選手だなんて、聞いて呆れてしまう。
シクロクロスもそうMTBもそうバイクコントロールが要求されればされるほど、走れない自分に気づく。ロードにだけ乗ってると気づかないバイクコントロールの無さ。心肺機能や出力だけではどうしようもできない世界がここにある。
今一番打ち込んでいるのはMTBとシクロクロスだ。理由はただひとつ。「自転車にすら乗れないレベル」から脱する為だ。ロードは実業団登録をして一番上のカテゴリで走っている、、、と今は口が裂けても言いたくない。
バイクコントロールの深さに触れてからというものの、シクロクロスとMTBは私を魅了してやまない。今回はグリーンピア三木のMTBコースを走ることにした。
このグリーンピア三木は、MTB専用のオフロードコースを走れる。専用といえど、走るのは自然の山である。それらを整備してくださる方々の好意により走らせてもらっている。ロードバイクは国が管理する舗装されたアスファルトの上を走る。道路は壊れたら国が補修してくれるが、山はそうはいかない。
そのような事を色々と教わりながら山の中を走る。
周回コースは起伏に富んだ道が連なる。簡単に滑れば落ちてしまう柵のない池の横を通り、木の根っこが出た滑りやすい道を通る。走るライン一つで登れたり、登れなかったりする。
初めの一周目はコースを見ることに。今まで走った中でも登りも下りも適度に訪れるコースだが、非常に辛かった。どこで休んで、どこで踏んで。どのラインを通って、、と考えなくてはならない。走りながら、刻一刻と変化する斜度と、路面状況を加味しバイクコントロールをする。
一周目は悲惨だ。ほとんど乗車できない。登りはスイスイ登って行くキャプテンに置いていかれる。キャプテンは乗車しているのに、私は押さないと登れない。登ろうと思って、乗車したらクリートをはめる前にバイクのバランスが崩れうまくはめることすらできない。
残念ながらこれが登録選手という「名ばかりロードバイク乗り」の走りである。自転車という乗り物と場所が変われば走ることすらできない。一周目で心が折れた。
できないもんはできないと諦めて、少し考えながら走って行く。まずは登る際の体幹の位置だ。この位置により登れるか、下れるか全てが決定される。バイクスキルというよりも、地球の中心に引っ張られる自然界の力を感じるのだ。
我々が走っている「地球」の表面では、あらゆる物体が地球の中心に向かい引っ張られている。厳密には自分自身も地球を引っ張っているのだが、それらの力はあまりにも小さい。その大きさはその物体の質量に比例する。
では、バイクにまたがっている時その力の方向はバイクの後ろだろうか、それとも前だろうか。それらには回答はない。ただ、「うまくバイクコントロールできる位置」が存在する。それらを何度も何度も繰り返し走って体で覚える。
雑誌や参考書なんてない。走っているその時その路面、体の位置で登れるか下れるかが決定される。単純な自然界のルールに従えば、たとえ急な坂でも垂直に重心をバイクに与えて登れるだろう。しかし、それらの法則に反すればたちまちバランスを崩す。
これらは、何度も何度も走って養われるものである。これはスキーと似てはいないか。スキーでパウダースノーを滑る時にファットスキーを用いる。その方が浮力があるからだ。ただ、遊びで覚えると板がどうこうというよりも、落下に対してどう重心移動をすれば浮き上がるのか小さい頃の遊びの中で体が覚えてくれる。
具体的にこう、という説明はできないがこうやったら上手く浮くという体の中の感覚がある。おそらく自転車でオフロードを走ることも同様なのだろう。
だから何も考えないことにした。転んで滑って、泥だらけになって体で覚える事にした。
何周回かしたとき、初め全く登れなかった切り返しの登りがスイッと走行できた。「こうやって、こう」という不可思議な感覚で。もはや感覚の領域で説明できない。この快感はロードバイクでは一生得られないだろう。
最後の方で、手押しでしか登れなかった坂を全部乗車で行けた。とにかく重心を前にして、サドルの先端にケツを指して登る。そういうプレイではなくて、そうするとスイスイと自転車が面白いように坂を登って行くのだ。
また一つオフロードでの走り方を知ったが、次またここに来ても路面状況が変わり同じ手は使えないだろう。そこにオフロードの奥深さと面白さがある。
オフロードの「速さ」とは、これら路面状況と斜度、ギア比、重心のバランスの引き出しの多さではないだろうか。自身の引き出しの中にある「バイクコントロール」で対応できる状況が多ければ多いほど速く前へ進める。
それら、引き出しの多さが速さとなり差として生まれてくる。そう考えるとなんとも面白い競技だ。それら、少しの積み重ねを繰り返しつつ少しでも早くそして巧く走れるようになりたい。
自転車という地球上で最も効率の良い乗り物は、操る人間一つでいかようにも走ってくれる。自分自身で思い通りのバイクコントロールが出来るまで、どうやら自転車沼は抜けられなさそうだ。この冬は、ひたすら自転車に乗って脚を磨きたい。
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