シマノ新規格「SPD-SLR」と DURA-ACE PD-R9300 インプレッション

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シマノは2003年のSPD-SL導入以来約23年ぶりとなる、ロード用ビンディングペダルの新規格「SPD-SLR」を発表した。

フラッグシップのDURA-ACE PD-R9300を筆頭に、ULTEGRA PD-R8200、4種の新クリート、S-PHYRE RC910/RC810シューズを同時リリースしている。実際にPD-R9300と黄色クリートを使用してPD-R9100やSPD-SLとの違い、使い勝手を確かめた。

まずは、SPD-SL、SPD-SLRの互換性を試してみた。

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SPD-SLとの互換性

←SPD-SLRペダルに、→SPD-SLクリートは使えない。

早速だが、SPD-SLRペダルにSPD-SLクリートは使えない。SPD-SLRは低スタック・軽量・性能向上を謳うが23年以上にわたるSPD-SL資産との互換性を断ち切っている。

互換性まとめ

組み合わせ 可否 詳細
SPD-SLクリート  & SPD-SLRペダル 不可 クリップインすらできない。物理形状が異なる。(危険!)
SPD-SLRクリート & SPD-SLペダル 非推奨 物理的にハマる。カタつくし緩い。クリート下に目立つ隙間ができる。緊急時限定。シマノ公式見解はもちろん「非互換」
SPD-SLRクリート & 既存3ボルトシューズ 条件付き可 装着自体はもちろん可能。ただし前後位置をシューズ側で再現できるか要確認。固定穴シューズでは再現できない可能性あり
SPD-SL系パワーメーターペダル 非対応 Garmin Rally RS、Favero Assioma PRO RS-2はSPD-SLR非対応。対応品にはシマノの新特許ライセンスが必要(相談中らしいよ)
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PD-R9300 / SPD-SLR インプレッション

元のクリート位置から数ミリ、かかと側に下がった位置でセッティングが出せた(ラッキー)

23年続いたSPD-SL資産をリセットしてまで得られるものは何か。実際にDURA-ACE PD-R9300と新型SPD-SLRクリートを実走で使い、5つの利点を確認した。数値だけでは伝わらない体感した結果をまとめた。

クリートキャッチ — 係合角度10.5°の恩恵は想像以上に大きい

これ、この角度が良い。

SPD-SLRを使って最初に、そして最も明確に感じた違いがクリートキャッチのしやすさだった。

旧SPD-SLでは、クリップイン時にペダルが15.5°吊り下がるため、つま先をある程度正確に踏み込まないとクリートが噛まない。筆者の個人的な感覚では、SPD-SLのクリートキャッチ成功率は7割。4回に1回は空振りするか、踏み直しが発生していた。

SPD-SLR(上)のつま先部分は丸いカーブを描いているのもクリートキャッチに貢献していると思う。

SPD-SLRではこれが9割まで跳ね上がった感じがする。ひっかかりがなく、するんとクリートが吸い込まれていく。この表現が最もしっくりくる。

係合角度を15.5°から10.5°へ縮小し、キャッチゾーンを広げたシマノの判断は正しかった。この5°の差にこだわり抜いた設計思想には素直に感嘆する。

この利点が最も活きる場面はJBCFのタイムトライアル(サドルを持ってくれない)だろう。TTのスタートでは1秒未満の差がリザルトを左右する。スタートのクリートキャッチであれ、確実性が上がれば、スタート直後のペダリングへの移行がスムーズになり、1秒が稼げるからだ。

レースでなくとも、信号停止からの再発進、集団走行中の立ち上がりなど、ライド全体を通じたストレスがかなり減った。小さな改善でありながら、乗るたびに体感できる良さがある。SPD-SLRの5つの利点のうち、この効果が最も大きいと感じている。

テンション調整の変化 — 「カチカチ」から「スッ、スッ」へ

バネの音が変わった。

PD-R9300のクリート解放強度(バネ)調整を回してみると、旧PD-R9100とは明らかに異なるフィーリングに気づく。

PD-R9100では+方向にも−方向にも「カチカチ」と明確なクリック感があり、それが調整の目安になっていた。PD-R9300では挙動が変わっている。+方向に回すと「スッ、スッ」と1クリックごとの節度感はあるが音は鳴らない。−方向に回すと従来どおり「カチカチ」と音がする。

この非対称なフィードバックが設計意図なのか、ベアリング・バネ構造の変更に伴う副次的な変化なのかは不明だが、実用上は問題ない。ただし音だけを頼りにテンション調整していたユーザーは、+方向で指先の感触をより意識する必要がある。

スタックハイト -2.3mmがクランク軌跡に与える影響

青色がSPD-SL、赤色がSPD-SLRの軌道。※BBの位置はもう少し上です。

SPD-SLRのスタックハイトはペダル+クリートで2.3mm低減されている。この「2.3mm」は単なる数値ではなく、ペダリングの軌跡そのものを変える。

ペダル軸中心からシューズソール面までの距離が2.3mm縮まるということは、クランク回転の軌跡において上部(上死点付近)では足の位置が2.3mm下がり、下部(下死点付近)では2.3mm上がることを意味する。

つまりスタックハイトの低減は、事実上これまで使用していたクランクの有効長を変化させている。上死点では短いクランクのように通過しやすくなり、下死点では長いクランクのように僅かに伸びる。

この左右非対称ではなく上下非対称の変化が、ペダリングフィーリングにどう影響するかは後述する。

サドル高を変える?

スタックハイトが2.3mm低くなれば、教科書的にはサドルを2.3mm上げてペダル軸〜サドル間距離を維持するのがセオリーだろう。筆者も当初はそう考えていた。

しかし、実際にはサドル高を変えずにそのまま走った。結果として、上死点の通過が明らかに速くなった印象がある。前述の「クランク軌跡の変化」と合わせて考えると、上死点で足が2.3mm低くなったぶん膝の屈曲がわずかに浅くなり、12時付近の詰まり感が軽減されたと推察できる。

もちろんサドルを上げれば下死点での伸びが最適化されるかもしれないが、上死点の通過性を優先するなら「サドルを動かさない」という選択肢にも合理性がある。

フィッティングの正解は一つではなく、ライダーの脚長・柔軟性・ペダリングスタイルで変わる。スタックハイト変更をきっかけにポジションを見直す良い機会だが、「必ず上げなければならない」わけではないことは実体験として伝えておきたい。

スタンディングの解像度が上がる

これは、いちはやくPD-R9300を使っていた沢田時選手に聞いてみたい変化だ。スタックハイトの低減は、走行中だけでなくスタンディングにも影響した。

信号待ちやスロー走行でのスタンディング時、バイクを後ろに下げてから前に進ませる動作の解像度が上がった気がする。足裏がペダル軸に2.3mm近づいたぶん、ペダルを通じた路面のフィードバックがわずかにダイレクトになり、バランスポイントの微調整がしやすい。

そこでの安定感が増すのは歓迎できる。「2.3mmでスタンディングが変わるのか」と問われれば、変わる。ただし劇的な差ではなく、日常的にスタンディングを多用するライダーが「ああ、少し良くなったな」と感じる程度の変化であることは正直に書いておく。

SPD-SLRはスタックハイト以外の利点のほうが多い

PD-R9300とSPD-SLRを実走して得た5つの利点を整理した。

  1. クリートキャッチの劇的な改善(成功率7割→9割、TTスタートへの効果大)
  2. テンション調整のフィーリング変化(+方向が静音化)
  3. スタックハイト2.3mm低減によるクランク軌跡の上下変化
  4. サドル高を変えずとも上死点の通過が速くなった印象
  5. スタンディング時のバランス解像度の向上(オレ得)

5つのうち、最もインパクトが大きいのは圧倒的に1番のクリートキャッチだ。これだけでSPD-SLRに移行する価値があると言い切れるほど、ライド全体のストレスが減る。レースには関係ないのだが、ライド中クリートキャッチがミスりにくくなりストレスがマジで減る。

3〜5番のスタックハイト関連の恩恵は、小さいが確実に体感できる変化であり、積み重なることでペダリングの質を底上げしてくれる。

SPD-SLRは「互換性の悪夢」と評されることもあるが、実際にペダルを踏めばその設計意図が脚を通じて伝わってくる。シマノが23年かけて到達した答えは、数値以上に「体感の解像度」で語るべきシステムだった。

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実測重量

PD-R9300 右 113.8g

右側ペダルはPD-R9300のほうが5g軽い。

PD-R9300 左 114.3g

左側ペダルはPD-R9300が4.6g軽い。

PD-R9300はPD-R9100よりも9.6g軽量だ。

SPD-SLR クリート 19.1g

黄色クリートはSPD-SLRが0.6g重い。

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SPD-SLRとSPD-SLクリートの違い

一見すると似ているが、穴の位置は下方向だけに移動した。この仕様変更は筆者のクリート位置の場合はノーダメージだったが、クリートをカカト寄りに調整しているライダーは影響が出る可能性が高い。

元のSPD-SLの位置は白い線が見える。

筆者の場合は、若干後ろに下げるだけでポジションが出せた。

上SLR、下SL。

クリートのつま先形状はSLRはカーブしている。このゆるやかなカーブのおかげでクリートキャッチがしやすくなっているようだ。

上のSLRは薄くなった。つま先以外は全体的に薄くなっている。

摩耗する部分の黄色い部分は、SLRのほうが実際の厚みがある。

上SLR、下SL

SLRの黄色い部分は横が広くなった。

上SLR、下SL。

SLRは黄色い摩耗する部分がワイドになっている。

クリートを前から見ると、上SLRは幅広、下SLは細い。摩耗もSLRのほうが少なそうだ。

つま先は変わらない。

SPD-SLの最も浅い部分は5.44mm。

SPD-SLRの最も薄い部分は3.27mm。

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PD-R9300、PD-R9100の違い

中央のプレートがなくなり、PD-R9100にあった肉抜きも無くなったが軽量化している。

上R9100、下R9300

横から見ると全体的に9300のほうが薄い。特に先側のボテッとした感じがなくなっている。

スタックハイトは測れなかったが、PD-R9100の最も薄い部分は17.26mm。

PD-R9300は16.17と薄くなっている。

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要点まとめ:従来SPD-SLからの主な変更点

  1. SPD-SLRはペダル・クリート・シューズを一体設計した新規格。ペダル+クリートのスタックハイトを2.3mm低減し、DURA-ACEで12.5mmを実現。係合角度は15.5°から10.5°へ縮小し、クリップインが容易になった。
  2. PD-R9300はカーボンコンポジットボディ、実測ペア228.3g、国内価格41,787円(税込)。旧PD-R9100からの軽量化はペア約6g。
  3. 旧SPD-SLとの互換性は完全に無い。

スタックハイトの低減

ペダル+クリートのスタックハイトを2.3mm低減。DURA-ACEで12.5mm、ULTEGRAで13.3mm。新S-PHYRE RC910と組み合わせるとシステム全体で約2.8mm低くなる。

係合角度の縮小

ペダルの吊り下がり角度を15.5°から10.5°へ縮小し、キャッチゾーンを拡大。つま先を大きく下げずにクリートを捉えられ、発進時のクリップインが素早くなった。

クリートの薄型・軽量化

クリートを薄型化し従来の金属ワッシャーを廃止。CL-SL120(ブルー)は55gで、旧SM-SH12の71gから約22%の軽量化(ペアで約32g減)。

前後調整の事実上の廃止

低スタック仕様のクリート(レッド・イエロー・ブルー)は左右(ラテラル)調整のみ。前後位置はシューズ側の調整範囲に依存する。高コントラストのアライメントマーカーと中央窓で位置再現性を高めている。

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PD-R9300の仕様と旧PD-R9100との比較

項目 PD-R9300(SPD-SLR) PD-R9100(SPD-SL)
規格 SPD-SLR SPD-SL
ボディ素材 カーボンコンポジット カーボンコンポジット
スタックハイト 12.5mm 14.6〜14.8mm
重量(ペア) 実測228.1g/公称約227g 約234g
係合角度 10.5° 15.5°
軸長 標準52mm/+4mm軸あり 標準52mm/+4mm軸あり
テンション調整 可(2.5mmアーレンキー) 可
付属クリート CL-SL110(黄・±3°) SM-SH12(青・±1°)
国内価格(税込) 41,787円 —

シマノはULTEGRA PD-R8200比で剛性11%向上、回転抵抗53%低減を公表している。

ただしこれは旧DURA-ACEとの直接比較ではない点に注意が必要だ。DURA-ACEは片側のカップ&コーンベアリングがボディ外側に配置される太軸設計で、ULTEGRAより剛性を高めている。

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クリートのラインナップ

型番 カラー フロート 特徴
CL-SL100 レッド 0°(固定) 最もダイレクト。スプリンター向け。低スタック対応
CL-SL110 イエロー ±3°(計6°) 最も汎用的。PD-R9300標準付属。低スタック対応
CL-SL120 ブルー ±1°(計2°) 効率と可動域のバランス。55g。低スタック対応
CL-SL130 グレー ±3°相当 他社3ボルトシューズ・固定穴ソール向け。前後調整範囲あり。低スタック・軽量の恩恵なし

CL-SL130はグレーのアダプター的クリートで、他社シューズとの互換性を確保する代わりに低スタックや軽量化の恩恵が得られない。

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ULTEGRA PD-R8200と下位グレード

SPD-SLRはDURA-ACEとULTEGRAの2グレードで同時デビューした。PD-R8200は樹脂ボディにステンレスコンタクトプレートを備え、国内価格26,131円(税込)。基本設計と係合特性はDURA-ACEと共通だが、剛性と回転抵抗で劣る。

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移行判断の案

  1. 新S-PHYREや前後調整幅の広いシューズを使うシマノユーザー:恩恵を最も受けやすい。判断基準は「現在のクリート前後位置をシューズ側で再現できるか」の一点。
  2. Specialized等の固定穴シューズや前後調整が狭いシューズのユーザー:グレーのCL-SL130(前後調整あり・低スタック恩恵なし)を使うか、シューズも同時更新するかの二択。
  3. SPD-SL系パワーメーターペダル(Garmin Rally RS / Favero Assioma PRO RS-2)のユーザー:対応製品が出るまで移行は見送りが妥当。
  4. 現状に満足しているライダー:スタック2.3mmの体感差には個人差が大きく、シマノ自身も普遍的な性能向上値を明言していない。急いで移行する必要は低い。
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どこで買うのがやすかった?

私はもちろん自腹購入だ。

結局、探し回ってポイント比較するとヤフショが一番安かった。
実質、41,787円👉️30,823円で26%OFFで購入した。オンラインショップの初期価格が安すぎておかしい気がするが、価格が安いうちに買っといたほうがいいかもしれない・・・。

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