- 約10000kmでケーシングに到達。
- 地面を鷲つかするようなグリップ感。
- TL以外で唯一使いたいCLタイヤ。
新しいGP5000について深く追求していこうとしたとき、注目していたのは2つだけだった。1つ目は最も重要である転がり抵抗がどれくらい改善されたのか。2つ目はGPシリーズの最大の特徴でもある耐久性だった。「コンチネンタルおばちゃん」がパッケージから消えた理由も大変気にはなっていたものの、今回の記事では割愛することにした。
ところで、待望のチューブレス化も大きなトピックスの1つだ。GP5000のチューブレスタイヤについては別の記事で紹介する。
GP5000の耐久性については、チーム員が1万キロ使用した実際のデータがある。およそ1万キロの使用でケーシングに到達した。とはいえ、現実的な使用距離は4000-5000kmだと思う。誰もが気にしていたであろうGP5000の耐久性に関して言えば、前作のGP4000SIIと比べてみても、なんら遜色はなく、優れた耐久性は健在だった。
結論を言ってしまえばGP5000は、GP4000からさらに性能が引き上げられたスーパータイヤと言っていい仕上がりだった。今回の記事は、ロードタイヤのベンチマークとして知られるGPシリーズの最新版GP 5000 CL(クリンチャータイヤ)をインプレッションする。
転がり抵抗
最近のロードバイク用タイヤはすぐさま実験室に持ち込まれ「転がり抵抗」や「パンク耐性」が数値化される。データには表れない特徴としては、非常に高いグリップを備えているタイヤだった。転がり抵抗のデータは以下のとおりだ。
- GP5000 CL 25C & Latex 6.9bar: 8.9Watts(CRR: 0.00267)
- GP5000 TL 25C 6.9bar: 8.9Watts(CRR: 0.00267)
チューブレスタイヤの話は別の記事で紹介するが、クリンチャーとチューブレスタイヤそれぞれの転がり抵抗に関しては先に優劣をつけておきたい。同じ空気圧であれば、チューブレスとクリンチャー&ラテックスとの間に転がり抵抗の差はほぼない。そうなると、残るは重量面でクリンチャー(221g+チューブ重量)のほうがアドバンテージがある。
TLはおよそ300g、クリンチャー&SOYOラテックスの合算重量はおよそ260gだ。TLの場合シーラントを30ml程入れる必要がある。前後タイヤを含めた外周重量は150g軽くなる。さらに厳密な話をすると、チューブレス用バルブの重量は15-20gほどあるため、クリンチャーを選択したほうが約190g軽くなる計算だ。
GP5000のチューブレスタイヤは非常に性能が高く、乗り心地もよい。しかし、外周重量が190g増えることを考えると好き好んで使用したいとは思わない。乗り心地を気にしなければ、GP5000はクリンチャーを選択したほうがよい。できれば軽量化されたGP5000チューブレスレディ版が出てくれさえすればよいが、まだまだ先の話だろう。
インプレッション
GP5000のインプレッションに移る前に、これまで常用していたタイヤについてまとめておく。MAVICイクシオンUST、GP4000SII、ハッチンソンFUSION3 TL performanceの3種類のタイヤを使用していた。GP5000のインプレッションではそれぞれのタイヤとの相対的な比較を実施することになる。
Crrや耐パンク性能は実験の数値データとして明らかになっているため、「実験上はGP5000が最も転がる」という結論は揺らぐことはない。しかし、実際にGP5000を使用すると実験データと感覚との間には明らかに違いがあると感じた。具体的に言えば、時期によって鈍いタイヤに感じるときがある。
タイヤというのは非常にシビアな機材だ。気温、路面温度、使用チューブ、ホイール、リム内幅とあらゆる要因がタイヤのフィーリングに影響を及ぼす。したがって、単純に「転がる」「転がらない」という話をするのは少々乱暴だ。いつの時期、どんなホイールで、どんなタイヤと比べた相対評価なのか、それらを厳密に見極める必要がある。
私がGP5000を試した時期は1月~7月下旬だった。
手書きのメモやiphoneのボイスメモを聞き返すと、季節の違いでGP5000に対する感じ方にばらつきがあった。特に影響が大きいのは季節の違いによる気温だった。気温によって空気密度は変動する。冬の時期はバイクが進みにくいと感じるが、実際に空気密度の関係で空気抵抗はより大きくなる。
ところが、5月以降は気温も上がり、空気抵抗は小さくなる。このように気温の違いがタイヤに与える影響は、初めて使った冬の時期、そして暑い時期でGP5000の印象を大きく変えることになった。機材面で言えば、使用するリム内幅が転がり抵抗に大きな影響を及ぼすことはよく知られている。
リム幅が広ければ広いほどエアボリュームは増す。そして、リム内幅が広ければタイヤの変形量は抑えられる。イメージとしては、腕立てをするときに、手と手のスタンスを広くするか、狭くするかで、上体の安定性に違いが出ることと似ている。ワイドスタンスであればあるほど、安定する。
MTB用のリム内径が25mm~30mmになり、タイヤは2.1が2.35に変わってきたように開発競争が激しいMTB機材はさらにワイド化している。GP5000も23Cではなく25Cが標準だ。
リム内幅が広ければ広いほど、タイヤが地面と接地する横幅も増す(結果ヒステリシスロスも低下する)。リム設計や使用するチューブは転がり抵抗に大きな影響を及ぼすため、実際のテストではリム内幅が20.7mmのROVAL CLX50とSOYOラテックスチューブ(実測47g)を使用した。
厳密に言えば、タイヤのフィーリングはリム重量やリム幅で印象が変わる。「タイヤが軽い」という表現を単純にしてしまうと少しあやふやだ。GP5000のタイヤ重量はおよそ200gである。一方でROVAL CLX50のリム重量は440gほどとタイヤ重量に対して倍近い重量だ。
軽いリムと重いリムの組み合わせではタイヤの印象なのか、リムの印象なのか、その違いを理解しておかねばならない。空気圧はフロント6.7~7.1bar、リアタイヤは7.0bar~7.2barの間で調整した。
前置きが少々長くなってしまったが、「クリンチャータイヤはGP5000以外を選ぶ必要はない」というのが結論だ。海外通販や国内で投げ売りされていたGP4000SIIを大量に購入していたとしても、今すぐヤフオクに放流してGP5000を買うべきだと強く言いたい。
GP5000は確かに転がりのよさと、高い耐久性を備えている。しかし、それ以外のメンテナンス面(タイヤを取り付け)も改善されたように思う。新品のGP4000SIIは取り付けに少々苦労するタイヤだった。ところが、GP5000は取り付けがとてもしやすい。タイヤの取り付けはタイヤレバーを使わずに手だけで行える。握力の大小はあれど、一般的な男性なら取り付けは容易だろう。
空気を入れていくと、一目で太いタイヤだと判別することができる。今回選択したタイヤ幅は25Cだ。実寸は26.75mmだった。昨今のロードタイヤはワイド化が進み25Cや28Cが主流になり、23Cはほぼ駆逐されてしまった。これからのスタンダードは25Cにシフトしていく、という話はもう古くなってしまったので割愛する。
23Cを使うシチュエーションはもはやないに等しい。トラックでも20Cから23Cに移行しつつある。話は少々変わるが、MAVICは23Cのタイヤを使用すること自体を「メーカー非推奨」とした。23Cのタイヤを使用することをリムメーカーが推奨しないのだから時代は変わったモノである。
GP5000も同様に25Cと28Cから選べるが、重量面と転がりを考えるとバランスがよいのは25Cだ。25Cを選べばいい。28Cを使用しなければならない特別な理由は今のところ特に見当たらない。
GP5000のタイヤ精度についても確認することにした。タイヤを取り付けたあとに、メンテナンススタンド上でホイールを空転させてみた。当然ながらクリンチャータイヤなのでセンターはしっかりと出ている。回転中のタテ揺れも少なく(ホイール自体がよいというのもあるが)コンチネンタルタイヤは相変わらずタイヤの精度が高い。
取り付けたあとにタイヤをくまなく確認したが、本当に作りのよいタイヤだ。実走に移る前に空気圧の調整を念入りに実施した。8.0barから0.2barずつ下げて6.0barまで試した。「高い空気圧は転がり抵抗が増える」という事実をSILCA LABは実験で明らかにしている。
野外のアスファルトの環境であれば、私の体重(58~60kg)で適正なのは6.8bar付近がグリップや走行感共に良い感覚が得られた。
話は少し変わるが、シクロクロスのタイヤは0.01bar単位で調整する。粒度で言えばロードが0.1barごとであるのに対して、シクロクロスは0.01barごとである。桁が違うが、明らかな走りの違いが生まれる。GP5000の場合は少々粒度の”粗い”0.1bar単位で空気圧を調整してくことにした。
シクロクロスは毎レース空気圧調整が必要だが、ロードの場合は1度だけ根気強くテストしておけばあとは流用できる。
ロードの空気圧調整は楽なもんだ。
体重60kg(装備類を含む&バイクはVENGE)におけるリム内幅20.7mmという条件において、空気圧はフロント7.0bar、リア7.2barが上限だと感じた。季節が変わって気温が上がればもう少し空気圧を下げてもよいと感じる。修善寺や広島森林公園を走るとしたらコーナーリングを考えてF6.9、R7.1barでもよい。
群馬CSCや荒れた路面を考えると6.6~6.8barでもよいと感じた。整備された鈴鹿や直線が多いサーキットコース、タイムトライアルでは7.2~7.3barでもよいと思う。
雨天時の性能も気になるところだが、雨天のレースで十分テストすることができた。少し肌寒い3月に開催された西日本チャレンジ(広島森林公園)は雨天のレースだった。このレースでGP5000を使用した際の空気圧はF6.75bar、R6.9barで設定した。4月の修善寺E1ではF7.0bar, R7.25barに設定した。
路面状況のよい修善寺の場合はもう少し空気圧を下げてもよいと感じた。4月の実業団広島はF7.1, R7.2barで設定。堺、舞洲、きらら浜でのクリテリウムはコーナーリングを考えて前後7.0barに設定した。
半年近く空気圧をテストしたが、現在ではF7.0、R7.05ほどがベストセッティングだと感じている。普段の練習であれば路面状況がよければF7.0、R7.1~7.2に設定している。
体重60kg前後とバイク重量7.0kg前後という条件であれば、6.8~7.2barのスイートスポットで調整するとよいフィーリングが得られた。GP5000のグリップは相当高いため空気圧を上がても怖さがない。タイヤは空気圧を下げていくセッティングのほうが扱いやすくなる。空気圧の違いによるCrrの変化(Latexを使用)は以下のとおりだ。
- 8.3bar: 8.4W
- 6.9bar: 8.9W
- 5.5bar: 10.0W
このデータは非常になめらかなドラム測定器上の話であって、実走環境を考慮したインピーダンスロスは考慮されて(データ上に現れて)いない。実験室の整った環境での計測は、空気圧を上がれば上がるほど、転がり抵抗が減っていくデータが得られる(傾向にある)。
しかし、実際の環境では傾向とは異なる結果が得られる。「実験室の環境におけるタイヤの性能」と割り切ってデータをとらえておいたほうがいい。
単純にGP5000(6.9bar)とGP4000(6.9bar)を比べると、GP5000のほうが転がる。数値以外で気づくことは先ほども述べたとおりグリップ感だ。実際に使ってみるとGP5000はGP4000と比べて相対的に柔らかいタイヤだった。そして、GP4000よりもGP5000のほうがグリップが高い。ここまでさまざまな話を書いてきたが、まとめると以下のようになる。
- 転がり:GP5000 > GP4000
- 乗り心地:GP5000 > GP4000
- グリップ:GP5000 > GP4000
- 価格:GP5000 > GP4000
すげーおもしろくない表記だな!
ところで「グリップがよい」と感じるのは使い始めだけだ。GP5000とGP4000に共通している話である。ある程度走って地面のホコリを拾ったあとは、普段使っているGP4000と比べてみてもグリップの違いを感じることは難しい。ただ、GP5000にはチューブレスタイヤがラインナップされているため、本来であればチューブレスとクリンチャーの比較も行う必要がある。
GP5000チューブレスタイヤのインプレッション内でこのあたりの話を紹介する予定だ。とはいえ、GP5000のTLについても書いてみたい。
GP5000 TLのしなやかさをGP5000 CLで実現するとしたら、さらに0.6bar落として6.3barほどで運用する必要がある。しかし、空気圧を落とすことで転がり抵抗は悪化してしまう。チューブレスタイヤとクリンチャータイヤを同一空気圧で運用するならば、チューブレスタイヤの優位性は覆らない。
初めに感じるグリップのよさはGP5000 CL >> GP5000TL > GP4000IIの順だった。予想外なのは同一空気圧であれば、GP5000TLのグリップ感よりも、GP5000 CLのほうが地面をつかんでいる感じがした。TLの場合はCX用のチューブラータイヤと同じく潰しながらグリップを稼ぐような使い方のほうがよいのだろう。
TLのロードノイズの少なさや、振動の少なさはよいが、グリップ感はそこまで(チューブレスだからといって)期待していたほど良くはなかった。
空気圧を5.5や6まで下げた場合、タイヤの潰れ方はやはりチューブレスのほうが好みだ(当たり前のことを書くが)。TLタイヤの潰れ方の違いは顕著だ。GP5000 CLはふわふわとした印象がある。CLはサイドは硬く、なかなか潰れてくれない。「硬いGPらしさ」が好きな人もいると思うが、タイヤをしっかりと潰す感覚を得ながら走りたいライダーはTLのほうが相性がよいだろう。
イクシオンUSTやGP5000 TLは意図したとおりに潰れてくれるが、GP5000 CLはいわゆる「刺さるタイヤ」という印象だった。下りのコーナーリング中もサイドの食いつきはやはりGP5000TLがいい。このあたりの細かい話は、GP5000TLの記事で書く。
耐パンク性能
冒頭にも記載したが、1万キロほど使用するとタイヤ内部の繊維が見えてくる。
耐久性に関して言えば、GP4000SIIの後継モデルなので心配はいらない、と思っていた。しかし、サイドウォールは少々弱いのではないかというのが率直な感想だ。タイヤの頭に小石がよく刺さるが、貫通するほどでもない。ただ、実際に3000km~4000km走って2回サイドカットした。
パンクはもちろん運もあると思うが、GP4000SIIを10年近く使い続けて、この短期間でこのパンク回数は経験したことがなかったから不運としか言いようがない。GP5000が一番おいしい(タイヤが台形にならず、グリップもよい)時期は4000km後半までだと思う。それ以上使用したGP5000をレースで使用するのはあまりお勧めできない。
5000km以上でも使えないことはないがタイヤが台形になるため、交換が必要になると思う。6000kmは乗れると思うが、フロントのステアリング感覚が狂うからお勧めしない。転がり抵抗も小さくなり、耐パンク性能もアップしているという触れ込みだったが、耐摩耗性はGP4000SIIと比べると同じか、もしくはサイドウォールは少し弱いかな、というのが率直な感想だ。
なお、bicyclerollingresistance.comによると1000km使用したGP5000は、抵抗が+0.7W増える実験結果が得られている。
まとめ:それでもGrandPrixは揺るがない。
ロード用タイヤの定番としてGP4000SIIは長らくその座を譲ることはなかった。転がり、耐パンク性能、入手性、価格どれをとっても最高峰のタイヤの1つだったことは間違いない。しかし、コンチネンタルはその成功に甘んじることはなく、GP4000SIIを大幅に超えるGP5000を生み出した。GP5000は転がり、耐パンク性を向上しつつ、重量までも抑えることに成功した。
しかし抑えきれなかったのは価格である。ここまでのタイヤを生み出す開発コストや材料費、人件費、を考えても値上がりしてしまったことは納得しなければならない(お馴染みのオバちゃん写真も消えてしまった!)。GP5000TLは国内購入の場合1万円近い価格設定だが、正直バカスカ使うには少々躊躇してしまう。
今、GP5000を使ってあらためて思う。GP5000はあらゆるクリンチャータイヤを、過去のモノにしてしまうかもしれない。現状のクリンチャータイヤでGP5000以外のタイヤを選ぶ必要はない、というのが結論だ。10年以上活躍してきたGP4000IIは、ようやく安心してその座を譲るときが訪れたのだ。
ツール・ド・フランスでクイックステップが新型S-WORKSチューブレスレディタイヤを使い、バルベルデがBORAにGP5000TLを使うという時代になった今、ロードバイクタイヤ市場でチューブレスタイヤが席巻することは時間の問題だ。そんな状況下でもGP5000はレースで使用したいと思える唯一のクリンチャータイヤといえる。
GP5000は転がり抵抗の小ささ、耐パンク性能の高さで、今後もロードバイクタイヤのベンチマークになることは間違いない。
次回は、GP5000 TLのインプレッションをお届けします。
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