純正チェーンリングの価格高騰は、GOLDIXのような中国ブランドの社外品に光があたる要因になっている。
シマノは4アームクランクへ移行して以降、チェーンリング単体の価格を段階的に引き上げてきた。とりわけアウター側は中空構造や複合材を用いるため高価で、摩耗交換のたびに出費がかさむ。
例えば、シマノ純正のR7000用アウターリングは、アルミの陽極酸化処理にガラス繊維強化樹脂(GFRP)を組み合わせた構造である。この複合構造こそが純正の剛性と軽さを支えている一方、コストを押し上げる要因にもなっている。
社外品をいくつか試してきたが、今回GOLDIXの110BCD 2Xダブルチェーンリングを使ってみた。7075アルミ削り出し、4種類のギア比、専用ボルトカバー付きという仕様は、価格を重視するホビーレーサーにとって魅力的に映った。
筆者もかつて、レース前夜に摩耗したアウターを見つめて純正の値段にため息をついた経験がある。社外品という選択肢は、そうした現場の切実さから生まれた需要なのだろう。
GOLDIXチェーンリング
GOLDIXのチェーンリングは、シマノ4アームクランク向けの110BCD、4ボルトに対応する。素材は7075アルミ合金、ギア比は50-34T、52-36T、53-39T、54-40Tの4種類が用意されている。
今回は54/40を試した。
シマノの4アームクランクのBCDは110mmだが、ボルト配置が等間隔ではない非対称パターンを採用している点に注意が必要だ。
| 項目 | GOLDIX 110BCD 2X | シマノ105 FC-R7000純正 |
|---|---|---|
| BCD | 110mm・4ボルト | 110mm非対称・4ボルト |
| 素材 | 7075アルミ削り出し | アウター:アルミ+GFRP、インナー:アルミ |
| ギア比 | 50-34、52-36、53-39、54-40 | 50-34、52-36、53-39 |
| 変速補助設計 | ピン | Hollowglide構造、専用ランプ・ピン |
| 付属品 | 専用ボルトカバー | なし(ボルトは別売) |
R7000/R8000との完全互換は本当?
互換性を謳っているが、変速はするもののかなりもたつく。
本製品はシマノ7100、8100、9200系クランクに対応しているという。実際、R7000/R8000/R9100の11速世代と、R7100/R8100/R9200の12速世代では、同じ4アーム110BCDでもチェーンリング側の取付形状が異なるが、形状的にR9200に取り付けられる。
7075アルミ削り出し
7075アルミは高強度だが、それだけで純正以上の剛性が保証されるわけではない。
7075はアルミに亜鉛を主に添加した超々ジュラルミン系合金で、一般的な6061より引張強さが高いことが材料工学上よく知られている。強度が高いぶん、リングを薄く肉抜きしても形状を保ちやすく、軽量化設計との相性は良い。
ただしチェーンリングの横剛性は、素材の強度よりも断面形状と厚みに大きく依存する。シマノ純正アウターは中空構造で断面二次モーメント(曲げに対する形の強さ)を稼いでいる。
単板削り出しの社外品が同等の横剛性を得るには肉厚を増やす必要があり、その分だけ軽量化の余地は縮む。
変速レスポンス
変速性能は純正より明らかに悪い。
余談だが、シマノが5アームから4アームへ移行した狙いは、アームの配置と剛性分布を最適化しつつクランク全体を軽くすることにあった。
非対称配置によって、ペダリングトルクが最も大きくかかる位相で支持剛性を確保している。GOLDIXはこの土台を借りる立場であり、固定方式としての安定性はクランク側の設計に負うところが大きい。
変速レスポンスを決めるのは、むしろアウターリング内側のシフトランプ(チェーンを持ち上げる斜面)とピンの配置、そしてインナーとの位相合わせだ。
シマノは50Tと34T、52Tと36Tのように組み合わせを指定し、最適な変速性能のために組み替えを推奨していない。社外品でこの位相設計がどこまで詰められているかが、変速性能の分かれ目となる。
変速性能はあまり良いものではなかった。
ギア比の選択肢
54-40Tの存在は、R9200以外の純正にない明確な付加価値である。
純正R7000の推奨構成は50-34、52-36、53-39の3種類である。GOLDIXは54-40Tを追加しており、平坦主体のクリテリウムやタイムトライアルで重いギアを求めるライダーには意味がある。54Tは同じケイデンスで53T比約1.9%速度が上がる計算になる。
一方でインナー40Tは、登坂区間を含むコースでは重すぎる場面がある。また歯数差14Tの構成は、フロントディレイラーの許容範囲内ではあるが、大径化に伴いディレイラー取付高さの再調整が必須となる。
競合比較
GOLDIXは価格最優先の層に向けた選択肢であり、変速品質ではシマノ純正やabsoluteBLACKに一歩譲るポジションである。
| 製品 | 特徴 | 参考価格帯 |
|---|---|---|
| シマノ105純正 | 中空構造、変速最適化、確実な互換性 | アウター・インナー合計で1万円台前後 |
| absoluteBLACK Premium | 6点ランプとリセス設計で変速性を重視、オーバルも展開 | インナー単体で約8,000円前後 |
| ALUGEAR、PASS QUESTなど | 中華系、エアロ形状や大径歯数が豊富 | 数千円台が中心 |
| GOLDIX 110BCD 2X | 7075削り出し、54-40T、ボルトカバー付属 | 5000円前後 |
absoluteBLACKは変速性を意識して6点のランプを設けている。
実走とセッティングの勘所
中華系削り出しリング全般に共通して、変速は作動するが純正ほどの滑らかさと速さはない、というのが使ってきた結論だ。
- インナーからアウターへの変速で、チェーンが乗り上がるまでかなりの間がある
- 高負荷時のアップシフトでは、ペダルを緩めないと引っかかる感触がある
- ダウンシフトは純正と大差なく、チェーン落ちは調整次第で抑えられる
- 変速性能はやや悪い
この傾向は、シフトランプとピンの最適化が純正ほど詰められていないことと整合する。レースのアタック局面でアウターに掛け替える瞬間、その一拍の遅れが勝負を分けることは、実際にスプリントを経験したライダーなら想像に難くないはずである。
歪みの少なさ
一般的なホビー領域の出力では横方向の歪みを不満に感じることはないだろう。純正中空リングを上回るという根拠も見当たらない。
削り出しの単板リングは、精度が出ていれば振れ(回転時の横ブレ)は小さい。ただしスプリントで1,000Wを超えるような入力時の剛性差は、計測データがなく、体感談の域を出ない。
歪みの少なさを売りにする販売文句は、検証可能な数値が添えられていない点で慎重に受け止めるべきである。
パワーメーター併用時
スパイダー型やクランク型パワーメーターとの併用では、チェーンラインとフロントディレイラーの再調整が必須になる
社外リングは純正とリング厚やオフセットがわずかに異なる場合があり、0.5mm程度の差でもチェーンラインが変わる。特に4iiii、Stages、シマノ純正パワーメーターのようなクランク型では、リング交換後にゼロオフセット校正を行い、左右バランスの数値がずれていないか確認したい。
- リング装着後、トルクレンチで規定トルクに締め付ける
- フロントディレイラーの高さをアウター歯先から1〜3mmに再設定する
- 最大歯数側・最小歯数側でのチェーン擦れを確認し調整する
- パワーメーターのゼロオフセット校正を実施する
Di2では電子的なトリム調整が可能だが、機械式では54Tなど大径時にワイヤー張力の微調整が欠かせない。交換時に特別な工具や調整は不要という販売文句は、実務上は当てはまらないと考えるべきだろう。
削り出しリングの見た目と手触り
見た目の質感はこの価格帯としては満足度が高く、ドレスアップ目的なら十分な説得力がある。
CNC削り出し特有の幾何学的な肉抜きと、陽極酸化処理による均一な黒は、樹脂を張り合わせた純正リングとは異なる金属の塊感を放つ。指で歯面をなぞると切削痕のわずかなざらつきが残る個体もあり、そこに工業製品らしい手触りを感じる人も多いだろう。
一方で、変速時のチェーンの乗り上げ音は純正よりやや硬質で、ガチャガチャという金属音が耳に残る。
ボルトカバーはクランク周りの視覚的な統一感を高め、見た目の完成度を一段引き上げる。
純正クランクのボルト頭は機能部品然としているが、カバーを付けると取付部が滑らかにつながり、クランク全体がひとつの彫刻のように見える。ただしカバーは点検時に外す手間が増えるため、締め付けトルク確認を怠りがちになる点は覚えておきたい。
社外チェーンリングは純正代わりになる?
用途を限定すれば代わりになり得るが、純正の変速品質を丸ごと置き換えるものではない。
チェーンリングは、目に見えるのは歯の並びだけだが、その実体はランプ、ピン、位相、剛性分布という見えない設計の集積である。純正の価格には、この見えない部分への膨大な開発投資が含まれている。社外品はその形を写すことはできても、思想まで写せるとは限らない。
ある意味でこれは、自転車趣味そのものの縮図だ。
数値と見た目で選ぶか、目に見えない積み重ねに対価を払うか。どちらが正しいということはなく、何を走りに求めるのかが問われているのである。練習用の機材をコスト重視で回し、決戦用には純正を残す、という使い分けこそが、成熟したライダーの合理性だと筆者は考える。
GOLDIXを選ぶべき人、避けるべき人
結局、誰におすすめできるのか。
GOLDIX 110BCD 2Xは、価格と見た目と大径ギアを重視する練習用・ドレスアップ用途には有力だが、変速品質を最優先するレース用途には推奨しにくい。
変速性能はかなり悪い・・・。
| 観点 | 評価 |
|---|---|
| 互換性 | 世代の確認が必須。 |
| 変速性能 | 作動はするが純正より劣る |
| ギア比 | 54-40Tの選択肢は明確な強み |
| 外観 | 削り出しとボルトカバーで高い満足度 |
- 装着後はフロントディレイラー高さとパワーメーター校正を必ず実施する
- レース本番前に、高負荷でのアップシフトを十分に試走して確認する(コレ大事)
安価な社外リングは、正しく選び、正しく調整してこそ真価を発揮する。
54/40の練習用としてはよいが、変速性能が悪すぎるのでレースでは使えない。割り切れるのなら、練習用の一台から試してみるほうが良いだろう。
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