はじめに
本記事はもともと、「MAVIC UST」の記事の一部として執筆した内容だ。ところがあちらの記事自体が膨大な文字数で構成されてしまったため、別の記事として起こした。本記事で言わんとすることは、「空気圧を上げすぎると抵抗が増してしまう」という事実だ。それ以上、それ以下でもない。
先般のコスカボUST記事内において、タイヤ選定、タイヤ設定空気圧を変えて様々なパターンを検証した。詳しくは記事を読んでいただきたいが、「よく走ると感じる空気圧」は必ずしも高圧ではなかった。その原因についてあちらの記事内でも触れようとしたが、あまりにも長くなってしまうため今回別の記事としている。
本来であればコスカボUSTの9章のインプレッションの後に入る内容だった。私が0.1ずつ空気圧を調整し、複数のタイヤを試した理由はこの記事にある。
今回のタイヤ空気圧に関する記事が、どのように迎え入れられるかは正直わからない。何年か前に当ブログで紹介した「転がり抵抗を比較 23Cと25Cのタイヤは違うのか?」にも登場したローリングレジスタンスという考え方に、プラスアルファして「ローリングインピーダンス」という考え方が登場する。
少々難解ではあるが、なるべくわかりやすく噛み砕きながら記事にした。またコスカボUSTの記事を読み終えていない人は、あちらを読んでい頂いてから、こちらの記事に戻ってきてほしい。なぜあのようなタイヤと空気圧の記事が出来上がったのかわかって頂けると思う。
- 空気圧を上げすぎると転がり抵抗が増す
- 実験室と実走では転がり抵抗が異なる
- ローリングインピーダンスは路面状況で変わる
高い空気圧は転がり抵抗が小さい?
小さな転がり抵抗を獲得するためには、タイヤの空気圧をできるだけ高く設定することが常識とされてきた。トラック競技では11~13BARという、とてつもなく高い空気圧が今でも常用されている。ところがロードバイクが走るような状況下において、同様の考え方を持ち込むのは少々違うんじゃないか、という実験結果がある。シリカポンプで有名なSILICAのラボが、面白い実験結果を2016年7月公開している。
SILCA BLOG: PART 4B: ROLLING RESISTANCE AND IMPEDANCE
「空気圧を上げすぎると、逆に転がり抵抗が増す」
という実験結果だ。どういうことだろう。はじめこれらの事実に触れた時、全く理解することができなかった。私がタイヤ選びの際に参考にしているサイトでは、各社メーカー別、タイヤ種類別、タイヤサイズ別の転がり抵抗の実験データーが掲載されている。どの実験結果でも共通しているのは、空気圧を上げれば上げるほど、転がり抵抗が小さくなっていくという特性だった。
タイヤも太ければ太いほど、転がり抵抗が小さくなっていく。「太くて、高圧」という2つのポイントは一見すると転がり抵抗を小さくするためのカギを握っている(ようにみえる)。しかし、これらの結果で忘れてはならないこととは、
「実験室の環境下」
という限られた条件での話だ。本来私たちが走ることがないような、恵まれた路面(というよりも回転するドラム)状況下での話である。SILICAラボの結果が意味していたことは、「実験室の恵まれた路面環境」と「アスファルトのような荒れた路面」とでは転がり抵抗の結果が異なるという事実だった。
ローリングインピーダンス
このグラフは、実際に野外を走った場合の転がり抵抗データだ。縦軸が転がり抵抗係数(Crr)で、横軸がタイヤ空気圧(PSI)だ。注目してほしいのは空気圧が110PSI(7.5BAR)付近の「Real World Data」だ。急激に転がり抵抗が増しているから、本当に不思議なデーターである。
「実験室の恵まれた路面環境」では空気圧を上げれば上げるほど、転がり抵抗は小さくなっていくデーターが得られている。実走環境においても、これらの「真実」を元に空気圧をできるだけ高めに設定してる人も多い。ただ、何度見てもSILCAラボが示した実環境下では同じ結果が得られてない。
実験室の結果 ≠ 実践環境の結果
実験室と実践環境はノットイコールだ。私たちは屋根のついた実験室で、モルモットのように走るわけではない。「どの環境で最速か」を考慮するとしたら、「実験室の環境下で最速になりたい!」などとは誰も言うはずがない。私たちが走る環境は、もちろん野外のアスファルトだ。アスファルトといえば、経年変化によるさまざまなパターンがあり、たいていデコボコしていたり陥没していたりしている。年末の予算が余らない限り、アスファルトは時間とともに劣化していく。
SILCAラボはこれらアスファルト表面の粗さに起因して、バイクが揺さぶられる際の抵抗を「Rolling Impedance(ローリング・インピーダンス)」という言葉で定義した。デコボコしたアスファルトの上を物体が進む際、地面からの突き上げや、上下運動によるエネルギー損失を定義するための考え方である。
実際に走る環境下ではアスファルトの粗さも異なる。そのうえで最も速く走れるタイヤの空気圧は高ければよいわけではないようだ。それぞれが組み合わせが悪いと抵抗は増してしまう。インピーダンスはアスファルトの路面状況をより考慮した、実践的な抵抗の考え方といえる。
上のグラフはGP4000S 25Cとタイヤ空気圧の関係だ。青色のグラフはいわゆる「実験室の環境」である。緑色は新しいアスファルト、黄色、赤色に行くに従って条件の悪いアスファルトの実験条件に変化している。
そして最も注目したいのは、空気圧をどんどん上げていった結果、実環境のみに現れる”転がり抵抗が増加しはじめる分岐点の定義”「Break-Point Pressure(ブレークポイント内圧)」だ。このポイントに到達するまでは、空気圧を上げれば上げる程転がり抵抗は小さくなる。ただ、ブレークポイント内圧を起点にして、さらに空気圧を上げると転がり抵抗は増す一方なのだ。
もちろん路面の状況によって、ブレークポイントが出現するパターンは異なってくる。空気圧をどんどん上げて行くと抵抗が増すグラフは、実験室で得られるような指数関数的に転がり抵抗が小さくなっていくグラフとは全く似つかない。したがって実走におけるタイヤの転がり抵抗を考える際には、実走における「アスファルトのパターン」も考慮する必要が出てくる。
今まで誰しもが気にかけていた「転がり抵抗」にプラスアルファして、インピーダンスという概念も考慮する必要が出てきたということだ。ここまでの関係は、以下の単純な式として表すことができる。
「転がり損失=ヒステリシスロス+インピーダンスロス」
Crrといった転がり抵抗の係数はタイヤの内部損失を表しており、最近のサイクリストはたいてい知っているキーワードだ。しかし、インピーダンスに関してはイメージがわきにくい。この言葉を実走において、どのように理解すればよいのだろうか。例えばこんな表現や体験をしたことはないだろうか。
「このホイールはアスファルトの路面状況をよく拾う」
という表現だ。雑誌のインプレなどでもたびたび「路面コンタクトが・・・、路面からのインフォメーションが・・・」なんて言葉で表現されるアレだ。
今まで何気なく感じていた「コツコツ感」の見方を変えると、エネルギーが発生し、エネルギーが損失していることに他ならない。例えば、アスファルトの5mmの隆起にタイヤが乗り上げる(コツッ)。5mm分ライダーとバイクを持ち上がり(コツッ)、そして次には重力に引っ張られて、5mm分ライダーとバイクが下がる(コツ)。「コツコツ」はこの繰り返しである。実際にはいくらかタイヤが衝撃を吸収しつつも、ここではわかりやすく上下する量をそのまま5mmとした。
路面状況を体で感じるこれらの「突き上げるエネルギー」は、タイヤ→ホイール→フレーム→ペダル→人体に伝搬されたあと、人間が感じる事ができる。厳密にとらえれば、タイヤを突き上げる程のエネルギーが発生し、そして損失していくことを繰り返している。
本来であればこれら無駄に消費されていくエネルギーですら、物体が進むための推進力に有効活用されることをサイクリスト達は常に期待している。せっかく生み出した自分のパワーを、少しでも推進力に変えたいのはどのサイクリストも一緒だ。しかし、結果的にアスファルトの条件が悪くなればなるほど、伝達する際のロスとしてインピーダンス抵抗の存在が幅を利かせてくる。。
ローリングインピーダンスは路面状況によって変化する。バイクの振動が大きくなり上下への位置エネルギーの変化が大きくなればなるほど、より影響を受けやすくなる。宙に浮き続けているバイクが進まないように、ほんの少しのコツコツはバイクを進ませるための力を奪い続けている。
ヒステリシスロスだけでなく
いまから5年程前、当ブログで「25Cのタイヤのほうが転がる」という記事を書いた。当時は23Cや20Cが全盛期で(20C…w)「転がり抵抗を比較 23Cと25Cのタイヤは違うのか?」という記事では、タイヤが変形することによるエネルギー損失の事を「ヒステリシスロス」と呼んだ。

SILCAが公開しているデーターではケーシングロスも、広い意味でヒステリシスロスと同じ意味でとらえる事が出来る。ケーシングが偏向し、ケーシングが移動することで熱エネルギーに変わる。この熱はタイヤに発生したエネルギーロスである。せっかくの運動エネルギーは、物体が変形することで熱エネルギーに変換されてしまう。数年前は、これらヒステリシスロスのみを考えてタイヤ選定をしていた時期もあった。しかしこれからは、タイヤの選定と合わせて、一人一人に適した空気圧の調整が必要になる。
軽視されがちな空気圧の調整は、より小さな転がり抵抗を追及する事と同じ意味として扱う必要がある。
実験室内で得られたデーターは、決して実環境下でも同じよう通用するとは限らない。車でも同じように、条件の良い自社テスト環境で測定された車のカタログ燃費と、公道を走った実燃費とでは全くデーターが異なることと似ている(アクセルワークや加減速があるにせよ)。
私たちは実走において野外のあらゆる環境で走る。その場合「ケーシングロス+インピーダンスロス=転がり損失」という考え方をプラスアルファで新たに持ち込む必要が出てきた。
コラム:ブレークポイント分岐点はどこ?
「空気圧を最大値にまで高めていくと、ある分岐点をきっかけに転がり抵抗は増す」
というあたらしい考え方は、これから徐々に定着していくかもしれない。理論上はこれらの特性をもって、タイヤの転がり抵抗の最適解を導き出せる「はず」だが、問題もある。「ブレークポイント分岐点」をどのような方法で見極めるかだ。言ってしまえば測定器がなければ難しい、というよりも無理に等しい。ブレークポイント分岐点という限界ギリギリのポイントなど、普通に空気調整してたぐらいではわからない。
この分岐点が出現するポイントは、ライダーの体重、ウェア重量、バイク重量、使用タイヤ、使用する路面状況、それらを考慮したうえで「ケーシングロス+インピーダンスロス=転がり損失」をやっと導き出せるわけだ。実のところ特殊な測定器を使わずにブレークポイント分岐点を見つけ出す方法は今のところ存在していない。
理由は単純で、ブレークポイント分岐点の定義自体が、数値データーを丁寧にプロットしていって、結果的に出現するポイントだからだ。連続するデーターの中で変化点を見定める必要があるわけだが、データーを並べていって転がり抵抗が負の方向へ変化するポイントが出現するギリギリを机上で判断しなければならない。このポイントを見つけ出そうとすれば、いくつもの数値データーが必要になってくる。
これでは夢が無いので少し考えてみよう。たとえばの話だが、条件が整えばある程度の分岐点は「体感」できるかもしれない。決まった距離と、決まったスピードで白線上のみを走り、空気圧を変えながら平均出力を測定する。そうすればある程度のデーターは取れるかもしれない。ただ、厳密に考えると空気抵抗が支配的であるから、あまり信憑性の高いデーターとは言えない。
最近QUARQがリアルタイムに空気圧のデーターを送ってくれるQUARQ TyreWizをリリースした。このQUARQ TyreWizと同社のパワーメーターと組み合わせて、「ブレークポイント分岐点」を見つけ出せるアプリが登場しないかなと妄想したが、当分先の話だろう。ただこのQUARQのyreWizがヒットするカギはブレークポイント分岐点の算出かもしれない。
シクロクロッサーという空気圧職人
SILCAラボの理論は十分に理解できるが、実走環境においてどのような方法でブレークポイントを見つけ出すのかは、先般のコスカボUSTの記事にもある通り、実際に良い感触で進む空気圧を探りながら検証するしかない。測定器がそもそも存在しないので仕方がないことだが、見方を変えればライバルに機材の性能差をつける、調整面、機材面のブルーオーシャンともいえる。
昨今のアマチュアレースでは、機材の差がつきにくくなってきている。乗鞍やおきなわでは、ラテックス、スパソニ(or TT)、カーボンクリンチャーを使用する人が多い。チェーンはモルテン、ウエアは軽量エアロワンピ、軽量エアロヘルメ、エアロシューズカバーという装備もそうだ。ようするに資金を投じて、正しい情報収集をすれば、選手間の機材性能差は次第に無くなっていく。
このような機材のコモディティ化は、今後さらに顕著になっていく。その上で差を付け….
いや、最後はフィジカルだ。最後は最終局面の勝負どころで残っていられるだけのフィジカルです(夢がある!)というのは実際とても重要だと感じてる。私は機材も好きだが、辛く、毎日コツコツと退屈な練習を積み上げ、ゲロ吐くような練習を積み重ねさえすれば、機材差なんて微々たる差だとおもってる。だから日々練習して、機材にかける金と同じくらい良い食べ物を自分に投資するのだ。そのほうが機材に投資するよりも、費用対効果が高い。
…少し意識が飛んだような気がしたが、機材差がなくなってきた先には、細かな機材調整を行う必要で差を付けられる可能性がある。結局は1%の積み重ねだ。機材は抵抗の引き算で決まる。ほんのわずかな差かもしれないが、勝負は常に1%の積み重ねと0.01秒の世界で行われている。それは私とはまったく縁が無いトップ選手達であれば、なおさら痛感しているはずだ。もしもライバルとわずかな差をつけるとしたら、ブレークポイントを見つけるためにデーターを取り続けることは、一つの有効な手段かもししれない。
先般のコスカボUSTの記事にもある通り、買えるだけのタイヤ種類とサイズを試し、細かく空気圧を変えながらデーターを取得した。やってみるとなんら難しいことはない。パナレーサーのアナログゲージ(デジタルはあかん)で0.1barずつ空気圧を変えていくだけである。決まった道、決まったメニュー、決まったパワー、決まった体重(←これ一番むずい)で感触を確かめ、最も早く登れる感触の良い空気圧が得られるまで実験を繰り返すだけだ。
近所の山道で実際に様々な空気圧を試したが、確かに空気圧を上げすぎると「ブレークポイントらしきもの」が発生して体感できる。あまりにも空気圧が高すぎると、どこかふわふわして、トラクションのかかりが悪くなる感覚が得られる。この感覚で思い出すのは、悪路を走るシクロクロスだ。
シクロクロッサー達が体で理解している感覚、「タイヤが跳ねすぎて全く進まない」という経験が思いこされる。
私があらためてリスペクトしたのが、シクロクロッサーとMTBライダーたちだ。もしかしたら彼らはここまで書いた長ったらしい理論なんてものを、すでに頭と体で理解しているのではないか。そして試走したコースの状況を判断し、実践の中でこのブレークポイントを経験則で導き出しているのではないだろうか。彼らは試走の段階で、最も早く走れるであろう「ブレークポイント」をその場、その場で調整する。
それらがたとえ「ブレークポイント」として定義されていることを知らなくとも。
当人たちはブレークポイントを探しているわけではなく、最も速く走り抜けられる最適の空気圧を探しているにすぎない。オフロードの競技は決して空気圧が高ければ速いという単純な世界ではない。MTBで空気圧を3.0BARにしたり、シクロクロスのタイヤに書いてある推奨空気圧2.8bar近く(笑)に設定する選手などはいないように、「空気圧が高くても、速く走れるわけではない」という基本的な事を彼らは知っているのだ。
ただし、シクロクロスとはまったく正反対に位置するトラック競技にも触れておきたい。極限まで均された板張りの伊豆ベロドロームや、関西の明石や向日町のように整備されたバンクの場合は話が大きく変わってくる。路面状況が良いということは、バイクの跳ね上げの影響も受けにくい。結果的にインピーダンスの影響も受けにくいため、とことん空気圧を上げる、という方向性は間違いではない。
そうなってくると、肝心のロードバイクが最も難しい調整を必要としている。理由はアスファルトの状況変化だ。広島森林公園や修善寺では高めでも良いと思うが、自動車が入っている群馬CSCなどは、空気圧は低めが良いという戦略も立てることができる。適正な空気圧を厳密に突き詰めていけば、常に同じ空気圧とは限らない。
「ケーシングロス+インピーダンスロス=転がり損失」は種目や路面状況によってチューニングが変わることを意味している。今まで考えられてきたような、単純にカンカンに上げたタイヤが最速、という考え方は今後改めていく必要がある。
コラム:Lightweighが進まない
究極の回転体だと思って購入したLightweigtは私に全く合わなかった。使いこなせれば最強なのかもしれないが、硬すぎて逆に進まないホイールなのだ。広島森林公園や修善寺なら使ってもいいかなと思うが、群馬CSCでは使いたくないホイールだ。という事を何年も前から記事内で書いていていたが、今回の記事で少し答えが見えたかもしれない。
先般の記事、「MAVIC」でも述べたがLightweightは「トラクションが抜けるような感じがするホイール」だった。なぜかはわからないがそう感じた。ここからは推測の域を出ないのだが、現段階の結論としては次のように考えている。
使用していた硬めのcontinentalコンペティション20Cと、ハブから何までフルカーボンのLightweightが合わさり、路面の凹凸をほとんどノーガードで受けていたのではないかと。これらの路面状況におけるエネルギー損失の関係を、インピーダンスと定義していたがまさに考え方は近しい。
たとえばチューブレスタイヤのように最強にしなやかで、やわらかめのホイールの組み合わせであれば、10mmの隆起でも7mmしかライダーを持ち上げないかもしれない。対して究極の回転体の組み合わせは10mmを10mm(大げさだが)もろに持ち上げるだけのエネルギーをライダーに伝えていたのかもしれない。
確かに前者の3mm分は、タイヤの変形ロスとして熱エネルギーに変換されることはわかる。それらを差し引いてもライトウェイトは、馬車の木製の車輪かのように衝撃を真に受けすぎてしまうホイールなのではないかと推測するのだ。その余計にライダーを持ち上げてしまう特性は「トラクションが抜けてしまう」と感じている原因なのではないかと私は考えている。
コラム3:硬いフレームに柔らかいホイールの真相
感覚ではわかっているが、言語化できていない感覚がある。「硬いフレームには柔らかいホイール」というあの話だ。ここまで読んできた方々は、うすうす感づいているかもしれない。インピーダンスロスは確かにタイヤと路面状況が生み出す位置エネルギーの損失の話かもしれないけど、あまりにも硬い機材で組み合わさったバイクが進みにくいと感じる原因も説明できる。
「硬いフレームx硬いホイール」は地面からの突き上げをダイレクトにライダーに伝える。もしも「硬いフレームx柔らかいフレーム」という構成ならばいくらか衝撃を”イナして”くれるかもしれない。突き上げが減り、その分しっかりと物体を進ませる力に変えてくれる。そう考え始めるともう一つ記事が出来上がりそうだ。この話題はもう少し考えて、データーを集めてから、記事化しようと思っている。
まとめ:自分と路面合ったチューニングこそ最速
少々理解するには難しい内容で私も面をくらってしまったが、理論と実践で行う事は別の問題としてとらえても問題ないと思う。とにかく、以下にまとめた事を頭の中において空気圧のチューニングを実施してほしい。
- タイヤの空気圧は、あなたの体重、タイヤサイズ、コース条件に合わせて最適化する必要がある。
- 良いタイヤを見分けよう。タイヤの空気圧が異なってもCRRがそれほど大きく変わらないタイヤを選択することが望ましい。それらはインピーダンスにも同様の特性を持っている(急激にブレークポイントが発生しない)。
- 路面状況が悪い場合は急激な分岐点が出現する傾向にある。
「新しい概念は、否定から始まる」とはよく言ったものだ。過去にカーボンクリンチャーの良さや、太いタイヤの良さを記したとき、心無い言葉や、誹謗中傷を浴びせられたものだ。SILCAが公開したインピーダンスという考え方もそうだろう。新しい考え方が浸透し、一般的な共通認識になるまでは、それらは繰り返され続ける。
それらを共通認識にするためには、数多くの議論の積み重ねが必要だ。
本記事が火種になって、先般の「バカバカしいコスカボのタイヤ空気圧セッティング」の重要性が認知されることを期待しているが、当分先の話かもしれない。何度も言うが私のような結果を出せない選手が何万文字使ったところで、考え方の普及などはしない。強豪選手たちがシビアな空気圧設定に取り組んで結果を出してこそ、考え方が普及していくという輪界特有の流れがある。
そういう意味では、シクロクロッサーやMTBライダーと比べてもロード競技者はタイヤ空気圧のチューニングに関してまだまだ攻めきれていない。
しかしそれは逆にチャンスだ。1mmでも早くゴールに飛び込みたい選手であれば、コモディティ化する機材の中で残された唯一の要素は、自分専用のチューニングなのかもしれない。これらインピーダンスや分岐点を考慮したタイヤチューニングは、勝負を容易に分けてしまうかもしれない。それらは、路面状況、体重、機材重量すべてが組み合わさった少々難しい概念かもしれないが、私は試す価値が十分にあると思う。
私はそんな思いを抱きながら、先般のコスカボUSTの記事を書いた。空気圧を変える事で、「ホイールシステム」が見せる顔が変わっていくことが単純に面白かった。自分に適したマイ空気圧の結論は、決して金では買えない。しかし金で買えないチューニングで得られるリターンは、皆が求め続けている速さなのである。
SILCA BLOG: PART 4B: ROLLING RESISTANCE AND IMPEDANCE
なおSILCA BLOGにはローリングインピーダンスという考え方以外にも、大変参考になるタイヤセッティングの話が記されている。一度目を通しておいて損はないと思う。

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