせは硬度差(アルミの方が弱い)により偏摩耗が発生しやすい。アルミギアの摩耗が早く、変速性能が低下する恐れがある。

目先の軽さばかり追求する余り、耐久性などを犠牲にするのは灯台下暗し、本末転倒だ。1発決戦用であれば何も問題はないのだが、通常の使用を考えるとアルミギアはできるだけ避けておきたい。

磁石テスト

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スチールならくっつくはず。アルミならくっつかない。

製品到着直後に以下の「磁石テスト」を行って、材質を特定した。

  1. 強力なネオジム磁石を用意。
  2. スプロケットのトップギア(11T)からローギア(34T)まで、すべてのギア板に磁石を近づける。
  3. 全て吸着した。「全スチール製(クロモリ鋼)」である。耐久性はShimano純正と同等以上が期待できる。

ロー側もスチールであり、アルミギアとは異なり摩耗に強い。スチールチェーンとの硬度差もなく偏摩耗も発生しにくいだろう。192.3gという重量は、全スチール製としては驚異的な軽さだと言える。

これらは、SRAM Redと同様の極薄高張力鋼を使用している証左となる。逆に懸念することは、アルミを使わずにこの重量を達成しているため、文字どおり肉厚が極限まで薄くなっている。

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変速性能と調整

結構スムーズな変速性能

変速調整は不要か?

メーカーは「変速調整不要」とうたうが、これは「Shimano HG規格のハブとディレイラーを使用している限り、オフセット位置が変わらない」という理論上の主張にすぎない。実際に使用、やや異なる物語を語っている。

チェーンラインと公差

GOLDIXスプロケットを実際に使用してわかったことがある。絶対に起こると覚悟していた特定ギアでの歯飛びが全くなかった。しかし、安っぽい「チャリチャリ音」はやっぱり鳴る。

もう一つ気にしていたのは、スプロケット総幅の公差だ。一般的に、CNC一体成型の場合、各ギア間のスペーシングは切削精度に依存する。Shimano純正のようにスペーサー分離型と異なり精度が求められる。

累積公差は、センター付近のギア位置が純正位置から0.1mm~0.2mmズレていても変速性能に大きな影響を与えてしまう。

SunShineの場合、15Tスプロケット周辺での変速のもたつきや、「チャラチャラ感」があった。これは、15Tギアの変速ランプ設計(位相)に固有の問題、あるいはチェーンとのかみ合い深さの不足があった。

しかし、GOLDIX SLは全体にわたって変速性能にもたつきや歯飛びがない。非常に良い出来だと思う。私は「アリエクの玉石混交の機材ガチャ」に勝ったのだ。

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耐久性と実用性

スチール素材とコーティング技術

虹色のような模様が見える。

大事なのは素材である。GOLDIXスプロケットに問わず、多くの場合「クロムモリブデン鋼」または「高炭素鋼」の素材を使用している。

  • 熱処理: 適切な焼き入れ処理が施されている場合、表面硬度はHRC50以上に達し、Shimanoの上位グレードと同等の耐摩耗性を発揮する。

  • 表面処理: 色を付ける場合、「クロムメッキ(Silver)」「窒化チタンコーティング(Gold/Rainbow)」「リン酸塩処理(Black)」などのバリエーションが存在する。

GOLDIX SLは黒色であるためリン酸塩処理が行われている。防サビ・密着性向上、および耐摩耗性・潤滑性の向上が期待でき、自動車や機械部品の表面処理に広く用いられている。そのため、スプロケに適した処理と言える。

異音と振動

モノブロック構造、特にGOLDIXのような中空ドーム構造は、構造的に共鳴する箱の役割を果たしてしまうリスクがある。

  • 高周波ノイズ: チェーンの駆動音がスプロケット内部で反響し、金属的な駆動音が増幅される傾向がある。「チャリチャリ音」はどうしても生じてしまう
  • 対策: スプロケット内部に制振材を充塡できればよいが手間である。現実的な手段としては粘度の高いチェーンルブを使用することで、干渉を抑えられるが、共鳴音を完全に抑制することはできなかった。

本製品問わず、ドーム型のスプロケは干渉音と付き合っていくしかない。干渉音は軽く、チープに感じられてしまうが軽量性とのトレードオフと認識しておこう。

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まとめ:GOLDIX SL CNCスプロケットは「買い」か?

GOLDIX SL CNCスプロケに対する最終的な評価をまとめる。

推奨されるユーザーは、軽量マニア、シリアスレーサーで特にヒルクライマーだ。それでも、耐久性を求めるライダーであればなおさらである。1gでも軽くしたい決戦用機材として、このコストパフォーマンスは他を圧倒している。

パフォーマンスも耐久性も優先し、コストにもうるさい「わがままな人」には最適解の一つとなり得る。

全てスチール製であるため、長期間のトレーニング用途にも耐えうる高いポテンシャルを持っていると思われる。しかし、長期的に使用していないため、現段階ではその真価を結論付けることはできない。

実は話題のスプロケであるNUTON nullも検討したが、ロー側3枚だけをアルミニウム製、トップ側をスチール製とするハイブリッド構造を採用しているので見送っている。

ロー側もスチールを使用しなければnullのような軽量性を得られるかもしれないが、耐久性と重量のトレードオフになると判断している。何より、すでに筆者のバイクはすでに6.48kgなのだ。軽さよりも耐久性が欲しい。

一方で、推奨されないユーザー層もある。

メンテナンスフリーを求めるホビーライダーはやめておいた方がいい。表面処理はされているものの、切削加工が目に見えるほど荒く、さびが生じる可能性がある。

シマノほど、変速調整が不要であるわけではない。ポン付けでの完璧な動作を期待するならば、Shimano Ultegraまたは105を選択すべきだ。純正品の静粛性と変速のスムーズさ、安心感、作り込みは依然として世界最高峰である。

GOLDIX SL CNCスプロケットは、中華系コンポーネントが単なる「安かろう悪かろう」のコピー商品から、独自の技術的価値提案を行うフェーズへと移行しつつあることを象徴する製品だと感じた。

192.3gという数値と1万円弱という価格設定は、シマノやSRAMに対する挑戦状である。適切に扱えば、ライダーに「翼」を与える強力な武器となるだろう。GOLDIX SLは、練習から決戦用まで使える数少ない軽量スチールスプロケットだ。

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