CRW ULTIMO 5060は、前後異形エアロリムや1,150gの重量、細身エアロカーボンスポークなどの技術を搭載したホイール。加速や登り、速度維持、ブレーキングなどをテスト。一方、うるさいハブや中国系ホイールとしてのリスクがある。全部盛りな仕様であるものの、価格がネック。
- ➕️前後異形エアロリムや細身エアロカーボンスポークなどの技術
- ➕️1,150gの重量
- ➕️加速や登り、速度維持、ブレーキングと下りにおける使用感
- ➕️美しいリム
- ➖️うるさいハブ
- ➖️中国系ホイールとしてのリスク
- ➖️価格が高い
CRW Works ULTIMO 5060は前後異形エアロリム、カーボンスポーク、45Tスターラチェット、チタン製スポークインターフェースを一つにまとめ、前後セット1,150gという軽さを達成したホイールだ。
ULTIMOはCRWの新しいフラッグシップであり、従来のCSシリーズ(2026年型CS5060で公称1,250g)から約100g軽量化されたトップグレードという位置づけで登場した。
CRWはほぼ無名だが、2015年から他社ホイールのOEM製造を行い、2018年に自社ブランドを立ち上げ、2020年に自社ハブ設計を開始した少数精鋭のメーカーである。
同社は完成品のホイールを部品の集合ではなく「ホイールシステム」として最適化することにこだわっており、CSシリーズは2024年のUCI男子ジュニア世界選手権でハリー・ハドソン選手が使用しアルカンシェルを獲得した。
あと、CRW CS5060を使って一番勝利を量産している日本人はおそらくマツケンさんだと思う。2025、2026のツールドフクシマ優勝、2025、2026年の全日本選手権ロードMM優勝とおそらく本人が強いだけだと思うが、わたしもなぜCS5060を使っているかは聞いたことがない。
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ULTIMOとCSの違い
筆者自身がCS5060を長らく使用していたが、まずまずの好印象だった。当時としては1250gは軽量かつ内幅25mmというのは画期的な設計だったことを覚えている。


最新のCRW ULTIMOはCSをベースに新しいカーボンレイアップ、新スポーク、新ハブを搭載している。CSシリーズの正常進化版かつ上位版の位置づけだ。
最大の違いは重量で、2026年型CS5060の公称1,250gに対し、ULTIMO 5060は公称1,150g±2%と約100g軽い。この軽量化は、より高弾性率のカーボンを用いた新しいUD積層構成、従来より細いエアロブレード・カーボンスポーク、そして新設計ハブの合わせ技によって実現されている。
リムプロファイル(フロント50mm高・内幅25mm・外幅34mm、リア60mm高・内幅24mm・外幅32mm)は2026年型CS5060とほぼ共通だが、フリーハブは36Tから45Tへ、ベアリングはTPI製オーバーサイズ・セラミックへと更新された。
ULTIMOの技術
ULTIMO 5060の核心は、前後で役割を分けた異形設計と、カーボンスポークを前提に一から作られたシステム統合にある。技術的背景を以下に整理した。
前後異形エアロリム

前作のCS5060
前後で異なるリムを構成するのは、前輪に横風安定性、後輪に巡航効率という異なる要求を割り当てるための合理的な設計だ。ULTIMO 5060のフロントは50mm高・内幅25mm・外幅34mmと、幅広で背の低いプロファイルを採用している。
太い外幅34mmはタイヤとの段差をなくし、突風による急激な横力の変化をリムに生じさせにくくすることで、ディープリムの弱点である横風不安定を緩和する。
一方リアは60mm高・内幅24mm・外幅32mmと、より背が高く細身で、低ヨー角での巡航性能と駆動時の安定を狙う。

この思想はRoval Rapide CLX II(フロント51mm・外幅35mm、リア60mm・外幅30.7mm、内幅は前後とも21mm)やENVE SESと同じ設計であり、CRW自身もフロントの太リム化を空力向上の施策と説明している。
前輪の内幅25mmは現行ロードでは極めて広く、これはひと昔前のMTBトレイル用に近い数値で、28mmタイヤを装着すると実寸32mm前後まで膨らむ。
この点はワイドタイヤ低圧運用による転がり抵抗低減と路面追従性向上を前提とした設計であり、25mm以下のナロータイヤとの空力的整合は考慮されていない。
1,150g

前作は実測重量1290gだった。
CS5060の1,250gでも当時は軽いと思ったが、時代はさらに進んで1,000g台前半の重量域に突入した。
ULTIMO 5060の公称1,150g±2%は、50/60mmというディープリムを考えると驚異的な軽さである。軽量化の主な要因は、より高弾性率のカーボンと最適化された新レイアップによりリム肉厚を薄くしつつ剛性を保った点だ。
そして細身カーボンスポークと肉抜きハブの採用にある。前世代CS系でCRWはディスクローターのスプラインを応力解析に基づき半分除去し、ハブシェルもチェーンリング裏のように徹底的に掘削するなど、0.1g単位の軽量化を積み上げてきた実績がある。

ちなみにCSシリーズはカタログ重量と実測重量がほぼ一致する。
ここで注意すべきは、軽量化はリム肉厚の削減と背中合わせであるという点だ。薄肉リムは落車や段差衝撃へのマージンが小さくなるリスクがあり、CRWがどの程度の安全率を確保しているかはわからない。
レース用途で割り切れるライダーには問題にならないが、通勤や荒れた路面での常用には注意が必要だろう。
細身エアロカーボンスポーク
ULTIMOのスポークは、従来より細いエアロ断面のカーボンスポークをフロント16本・リア20本という少数で配する構成だ。
一般的なディスクブレーキ用フロントは24本前後だが、CRWは強靭なカーボンスポークと前後左右タンジェント組で、スポークをハブフランジから接線方向に延ばし、駆動力やブレーキ力をハブからリムへ効率的に伝達する組み方を採用している。
これにより、16本でも十分な剛性を確保している。スポーク本数の削減は回転重量と空気抵抗の両面で有利に働き、細身化はさらに横風の影響を軽減する。

前作のスポークは明らかに太い。
この16/20という本数はLightweightの16/20モデルを想起させる。ハブフランジからできるだけ垂直方向にスポークを伸ばす思想も近い。ただしLightweightのようなリム・トゥ・リム方式(1本のスポークをリムからリムへ通す組み方)ではない点は異なっている。
カーボンスポークは金属スポークと比べて衝撃吸収特性が異なる。カーボンは弾性変形の範囲が広い一方、限界を超えると突然破断する傾向がある。金属スポークのように折れ曲がりながらもある程度機能を維持するということが難しい。
落車時のリスクは金属スポークと異なることを理解しておく必要がある。
チタン製スポークインターフェース
ULTIMOはカーボンスポーク端部にチタン製インターフェースを設け、それをハブ側にねじ込んで固定する構造を採用している。これはCRW独自のスレッドロックハブ思想の延長で、リム側ニップルではなくハブ側でスポークを固定する点が一般的なホイールと大きく異なっている。
このチタン製インターフェースを採用することで、最大限の強度と耐久性を実現している。さらにスルーアクスル締め付けによる公差・圧縮を吸収してベアリングへの軸方向圧力を排除するプリロードシステムを組み合わせることで、ベアリング寿命を大幅に延ばしている。
45Tスターラチェット
ULTIMOのフリーハブは45Tスターラチェットを採用している。
前世代CS5060の36Tから歯数を増やした。エンゲージメント角(空転してから駆動が噛み合うまでの角度)は360度÷歯数で決まるため、36Tでは10度、45Tでは8度となり、空転角が短縮されペダリング時の反応がより即時的になる。
この差はコーナー脱出やアタック時など、ゼロからの踏み出しで最も顕著に体感できる。CRWのラチェット機構はDT Swissのスターラチェット系技術であり、DT Swissの基本特許が失効しているため類似構造を採用している。
DT Swissのハブに慣れていれば、CRWのハブ分解も違和感なく行える。DT Swiss自身のラチェットラインナップでは18T(20度)、36T(10度)、54T(6.6度)が標準で、45T(8度)はちょうど36Tと54Tの中間に位置する独自設定だ。
ロード用途では過度な高歯数はラチェット歯の薄さによる耐久性低下や重量増を招くが、45Tは反応性と信頼性・軽さのバランスを狙った現実的な選択といったところだろう。
なおスターラチェット方式はポールクラッチ方式と異なり、全歯が同時に噛み合うため一歯あたりの負荷が分散され、構造的な信頼性は高い。
オーバーサイズフランジとセラミックベアリング
ULTIMOの新ハブは、ドライブ側フランジを大径化することで駆動伝達効率とハブ剛性を高め、オーバーサイズのTPI製セラミックベアリングを組み合わせている。
大径ドライブフランジはスポークのブレース角(スポークとハブ軸中心との成す角度)を稼ぎ、実効スポーク長を短くして横剛性を高める効果がある。Cadexのハブも同じようなハイフランジ設計を採用している。

セラミックベアリングは転がり抵抗を低減する。採用しているTPIは自転車業界で実績のある台湾のベアリングメーカーだ。
前世代CS系ではフロント2×6902、リア2×6902+2×6802という標準規格のベアリングを採用しており、入手性・交換性に優れていた。ULTIMOでもオーバーサイズ化しつつ調整可能なプリロードシステムを備える点は、整備性を重視するメカニックにとって好材料だろう。
一方でセラミックベアリングの優位性については議論の余地がある。筆者自身はセラミックベアリングには懐疑的なスタンスを取っている。
CeramicSpeedやKogel等の専門メーカーは転がり抵抗の低減を数値で示しているが、その差はホイール1本あたり0.5~2W程度とされ、体感できるかどうかは条件に依存する。
一方で砂塵や水分への耐性はスチールボールに劣り、メンテナンス頻度の高い環境では鋼球ベアリングのほうが実用的だ。
競合比較
私見を述べれば、ULTIMO 5060はカーボンスポーク超軽量ディープという激戦区において、重量・価格・システム完成度のバランスが取れた存在だ。しかし、新興ブランドゆえの不確実性と価格上昇という課題も抱えている。
価格
ULTIMO 5060は37万円前後だ。
競合の日本定価と比べると、ENVE SES 4.5は499,950円、SES 4.5 PROは649,990円、CADEX 50 Ultraは前後で約407,000円、Roval Rapide CLX IIIは484,000円、DT Swiss ARC 1100 Dicut 50やZipp 404 Firecrestは前後25~26万円前後である。
ULTIMOがCS系に近い価格で国内投入されれば、カーボンスポーク・セラミックベアリング・チタンインターフェースを備えたホイールとしては明確に割安となる。一方、海外並行の37万円水準ではCADEXやRovalと正面から競合することになる。






設計の差別化
主要な同リム高・カーボンスポーク系ホイールを一覧化すると、ULTIMOの特徴が見えてくる。以下は公称値ベースの比較だ。
| 製品 | リムハイト(F/R) | 内幅(F/R) | スポーク | 公称重量 | 参考価格(税込/円) |
|---|---|---|---|---|---|
| CRW ULTIMO 5060 | 50/60mm | 25/24mm | カーボン16/20 | 1,150g | 約37万円 |
| CRW CS5060(2026) | 50/60mm | 25/24mm | カーボン16/20 | 1,250g | 264,000円 |
| ENVE SES 4.5(2024) | 50/56mm | 25mm | 金属ストレート | 1,432g | 499,950円 |
| ENVE SES 4.5 PRO | 49/55mm | 23.5mm | Alpina金属 | 1,295g | 649,990円 |
| CADEX 50 Ultra | 50/50mm | 22.4mm | カーボン(40T) | 1,349g | 約407,000円 |
| Roval Rapide CLX II | 51/60mm | 21mm | DT金属 | 1,520g | 352,000円 |
| DT Swiss ARC 1100 Dicut 50 | 50/50mm | 20mm | DT金属エアロ | 1,472g | 約250,000円前後 |
| Zipp 404 Firecrest | 58/58mm | 23mm | 金属エアロ24/24 | 1,450g | 約250,000円前後 |
| Winspace Lun Hyper 50 | 50/50mm | 23mm | カーボン | 約1,260g | 海外約23~31万円 |


この表から読み取れるのは、ULTIMO 5060が50/60mmという実用的なディープリムでありながら、クライミング専用ホイール(たとえばRoval Alpinist CLX 1,248g)に迫る軽さを持つという事実だ。
CADEXやENVE SES PROといった一線級のカーボンスポーク軽量ホイールと比べても100g以上軽く、価格が国内CS系水準なら圧倒的なコスト優位を持つ。
ただしNepest、Elite、WinspaceやFarsportsなど、より安価な中国系カーボンスポークホイールも存在し、価格だけを見ればULTIMOは中国系の中では高価な部類に入る点は公平に記しておく。
ULTIMOが合う人は?
ULTIMO 5060は、平坦の巡航性能と登坂の軽さを一台で両立したいレース志向のライダーに最も向くと思う。
前輪内幅25mmは28mm以上のワイドタイヤを低圧で使う現代的なセットアップと相性が良く、アップダウンのあるロードレースやグランフォンド、さらには軽さを武器にしたいヒルクライマーにも武器になる。
逆に、25mm前後の細いタイヤで純粋な空力最優先を狙うなら、より狭い内幅のCS5055や他社のエアロ特化モデルのほうが適する場面もある。
また、タイムトライアルやトライアスロンのように直進巡航が中心の用途では、前後60mmや80mmの同形ディープリムのほうが空力的有利を最大化できる。ULTIMO 5060は万能型であるがゆえに、特化型には各領域の頂点で及ばない。
これはトレードオフであり、欠点ではない。
インプレッション
走らせたとき、軽さは「質」を持つ。
感覚的にいえば、この種のホイールは持った瞬間にわかる軽さと、50/60の割には回し始めの初速に鋭さがある。しかしULTIMO 5060が脚に残す印象は、単なる軽さとは異なっていた。
50/60mmのディープリムを持ちながら1,150gという数字は、手に取った瞬間に頭で考えている予測を裏切る。人間は経験的に物体の重量を予測するが、見た目のボリュームと実際の質量の乖離が大きいとき、そこに違和感という感情が発生する。
ULTIMO 5060は、まさにその驚きを設計に織り込んだホイールである。
回転体の物理は、慣性モーメントI = mr^2の式が示す通り、回転軸から遠い位置にある質量ほど、加速と減速に要するエネルギーは二乗で増大する。

リムとタイヤはホイールの最外周に位置するため、フレームやサドルの同じ重量削減と比べて、加速時のレスポンスに対する影響は理論上約2倍になる。ULTIMO 5060が前世代CS5060より約100g軽いという事実は、回転慣性の文脈で読むと、カタログ上の数字以上の意味を持つ。
その100gの多くがリム肉厚の最適化とスポークの細身化から生まれているなら、回転慣性の低減効果はハブの100g軽量化よりはるかに大きい。
加速と登り
ゼロ発進からの立ち上がりが軽く、踏み込んでからホイールが回るまでのラグが少ない。
静止状態から段階的に速度を上げていくと、20km/h、30km/h、40km/hと速度域が変わるたびに、一般的なホイールでは慣性の壁を感じる瞬間がある。
ULTIMO 5060ではその壁が薄い。ペダルに力を入れた瞬間から加速が始まり、力を抜いた瞬間から減速が始まるという、入力と出力の因果関係がきわめて直接的に感じられる。あたかもペダルとリムが同じ剛体でつながっているかのようだ。
前世代CS5060は、加速の鋭さはまずまずだった。
当時、DT Swiss ARC 1100 Dicut 50からの乗り換えで明確な差を感じた。そして、Roval Rapide CLX IIから乗り換えた際に、加速の軽さと巡航の伸びの両立が素晴らしいと思った。

しかし、2026年は状況が変わった。Rapide CLX IIIやENVE SES 4.5 PROに乗り込んでいる今は、あの時の感動が薄れてしまった。性能は確かにそこにあるのだが、相対的に満足できない走りの質になってしまった。
2026年型CS5060は、剛性と快適性の絶妙なバランスを保っているがそこまで速さを感じることはない。加速のレスポンスは前世代を確実に上回るが、他社のハイエンドと比べて驚くような性能の高さは感じられなかった。
登りについてはディープリムなのに平坦と同じ感覚で登っていくことは確かに残っていた。一見矛盾した表現だが、前作のCSもそうだった。
この感覚の正体は、減衰の緩やかさにあると私は考えている。一踏みごとに加速し、力を抜いた瞬間に失速するのではなく、ペダリングの谷間でも速度がほとんど落ちない。
その結果、次の一踏みが前の一踏みの勢いを引き継ぎ、登坂全体のリズムが途切れない。軽量リムの低慣性モーメントは加速を鋭くするが、同時にディープリム形状がもたらす空気力学的な推進効果が失速を抑える。
この二つの要素が交互に作用することで、平坦と登りの境界が曖昧になるのだ。50mm/60mmという前後異形のリムハイトは、登坂時のフロントの軽快さと、リアの巡航維持力を同時に与えるための設計である。
硬くはない
カーボンスポーク特有の硬すぎる乗り味を苦手としてきた層にとっても、CRWはまずまず合うと思う。
独立した横剛性テストではカーボンスポーク車輪はスチールスポーク車輪に比べて約7~8%高い横剛性を示すとされるが、CRWのホイールは振動がマイルドで快適なほうだと思う。
これはリムのレイアップによる振動減衰特性か、あるいはスポーク本数の少なさによる柔軟性が関係しているのかもしれない。いずれにせよ、カーボンスポーク=硬いという先入観を裏切る乗り心地は、CRWの隠れた美点の一つだ。
ただし、こうした私の感想は個人の体重、パワー、走行環境に強く依存する。
私は体重58kg台であり、この体格と出力帯での印象である。体重80kgのパワーライダーと55kgのクライマーでは、同じホイールでも剛性感や加速感の印象は大きく異なる。特に横剛性の印象は体重域によって異なるはずだ。
横風と音
五感で感じるULTIMOは、ディープリムゆえの横風の煽られやすさと、カーボンスポーク+軽量ハブが奏でる高めのフリー音が印象を左右する。
ホイールは走行中、常に音を発している。スポークが空気を切る音、ベアリングの転がる音、タイヤが路面を掴む音、そしてフリーハブが空転するときのラチェット音。これらの音の総和が、そのホイールの個性を形作る。
前世代CS5060では扁平スポークで軽く慣性が小さいため横風に敏感で、ハンドルを取られやすい感じを受けた。しっかり握っていれば対応できるのだが、私が普段使うROVAL RAPIDE CLX IIやIIIのホイールよりも横風耐性が弱い。
高速巡航時は非常に速いが、強い横風での下りではやや不安定だ。
ULTIMOは細身スポークであるため、横風安定性はむしろ改善するはずだが、リム形状の方が横力に対して支配的であるためその差は僅かだと思う。スポーク断面の細身化は、横風を受ける投影面積を減らすため、物理的に横力を低減することは確かなのだが。
また前輪の外幅34mmという太さは、タイヤとリムの段差を最小化し、ヨー角の変化に対する空力特性の急変を防ぐ。
Roval Rapide CLX IIやIIIがフロント外幅35mmで横風安定性の高い評価を得ている思想と同じ方向であり、理論的にはCS系の弱点であった横風感度は緩和方向にある。ただし、ULTIMO 5060を使った横風の実体験はサンプル数が少ない。
冷静に見れば、これは私の推測の域を出ていない。
ハブがうるさい
フリーハブは前世代同様に甲高い蜂の羽音のような音を発する傾向がある。フリーハブの音はChris Kingハブに似た音で、この音質はCRWのハブ設計に由来する固有の特性であろう。
これを官能的と感じるか耳障りと感じるかは好みが分かれると思う。私は個人的に、Chris King R45ハブの澄んだフリー音に慣れ親しんできた人間なので、この手の音には肯定的な感情を抱く。
フリー音はホイールの回転を「聴覚」で確認する手段でもあり、空転からペダリング再開までの間合いを音で把握できるという意味で、レース中の情報入力としても機能する。
美しいリム
UDペイントレス仕上げのリムに黒または白のデカールという外観は、艶を抑えた精悍な佇まいだ。カーボン繊維の編み目が透ける仕上げは、ある種の素材の正直さを感じさせる。
塗装で覆い隠すのではなく、構造そのものを見せるという設計判断は、軽量化と美学の両方に貢献している。
なお、前世代ではリアハブから走行中に高い音でヒューっと鳴ることがあった。軽量化に伴うハブシェルの共鳴の可能性がある。これはカーボンスポーク+薄肉ハブシェルという組み合わせが特定の周波数で共振する現象と推測している。
この種の異音は個体差やグリス量にも左右されるため、購入後に気になる場合はハブのグリスアップで改善する可能性もある。また45Tスターラチェットへのアップデートがハブ内部の振動特性に影響を与えているかどうかは、現時点では不明だ。
速度維持の美学
加速の鋭さは体感しやすいが、実はホイールの真価が問われるのは巡航の持続性においてではないだろうか。最近強くそう思うようになった。
CRWは速度の維持が非常に良い。少ないスポーク数が空力面で想定以上の貢献をしているのではないか、と思っている。フロント16本・リア20本というスポーク構成は、一般的な24本前後の構成と比べて空気抵抗を削減する。
ラボの風洞テストでも、少スポーク・中ディープリムの組み合わせがリムハイトから想定される以上の空力性能を発揮する事例が報告されている。トラックでは3本や5本のバトンが使われるのはそのためだ。
それでも巡航性能は数値化しにくい領域だ。風洞テストはヨー角ごとの抗力係数を出すが、実走の巡航感覚にはそれ以外の要素、すなわちホイールの振動減衰、タイヤとリムの一体感、ベアリングの転がり抵抗、さらには心理的な軽快感が複合的に影響する。
ULTIMO 5060のTPI製オーバーサイズ・セラミックベアリングは転がり抵抗の面で有利に働くはずであり、45Tスターラチェットの素早いエンゲージメントは、巡航中の微妙な速度変動に対するペダリングの応答性を高める。
これらの要素が統合されたとき、ライダーが感じるのは個別パーツの性能ではなく、ホイール全体として調律されたひとつの感覚である。
ここで哲学的な問いが浮かぶ。
ホイールとは結局のところ何なのか。リムとスポークとハブの集合体なのか、それとも回転する一個の場なのか。CRWが一貫して強調するのは「システムとしてのホイール」という思想だと思う。
個々の部品のスペックを積み上げても、走りの質は説明しきれない。ULTIMO 5060が走行中に伝えてくる感覚は、1,150gという数字でも、50/60mmというリムハイトでも、45Tというラチェット歯数でもなく、それらが調和したときに初めて立ち現れるひとつの手応えだ。
ブレーキングと下り
加速と登りに語る言葉が多い一方で、ブレーキングと下りの印象を語るものは少ない。
しかし、レースで使うホイールにとって、止まる性能は走る性能と同じく重要である。カーボンスポーク16本というフロントの少スポーク構成は、ディスクブレーキのトルクをハブからリムへ伝達する経路が限られることを意味する。
強いブレーキング時にスポークにかかる負荷は、24本構成と比べて1本あたり約50%増加する計算になる。16本スポークのブレーキングには気持ち的に最初の数回、慣れが必要だった、この力学的な不安を感覚が捉えていたのだろう。
もっとも、カーボンスポーク自体のスチール比7~8%高い横剛性がある。CRWのタンジェント組はスポークをハブフランジから接線方向に出す組み方で、ブレーキトルクの伝達に最適化できる組み合わせは、理論上は少ない本数でも十分な制動力伝達を確保できる。
ただし、ULTIMO 5060が前世代からさらにリム肉厚を薄くし、スポークを細くしている以上、同等の安全マージンが維持されているかどうかは、長期使用データが蓄積されるまで断定はできないと思う。
タイヤとの相性、内幅25mm
ULTIMO 5060のフロント内幅25mmは、現行ロードホイールの中でも突出して広い。この幅はETRTO規格上、28mm以上のタイヤを前提とした設計であり、28mmタイヤを装着すると実測で31~32mm程度まで膨らむ。
この設計判断はワイドタイヤ+低圧セットアップを前提として揺るぎない。
私がふだん使っている28mmタイヤ(Pirelli P Zero TLR SL-R)との組み合わせでは、空気量の増大による路面追従性の向上が感じられる。タイヤが太くなれば接地面が横に広がり、同じ荷重でも接地圧が下がるため、路面の凹凸をタイヤが吸収する能力が上がる。
一方で、25mmや26mmのタイヤを履かせた場合、リム幅に対してタイヤが相対的に細くなり、空力的な段差が生じる可能性がある。メーカーの推奨タイヤ幅は28mm以上であり、それ以下は空力的にも安全性的にも推奨されない。
この点は、手持ちのタイヤ在庫が25mm中心のライダーにとっては制約となりうる。
中華、という言葉。
最後にインプレッションを離れ、少し私的なことを書く。
新興ブランドのフラッグシップを手にするということは、確立されたブランドの安心を手放し、未知の設計思想に自分の走りを預けるということだ。それはある種の哲学的行為である。
ENVEもZippも、かつては今のCRWと同じく、一握りのマニアだけが選ぶニッチな存在だった。ENVEの前身Edge Compositesが世に出たとき、リムが割れたという報告に怯えながらも、その空力性能に惹かれたアーリーアダプターがいた。
CRWのCSシリーズが中国系オンラインストアのベストセラーとなり、UCI世界選手権のジュニアチャンピオンに選ばれるまでには、多くの人柱たちの走行距離が積み上げられてきた。ULTIMO 5060は、その系譜の最新章になるのかもしれない。
1,150gという軽さは確かに魅力的だが、それは同時に、薄肉化という物理的な限界へに近づくことでもある。軽さには代償があり、その代償が何であるかは、走り込んで初めてわかる。
実測重量も、長期耐久データも、現時点では情報にない。この不確実性を引き受ける覚悟があるかどうかが、ULTIMO 5060を選ぶかどうかの本質的な分岐点になる。
私が思うに、ホイールとは数値の集積ではなく、回転する思想だと思う。
リム、スポーク、ハブ、ベアリング、ラチェット。それぞれが独立した部品であると同時に、回転した瞬間にひとつの場として統合される。CRWがシステムとしてのホイールを表現するとき、そこには幾ばくかの異議が込められている。
部品を足しても全体にはならない。全体は部品の総和を超えるのだと。ULTIMO 5060を走らせたとき、その思想が脚の裏から伝わってくるかどうか。それを確かめるには、あなた自身が回してみるしかない。
まとめ:全部盛りだが価格がネックか
前作 CRW CS5060は高性能ながらお手頃な価格でヒットした。
新型のCRW Works ULTIMO 5060は、前後異形エアロ・カーボンスポーク・45Tスターラチェット・チタンインターフェース・オーバーサイズセラミックベアリングを統合し、50/60mmで公称1,150gという空力と軽量の両立を高い完成度で実現したフラッグシップであることは間違いない。
CSシリーズで培われた設計思想を正常進化させ、約100gの軽量化と反応性・横風安定性の改善を果たした点は高く評価できる。
課題は、価格だ。メジャーブランドの価格帯に近づきすぎている。どちらを選ぶかと問われれば、メジャーブランドのホイールを資金を捻出して選ぶだろう。
気になるのは、ディープリム由来の横風感度と高めのフリー音、そしてハブ側ねじ込み式という特殊構造への整備上の慣れである。また、フロント内幅25mmという設計はワイドタイヤ前提であり、25mm以下のタイヤは対応しない。
これらを踏まえ、平坦も登りも一台でこなす軽量オールラウンダーを探しており、かつ新興ブランドのリスクを許容できるなら、ULTIMO 5060はまずまずの候補になる。
価格最優先ならNepest、Farsports、Eliteといった他の中国系カーボンスポークホイールも比較検討に載せるべきだ。
ULTIMO 5060は、数字だけを見れば間違いなく魅力的なホイールだ。しかし、スペックで走るわけではない。最後に信じるべきは、数値ではなく、ペダルを踏んだ瞬間の感覚なのかもしれない。
日本での購入はBECKONから。



















