「やる気を起こすには、どうしたらよいのでしょうか」
自転車とは関係のない話なのだが、稀に人生相談のような質問を頂くことがある。正確にはシーズンオフになって「やる気がでない」のだという。
質問を頂いた方に聞いてみると、私があれこれやっているのを見て、なぜそこまで「やる気」になれるのか疑問に思ったようだ。確かに1年中競技をしているし、文字を書いたりしている。全く未知の世界や、練習会にも参加するようになった。
理由は単純だが、好きだからやっているのと、私にはもう「やる」ために残された時間がそれほど多くない、という終わりの自覚と焦りがある。じっとして、歳だけ消費していくのが怖いのだ。
ただ、これは感覚の話であって「やる気を起こす方法」とは別の論点だ。今回は、やる気を起こす方法について紹介しようと思う。
一時期、「やる気が湧いてこない」と悩んでいた時期がわたしにもあったのだが、脳科学者であり東大教授の池谷 裕二さんの書籍をたまたま読んで知ったのは、「やる気」という概念自体がそもそも存在しないということだった。
やる気とは、「やる気のない人間によって創られた虚構」であるという。「やる気」が先に出て行動に移しているわけではなく、「行動」がきっかけになって生み出されるのが「やる気」である。そもそも順序が逆なのだ。やる気というのは自然発生しない。
書籍を読み進めてわかったのは、脳科学的に脳の内部で何が起こっているのかというと、やる気になったときは淡蒼球という部位が働いている。しかし、淡蒼球は私たち人間の意思でコントロールすることができない。
淡蒼球は私たちの「無意識」の領域にある。この領域を起動させるためには、新しいことを始める、何かをし始める、という「始める」ことでスイッチを入れるしかないのだ。
現実的な話として、淡蒼球を起動させるためにはどうしたらよいのか。この書籍内には具体的なアドバイスが記されている。「脳をだまして」やる気を起こすのだ。
淡蒼球は自分の意志では動かすことができないが、動かす方法は4つある。
- 体を動かす(運動部)
- 普段と違うことをする(海馬)
- ご褒美や報酬を与える(テグメンタ)
- なりきる(前頭葉)
何か新しいことに挑戦したり、継続できている人たちは無意識のうちにこれら4つのスイッチを押しているのかもしれない。
たとえば、「今日は走りたくないけど、少しだけ外歩くか・・・」と気分が乗らぬままとりあえず走り出すと、どんどん気分が乗ってきて結局何キロも走ってしまう、といった具合だ。
普段と違うことは、新車を買ったり違う種目に挑戦する。いつも繰り返しやっていることでも、かける負荷や違うメニューに取り組んでみたり、違う人と走ってみたりする。いつも通りではなく、違うということが重要だ。
ご褒美や報酬は、新しい機材を買うでもいい。継続的に取り組んでいることなら、やりたくないことの後に、おいしいものを食べる事を組み合わせてもよいだろう(太ってしまうかもしれないが)。
なりきるは、レースで勝利することを想像したり、強い自分を想像するでもよい。念じれば通じるではないが、「自分はF1のように速く走れる」と自分が速いと想像するだけで速くなるという実験データもある。
このように、脳をだまして淡蒼球を起動させるための方法が書籍で紹介されている。
ほかにも、継続的な取り組みに変えていく方法も記されている。継続したいことを20回続けること、継続をさらに定着させるために心がける16の注意事項があるのだが、ここからは書籍を実際に手に取って読み進めてほしい。
「やる気を起こすにはどうしたよいですか」
この問いへの答えとしては、
- やる気は行動によって生み出される
- 脳をだまして淡蒼球を起動させる
つまるところ、やる気を出すためには、やってみるしかないということだ。どんな形でも、ほんの少しだけ手を付けて「始めて」みる。くれぐれも、「あー、やる気でねぇ」などと言いながら椅子に座って、じっとしないことだ。
やる気(という虚構)は自然発生しない。あきらめるのだ。いますぐ、始めてみる。やる気は、あとからやってくる。
書籍は550円ほどで買えるので一度読んで見ても損はないと思う。