書籍「暑さを味方につけるHEATレーニング」機器不要の暑熱順化ノウハウが満載!

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暑熱順化のトレーニング方法やノウハウについてコンパクトにまとめられているのが、本書「暑さを味方につける[HEAT]トレーニング」だ。

本書が優れている点は3つある。

  1. データーは全て論文を引用
  2. 専用のセンサーや測定器などが不要
  3. 著者は東京五輪の暑熱対策プロジェクトを立ち上げた

著者の中村大輔博士は、国立スポーツ科学センター在籍時に東京五輪に向けた暑熱対策プロジェクトを立ち上げた方だ。これまでに多くの競技団体、トップアスリートに対し、暑熱対策に関する医化学的なサポートを行っている。

また、2016年リオデジャネイロ五輪サッカー日本代表をはじめとした国際大会に、コンディショニングサポートスタッフして帯同している方だ。

本書の表紙を一見すると、小難しい感じはしない。中身も図解が多く、読みやすい。しかし、データーや紹介している内容に関しては全て最新の論文が引用されている。エビデンスレベルも高く、最新の暑熱順化トレーニングの情報がまとまっている。

巻末には暑熱順化に関する膨大な量の引用元論文が紹介されている。とはいえ、実際に読む際にはそんなことなど一切気にしないで読めるから素晴らしい書籍だ。

競技者のトレーニングに関係しそうな章は1~4だ。以下に目次を抜粋した。

「第1章:暑さでのパフォーマンス発揮と体温」は、論文を用いて暑さに対する身体の反応や、実際のパフォーマンスへの影響をデーターを用いて紹介している。「実践的な「暑さ対策」4つの要素」は必見だ。

  • 第1章暑さの中でのパフォーマンス発揮と体温
  • 運動時の「体温調節」
  • 熱中症の発症メカニズム
  • 暑くなるとマラソンの記録は悪くなる
  • 暑いとパフォーマンスが低下するワケ
  • 運動を継続できる体温には上限がある
  • 体温が上がりづらい状態を維持する
  • 実践的な「暑さ対策」4つの要素

第2章の「暑さを味方につける 「暑熱順化」」は、メインとなるトレーニングの部分だ。素晴らしいのは、「CORE」や「測定器具」など一切使用せずに、暑熱順化トレーニングの実践方法を紹介していることだ。

深部体温を計測するためには、COREや、口から飲み込む腸内温度センサーなどを用いる方法がとられているが、本書ではそれらを不要としている。また、「-暑い部屋を作れば能動的に暑熱順化できる 」では、実際に自宅に暑熱順化のためのトレーニング環境を作るための方法も紹介されている。

重要なこととしては、

  • 室温を何度にすればよいか
  • どれくらいの時間トレーニングすればよいか
  • 運動後も暑熱順化トレーニングできる
  • 暑熱順化にはミルクプロテインが有効

といったノウハウが紹介されている。さらに「暑熱順化で通常環境でも強くなる」はツール・ド・おきなわに出る方は必見だ。いまの夏のうちにトレーニングしておくと、11月に開催されるツール・ド・おきなわの頃にブーストできる可能性がある。

いや、私は出ないのだが、まじで参考になるぞ。以下は目次。

  • 第2章 暑さを味方につける 「暑熱順化」
  • 「暑熱順化」とは何か?
  • 「体温を上げ」て身体を暑さに慣らす
  • 暑熱順化はパフォーマンス向上ももたらす
  • 暑熱順化で通常環境でも強くなる
  • 運動後の入浴・サウナでも暑熱順化
  • お風呂を用いた受動的暑熱順化の方法
  • 暑い部屋を作れば能動的に暑熱順化できる
  • 能動的暑熱順化の方法
  • 「深部体温」の計測は難しい
  • 「牛乳」が暑熱順化に効果的!?

第3章は、「猛暑下でも上手にトレーニングするために」という題材で、暑さの中でトレーニングするためのノウハウが詰め込まれている。非常に興味深かったのは、「速乾性のよい衣類(ジャージ)を身に着けているなら、インナーウェアは不要、むしろ逆効果」という内容だ。

詳しくは本書を見てほしいが、インナーウェアは暑くなるだけでなく、多重構造による身体のヒートアップにも繋がり不要だという。

  • 第3章 猛暑下でも上手にトレーニングするために
  • 「朝のトレーニング」にまつわる「誤解」
  • 気象条件を把握すればリスクは減らせる
  • 何を着て運動するか?
  • 「コンプレッションウェア」のリスク
  • スポーツ活動中はどこを冷やすのが効果的か
  • 「プレクーリング」の効果
  • 身体冷却の種類および方法と効果
  • 冷却効果の高い飲み物
  • 自宅でできる 「アイススラリー」
  • 自家製アイススラリーを作ってみよう
  • 競技現場における暑さ対策の実際
  • 日本代表選手を対象に行われた冷却戦略

第4章は、脱水について紹介している。何%体重が減ると危険なのか、飲む飲料の違いによる脱水に対する効果などを全て論文をベースに紹介している。

  • 第4章 「脱水」状態を把握する
  • 体重変動で「脱水」状態を把握する
  • 前日比1.5%以上の体重変動は要注意
  • 「喉が渇いたら水分摂取」では不十分
  • 何を飲むのが適切なのか?
  • パフォーマンスを低下させる脱水

薄くて、手頃な価格の本だが、著者が東京五輪に向けた暑熱対策プロジェクトを立ち上げた方ということもあり、論文ベースにわかりやすく、コンパクトに暑熱順化の方法や、脱水症状への対策がまとめられている。

本書は、選手だけでなく、夏に外を走る方全てとって非常に有益な書籍と言える。これから、夏本番、たしかな知識と、確かな方法で暑さを乗り切って欲しい。

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