【比較】TARMAC SL9は買い?SL8と何が違うのか、進化の全貌まとめ

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SL8とSL9は見分けがつかないが・・・。

Tarmac SL9は、SL8の正統進化ではない。

設計思想そのものが書き換えられた。

SL8が「Vengeと同等のエアロ性能を、6.8kgの完成車で、SL7以上の剛性で実現する」というスピードの方程式に基づいていたのに対し、SL9はTime to Finish(ゴールまでのタイム)という単一の指標だけを追求している。

風洞のCdA値が最小であること、スケールの上で最も軽いことは、いずれもゴールである必要はない。ただひとつ掲げられたゴールは、実際のレースコースでライダーが最も短い時間でフィニッシュラインを越えられるかどうかだけだ。

SL8オーナーやSL8購入検討者が最も知りたいであろう問いに正面から向き合っていく。SL9は何が変わり、何が変わらなかったのか。

はたして、その変化は乗り換える価値に値するのものなのだろうか。

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設計思想:スピードの方程式

SL8のスピードの方程式とは何だったのか

Tarmac SL8発表時のデーター。SL8を基準とした速度差

SL8の開発を導いたのは、3つの性能目標を掛け合わせた方程式であった。

エアロ性能はVenge以上、完成車重量は6.8kg、剛性はSL7以上。スペシャライズドはVenge、Aethos、SL7の3つの既存プラットフォームを研究し、そのいずれの延長線上にも答えがないと判断した結果、まったく新しい設計を一から構築した。

この方程式は本質的に、3つの独立した性能指標のバランスを取るものであった。SL9ではこの発想が根本的に変わっている。3つの指標を個別に最適化してバランスを取るだけではない。

ライダーのパワー、体重、CdA、バイクの機械効率、転がり抵抗、システム重量、システムCdA、そしてルートの重力加速度、地上速度、空気密度、風速、風向角、路面の粗さというすべての変数を統合し、実在のレースコースにおける走行時間をシミュレーションする。

出力は単一かつ明確で、ゴールまでのタイムだけが答えである。F1がラップタイムのためにすべてを最適化するように、SL9はTime to Finishのためにすべてを最適化する。

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ライダーにとっての意味

SL8の方程式では、たとえばエアロ性能がVengeと同等であることが確認できればその項目は達成とみなされた。

しかしTime to Finishの枠組みでは、エアロ改善が重量増を伴う場合、その変更が特定のコースプロファイルでタイムを短縮するかどうかが検証される。タイムを短縮しないなら、たとえCdAが改善していてもその設計変更は却下される。

逆に、CdAがわずかに悪化しても重量削減が大きければ、登坂を含むコースでは採用されうる。すべての設計判断が、実際のゴールタイムという単一の基準で評価されるようになった点が、SL8からの最大の思想的転換である。

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687g、フレーム重量と軽量化の意味

2g増

重量は2g増加した

2g増加には、深い意味がある。

S-Works Tarmac SL8のFACT 12rフレームはサイズ56で685g(ハードウェア除く・塗装済みRAWフレーム基準)。SL9は同条件で687gと公称されており、フレーム単体では2g増加している。

軽量化が進化の象徴とされるロードバイク業界において、新型が旧型より重いという事実は説明を要する。

答えは、空力形状の刷新にある。SL9ではすべてのチューブ形状がゼロから再設計され、空力性能が4ワット改善された。新しいSpeed Sniffer、Flow Fork、Dropped Down Tube、Win Fin、S-Works Rapide Aero Postといった空力要素は、チューブ断面の変更を必然的に伴う。

一般にエアロ形状への変更はカーボン使用量の増加を招くが、SL9ではFlow State Designの導入によってこの増加を最小限に抑え、わずか2gの増加で4ワットの空力改善を獲得した。

SL8ではFlow State Designという名称は公式に使用されていない。この設計哲学はAethos 2で初めて確立され、Crux 5を経てSL9に本格投入されたものだ。

素材を追加するのではなく、チューブ形状そのものが荷重を効率的に支えるよう最適化することで、不要なカーボンレイヤーを排除する。SL8はAethos由来の丸断面チューブ思想を取り入れていたが、SL9ではこの概念がさらに精緻化され、新しい空力形状と軽量性の両立を可能にしている。

完成車重量

完成車重量の比較は、構成パーツの違いに注意が必要だ。

項目 SL8 S-Works Di2 SL9 S-Works Di2
フレーム重量(サイズ56) 685g 687g +2g
完成車重量(メーカー公称) 6.62kg 6.5kg -120g
完成車重量(Rapide構成) 6.81kg 6.80kg -10g

フレームが2g増えたにもかかわらず完成車が軽くなっているのは、ホイール(Rapide CLX II→CLX III)、コックピット(Rapide Cockpit新型)、シートポスト(S-Works Rapide Aero Post)といった周辺パーツの進化による。

SL9ではさらにAlpinistコックピット+ホイール構成で6.1kgまで到達可能とされており、UCIの6.8kg最低重量規定を大きく下回る領域に入っている。

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空力性能:4ワットの内訳

SL8とSL9の空力アプローチ

SL8の空力設計は「リーディングエッジに空力を集中させる」という思想に基づいていた。

空気が層流である先端部にのみ空力形状を適用し、ダウンチューブやシートチューブなど気流が乱れた部位にはAethos由来の丸断面を採用して、軽量化とコンプライアンスを優先した。これは合理的な選択であったが、後方のチューブ形状における空力改善の余地を意図的に残した設計でもあった。

SL9ではこの”余白”を解消している。

すべてのチューブ形状を再設計し、先端部だけでなくフレーム全体にわたる空力最適化を実施した。ただし重要なのは、エアロ系ロードバイクのようなディープなエアロフォイル断面を全面的に採用したわけではないことである。

実走環境の約86%がおよそ±7度のヨー角範囲内で発生するという実測データに基づき、低ヨー角での前面投影面積削減とライダー・バイク間の気流最適化に注力している。

Speed Snifferの変化

SL8のSpeed Snifferは、ステアラーチューブを後方へ移動させることでヘッドチューブ先端を鋭く細くした画期的な設計であった。SL9ではこのSpeed Snifferがさらに4mm薄型化され、前面投影面積が10%削減されている。

この薄型化を可能にしたのが、SL9で新たに導入されたOffset Steererだ。

TARMAC SL9のコラムが曲がってる?空力改善の執念、オフセットステアラーとは
ロードバイクの空力を左右するヘッドチューブの薄型化。Tarmac SL9に採用された「Offset Steerer」は、フォークコラムを非対称にすることでホース経路を最適化し、4mmの薄型化と前面投影面積10%削減を実現しました。その革新的な設計判断に迫ります。

従来のSL8では、内装ケーブル(リアブレーキホース)がヘッドチューブ内部を通過するため、その収納スペースがヘッドチューブの断面を制約していた。

SL9のOffset Steererはフォークコラムを左側に曲げることでリアブレーキケーブルをステアラー右側へ再配置し、ヘッドチューブ内部のスペースを空力形状のために解放した。

ケーブルルーティングの物理的制約を構造設計で解決するという発想は、SL9の設計における最も独創的な要素のひとつである。

新たに追加された空力要素

SL8には存在せず、SL9で新たに導入された空力要素は以下の4つだ。

空力要素 SL8 SL9 概要
Offset Steerer なし 新設計(米国特許出願中) フォークコラムを曲げてリアブレーキケーブルを右側へ再配置
Flow Fork なし 新設計 フロントホイールからの高エネルギー気流をフォークブレード沿いに導く
Dropped Down Tube なし 新設計 ダウンチューブ上の気流を整えドラッグを低減
Win Fin なし 新設計 1本ボトル携行時のリアトライアングル空力を最適化、0.5W削減

Win Finはまさにプロならではの設計だ。ただし、アマチュアにはあまりメリットがない可能性がある。

スペシャライズドがワールドツアーの実戦を分析した結果、多くの逃げにおいてライダーはボトルを1本しか携行しないという事実を発見した。

従来の設計が想定していた2本ボトル+2ケージの構成とは根本的に異なる気流が生じるため、シートチューブとリアトライアングル周辺を一から設計し直した。この「実戦の観察から設計を逆算する」Made in Racingの開発姿勢は、SL8時代にはなかった新しいアプローチである。

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風洞テスト手法の進化

ムービング・レッグ・マネキン

SL9では第6世代ムービング・レッグ・マネキン(MLM)導入された。

SL8の開発時にもムービング・レッグ・マネキンが使用されていたが、2023年の公式ホワイトペーパーでは世代番号が明示されていない。第6世代という表記が公式に確認できるのは2026年のCrux 5資料以降であり、SL8からSL9の間にマネキンシステムが少なくとも1世代以上アップデートされた。

第6世代MLMの最大の特徴は、3つの構成要素の連携にある。

実在のライダーのボディスキャンから製作されたマネキン本体、手に頼らずマネキンを完全に支持するストラット、そしてバイク交換時にボトムブラケットを基準としてマネキン位置をミリ単位で再現するレーザープロジェクターである。

R&D空力エンジニアのリオネロ・バルディナは、わずか5mmのポジションのずれがバイクの交換以上に大きな空気抵抗差を生むことがあると説明している。

SL8のホワイトペーパーでは10,000件の実走ライドから生成したヨー角分布(ワイブル密度関数準拠)を用いてCdAを算出するベンチマーク手法が紹介されていた。SL9ではこれに加え、地上約1mの高さにおける実測風速データに基づく風速分布が導入されている。

SAE規格由来のトラック試験向け3m基準高さではなく、ライダーとバイクが実際に気流と相互作用する高さでの条件設定へと移行した点は、テスト精度の実質的な向上といえる。

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ライドクオリティ、変わったもの変わらなかったもの

剛性とコンプライアンス

これはSL8オーナーにとって最も重要な情報のひとつが剛性だ。

スペシャライズドは、Tarmac SL9がSL8と同一のコンプライアンスと剛性目標を実現していると明言している。新しい空力プロファイルとTime to Finish向上のためのアグレッシブなチューブ形状にもかかわらず、乗り味の基本特性はSL8から変更されていないという。

SL8は、SL7比で重量剛性比33%向上、コンプライアンス6%向上を達成したモデルであった。SL9はこのSL8の値をベンチマークとして維持しながら、空力性能だけを上乗せしている。

つまり、SL8の乗り味が好みだったライダーにとって、SL9は空力性能と軽微な重量差以外はほぼ同じフィーリングで乗れるはずである。

Flow State Designの構造設計

SL8は500枚を超えるカーボンプライを用い、53回のレイアップ改訂を経て目標剛性を達成した。FEAによるply-by-ply解析と、フレーム・フォーク・コックピット・シートポストを一体で最適化するシステムアプローチが採用されていた。

SL9ではこの手法にFlow State Designが加わる。

エンジニアがフレームの荷重下での挙動を研究する中で発見した「フレームは単にしなるのではなく、あたかも互いにコミュニケーションを取るように応力を伝えている」という変形パターンを、データとしてスーパーコンピューターに入力し、荷重を効率的に支える最適なチューブ形状を導出する。

素材を追加して強度を確保するのではなく、形状最適化で不要なカーボンレイヤーを排除するこのアプローチにより、SL9のFACT 12rフレームは687gで2,377ワット・10万回サイクル(170mmクランク・100rpm相当)の耐久性を実証している。

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ジオメトリーの変化

SL8からSL9でジオメトリーは変更された?

サイズ展開は両モデルとも44/49/52/54/56/58/61の7サイズで変更なしとされているが、ヘッドチューブ長が数ミリ前後の微修正が行われている。Stackが変わっていないことから、ヘッド周辺のインテグレーションのわずかな変更によるものだ。

サイズ SL9 SL8 差(SL9 − SL8)
44 99.6 99 +0.6
49 108.8 109 -0.2
52 119.8 120 -0.2
54 139.7 137 +2.7
56 157.2 157 +0.2
58 184.3 184 +0.3

サイズ54において、ヘッド角が0.5度寝て(73°→72.5°)、フォークオフセット(Rake)が3mm伸びて(44mm→47mm)いる。これに伴い、フロントセンターとホイールベースがそれぞれ8mm長くなっており、サイズ54のみハンドリング特性や直進安定性に明確なアップデートが入っている。

SL8はSL7からジオメトリーをほぼ踏襲し、唯一の変更点はRapideコックピットとヘッドチューブの相互作用によるスタック10mmの引き上げであった。

SL8のフィッティングがそのままSL9に引き継げることを意味しており、ポジションの再調整なく移行できる点は買い替え検討者にとって大きな安心材料である。Rider First Engineeredも継続されており、全サイズでサイズ固有の専用レイアップが採用されている。

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Time to Finishの実証、SL8との差

実際のレースコースの違い

スペシャライズドが公開したシミュレーションデータは、SL8からSL9への進化幅を具体的な秒数で示している。以下は複数のワールドツアーコースにおけるTime to Finish比較だ(すべて56cmサイズ、同一サドル高、コックピット下スペーサーなし)。

レースシナリオ SL9基準タイム SL8との差
100kmグランツールプロファイル 2時間43分44秒 SL8は+28秒
TdF第19ステージ アルプ・デュエズ 38分18秒 SL8は+5.5秒
TdF第20ステージ ミゾアン 54分27秒 SL8は+8.6秒
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ 最終34km 52分00秒 SL8は+10.8秒
2026年世界選手権モントリオール 周回 19分17秒 SL8は+3.7秒
TdFF第7ステージ 最終44km 1時間53分58秒 SL8は+20.0秒
TdFF第7ステージ ヴァントゥー 57分44秒 SL8は+8.8秒

コースプロファイルによって差は変動するが、概ね30分あたり3〜5秒、1時間あたり6〜10秒の範囲でSL9が優位になる。

2024年TdFFの最終ステージ(デミ・ヴォレリングの80km逃げ)をシミュレーションした結果では、SL9は14秒の短縮を示した。わずか4秒差で決したツールにおいて、この14秒は総合優勝を逃すか10秒差で制するかの分かれ目であったとスペシャライズドは主張している。

ここで留意すべきは、これらがすべてスペシャライズドの自社風洞データに基づく自社シミュレーションであるという点だ。

SL8については、ドイツTOUR誌のGST風洞テストで45km/hにおける空気抵抗が209W(SL7の210Wとほぼ同等)と報告されており、メーカー主張のエアロゲインが第三者検証ではかなり小さくなる傾向が確認されている。

SL9についても今後の第三者風洞テストの結果を待ちたい。

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ラインナップと価格の変化

SL8からSL9の価格変化

SL8の発売は2023年8月18日、SL9は2026年7月1日だ。約3年の間に為替変動や原材料コストの影響もあるが、直接的な価格比較は購入判断の重要な要素になっている。

グレード SL8(2023年発売時) SL9(2026年7月)
S-Works Dura-Ace Di2 完成車 1,793,000円 1,980,000円 +187,000円
S-Works SRAM RED AXS 完成車 1,738,000円 1,980,000円 +242,000円
S-Works フレームセット 737,000円(後に792,000円へ改定) 880,000円 +88,000〜143,000円

S-Works完成車は約10〜14%の価格上昇。フレームセットは最大19%の上昇となっている。

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SL8とSL9の比較

主要スペック

以下に、SL8からSL9への変化を一覧で整理した。

項目 Tarmac SL8 Tarmac SL9
設計指標 スピードの方程式(エアロ×重量×剛性の3軸バランス) Time to Finish(ゴールまでのタイム短縮のみ)
フレーム素材 FACT 12r FACT 12r
フレーム重量(サイズ56) 685g 687g
完成車重量(S-Works Di2) 6.62kg 6.5kg
空力改善 SL7比40km走行16.6秒短縮 SL8比45km/hで4W削減
ヘッドチューブ Speed Sniffer Speed Sniffer(4mm薄型化、投影面積10%減)
ケーブルルーティング ヘッドセット内通し完全内装 Offset Steerer(リアブレーキをステアラー右側へ再配置)
フォーク FACT 12r(358g) FACT 12r Flow Fork
ダウンチューブ Aethos由来の丸断面 Dropped Down Tube(新設計空力断面)
リアトライアングル空力 ドロップドシートステー Win Fin(1本ボトル最適化、0.5W削減)
シートポスト 専用D字断面エアロ(168g) S-Works Rapide Aero Post(新設計)
構造設計 Ply-by-ply FEA、システム最適化 Flow State Design+Ply-by-ply FEA
耐久性 非公表 2,377W×10万回サイクル
剛性・コンプライアンス SL7比剛性重量比33%向上、コンプライアンス6%向上 SL8と同一目標を維持
風洞テスト MLM(世代番号非公表) 第6世代MLM+ストラット+レーザープロジェクター
ヨー角分布基準 Weibull密度関数(実走10,000ライド) 地上1m実測風速データ(86%が±7°以内)
サイズ展開 44〜61cm(7サイズ) 44〜61cm(7サイズ)
ジオメトリー SL7踏襲(スタック+10mm) SL8とほぼ同一
BB規格 BSAねじ切り68mm BSAねじ切り68mm
タイヤクリアランス 32mm(内幅21mmリム) 32mm
S-Works Di2 価格(税込) 1,793,000円 1,980,000円
フレームセット価格(税込) 737,000〜792,000円 880,000円
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SL9に買い替えるべき?

4ワットと6.7秒は、買い替えの根拠になりうるのか?

数字だけを見れば、SL8からSL9への進化は劇的とはいいがたい。フレーム重量は2g増加し、空力は4ワット改善、100kmグランツールプロファイルでのタイム差は28秒(うちSL8からSL9の純粋な差は約6〜10秒相当)である。S-Works Di2完成車の価格差は187,000円だ。

しかし、この数字の評価はライダーの立場によって大きく異なる。

ワールドツアーレベルでは、4秒差で総合優勝が決まるレースにおいて14秒の短縮は決定的な意味を持つ。一方、アマチュアレーサーにとって、たとえば富士ヒルクライムでの約6.7秒差(60分想定時)は、レース結果を左右する可能性は低い。

買い替えの判断基準として、以下の観点を提示したい。

SL8から移行する最大のメリットは空力4ワットの改善であり、これは平坦区間や高速域での逃げが多いレースで効いてくる。ジオメトリーがほぼ同一のため、ポジションの再調整が不要である点も利点だ。

一方、剛性・コンプライアンスの目標値がSL8と同一であるということは、乗り味の本質的な変化を求めるライダーにとっては期待外れの可能性がある。むしろSL9の真価は、SL8オーナーの買い替え先としてよりも、他社バイクからの乗り換え先として際立つ。

100kmグランツールプロファイルでCervelo S5に対して+18秒、Colnago Y1RSに対して+34秒、Factor ONEに対して+63秒というTime to Finishの差は、同一フレームワーク内での比較としてはかなり大きい。

他社のエアロバイクやオールラウンドバイクからの乗り換えを検討しているライダーにとっては、SL9は極めて魅力的な選択肢になりうる。

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