5km/h速度を上げるには何ワット必要なのか?

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速度に対して、どれぐらいのパワーが必要になるのかまとめてみました。

  • 傾斜:0°
  • yaw角0°の風:3 (m/s)
  • 体重(kg):65kg
  • CdA(m^2):0.277(ブラケットポジション)
  • バイク総重量:7.5kg
  • 転がり抵抗(Crr):0.003 空気密度:1.24

上記の条件下において、速度に対して必要になるパワーは以下のとおりです。

  • 5km/h:7.56W
  • 10km/h:21.85W
  • 15km/h:45.64W
  • 20km/h:81.69 W
  • 25km/h:132.72 W
  • 30km/h:201.57 W
  • 35km/h:290.95 W
  • 40km/h:403.64 W

自転車の抵抗の8割は空気抵抗という話を聞いた事があるかもしれませんが、たとえばブラケットポジション相当のCdAである0.277から、下ハン相当のCdAである0.222になった場合に必要なパワーは以下のとおりです。カッコ内は0.277のCdAを引用しています。

  • 5km/h:6.64 W(7.56W)
  • 10km/h:18.69 W(21.85W)
  • 15km/h:38.34 W(45.64W)
  • 20km/h:67.82 W(81.69 W)
  • 25km/h:109.31 W(132.72 W)
  • 30km/h:165.07 W(201.57 W)
  • 35km/h:237.30 W(290.95 W)
  • 40km/h:328.20 W(403.64 W)

エアロロード買う前に、ライダーのポジションカイゼンだ!というのはそのとおりだとおもいます。また、TTスペシャリスト達がポジションのカイゼンに命をかけている理由もわかります。

体感ですが、私(58kg)が下ハン持って、エアロポジションで40km~45km/hで先頭を引いている時は、風向きにもよりますが、おおむね280~300Wぐらいの幅でパワーが出ているので、数値的にもリンクしている感じがします。

蛇足ですが、チェーンルブの違いによる抵抗の差についてです。最も抵抗が小さいルブと、最も抵抗が大きいルブの間には、かなり多く見積もって4W弱の差が生じます。Ceramic Speed社やZeroFrictionCyclingのデーターは以下のとおりです。

https://www.ceramicspeed.com/media/3505/velonews-friction-facts-chain-lube-tests-combined.pdf

Why Squirt Chain Lube works
✺    Clean     ✺    Efficient   ✺    Long Lasting    ✺    Biodegradable   ✺ We all like a clean, smooth-running and quiet drive train - even in dust and mud where we sometimes prefer to ride. Squirt d...
https://cdn.shopify.com/s/files/1/0074/4531/5662/files/VeloNewsFeb201_Hunt4Speed.pdf?v=1579724533

ちなみにチェーンルブで4Wが改善した場合、どれくらいの効果があるのかというと、5km/h(7.56W)から6.75km/h(11.65W)の差がおおむね4.09Wです。しかし、速度域が上がっていくと必要になるパワーは指数関数的に増加していきます。

なお、1km/hから3.7km/hに速度アップした場合は、1.1W → 5.05 W程度のパワー増加になります。

35km/hから36km/hに1km/h速度を上げた場合は、290.95 W→311.56 Wで20.61W余計にパワーが必要になります。

カンの良い方ならこの時点で気づいたと思いますが、これら抵抗を「支配」している要素(空気抵抗、転がり抵抗など)は速度域で大きく変動します。

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「支配的」は速度域で変動

スクリーンショット 2018-07-12 8.19.54

Figure 1は横軸が速度、タテ軸がパワーを示しています。

速度(km/h)が増せば必要なパワー(グレーの線)も比例して増加します。グレーの線は必要なパワーの総量です。グリーンの「AERO」は空気抵抗、レッドは転がり抵抗やベアリング抵抗です。

速度が増せば空気抵抗(AERO)が支配的になることがわかります。駆動抵抗よりも、転がり抵抗よりも、空気抵抗(AERO)の割合が増えていき、何度も言いますが「支配的」です。

では、「速度の違い」によってそれぞれの「抵抗の割合≒支配率」はどのように変化するのでしょうか。

スクリーンショット 2018-07-13 8.10.02

Figure 2は、横軸が「速度(km/h)」で、タテ軸が「パワーの割合(%)」です。

「抵抗」とひとくくりに言っても、「転がり抵抗」や「空気抵抗」が存在しています。それぞれ、速度域に応じて抵抗全体にしめる割合に違いが生じます。まずは、速度が0(km/h)のポイントから注目してみましょう。

0km/hのポイントでは、転がり抵抗(Rolling Resistance)とベアリング内部抵抗(WB)がほとんど締めています。理由としては、ゼロスタート時点では、空気抵抗の影響を”ほぼ”受けることがないためです。

先日、川村氏(skmz)が「某youtuberが新型SUPER SIX EVO踏んだ瞬間にエアロ効果が体感できたって言ってて草」と言っていましたが、草ではなくもはや大草原不可避でしょう。

グラフで見落としていけないポイントとしては、「線がクロス」している部分です。速度が増していくと、空気抵抗は増加し、転がり抵抗(RR)やベアリング抵抗(WBR)の「割合が小さくなって」いきます。

線がクロスしているポイントは、「それぞれの抵抗がちょうど50対50で均等になる速度域」です。

スクリーンショット 2018-11-18 5.38.57

補足としては、速度域が上がっても、転がり抵抗(RR)やベアリングの抵抗(WBR)の絶対値はほぼ変動しません。若干ながら変動しますが、全体の総和でみると誤差のレベルです。抵抗全体に対してRRとWBRの「割合」は変化しています。

空気抵抗と転がり抵抗が50:50の割合になる速度域はおよそ「15km/h」です。スピードが増せば、抵抗全体にしめる空気抵抗の割合も増加していきます。速度40km/h以上では、抵抗全体のほとんどが空気抵抗に支配され、文字通り「支配的」です。

タイヤの転がり抵抗やベアリング抵抗の「割合」は、速度が上がるほど減っていきます。トップスピードに達すると、もはや空気抵抗の割合が支配的になります。

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勾配の影響

勾配は抵抗に対してどのような影響を及ぼすのでしょうか。斜度がきつくなれば、速度は低下します。速度が低下すれば、空気抵抗の「支配」の度合いも変動するはずです。

スクリーンショット 2018-11-15 20.07.27

グラフのタテ軸はパワー、ヨコ軸は斜度を示しています。

パワーは一定の300Wを想定し、棒グラフの色は抵抗の種類を表しています。斜度が増すにつれて、グリーンの空気抵抗は減り、ブルーの位置エネルギー(PE)が増しています。

この実験条件は、体重75kgのライダーが一定出力(300W)で走っている場合を想定しており、タイヤの転がり抵抗であるCrrは0.003です。空気密度は1.20kg/m^3を想定しており、気温17℃の場合です。春先や秋口の空気密度です。

このように、空気抵抗が支配的なのか、それとも駆動抵抗や転がり抵抗が支配的なのかは、速度域や勾配で変動します。

40km/h以上で巡航をする方は、以下の順番で抵抗を削減する方法が効率的だと考えられます。

  1. 空気抵抗
  2. 転がり抵抗
  3. 駆動抵抗もろもろ

1%のマージナルゲインを追求していく場合も同様です。

空気抵抗の話は、以前、個人的に風洞実験を行った際に色々とまとめた記事があるので参照してください。

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5km/h速度を上げるには何ワット必要なのか?

結論としては、速度域、勾配といったパラメーターをどのような初期条件として定義するかによって、何ワット必要になるのかは変わってきます。さらには速度域、勾配以外にも冒頭に記載した、CdA(m^2)、転がり抵抗(Crr)、ライダーやバイクの重量、風向きなどのパラメーターの条件で変動します。

言われてみれば、当然っちゃ、とうぜんなのですが、「エアロロードにしたから」「UFOドリップ使ったから」「ビッグプーリー使ったから」「セラミックベアリング使ったから」という単一の要因だけでは、簡単に改善との因果関係や、改善理由が説明できない場合が多いです。

だからこそ、機材の落とし穴に気づくためには、実際に自分で使ってみて、何なら机上の空論でもいいので計算してみて、試して実験するほかありません。

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