世界の楕円リングの歴史と性能比較検証

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楕円チェーンリングとは

2013年のツールドフランスでチームスカイのウィギンスや、フルームが楕円チェーンリングを使用して好成績を収めています。楕円チェーンリングが直接的な原因ではないでしょうが、タイムトライアル、山岳ステージ、平坦ステージといくつかの条件においてO.symetricを使用していました。

例えばRotorを受けているチームの場合、選手によって真円のローターを用いている場合もあり、楕円は使っていません。これらの状況を推測するに、好んで使っているのか、支給され戦略的に使っているのかは判断が難しいところです。

楕円チェーンリングという機材は、サイクリストを非常に悩ませます。なぜなら変速性能や身体に与える影響(良いも悪いも)について、いまだ懐疑的な部分を捨てきれないからです。

今回は、楕円資料をフェイスブックユーザーさん向けに再編集しました。

世界の楕円リング

  • 1979年 / OVUM Ellipse / 楕円率 1.235 / 90度で最大
  • 1983年 / Biopace / 日本 / 楕円率 1.04 / -8度で最大
  • 1991年 / Hull Oval / アメリカ / 楕円率 1.55 / 90度で最大
  • 1993年 / O.Symetric / フランス / 楕円率 1.215 / 78度で最大
  • 1993年 / Ogival / フランス / 楕円率 1.235 / 54度で最大
  • 2006年 / Rasmussen Oval / デンマーク / 楕円率 1.30 / 72度で最大
  • 2006年 / Rotor / スペイン / 楕円率 1.10 / 70-75度で最大
  • 2009年 / LM-SUPER / 楕円率 1.31 / 79度で最大
  • 2010年 / Stronglight Bio Concept / 楕円率 1.10 / 75度で最大
  • 2011年 / RIDEA / 楕円率 歪みなので率不明 / 2時~4時が全て最大

O.synmetricとRotor Q-ringsの比較

楕円チェーンリングは真円と比べて以下のデーターが得られている。

  • O.symetricは-7.5% 筋肉の伸縮が減少した
  • Rotorは-2% 筋肉の伸縮が減少した
  • O.symetricは2.5%出力が向上した
  • Rotorは0.2%出力が向上した

O.symetricの方が良い傾向が得られています。

変速性能と機材

変速性能はDi2のFD条件下では以下のとおりの”感覚”です。
RIDEA > ROTOR > O.symetric > Bioconcept

楕円は変速性能が悪いチェーンリングもあればそうでないチェーンリングもあります。実際にROTORやRIDEAを使って気づくことは、変速性能は気になりません。レースでもチェーンが落ちたことは未だありません。

私達が購入できる楕円リングは、O.symetric, Rotor,Bioconceptの三種がメジャーです。この中で、RotorとBioconceptを比べた場合、ROTORの方がチェーンを上げる金属部品が六点と多く、変速も良好といえます。

意外なのは電動と楕円相性です。私はアルテグラの電動を使っているのですが、ワイヤー式に比べ変速が決まりやすいです。推測すると電動の力を均一にかけていく機構が、チェーンを拾いやすくしているのでしょう。

ワイヤー式、電動式それぞれの条件下において、群馬CSC・広島・石川といった変速を多用するコースにおいても、全く変速不良はありませんでした。従って普段使いならば変速を気にする必要はないです。

楕円は本当にトルク型向きなのか

”楕円はトルク向き”という話を聞くことがあります。では楕円チェーンリングはトルク向きで、回転系には向いていないチェーンリングなのでしょうか。そして、トルクとはなんでしょうか。

トルクとはなにか

トルク大きい=加速が良い、という事です。トルクはシャフト軸を回す為の回転力とも言い換えられます。したがって”回転させる力”が大きいということになります。ワットとは継続的な力で、大きいほど自転車のスピードが速くなります。ではトルクについて確認します。

ペダル踏力が20kgfでクランク長が100cmのトルクは、ペダル踏力が10kgfでクランク長が200cmと同じトルクになります。したがってトルクの単位はkgf・mです。

最大ギア歯の位置において、最大の踏力が発生しますが、楕円のメリットは最大踏力がかかる以外のデッドゾーンを軽いギアで”すばやく”通過することです。従ってダウンストロークを考慮し、楕円チェーンリングは三時付近で最大の仮想ギア数になる設計されています。

トルク型と回転型

楕円のコンセプトと計算式をみていると、相関関係がみえてきます。では何故”トルク型”が楕円に向いているのでしょうか。トルク型は先ほど申し上げたとおり、”トルクはシャフト軸を回す為の回転力”です。

人間の場合はダウンストロークが主なので、瞬間的に大きな踏力が1~6時のどこかで発生します。そしてクランク1回転中において、主に限られた範囲(2~4時)のちからで力でクランクを回します。これが突出しているとトルク型(ピンポイントで高トルク)といえます。

対してスポット的ではなく、まんべんなく綺麗にクランクを回せる方は”均一系ペダリング”といえます。中野浩一さんや、山崎店長が良い例でしょう。このような方は、下死点においても軽い仮想ギアを踏まなくとも、早く通過させることも必要ないと考えられます。むしろデメリットにもなる場合もあります。均一に回せるならば、下死点も推進力に利用すべきでしょう。

トルク型と回転型の区分けは間違い

以上のように整理するとひとつの答えが見えます。トルク型、回転型という表現は語弊があるということです。今後は、「瞬間トルク型」と「均一トルク型」と定義してはどうでしょうか。「瞬間トルク型」は、楕円チェーンリングが向いています(可能性があります)。

「均一トルク型」は全ての接線方向に対して力を加えられる人(現実にはありえませんが)向き、すなわち真円チェーンリング向きです。”瞬間トルク型”と”均一トルク型”どちらのタイプかは、現在の所、コンピュトレーナーで解析できます(※掲載当時はパイオニアペダリングモニターは発売されていません)。

私は幸運な事にコンピュトレーナーの実験台をさせていただいた機会がありました。私は完全なトルク型、左右バランス50:50という結果でした。

なぜ今まで楕円がなかったのか

最後になぜ百年以上前からチェーンリングの形が変わらず、真円しかなかったのかについてです。この理由はVELOマガジン日本語版のO.symetricを考案したエンジニアのジャンルイタロがこう説明しています。

ただ単に一世紀以上前は、円以外他の形状で製造することができなかったから

このようにOsymetricが生まれた経緯は、クランク一回転中に力が一定ではない事から考えだされました。楕円チェーンリングの登場は、人間が機材に合わせていた時代からのパラダイムシフトといえます。