なぜ今、Aeolusは前後非対称を選んだのか
Bontrager Aeolus Xは、リム、スポーク、ハブのすべてを刷新し、さらに前後で異なるリムハイトを採用した新世代のホイールだ。ハイエンドのAeolus RSL 65XとAeolus RSL 43X、そしてミドルグレードのAeolus Pro 43Xの3モデルから構成されている。
ホイールは長らく前後で同じリムハイトであることが前提とされてきた。同じリムハイト、同じリム幅、同じ素材のスポーク。前後を揃えることは製造上の合理性であり、見た目の調和であり、ある種の常識であった。
Aeolus Xはその常識に正面から手を入れたホイールだ。
Aeolus Xの進化
Aeolus Xの刷新はリム、スポーク、ハブの3要素すべてに及んでいる。
RSL 65XとRSL 43Xは、OCLVカーボンリム、Vonoa社製カーボンスポーク、DT 180カスタムハブとセラミックベアリングを組み合わせた。新しいフロントディープ設計は空力、重量、効率を高めながら、安定感と快適性を両立させたホイールセットに仕上がっている。
一方のPro 43Xは、ハイエンドの設計思想をそのまま受け継ぎながら、ステンレススチールスポーク、DT 350ハブ、スチールベアリングを採用した。コストパフォーマンスを最大化したモデルである。
つまりAeolus Xは単一の製品ではなく、ひとつの設計思想を価格帯ごとに分類したシリーズだ。
「X」
Aeolus Xの「X」は、Mixed depth、すなわち前後で異なるリムハイトを意味する記号を表している。RSL 65Xは前65mm/後58mm、RSL 43XとPro 43Xは前43mm/後38mmという構成で、いずれもフロント側を深くしている。
数学においてXは未知数を表し、交差を表し、ときに否定を表す。前後対称という既定値を否定し、空力とハンドリングという二つの要求が交差する点を探り当てる。
この一文字には、Bontragerがこのホイールに込めた問いがそのまま刻まれているのだ。
Aeolus Xの3モデルは、価格、重量、リムハイト、スポーク素材、ハブの組み合わせによって明確に棲み分けが行われている。
基本仕様
RSL 65XとRSL 43Xは同価格の440,000円(税込)、Pro 43Xは240,000円(税込)だ。仕様の全体像は以下のとおり。
| 項目 | Aeolus RSL 65X | Aeolus RSL 43X | Aeolus Pro 43X |
|---|---|---|---|
| 価格(税込) | 440,000円 | 440,000円 | 240,000円 |
| 重量 | 1,475g | 1,220g | 1,415g |
| リムハイト | 前65mm/後58mm | 前43mm/後38mm | 前43mm/後38mm |
| リム | OCLV カーボンリム | OCLV カーボンリム | OCLV カーボンリム |
| スポーク | Vonoa カーボンスポーク(18本&24本) | Vonoa カーボンスポーク(18本&24本) | ステンレススチールスポーク(18本&24本) |
| ハブ | DT 180 カスタムハブ(Ratchet EXP) | DT 180 カスタムハブ(Ratchet EXP) | DT 350 ハブ |
| ベアリング | セラミックベアリング | セラミックベアリング | スチールベアリング |
| 最適なタイヤ幅 | 28mm | 28mm | 28mm |
| 標準チューブレスセットアップ | TLRテープ | TLRテープ | TLRテープ |
RSL 43XとPro 43Xの価格差は200,000円、重量差は195gだ。単純に割り算すれば、1gの軽量化に約1,026円を支払う計算になる。ただしこの差額にはカーボンスポークによる剛性と振動特性、セラミックベアリングの回転品質も含まれている。
重量だけで価値を測るのは軽率と言えるだろう。
RSL 65Xの進化
RSL 65Xは、前作RSL 62より深いリムを持ちながら45g軽く、空力でも2.1Wの優位を示している。旧世代のRSL 62およびRSL 51との比較は以下のとおり。
| 項目 | RSL 65X(NEW) | RSL 62 | RSL 51 |
|---|---|---|---|
| 重量 | 1,475g(-45g) | 1,520g | 1,440g |
| リムハイト | 前65mm/後58mm | 前後62mm | 前後51mm |
| リム幅 | 前:内22mm/外37mm、後:内23mm/外31mm | 内23mm/外31mm | 内23mm/外31mm |
| スポーク | カーボン(18本&24本) | スチール(24本) | スチール(24本) |
| ハブ | Ratchet EXP、セラミックベアリング | DT Swiss 240、Ratchet EXP | DT Swiss 240、Ratchet EXP |
| 最適なタイヤ幅 | 28mm | 25mm | 25mm |
| 標準チューブレスセットアップ | TLRテープ | TLRストリップ | TLRストリップ |
注目すべきは、リアのリム幅が内23mm/外31mmとRSL 62から据え置かれている一方で、フロントだけが内22mm/外37mmへと劇的に変化している点だ。
リアは58mmとRSL 62より4mm浅く、フロントは65mmと3mm深い。前後合計のリムハイトはほぼ同等でありながら、その配分を前に寄せたことがRSL 65Xの本質である。
また、フロントリムハイトが14mm深いにもかかわらず、RSL 51との重量差はわずか35gに収まっている。なお2.1Wという数値については、試験速度、ヨー角、タイヤ銘柄などの測定条件が公開されていない
RSL 43Xの進化
RSL 43Xは、RSL 37よりフロントで6mm、リアで1mm深くなりながら、105g軽い1,220gを実現している。比較は以下のとおり。
| 項目 | RSL 43X(NEW) | RSL 37 |
|---|---|---|
| 重量 | 1,220g(-105g) | 1,325g |
| リムハイト | 前43mm/後38mm | 前後37mm |
| リム幅 | 内21mm/外28mm | 内21mm/外28mm |
| スポーク | カーボン(18本&24本) | スチール(18本&24本) |
| ハブ | Ratchet EXP、セラミックベアリング | Ratchet EXP |
| 最適なタイヤ幅 | 28mm | 25mm |
| 標準チューブレスセットアップ | TLRテープ | TLRストリップ |
Vonoaカーボンスポークは同等のスチールスポークに対して94gの軽量化をもたらす。105gの軽量化のうち大半はスポークによるものだ。
リムを深くしたことによる重量増は、TLRストリップからTLRテープへの変更などと合わせて、ほぼ相殺されている。リム幅は内21mm/外28mmで据え置かれているが、最適タイヤ幅は25mmから28mmへ移行している。
Pro 43Xの進化
Pro 43Xは、スポーク素材をスチールのまま維持しながら、Pro 37より90g軽い1,415gを達成した。
| 項目 | Pro 43X(NEW) | Pro 37 |
|---|---|---|
| 重量 | 1,415g(-90g) | 1,505g |
| リムハイト | 前43mm/後38mm | 前後37mm |
| リム幅 | 内21mm/外28mm | 内21mm/外28mm |
| スポーク | スチール(18本&24本) | スチール(18本&24本) |
| 最適なタイヤ幅 | 28mm | 25mm |
| 標準チューブレスセットアップ | TLRテープ | TLRストリップ |
スポーク素材も本数も同じでありながら90gの軽量化が実現されている事実は、リムとハブそのものの進化を物語っている。
RSL 43Xの105g減がスポークに大きく依存しているのに対し、Pro 43Xの90g減は別の要素から生まれている。この非対称性は、シリーズ全体を貫く設計の刷新が、上位モデルの”素材頼み”ではないことを示している。
カーボンスポークとハブ
RSL 65XとRSL 43Xに採用されたVonoa社製カーボンスポークは、軽量化、高剛性、優れた空力性能、振動吸収性の向上という4つの効果を担っている。同等のスチールスポーク比で94gの軽量化に加え、横剛性を高めてパワー伝達の向上に貢献する。
ハブはまったく新しいDT 180カスタムハブで、セラミックベアリングを組み合わせる。
フリーハブにはRatchet EXPシステムを採用し、スターラチェット方式で36ポイントのエンゲージメントを確保している。速い噛み合い、軽量性、信頼性、耐久性を兼ね備えた構成である。
セラミックベアリングは硬化セラミックボールとスチール合金レースの組み合わせにより、従来のスチールベアリングより長期間にわたって滑らかに回転し、なじみも速い。
互換性
RSL 65XとRSL 43Xはフック式リムを採用し、チューブレステープとチューブレスバルブが取り付けられた状態で出荷される。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| リム形式 | RSL 43X、RSL 65Xともにフック式 |
| 空力最適化タイヤ | 700×28c(転がり抵抗とのバランスを考慮)。700×30cでも高速走行が可能 |
| チューブレス対応 | 出荷時からチューブレステープとバルブを装着済み。チューブレスタイヤとシーラントを追加するだけで走行可能 |
| チューブレステープ幅 | RSL 43X:23mm/RSL 65X:25mm |
| Bontrager TLRリムストリップ | 非対応(チューブレスリムテープ専用設計) |
| 推奨バルブステム長 | RSL 43X:60mm/RSL 65X:80mm(Bontrager Round Base TLRバルブステムを参照) |
| チューブ使用 | 取り付け済みのリムテープのままチューブを装着可能 |
| 標準フリーハブ | Bontrager Ratchet EXP Shimano HGロード(Shimano 11速・12速、SRAM 11速カセット対応) |
| SRAM XDRフリーハブ | 別売。SRAM 12速・13速カセット対応 |
| Campagnolo N3Wフリーハブ | 別売。カンパニョーロ11速・12速・13速カセット対応 |
| 製品グラフィック | 製造工程中にリムへ施され、傷や汚れへの耐性が高い |
保証
Aeolus Xには、カーボンケア、生涯保証、30日間満足保証という3層の保証が用意されている。
カーボンケアは、購入後2年以内に走行中にホイールが構造的に損傷した場合、無償で修理または交換するものだ。生涯保証は、すべてのAeolus RSL XおよびPro Xホイールに付帯する。
そして30日間満足保証は、乗って気に入らなければ30日以内に返品できる制度で、実質的な30日間の試乗期間として機能する。手厚い保証は、製品への自信の証として提示されている。
フロントディープの設計思想
Aeolus Xの設計思想は、ホイールの前後に異なる仕事を割り当てるという一点に集約される。前輪には空力とハンドリングの主役を、後輪には軽さと効率の担い手を。この役割分担こそがMixed depthの核心だ。
フロントディープの理由
フロントホイールは自転車の中で最初に風を受ける部位であり、空力性能に最も大きく影響するため、ここを深くすることが最も効率的に空気抵抗を減らす手段になる。
前輪の前方には何も存在しない。整っていない、乱されていない空気を真っ先に切り裂くのが前輪だ。
一方のリアホイールは、ダウンチューブ、シートチューブ、そしてライダーの脚の後ろに位置している。すでに上流の構造物によって乱された気流の中で回転しているため、リムハイトを低くしても空力性能の低下は限定的になる。
効果の小さい場所に重量を積むより、効果の大きい場所に集中投資する。前後対称という形式を捨て、費用対効果の原理を空力に適用したのがAeolus Xなのだ。
興味深いのは、この発想が他社の一部が採用してきた方向と逆である点だ。たとえばENVE SESは一貫してリアを深くする構成を採ってきた。前輪のハンドリングへの影響を抑えるためにフロントを浅くするという考え方である。
Bontragerは同じ前後非対称という道具を使いながら、逆の結論にたどり着いた。
外幅37mmのフロントリム
RSL 65Xのフロントリムは外幅37mmへと大幅に拡幅されており、これが深いリムでありながら横風をいなす鍵になっている。
28mmタイヤを装着した場合、リムの外幅はタイヤの膨らみを大きく上回る。タイヤからリムへと空気が滑らかに受け渡され、リム側面での気流剥離を抑えやすい形状である。
深いリムは横風を受ける面積が増えるため、ハンドリングを乱すというのが一般的な理解であった。しかし横風によって生じる力は面積だけでなく、断面形状と、その力がどこに作用するかに左右される。
幅広で丸みを帯びたリムは、横風を受けたときの圧力中心の変動を穏やかにし、ステアリング軸まわりのモーメントを予測可能な範囲にとどめる方向に働く。フロントを深くしても怖くないホイールを作るには、深さと同時に幅を設計する必要がある。
外幅37mmとされているのはRSL 65Xのフロントであり、RSL 43XとPro 43Xは外幅28mmである。この点は明確に区別されている
横風安定性が向上
43Xと65Xはいずれも前作よりディープなリムでありながら、20度の角度から当たる横風への安定性が向上している。20度というヨー角は、実走において横風を受けた際に現実的に遭遇しうる、決して小さくない角度だ。
この条件で安定性が上がっているという事実は、深さと安定性はトレードオフであるという常識が覆っている。Bontragerのたゆまぬ研究成果の賜物だろう。
前述のリム形状に加え、28mmタイヤへの最適化もこの結果に寄与している。タイヤとリムを一体の翼断面として設計し、その組み合わせで横風に対する振る舞いを整える。
ホイール単体ではなく、タイヤを含めたシステムとして空力を詰めたことが、深さと安定性の両立を可能にした。
28mmタイヤへの最適化
Aeolus Xが空力の基準を28mmタイヤに置いたことは、ロードバイクの速さの定義が転がり抵抗を含めた総合値へ移ったことを製品として認めたものだ。前作のRSL 37、RSL 62、RSL 51、Pro 37がいずれも25mmを最適としていたのに対し、Xシリーズは全モデルで28mmへと移行した。
より太いタイヤは低い空気圧で運用でき、路面の微細な凹凸による損失を減らす。しかし太いタイヤは空力的には不利になりやすい。この矛盾を、リム側の形状で吸収しようとしたのがAeolus Xだ。
転がり抵抗と空気抵抗、快適性と速さ。かつて二者択一とされたものを、同時に満たす着地点を探る姿勢がここに見える。
想定ライダー
RSL 65Xは平坦と高速巡航で速度を稼ぐライダー、RSL 43Xは登坂と加減速が繰り返されるレースを走るライダー、Pro 43Xは上位の思想を現実的な価格で手にしたいライダーのためのホイールである。
- Aeolus RSL 65X:平坦基調のロードレース、クリテリウム、トライアスロンやロングディスタンスの高速巡航。RSL 62比で2.1Wの空力優位を活かせる速度域で真価を発揮する。
- Aeolus RSL 43X:山岳を含むロードレース、ヒルクライムを含むイベント、一本で何でもこなしたいライダー。1,220gという軽さと、前作よりディープなリムによる空力を両立する。
- Aeolus Pro 43X:RSL 43Xと同じリムハイトとリム幅、同じ28mm最適化を持ちながら240,000円。トレーニングとレースを一本で兼用するライダーにとって、最も現実的な選択肢である。
ホイールの特徴
RSL 65Xは高速巡行
RSL 65Xは、速度が上がるほど静かになっていくホイールだ。
65mmのフロントリムが風を割り、58mmのリアがその後ろで軽く回る。前輪に集めた空力性能は、40km/hを超える領域で、ペダルを踏む力に対して速度が素直に乗っていく感覚として現れる。
そして深いフロントでありながら、横風にハンドルを取られる感覚が穏やかであることが最大の差だ。
深いリムを履いたときに無意識に入れていた肩の力、ハンドルを握り込む指の緊張。その身構えが減ることは、数ワットの空力以上に、レース終盤の集中力と判断力を守ることにつながる。
RSL 43Xは登坂と加速
RSL 43Xは、踏み出した瞬間の軽さと、登りきった後の伸びを同時に感じさせるホイールだ。
1,220gという重量は、ダンシングで車体を左右に振ったときの軽快さとして足裏に伝わる。カーボンスポークによる横剛性の向上は、踏力が逃げずに推進力へ変わる手応えとして感じられるだろう。
36ポイントのRatchet EXPは、コーナー立ち上がりやアタックへの反応時に、ペダルを入れた瞬間にハブが噛む確かさを生む。
そしてカーボンスポークの振動吸収性と28mmタイヤの組み合わせは、荒れた路面での細かな突き上げを丸め、長時間のレースにおける身体の消耗を和らげる方向に働くはずである。
Pro 43Xは日常の速さ
Pro 43Xは、毎日のトレーニングを少しずつ速く、少しずつ楽にするホイールだ。
RSL 43Xとの195gの差は、登坂では確かに感じ取れる差である。しかしリムハイト、リム幅、タイヤ最適化という空力と乗り心地の骨格はRSL 43Xと共通である。
ステンレススチールスポークとDT 350ハブは、扱いやすさと耐久性という点で信頼の置ける組み合わせであり、季節を問わず使い倒せる安心感がある。上位モデルの思想を、気兼ねなく日常に持ち込める。
その価値は、スペック表の数字だけでは測りきれないものだ。
前後同一リムハイトの意味
Aeolus Xが現代のホイールに問いかけているのは、前後対称という形式は「性能の追及」だったのか、それとも単なる「習慣」だったのかという問いである。
前輪と後輪は同じ役割?
前輪と後輪は、同じ円でありながら、まったく異なる世界を生きている。前輪は進行方向を決め、まだ誰にも触れられていない空気と最初に出会う。後輪は推進力を路面に伝え、すでに乱された流れの中を駆け抜けていく。
先導するものと、支えるもの。両者に同じ形を与えることは、公平に見えて、実はそれぞれの”役割を無視”することでもあった。
ギリシャ神話の風の神アイオロスの名を冠したこのホイールが、風と最初に向き合う前輪にこそ深さを与えたことは示唆的だ。
風を制する者は、風と最初に出会う場所を制する。その当たり前の原理に、ホイール設計はようやく正面から向き合ったのかもしれない。
対称性という美意識
対称性を手放すことは、美を捨てることではなく、機能に即した新しい美を受け入れることなのかもしれない。
人間の身体もまた、厳密には左右対称ではない。心臓は左に寄り、利き脚は一方にある。それでも私たちは身体を美しいと感じる。不均衡は欠陥ではなく、「役割の違い」が形になったものにすぎない。
前65mm、後58mm。その7mmの差は、横から眺めたときにわずかな違和感として目に映るだろう。しかしその違和感こそが、このホイールが常識ではなく原理から設計されたことの証である。
慣れ親しんだ形への安心を手放し、理由のある形を選ぶ。それはライダー自身の機材選びにも向けられた問いでもある。
速さとは何を削り、何を残すのか
速さとは、効果のない場所から資源を引き揚げ、効果のある場所に集中させることである。Aeolus Xはリアを浅くして重量を削り、フロントを深く広くして空力を残した。スポークをカーボンに替えて重量を削り、剛性と快適性を残した。
これは機材に限らず、レースにおける走り方そのものにも通じるのではないか。
すべての局面で全力を出すライダーは勝てない。脚を使うべき場所と温存すべき場所を見極め、限られた力を一点に注ぐ者が勝つ。前と後ろに異なる仕事を与えたこのホイールは、その原理を、異形という言葉で語っているのではないだろうか。
まとめ:前後対称を問い直す
Aeolus Xは、前後対称という長年の前提を問い直し、前輪に空力とハンドリングを、後輪に軽さと効率を割り当てた、設計思想の転換点となるホイールだ。
RSL 65XはRSL 62比で45gの軽量化と2.1Wの空力優位を、RSL 43XはRSL 37比で105gの軽量化を、Pro 43XはPro 37比で90gの軽量化を、それぞれ前作よりディープなリムと横風安定性の向上を伴って実現している。
Aeolus Xは「速度域」と「使い方」を基準に選ぶのが最も合理的である。
平坦の高速域で戦うならRSL 65X、登坂を含むレースで万能性を求めるならRSL 43X、トレーニングとレースを一本で兼ねつつ現実的な投資に収めたいならPro 43Xだ。
前と後ろは同じでなくてよい。
その一文を、カタログの上ではなく、自分の脚と風の中で確かめてほしい。Aeolus Xが本当に速いかどうかは、最終的にはそれを走らせるライダー自身が決めることなのである。

























