新型 スペシャライズド TARMAC SL9 登場!史上最速のロードバイク – Win Fin, Flow Fork

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S-Works Tarmac SL9は、スペシャライズドが提唱するただひとつの指標、Time to Finish(ゴールまでのタイム)を最短にするために設計された、同社史上最速のロードバイクだ。

フレーム重量687g、SL8比4ワットの空力改善、完成車重量6.5kg。これらの数値だけを並べれば、お決まりの正統進化に見えるかもしれない。しかしSL9の本質は、単なるスペックの積み上げなどではなく、「ライダーとバイクとコースを一体のシステム」として捉え直した設計哲学そのものにある。

Ryuta Iwasaki(@ryutaiwasaki_raw

このバイクは、ワールドツアーの最前線で戦うレムコ・エヴェネプールやデミ・ヴォレリングの手にすでに渡っている。

ロードレースの勝敗を分ける決定的瞬間に焦点を当てて開発されたSL9。なぜ従来の空力と軽量という二項対立を無効化するべく生まれたすべてを征す一台、そのバイクを解き明かしていく。

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Time to Finish、速さの再定義

CdAだけで速さを語れない

Photo: SPECIALIZED

速さとは、ゴールラインを最初に越えることである。

風洞での空気抵抗値が最小であることでも、スケールの上で最も軽いことでもない。この一見当たり前の命題に、スペシャライズドは「Time to Finish」という名前を与え、設計上唯一の評価軸を据えた。

Time to Finishとは、実在するレースコースをもとに、空力、重量、転がり抵抗、路面の粗さ、環境条件、そしてライダーの出力を掛け合わせ、総合的な走行時間を導き出す物理ベースのシミュレーションである。

Ryuta Iwasaki(@ryutaiwasaki_raw)

スローガンではなく、実測データを現実のコースに当てはめた結果だ。このアプローチはサイクリング業界では新しいかもしれないが、F1やセーリングといったパフォーマンス競技ではすでに確立された手法である。

F1マシンが軽さやパワーといった単一の性能ではなく、特定のサーキットで最速のラップタイムを出すために設計されるのと同様に、Tarmac SL9はゴールまでのタイムを最短にするためにすべての変数を精密に最適化している。

スピードの方程式

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スピードの方程式は、ライダー、バイク、ルートという3つの要素群を統合する物理モデルである。もっとも簡潔に表現すれば、Rider + Bike + Route = Time to Finishとなる。ライダー側の変数にはパワー、体重、ライダーCdA(空力的な前面投影面積と抗力係数の積)が含まれる。

バイク側には機械効率、転がり抵抗、システム重量、システムCdAがある。そしてルート側には重力加速度、地上速度、空気密度、風速、風向角、路面の粗さが入る。これらすべての変数が個別に測定され、ひとつのシミュレーションへと統合される。

重要なのは、この方程式の中では単体で優れた数値が必ずしも勝利を意味しないということだ。

風洞でのCdAが最小のバイクが、実際のレースコースで最速になるとは限らない。なぜなら、重量による登坂や加減速への影響、疲労によるポジション変化がCdAに与える影響、路面状況と転がり抵抗の相互作用が、すべて積み重なって最終的なタイムを決定するからである。

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4ワット削減の意味

全チューブ形状を刷新

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Tarmac SL9は、SL8から4ワットの空力改善を達成している(45km/hでのムービング・レッグ・マネキンによる測定)。この数値を実現するために、すべてのチューブ形状がゼロから再設計された。

開発過程では、モーガンヒルのイノベーションセンターにあるスペシャライズド・サイエンスクラブが、Tarmac SL8のフレームに新たな形状の試作パーツを組み合わせたミュール(検証用プロトタイプ)を製作している。

シートポスト形状、フォークレッグのワイド化、より深く設計されたチューブプロファイルなど、あらゆる可能性を検証しながら、SL8およびAethos 2の軽量性能と両立する空力の最適解を追求した。

ここで注目すべきは、空力改善が”重量増を伴っていない”という点である。エアロダイナミクスの追求は往々にしてチューブの大型化を招き、重量ペナルティを課す。SL9がこのトレードオフを回避できた背景には、後述するFlow State Designの存在がある。

Speed Snifferの進化

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Speed Sniffer(速さをかぎ分けるフロントノーズ)と呼ばれるヘッドチューブの造形は、SL8ですでに定評があった。当時は賛否両論だったが、結局各社も似たような形状のバイクを開発し、時代が追いついた。SL9ではこれをさらに4mm薄型化し、前面投影面積を10%削減している。

ヘッドチューブをスリムにするためには、従来は内装ケーブルが収まっていたスペースを削る必要があった。この課題に対してエンジニアリングチームが開発したのが、新設計のOffset Steerer(米国特許出願中)である。

これはフォークコラムを曲げることで、リアブレーキケーブルをステアラー右側へと再配置する仕組みだ。限られたスペースを最大限に活かし、空力的に理想的なヘッドチューブ形状を成立させている。

従来のロードバイク設計では、ブレーキケーブルやホースの経路はフレーム内部の空間に制約を与え、チューブ断面の最適化を阻害する要因となっていた。Offset Steererはこの制約を根本から取り除く発想であり、ケーブルルーティングと空力設計を両立させる巧みな解である。

空力改善の3要素

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  1. Flow Fork
  2. Dropped Down Tube
  3. Win Fin

SL9の空力改善はこの3つのキーワードに集約される。Speed Snifferだけにとどまらない。フレーム全体にわたる複数の新設計が積み重なっている。

Flow Forkは、フロントホイールから剥離した高エネルギー気流をフォークブレード沿いに導き、フォーククラウンからダウンチューブへの流れをスムーズに接続する設計である。Dropped Down Tubeと連動することで、ダウンチューブ上の気流を整え、ドラッグを低減する。

Win Finは、実戦の分析から生まれたディテールだ。多くの逃げでは、ライダーはボトルを2本ではなく1本だけ携行する。これは従来の2本のボトルと2つのケージを想定したセットアップとは根本的に異なる空気の流れを生み出す。

SL9ではこのリアルなレース状況を前提に、シートチューブとリアトライアングル周辺を一から設計し直した。その結果が0.5ワットの削減を実現したWin Finである。

さらに、S-Works Rapide Aero Postもライダー込みのWin Tunnel+ムービング・レッグ・マネキン(MLM)テストに基づいて最適化されたエアロシートポストである。

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ムービング・レッグ・マネキン

第6世代マネキンシステム

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ライダーなしに走るロードバイクは存在しない。

にもかかわらず、バイク単体やレッグモデルのみでの風洞テストが業界では一般的に行われている。スペシャライズドはこの根本的な矛盾に対して、自社風洞実験施設Win Tunnelで第6世代へと進化したムービング・レッグ・マネキンを投入している。

このマネキンは実在のライダーのボディスキャンから製作され、実際にペダリング動作が可能になっている。静止したマネキンや脚部のみのモデルとは異なり、ペダリング時にバイク周りの気流がどのように変化するかを正確に捉えることができる。

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R&D空力エンジニアのリオネロ・バルディナは、わずか5mmのポジションのずれが、バイクそのものを交換する以上の空気抵抗差を生み出す可能性があると指摘している。このシステムを構成する要素は3つある。マネキン本体、ストラット(支持構造)、そしてレーザープロジェクターだ。

ストラットはマネキンに頼ることなくポジションを完全に支持する仕組みであり、ハンドル幅の違いによるライダー側の抵抗変動を排除している。レーザープロジェクターは、バイクを交換するたびにボトムブラケットを基準としてマネキン位置をミリ単位で再現する。

ホイール選択にも影響するライダー込みのテスト

興味深い事例がRoval Rapide CLX IIIホイールで示されている。

バイク単体での風洞テストでは、競合ホイールに対してRovalの優位性はわずかだ。しかしライダー込みのMLMテストでは、その差が拡大する。ライダーの存在がシステム全体の気流を変え、リアホイールの極端な深さの重要性を相対的に低下させるためである。

つまり、より速いバー、より速いホイール、より速いフレームを個別に組み合わせても、ライダーが乗った瞬間に最速のバイクになるとは限らない。

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空力的なゲインは加算的ではないのである。この知見は、パーツ単体の性能比較に依存する従来のバイク選択アプローチに根本的な疑問を投げかけるものだ。

風速条件の設定

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風洞テストの設計目標として用いる風速条件は、バイクの最終形状に大きな影響を与える。実走環境で走行する場合、約86%が±7度のヨー角範囲内で発生する。これは地上約1mの高さにおける実測風速データに基づく分析結果だ。

一方、一部のブランドやメディアが使用する3m基準高さの風速分布(SAE規格に由来するトラック試験向けの基準)では、同じ確率分布カバー率が±15度以上に広がる。この違いは、バイクのチューブ断面設計に直接影響する。

低ヨー角に集中させる設計は前面投影面積の削減とライダー・バイク間の気流最適化を優先し、広いヨー角分布を前提とする設計は深いエアロフォイルによるセイリング効果を重視する。

スペシャライズドが比較的スリムなチューブ断面を採用しているのは、この実測に基づく風速条件の選択によるものである。

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Time to Finishのシミュレーション

TdFファムの最終ステージでSL9を使っていたら

Photo: SPECIALIZED

2024年ツール・ド・フランス・ファムの最終ステージで、デミ・ヴォレリングは80kmにわたる決定的な逃げを展開した。アップダウンの連続、平坦区間、そしてアルプ・デュエズの頂上ゴール。彼女がこの伝説的なアタックで駆ったのはTarmac SL8であった。

スペシャライズドはこのステージをスピードの方程式でシミュレーションした。

SL9の4ワット低減した空気抵抗、687gのフレーム重量、6.8kgのシステム重量、Made in Racingによる実走データ、エリートライダーのパワープロファイルを入力した結果、14秒の短縮という答えが導き出された。

わずか4秒差で決したツールにおいて、14秒のアドバンテージ。それは総合優勝を逃すか、10秒差で制するかの分かれ目であった。

競合バイクとの比較

スペシャライズドは、主要な競合モデルをプロ選手が実際にレースで使用する仕様そのままに自社風洞施設でテストし、同一条件でTime to Finishを比較している。

以下は100kmのグランツールプロファイルにおけるベンチマーク結果である(すべて56cmサイズ、同一サドル高、コックピット下スペーサーなし)。

バイク ホイール コンポーネント システム重量 Weighted CdA 100km ゴールタイム差
Tarmac SL9 Roval Sprint CLX RED E1 6.80kg 0.2227m² 2時間43分44秒(基準)
Tarmac SL8 Roval Sprint CLX RED E1 6.89kg 0.2251m² +28秒
Cervelo S5 Reserve 57/64 RED E1 7.44kg 0.2215m² +18秒
Colnago Y1RS ENVE 4.5 Pro RED E1 7.49kg 0.2227m² +34秒
Factor ONE Black Inc. 64 RED E1 7.99kg 0.2231m² +63秒

注目すべきは、CdAが最小のCervelo S5(0.2215m²)が100kmの総合タイムではSL9に対して+18秒遅いという結果である。

S5の空力的優位性は約1.4%の勾配を境にSL9の軽量性に逆転される。つまり、平坦だけのレースは存在せず、登り、下り、加減速を含む実際のレースプロファイルでは、空力と重量のバランスが最終タイムを決定するのである。

さらに複数のワールドツアーステージでの比較データも公開されている。

レースシナリオ SL9基準タイム SL8 Cervelo S5 Colnago Y1RS Factor ONE
TdF第19ステージ アルプ・デュエズ 38分18秒 +5.5秒 +16.4秒 +18.2秒 +30.9秒
TdF第20ステージ ミゾアン 54分27秒 +8.6秒 +16.0秒 +18.9秒 +31.1秒
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ 最終34km 52分00秒 +10.8秒 +2.4秒 +6.4秒 +7.7秒
2026年世界選手権モントリオール 周回のみ 19分17秒 +3.7秒 +0.5秒 +1.9秒 +2.1秒
TdFF第7ステージ 最終44km 1時間53分58秒 +20.0秒 +38.4秒 +45.2秒 +74.5秒
TdFF第7ステージ ヴァントゥー 57分44秒 +8.8秒 +28.0秒 +31.0秒 +52.8秒

世界選手権モントリオールのような平坦寄りの周回コースでは、Cervelo S5との差はわずか0.5秒まで縮まる。一方、TdFF第7ステージのような長距離・高獲得標高のコースでは、SL9の優位性は圧倒的に広がる。

これはまさにTime to Finishという指標の本質を示している。コースプロファイルによって最適解は変わるが、SL9はすべてのシナリオで最速の座を維持しているのである。

富士ヒルクライムのシミュレーション

富士ヒルシミュレーション(筆者作成)

スペシャライズドが公開しているデータを元に、富士ヒルクライムのコースを走行した場合のタイム差を筆者作成のSimulator上で計算した。なお、SPECIALIZED公式が提示している資料ではない。

シミュレーション条件は、ホワイトペーパー準拠パラメータ(ライダー65kg、アパレル1kg、Crr 0.005、駆動効率0.98)に加え、富士ヒルクライムの平均標高約1,600mにおける空気密度を1.013 kg/m³に補正して計算した。SL8で1時間ちょうどの条件とした。

結果は以下のとおりである。

バイク システム重量 CdA ゴールタイム SL8比 SL9比
Tarmac SL9 6.80kg 0.2227m² 59分53秒 -6.7秒 基準
Tarmac SL8 6.89kg 0.2251m² 60分00秒 基準 +6.7秒
Cervelo S5 7.44kg 0.2215m² 60分15秒 +14.6秒 +21.3秒
Colnago Y1RS 7.49kg 0.2227m² 60分18秒 +18.2秒 +24.9秒
Factor ONE 7.99kg 0.2231m² 60分37秒 +36.8秒 +43.5秒

富士ヒルクライムのように平均勾配5.2%のコースでは、出力の81.1%が重力抵抗に費やされ、空気抵抗の寄与はわずか11.1%にとどまる。これはグランツールの100kmプロファイル(平坦と登坂のミックス)とは大きく異なるバランスであり、重量差の影響がいっそう顕著になる局面である。

Cervelo S5はCdA 0.2215m²と5台中で最高の空力性能を持つにもかかわらず、7.44kgという重量がハンデとなりSL9に対して21.3秒遅い。SL9と同じCdAを持つColnago Y1RSも7.49kgの重量により24.9秒差がつく。

これはまさにスペシャライズドが主張するとおり、ヒルクライムではCdAの優劣よりもシステム重量が支配的であり、空力と軽量性を高次元で両立したSL9の設計思想が最も正確に反映される結果となった。

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687g、Flow State Designの超軽量フレーム

形状が荷重を支える

Photo: SPECIALIZED

S-Works Tarmac SL9のFACT 12rフレームは687gを達成している。

完成車は6.5kg(Rapideコックピット+ホイール構成)、さらにAlpinistコックピット+ホイール構成では6.1kgまで到達する。これは多くのクライミング専用バイクでさえ実現していない領域であり、UCIの6.8kg最低重量規定すら下回っている。

この軽量性を実現したのが、Aethosで初めて確立されたFlow State Designだ。

Photo: SPECIALIZED

SL8を開発した当時、ピーター・デンク氏はフレームの荷重下での挙動を研究する中で、一貫した変形パターンに気づいた。フレームは単にしなるのではなく、あたかも互いにコミュニケーションを取るように応力を伝えている。

この洞察をサイクリング業界最大規模の機械試験データとともにスーパーコンピューターへ入力し、FEA(有限要素解析)とPly-by-Ply(積層一枚一枚の最適化)を通じて、荷重を効率的に支えるよう精密に設計されたチューブ形状が導き出された。

素材を追加するのではなく、形状を最適化することで耐久性を強化し、不要なカーボンレイヤーを排除する。

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687gのFACT 12rフレームは、2,377ワットで10万回以上のサイクル(170mmクランクを100rpmで回した場合に相当)に耐える耐久性を実証しており、これは業界標準を大きく上回る数値である。

これは空力性能の進化とも密接に関連している。エアロダイナミクスの改善はチューブ断面の変更を伴うが、Flow State Designによって構造効率を高めることで、空力的に最適な形状を採用しながらも重量増を回避している。

SL8のコンプライアンスと剛性の目標値をそのまま維持しつつ、空力性能を上乗せするという離れ業は、この設計哲学なしには実現し得なかった。

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意のままに操れるバイク

ライドクオリティがTime to Finishに影響する

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速さとは、単なるピーク数値ではない。

重要なのはあらゆる地形で、レースの重要な局面で、スピードとパワーを維持できるかどうかだ。快適性、コントロール性、路面管理能力は、ライダーがどれだけ長くパワーを持続できるか、どれだけ正確にスピードを保てるかを決定する。

疲労はポジションを変え、ポジションの変化はCdAを悪化させる。コントロール性は自信に影響し、自信は判断に影響する。これらはシステム効果であり、独立した機能ではない。ライドクオリティの劣化はTime to Finishの悪化に直結する。

Tarmac SL9では、独自のレイアップ設計によって剛性とコンプライアンスをゾーンごとに最適化している。コーナーでは鋭く正確なハンドリングを実現しながら、路面からの振動を適切に抑制し、高速域でも安定感と自信をもたらす。

各カーボンレイヤーは、剛性や重量の数値を満たすだけでなく、荷重下での挙動を精密にコントロールするために配置されている。

Rider First Engineered

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44cmから61cmまでの全7サイズに対し、そのサイズ固有のパフォーマンス指標に基づいた専用レイアップが採用されている。サイズごとに最適化することで、剛性、コンプライアンス、ハンドリングのすべてにおいて一貫したライドフィールを実現する。

小柄なライダーが小さいサイズに乗ったときに過剛性にならず、大柄なライダーが大きいサイズに乗ったときに剛性不足にならない。身長に関係なく、すべてのライダーが同じ卓越したパフォーマンスを体感できることが、Rider First Engineeredの約束だ。

また、新型Rapide Cockpitはフードc-c幅360mm(12度フレア)と380mm(10度フレア)の2種を展開し、エアロなフードポジションとスプリント・下りの安定性を両立している。ステム長は75mmから120mmまで対応する。

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Made in Racing―実戦が設計を磨く

レースの現場での学び

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空力とライダーデータだけでは、最速のライダーのための最速のバイクは生まれない。スペシャライズドはワールドツアーの実戦を観察し、空力を左右するライダーの振る舞いを分析してきた。

プロダクトマネージャーのアレックス・ジェロームは、レースの勝敗を本当に分ける決定的な瞬間に着目し、それを中心に設計することで世界最速のバイクを追求していると語る。

ツール・ド・フランスのステージから春のモニュメントに至るまで、実在のコース分析とライダーデータが、Tarmacのあらゆるディテールに反映されている。前述のWin Finに加えて、高速域での逃げにおけるライダーポジションの分析も設計にフィードバックされている。

マネキンはレースの重要局面で実際に取られるポジションを、これまで以上に正確に再現できるよう最適化されており、すべての空力設計が想定ではなく実際の走りに基づいて導き出されている。

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ラインナップと価格

S-Worksのみ展開

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Tarmac SL9は、S-Worksのみのラインナップで展開される。

モデル フレーム フォーク ホイール コックピット コンポーネント 価格(税込)
S-Works AXS FACT 12r FACT 12r Rapide CLX III Rapide Cockpit SRAM RED 1,980,000円
S-Works Di2 FACT 12r FACT 12r Rapide CLX III Rapide Cockpit Dura-Ace 1,980,000円
S-Works フレームセット FACT 12r FACT 12r 880,000円
S-Works Team Replica フレームセット FACT 12r FACT 12r 935,000円
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ジオメトリー

Tarmac SL9のジオメトリーは、レースパフォーマンスに最適化されたアグレッシブな設計である。全サイズの主要数値を以下に示す。

サイズ 44 49 52 54 56 58 61
スタック 501mm 514mm 527mm 544mm 565mm 591mm 612mm
リーチ 366mm 375mm 380mm 384mm 395mm 402mm 408mm
ヘッドチューブ長 99.6mm 108.8mm 119.8mm 139.7mm 157.2mm 184.3mm 204.4mm
ヘッドチューブ角 70.5° 71.75° 72.5° 72.5° 73.5° 73.5° 74°
BB高さ 266mm 266mm 266mm 268mm 268mm 268mm 268mm
BBドロップ 74mm 74mm 74mm 72mm 72mm 72mm 72mm
トレイル 71mm 63mm 58mm 58mm 55mm 55mm 52mm
フォーク長 369mm 369mm 369mm 369mm 369mm 369mm 369mm
フォークレイク 47mm 47mm 47mm 47mm 44mm 44mm 44mm
チェーンステー長 410mm 410mm 410mm 410mm 410mm 410mm 410mm
ホイールベース 970mm 973mm 975mm 986mm 991mm 1005mm 1012mm
シートチューブ角 75.5° 75.5° 74° 74° 73.5° 73.5° 73°

全サイズ共通のチェーンステー長410mmはリアの反応性と安定性のバランスを示し、サイズ56以上でフォークレイクが47mmから44mmに切り替わるのは大きなサイズでのハンドリング最適化のためだ。

BBドロップも54以上で74mmから72mmに変化しており、大きなサイズで安定性を確保しつつ低重心を維持する設計意図が読み取れる。

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エアロか、軽さかという問い自体の終焉

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Tarmac SL9が提示するのは、エアロバイクでもクライミングバイクでもない、Time to Finishが最短のレースバイクという新しいカテゴリーだ。

スピードの方程式はライダーのタイプを選ばない。結果だけを重視する。だからこそSL9は、総合系ライダー、スプリンター、逃げのスペシャリストに対して単一のプラットフォームとして提供される。

フレームは変わらない。

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コンフィギュレーションが変わるだけである。

この発想は、かつてVengeとTarmacの2ラインを使い分けていたスペシャライズドが、SL7世代でVengeを統合して以来の流れを完成形へと導くものだ。個別性能の追求から総合性能の追求へ。

ラボの数値からフィニッシュラインのタイムへ。SL9が体現するのは、バイク開発のパラダイムシフトそのものである。

もちろん、このシミュレーションの前提条件には注意が必要である。すべてのTime to Finishデータはスペシャライズドの自社風洞で、同社のテストプロトコルに基づいて取得されている。独立した第三者検証がなされているわけではない。

しかし、テスト手法の透明性(ムービング・レッグ・マネキン、実走データに基づくポジション設定、実測風速分布の使用)は、少なくとも従来の風洞比較よりも現実に近い評価軸を提供しているといえる。

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まとめ:SPECIALIZED史上最速のロードバイク

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Tarmac SL9は、速さの定義そのものを書き換えようとするバイクだ。

687gのフレーム、4ワットの空力改善、6.5kgの完成車重量。これらは結果であって目的ではない。目的はただひとつ、ゴールまでのタイムを最短にすることである。速さを求めるライダーならば、「Time to Finish」という指標の説得力は実感を伴って理解できるだろう。

風洞でのCdA値が最小のバイクが必ずしもレースで最速ではないことは、実走でのCdA計測やパワーデータの分析を通じて多くのライダーが経験的に知っていることでもある。

Time to Finishという指標が自分の走りにどのような意味を持つか、ぜひ体感してほしい。

【比較】TARMAC SL9は買い?SL8と何が違うのか、進化の全貌まとめ
Tarmac SL9はSL8の正統進化ではなく、設計思想が根本から書き換えられました。空力、重量、剛性のバランスから「ゴールまでのタイム短縮」という単一指標へ。SL8との違いや、なぜフレームがわずかに重くなったのか、その進化の全貌を徹底解説します。買い替えを検討中の方は必見です。
TARMAC SL9のコラムが曲がってる?空力改善の執念、オフセットステアラーとは
ロードバイクの空力を左右するヘッドチューブの薄型化。Tarmac SL9に採用された「Offset Steerer」は、フォークコラムを非対称にすることでホース経路を最適化し、4mmの薄型化と前面投影面積10%削減を実現しました。その革新的な設計判断に迫ります。
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