第一印象は、「軽すぎて不安」だった。
ペダルはライダーのパワーを直接受け止める大事な機材だ。心情としては、軽さよりも高剛性で頑丈であってほしい。ペダルに本来求めるのは軽さではないことはわかっている。だからこそ、このペダルを使うことに慎重になった。
ONIRII PD-06チタン軸モデルは、SHIMANO DURA-ACE PD-R9100の228gを37g下回る191gという重量を実現した製品だ。そして、価格はわずか4分の1だ。
ONIRII(オニリー)は2020年に中国で設立されたブランドで、中国のサプライチェーンを活かしたコストパフォーマンスの高い製品づくりを行っている。
同社はペダル以外にもフレーム、サドル、ブレーキ、駆動系まで幅広い製品ラインナップを展開しており、モンゴルのナショナルサイクリングチームのスポンサーも務めており、今回レビューするペダルも供給されている。
中国ブランドの自転車コンポーネントが、世界市場で存在感を増しているのはご承知の通りだと思うが、ロードバイク用のペダルという機材でSHIMANO SPD-SLと互換性を持つ軽量ペダルを投入してきた点は注目に値する。
ペダルはライダーが直接パワーを入力するインターフェースであり、信頼性と精度が求められる。今回は、ONIRII PD-06を実走で使い込み、実用で耐えられるペダルなのか試した。
チタンとカーボン
PD-06のペダルボディは、カーボン繊維を混入した樹脂を射出成形(インジェクションモールド)で製造したものだ。
これはSHIMANO DURA-ACE PD-R9100と同様の製造手法であり、カーボンファイバーの短繊維をナイロンやポリアミドなどの樹脂マトリクスに混合し、金型に高圧で射出して成形する。
カーボンプリプレグの積層成形(レイアップ)とは異なり、複雑な形状を量産しやすく、コストを抑えやすい。一方で、連続繊維ではないため、剛性や強度ではプリプレグ成形品に及ばない場合がある。
ただし、ペダルボディに求められる剛性は、射出成形カーボンコンポジットでも実用上十分な剛性を確保できる。SHIMANOの全グレードが同じ製法を採用していることからも、それは判断できる。
チタンシャフトの意味
PD-06はクロモリ鋼軸、チタン合金軸、チタン合金延長軸の3バリエーションを展開している。チタン軸モデルではスピンドルとシャフトの両方にチタン合金を使用しており、公称重量はペアで200gだ。実測は191gだった。
クロモリ鋼軸モデルのペア252gに対して52gの軽量化が実現されている。延長チタン軸モデルはペア209.8gだ。
| バリエーション | 素材 | 公称重量(ペア) | 参考価格(日本円換算) |
|---|---|---|---|
| Steel Axle | カーボン繊維+クロモリ鋼 | 252g | 約8,000円 |
| Titanium Axle | カーボン繊維+チタン合金 | 200g | 約10,800円 |
| Extended Ti Axle | カーボン繊維+チタン合金 | 209.8g | 約12,800円 |
チタン合金は鋼に比べて密度が約60%と軽く、耐腐食性にも優れる。ただしヤング率(弾性係数)は鋼の約半分であり、同じ断面積であればたわみやすくなる。
ペダルシャフトは曲げ荷重を受ける部品であるため、体重が大きいライダーや高トルクでのスプリントでは、鋼軸に対してわずかにたわみが大きくなる可能性もある。
PD-06のチタン軸には公式な体重制限が設定されていない。筆者(58kg)は外での実走前にローラー上で高負荷のテストを行った。
特に問題は無かったが、念のため重量級ライダーにはスチール軸を推奨したい。
ニードルローラーベアリング
PD-06は高強度ニードルローラーベアリングシステムを採用している。アシオマも同様にニードルローラーベアリングを採用しており、高負荷に特化したベアリングだ。
ニードルローラーベアリング(針状ころ軸受)は、細長い円筒状のころを使用する転がり軸受の一種で、外径が小さいにもかかわらず高いラジアル荷重(半径方向の荷重)を支えることができる。
ペダルのように限られたスペースの中で高い荷重容量を確保する必要がある用途に適している。ニードルベアリングを用いることで、転がり摩擦による摩擦係数の低さがエネルギー損失の低減に寄与する。
SHIMANO DURA-ACE PD-R9100はペダル1本あたり2か所にベアリングを配置している。シャフト根本、シャフト先端にベアリング間を距離を広く取ることでより均等な荷重分配を実現している。
カーボン製クリップ
PD-06のクリート保持クリップ(クリートを挟み込むバネ機構部分)にもカーボン繊維強化ポリマーが使用されている。一般的なペダルでは、この部分にステンレス鋼やスプリングスチールの板バネを使用することが多い。
カーボン繊維強化ポリマー製の保持クリップは軽量化に寄与するが、金属製と比較した場合の長期的な耐久性、バネ特性の経年変化、クリートとの接触面の摩耗進行については差が出る可能性がある。
テンション調整は3mmの六角レンチで行い、反時計回りで緩み、時計回りで締まる。この調整機構自体は一般的なSPD-SL互換ペダルと同様だ。
分解・メンテナンス
メーカー公式サイトには分解方向を示す画像が掲載されており、軸カバーを外すことでベアリング部にアクセスできる構造になっている。密閉されて分解不能な構造の廉価ペダルも少なくないため、これは実用的な設計といえる。
ただし、出荷時に充填されているグリスが非常に粘度の高いもので、ほとんど回転しない。このグリスをあえて使用している理由には疑問が残る。
試しにグリスを粘度の低いものに入れ替えたところ、回転性能が大幅に改善した。PD-06を購入した場合、まず最初に分解して出荷時のグリスを適切なベアリンググリスに入れ替える必要がある。
これは手間ではあるが、分解可能な設計があるからこそ対処できる。製品ページの画像と動画投稿者の情報を頼りに作業は可能である。
クリート保持感
PD-06のクリート保持感は強めで明確だ。クリップインとクリップアウトの容易さ、広い安定したペダルプラットフォームの感触は良好だ。クリート保持時の圧縮力が同等テンション設定のSHIMANO製ペダルよりやや高めに感じられた。
SHIMANO DURA-ACEと比較
長年PD-R9100を使用してきたが、比較することで差がよくわかった。
違いは2つあり、スタックハイト(ペダル軸中心からシューズ底面までの高さ)と、ペダルが自動的に上を向く特性にある。PD-06のスタックハイトはDURA-ACEほど低くない。
DURA-ACE PD-R9100のスタックハイトは約14.6mmであり、105 PD-R7000の16.5mmより約2mm低い。PD-06の公称スタックハイトは確認できなかった。
また、ペダルの重量バランスに差があった。ペダルからシューズを外した時に先端部が上向きに自然に戻るバランスについては、SHIMANOの方が優れている。PD-R9100は自重で上を向くため、クリートキャッチがしやすい。
SHIMANOのペダルは前後の重量差が設計されており、常にクリップイン可能な姿勢で垂れ下がる。PD-06はグリスを変えてもそのようには止まらない。クリートキャッチのしやすさには差がある。
| 比較項目 | ONIRII PD-06 Ti | SHIMANO DURA-ACE PD-R9100 |
|---|---|---|
| 公称重量(ペア) | 200g(実測191g) | 228g |
| 参考価格(日本円) | 約10,800円 | 約44,000円 |
| ボディ素材 | カーボン繊維射出成形 | カーボンコンポジット射出成形 |
| シャフト素材 | チタン合金 | ステンレス鋼 |
| ベアリング | ニードルローラーベアリング | ボールベアリング |
| スタックハイト | 非公開 | 約14.6mm |
| 体重制限 | 非公開 | 非公開 |
| 保証 | 1年(人為的損傷を除く) | メーカー保証あり |
| 分解・再グリスアップ | 可能(要グリス交換推奨) | 可能(公式マニュアルあり) |
作り込みと質感
質感についてはDURA-ACEの方が高い。
PD-06はその価格帯の製品としては仕上げが良好だ。カーボンコンポジットのボディは光沢のある黒色で、左右を示すLとRの刻印が視認しやすい位置に配置されている。
チタン軸は、チタン特有の鈍い銀色の光沢ではなく金色だ。
ペア200gという重量は、手に持てば明確に軽さを感じる。SHIMANO 105 PD-R7000がペア265gであるため、65gの差は「手」の上では知覚可能だ。ただし、ペダルの65gの差が走行中に「脚」で体感できるかは個人差がある。
しかし軽量機材において、計測した数字がもたらす満足感は一つの要素であることは理解できる。
コストパフォーマンス
ONIRII PD-06チタン軸は、数値上はDURA-ACEを上回る軽さを約4分の1の価格で手に入れられる製品である。しかし、仕様表に現れない部分に価格差の理由がある。
第一に品質だ。
SHIMANOは数十年にわたるペダル製造の実績と、プロレースでの使用実績がある。製品のばらつき、長期耐久性、信頼性に関するデータの蓄積がある。
ONIRIIは2020年設立のブランドであり、長期耐久性の実績は積み上がっている段階である。出荷時のグリスの問題は、品質管理プロセスに改善の余地があることを示している。
第二に、ベアリング配置やスタックハイトといった設計の詳細が公開されていない。荷重分配の均等性、ベアリングの耐久寿命、クリート摩耗速度、ペダリング中のたわみ量など、実走行性能に関わる要素は多い。
第三に、サポート体制だ。保証は1年で、中国からの直送品であることを考えると、不具合が発生した場合の対応については、日本国内のSHIMANO正規販売網とは異なる。
一方で、ペダルは消耗品に近い部品でもある。
分解・メンテナンスが可能な構造であり、SPD-SL互換のクリートが使用できる。セカンドバイク用、トレーニング用、あるいはインドアバイク用として使う分には合理的な選択肢だ。
このペダルは誰に合う?
PD-06チタン軸は、ペダルの軽量化に興味があるが予算を抑えたいライダー、複数台のバイクを所有するライダー、あるいは新しい製品を試すこと自体に楽しみを見出す人に向いている。
1gでも軽量化したいライダーはDURA-ACEよりも37g軽量というポイントは無視できないだろう。回転部分でコレほどまでに軽量化できる機材はそう多くはない。
レースでの使用については、個人の判断による。筆者自身も、もう少し使い倒してから判断したいと考えている。
ただし、体重が重いライダーが長期間使用する場合は、チタン軸の耐久性について公式な保証がない点に留意すべきだ。鋼軸モデルを選ぶという選択肢もあり、ペア252gでも多くの中級グレードペダルより軽量である。
まとめ:SPD-SL対応ながら軽く、意外と作りも良い
ONIRII PD-06チタン軸は、191gという重量、カーボン繊維射出成形ボディ、ニードルローラーベアリング、分解可能な構造を提供する、SPD-SL互換ペダルだ。
出荷時グリスの入れ替えという作業が場合によっては必要であること、スタックハイトや体重制限といった仕様の透明性が不足していること、長期耐久性の実績が限定的であることは認識しておくべきだ。
回転が気になる方は、入手したらすぐに分解してグリスを適切なものに入れ替えること。そしてまずはローラーやショートライドで感触を確かめてから、本格的な使用に移行するのが賢明だ。
ペダルに対して、自分の手でメンテナンスしながら付き合っていくのであれば、PD-06はその手間に見合う軽さを提供してくれるだろう。




















