SPECIALIZEDとFOXが魔法の絨毯GENIE SHOCKを生み出した

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image: SPECIALIZED

スタンプジャンパー15の心臓部には、スペシャライズドが開発しFOXが製造しているGENIE(ジーニー)リアショックが搭載されている。製品の特許はスペシャライズドが所有している。

魔法のランプで有名なGENIEは、閉じ込められていたランプから助け出してくれた人の願い事をかなえる精霊だ。

その名の通り、ライダーの願い事をかなえてくれるサスペンションに仕上がっている。その願いとは、トラクションの向上、ボトムアウトの回避、滑らかなサスペンションの動きだ。リアショックは、空気が閉じ込められている2つのエアチャンバー使って、空気の出し入れを調整する。

エアチャンバーに閉じ込められている空気を巧みに操るその様は、まさにGENIEだ。

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GENIEは2段階ロケットのように機能する。内側のエアチャンバー(空気を閉じ込めるの部屋)と外側のエアチャンバーの2つの部屋がある。通常のリアショックといえば1つのエアチャンバーしか持たないが、GENIEはメインのエアチャンバーの周りに第2の外部エアチャンバーを追加している。

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内側と外側のエアチャンバーはそれぞれ独立しているが、小さな穴(GENIEエアーポート)が空いており、この穴を通じて互いの部屋を空気が行き来ができるようになっている。GENIEはこの穴をトラベルの量(サスペンションの伸縮)に応じて塞いだり、開放したりする。

この仕組みの何が良いのか。

  • トラベル量0〜70%:内側と外側のチャンバーを使用(空気の体積大)
  • トラベル量71%〜100%:内側のチャンバーだけを使用(空気の体積小)

トラベルが0〜70%までは、内側のエアチャンバーと外側のエアチャンバーの2つを組み合わせて使用する。2つの空気の部屋を使用することで、大きなエアボリュームを稼ぐことができる。

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エアボリュームが大きいことによるメリットは、ショックはよりしなやかになり、空気が圧縮されていく強さも直線的になる。まるで、コイルスプリングのような動きを実現するのだ。

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賢いのはショックが71%のトラベルに達したときだ。GENIEバンドが、互いの部屋を空気が行き来できる小さな穴を閉じる。外側のエアチャンバーは切り離され、内側のエアチャンバーだけを残すのだ。

トラベルの残り30%では、内側のエアチャンバーだけになることでエアボリュームが減ることになる。ここからさらにトラベル量が深くなるにつれて、空気を圧縮しにくくなる。つまりプログレッシブ(累進的、数量の増加に従い比率が増す)状態になる。

トラベル量の70%を境にして、2つのエアチャンバーを使い分けることで、ストロークの初期段階ではショックが動きやすく、ストロークの終盤では粘り強くなりボトムアウトを回避するという仕組みをGENIEは実現した。

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走行に及ぼす影響

トラベルの70%までは、柔らかいスプリング特性でリアホイールの路面追従性が高まる。71%以降の終盤にかけては、ボトムアウトの耐性が高まる。これら「良いとこ取り」の性質は、マウンテンバイクの操作性に対してどのような影響を与えるのか。

スペシャライズドは、実際のトレイルでのトラクション性能、ボトムアウト耐性、サスペンションの移動量など、測定を行っている。

スプリング曲線

GENIEとFOXの市販エアショック(FLOAT X, FLOAT X2)を比較したスプリング曲線は以下の通りだ。ある力(N)がショックに加わったとき、のトラベル量(mm)を示している。FLOAT XはSPECIALIZED Stumpjumper EVO、FLOAT X2はSPECIALIZED Enduroに取り付けられている。

任意の衝突量に対するトラベル量の比較 image: SPECIALIZED

赤色の線(GENIE)はトラベルの序盤のスプリング曲線が直線的だ。終盤にかけては一気に累進的になり、衝突力の増加に従い比率が増すプログレッシブになっている。

1080Nの同一の衝突力が生じた場合をみると、GENIEはエンデューロバイクと同一の100mmの柔らかいスプリング特性であることがわかる。それに対し、Stumpjumper EVOでは86mmだ。

序盤のリニア領域では、より多くのトラベルを使って衝撃を吸収していることがわかる。その結果、よりスムーズな走りが実現される。

トレイルでのサスペンション移動量

トレイルを用いた実際のテストでもGENIEの優位性が明らかになっている。サスペンションが最も柔らかく動く、おいしい部分が効率的に使われることで、サスペンションの移動量が大きくなり、リアホイールが路面をより追従できる結果になっている。

下のグラフは、リアサスペンションが移動した量の累積だ。動けば動くほど、バーは高く積み上がる。それほどサスペンションを有効に活用していると言い換えることができる。リアタイヤは路面との接地感が高まっている状態が長く続いていることになる。

リアサスペンション移動量の累計 image: SPECIALIZED

ボトムアウト特性

GENIEのプログレッシブ性は、ボトムアウトの発生頻度と合計発生時間を減少させることがわかっている。以下は、走行ごとに生じたボトムアウトの平均時間を表している。一般的なリアショックと比べると、0.02秒ほどボトムアウトの平均時間が短い結果だ。

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トラクションの向上

GENIEはトラクションが向上する結果が得られている。0〜70%までのトラベルにおいて、スプリングレートがリニアかつ効率的に柔らかくなるため、路面の凹凸に対してリアホイールが追従しやすくなる。結果、トラクションが向上する。

SPECIALIZEDは、前後ホイールの速度データを比較することでトラクション損失の時間とその度合を計算した。 以下のグラフは、実走行における前後ホイールの回転速度データ(赤と灰の線)を示している。

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曲線間の塗りつぶされた部分は、フロントホイールの回転速度よりもリアホイールの回転速度が遅くなっており、すなわちトラクションの損失を表している。

GENIEの測定結果は、一般的なエアショックよりもリアホイールのトラクション効率が優れていた。

トラクション損失時間と損失度 image: SPECIALIZED

「トラクション損失時間」は、前後ホイールの回転速度を比較し、フロントホイールに対して、リアホイールがスリップしている時間の合計を表している。

「トラクション損失度」は、スリップしているときのフロントとリアの回転速度の差を表している。例えば、100%の場合はフロントホイールが回転しているのにもかかわらず、リアホイールはロックした状態だ。0%はフロントとリアともに回転している。

GENIEは標準的なリアショックと比べると倍以上の差をつけてトラクションの効率が良い結果だ。

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まとめ:いいとこ取りの魔法の絨毯

外側のエアチャンバーのエアボリュームは、最大4つのエアボリュームスペーサーを追加することで調整することが可能だ。ショック本体の周りにクリップで固定する。70%までのトラベルの主要部分の動作をより硬いフィーリングに微調整できる。

また、従来のFOX製エアボリュームスペーサーを使って、内側エアチャンバーのエアボリュームを調整することもできる。これにより、ストロークの残り最後の30%部分におけるランプアップ量を、求めるボトムアウト抵抗に応じて増減することができる。

Specialized Genie Shock Tuning Kit Installation | Bike Tech Help Center | FOX

GENIEショックはFOXの規格サイズどおりであるため、他のバイクにも使用可能だ。別売りで販売されればの話だが。そのため、このGENIEは今後さらに多くのスペシャライズド製マウンテンバイクに採用される可能性が高いだろう。

次回は、実際にGENIE搭載のバイクに乗ったレビューをお届けする予定だ。

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