「世界最速のトラックバイク」が2023年グラスゴー世界選手権でついにレースデビューする。
突然だが、新型Canyon Speedmax CFR TrackがこれまでのTrackバイクと異なる点を上げてみよう。「Trackバイク」でイメージする仕様とはガラリと変わっている。
筆者自身、TIME ZXRS PISTE、Pinarello MAAT ITALIAの2台をTrackバイクを所有しているが、これまで常識とされてきたTrackバイクの仕様や規格が一気にアップデートされている。
- クリンチャータイヤ(チューブド)
- クリンチャーディスクホイール
- スルーアクスル
- 40mm幅のフロントアクスル
SWISS SIDEとの共同開発で誕生したSpeedmax CFR Trackは、コンプリートバイクが250万円で購入可能だ。Canyonのラインナップで最も高価なバイクとなるが、この仕様のTrackバイクとしては「格安」なのだ。
CANYONのバイクが手に届かなくなった・・・、と今回の発表で嘆いている人はTrackバイクの現在の事情を全く知らない人だ。むしろ、このレベルのバイクが「買える」事自体が奇跡なのだ。
特に2016年に発表したCervelo T5 GBいつ売るんだよ!と嘆きながら今でもT4乗っているライダーがどれほど多いことか(うちのチームの井上、天野がそうだ)。実際にCervelo T5 GBなんて一般には出回らなかったし、売られてもフレームだけで300万のタグが付いていた。
しかもこれは7年以上前時点での価格だ。
先般登場したHope x Lotus HB.Tトラックバイクのフレームセットなんて500万円だ。CANYONのように「フル装備」となると、新型ツインシートポスト、スタンダードロータス3Dプリントフォークが40万円、ホープのディスクとトライスポークのフロントホイールもセットで100万円。
合計640万円だ。
以前登場した、ドライブトレインを全て逆側に付けたFELT TA FRDでもフルセット400万円だった。バンクの内側に重心を少しでも移動しやすくするために、ドライブトレインを全て進行方向左側に持ってきた狂ったTrackバイクである。
トラックバイクの世界標準がこれくらいだから、今回のSpeedmax CFR Trackのフルパッケージが、このご時世どれだけ安いのかがわかる。
というわけで8月3日の発表後、わずか8分で完売した。
通常この手のバイクは発売されるか、されないかも怪しい。実際に購入可能で「250万円」ならば即売り切れるのも無理はない。この装備でこの価格は破格だ。キャニオンエアロードが90万円ぐらいで売られている感覚で考えてもらえばいい。
さて、この続きを読んだとて買うことができない、最新最速のバイクの紹介を続けよう。
Trackバイクのトレンドとは真逆
現行のTrackバイクの特徴はというと、「ライダーの脚の位置にフォークブレードとシートステーが重なる設計」がトレンドだ。前方投影面積を稼ごうとした時に、前方から見てライダーの脚と重なるように設計されている。
トラック競技場は室内であるため横風の影響をほぼ受けない。そのため、ヨー角0°、大きくても5°までの抵抗が支配的になる。そうなると、前方からの風をどのように後方へ流すか、そして前方投影面積を純粋に減らせるかが鍵になってくる
Speedmax CFR Trackはというと、最新のトラックバイクの中では異端児のような存在だ。Hopeのようなワイドなスタンス設計ではなく、極端な狭いスタンスになっている。特にフォークを見れば設計思想が一目瞭然で、顕著にわかる。
Speedmax CFR Trackのフォークの横幅は非常に分厚いが、正面から見ると非常に狭い。これは、40mm幅のカスタムアクスルで設計されているからだ。ほとんどのトラックバイクは、従来の100mm幅のアクスルを使用しており、バイクのフロントエンドの幅を大幅に狭めている。
そのため、Speedmax CFR Trackは合わせて開発されたCanyon独自のカスタムホイールを使用する必要がある。正面から見ると、フォークの脚は細く、半傾斜のクラウンに合流するまで内側に傾斜している。
フォークのクラウンは、深いヘッドチューブの根元にあるカットアウトの中に収まっている。上方に向かうと、深いヘッドチューブに明確なリッジが成形され、細い砂時計のようなプロフィールを作り出している。
ベースバーも、ヘッドチューブ上部のカットアウトに収まっている。水平に伸びたトップチューブは、エアロシートポストを過ぎると、横幅は広いが、厚みが極端に薄いシートステーに合流する。
Speedmax CFR Trackでは、シートステーはドロップアウトから内側に傾斜し、伸びたトップチューブの両側で結合している。リアホイールは、シートチューブの深いカットアウトに収まっている。
Speedmax CFR Trackを競合バイクと比較したデータは発表されていないが、Canyonによれば「世界最速のトラックバイク」だという。Canyon Speedmax CFR Trackは、Canyon独自のディスクホイールセットを中心に設計されている。
珍しいことに、このホイールは25mm幅のクリンチャータイヤに最適化されており、一般的なトラックでは18~20mm幅のチューブラータイヤがスタンダートだ。Canyonによれば、19mm幅からさまざまなタイヤをテストし、最終的に25mm幅がトラックレースでの最速幅になったという。
実験を繰り返していくと、ベロドロームの滑らかさにもかかわらず、キャニオンはタイヤサイズを大きくするほど転がり抵抗が減少することを発見した。そのため、Speedmax CFR Trackのホイールは外幅26.5mmの25mmタイヤを中心に最適化されている。
また、このホイールはクリンチャータイヤと組み合わせることを想定して設計されており、チューブラータイヤよりも常に高速であることがキャニオンによって確認されている。
Speedmax CFR Trackは、SRMパワーメーター、Kappstein 3/32ドライブトレイン、Continental GP5000タイヤ、Canyon独自のコックピットとホイールなど、現代のトラック技術の粋を集めた最高スペックのマシンだ。
Canyon Speedmax Track CFR specs
- Frame: Canyon R115 Speedmax CFR Track
- Fork: Canyon FK0113 Track Pursuit, 15x40mm thru-axle
- Basebar: Canyon CP0040 Aero Track
- Extensions: Canyon Carbon Pro Extension System
- Seatpost: Canyon SP0068 Aero
- Wheels: Canyon CFR Disc Track 40/120, clincher
- Tyres: Continental GP5000 TT TR, 25mm
- Innertubes: Schwalbe Aerothan TPU
- Crankset: SRM Origin Track PM9 Composite, 144x5mm BCD
- Drivetrain: Kappstein Pro Line Elite 58/15
- Chain: Shimano Dura-Ace HG901, 11spd
- Bottom bracket: Ceramicspeed PF4630 coated
- Headset: Ceramicspeed coated 1i n
- Saddle: Selle Italia Watt Superflow Carbon
- Optional ‘standard’ fork: Canyon FK0136 Track, 12x100mm thru-axle
- Optional ‘standard’ wheels: DT Swiss Canyon TRC1100