2022年8月8日に業界初の認定中古車ストアである「スペシャライズドCPO」が西新宿にオープンした。CERTIFIED PRE-OWNED(CPO:認定中古車)はスペシャライズドが認定した中古車であり、定価よりも安く購入できるという。
クルマの認定中古車といえば、どのメーカーも展開しており一般的な認知度も高い。筆者自身のクルマもホンダの認定中古車であり馴染み深い。クルマの場合はディーラーとの付き合いなどもあり、認定中古車のメリットも十分にある。
ただ、自転車(ロードバイク)の認定中古車となると、クルマの認定中古車と同じように考えてもよいのだろうか。そして、認定中古車のメリットとデメリットは何なのか。今回の記事は、スペシャライズドが始めた業界初の認定中古車について探った。
フツーの中古車と何が違うのか
スペシャライズドの「認定中古車」は以下の点がフツーの中古車と異なっているという。
- 販売時より1年間の保証
- 20項目以上のメンテナンス・プログラムをクリア
- 完璧に整備された状態
- 規定のクオリティーに達した状態の商品だけ販売
- 全国のスペシャライズドストア各店でメンテナンス
スペシャライズドの認定中古車のメリットは3つある。
- 保証が効く
- 品質が高い
- アフターメンテナンスが全国で受けられる
他の中古車と異なるのは1年間のメーカー保証だ。中古車としてヤフオクや買い取り業者系からバイクを買った場合、保証されない場合が多い。また、業者によってバイクの状態や整備状況がマチマチで、アタリ、ハズレがある。
クルマの認定中古車と同じく、単純に保証が充実しているのは魅力だ。特にリコール対応など迅速に行えることは、長く安全に乗り続けることを考えると以外と重要になってくる。また、「全国のスペシャライズドストア各店でメンテナンス」という1文にもあるとおり、正規店で新車を購入する場合と同等のサービスや保証を受けられると考えてもよいようだ。
認定中古車はスペシャライズドが実施する研修を受講修了したメカニックが整備する。知識や経験が豊富な有資格者が、商品ごとに指定されたメンテナンス項目の検査と整備を行い、規定に達した状態の商品だけ販売されるという。
厳しい審査に通ったバイクだけが認定され、販売前には整備や修理が行われるため、中古車であっても状態のよいバイクを購入できることがメリットだ。
認定中古車と一般中古車の特徴を比較すると、以下のようになる。
認定中古車 | 一般中古車 | |
---|---|---|
品質 | 一律に高い | バイクによってさまざま |
保証 | 充実している | あるが、独自で保証を設けている場合が多い |
車両価格 | 高い | 安い |
車両数 | 少ない | 多い |
デメリット
スペシャライズドの認定中古車を調べていると、いくつかデメリットもあった。まず、クルマの認定中古車と同様に中古車としてはやや高め(といっても新品よりはだいぶ安い)価格設定だ。
メーカー保証や認定中古車というプラスアルファの付加価値が付帯していることを考えると妥当だと思える。しかし、一般的な中古車販売やオークション系で売られている価格帯と比べると価格は高い。
また、スペシャライズドの保証はフレームが対象だ。コンポーネント、MTBのサスペンションについては対象外だ。そして、初期不良の場合を除き別途工賃が必要になる。シマノやスラムといったコンポーネントに関しては、スペシャライズドが保証しない。
当然と言えば当然だが、コンポーネントの保証に関してもスペシャライズド各店が代理で行ってくれるのか、それとも購入したユーザー自身で行う必要があるのか確認しておく必要があるだろう。
この点は、クルマのように「ディーラー丸投げ」というラクができないかもしれない。クルマはよほど好きでない限り、タイヤ以外はすべて純正品で固められ買ったときのままだ。ロードバイクは趣味趣向が千差万別であるため、フレーム以外は別メーカーである場合が多い。
ショップを通じて購入した場合は、逆に「ディーラー丸投げ」的なことができる場合もある。スペシャライズドの認定中古車がどこまで「ディーラー丸投げ」のような対応を受け入れてくれるかは、実際に確認しておく必要がある。
そして、「認定中古車」はモデル、種類、サイズのバリエーションが少ない。スペシャライズドは人気のブランドで流通量もダントツに多いが、自分に合ったバイクが認定中古車として出てくる確率はそれほど高くないだろう。
したがって、認定中古車といえど、よほど適した個体がない限りは購入するという決断に至らない場合のほうが多い。そうなると、やはり新品で自分が求めているバイクを確実に手に入れるほうが(値段は高いが)確実と言える。
中古業者との差別化
自転車の買い取りといえば、ビチアモーレ、サイパラ、リサマイ、バレーワークスなど複数の業者が存在している。言ってしまえば、これらの業者から買ったほうが安い。ヤフオクやメルカリやSNSのやり取りで買ったほうがもっと安いだろう。
この「安い」の裏には、イチかバチかの掛けの要素も含まれている。もしかしたら、破損したカーボンフレームの修理歴を隠し、精巧にリペアされたロードバイクかもしれない。はたまた、盗難車であり何かの事件に巻き込まれる可能性も捨てきれない。
いわば、「安さ」と引き換えに「リスク」をメーカーや買い取り業者が引き受けた結果が価格に反映されていることになる。ということを考えると、「スペシャライズドの認定中古車」という看板の後ろ盾で、ヘタなバイクが「認定中古車」として販売される可能性は低い。
安さをとるか、安心をとるか、ユーザーの采配がわかれるところだ。
まとめ:自転車の高騰が追い風になるか
昨今の自転車機材は価格の高騰化が著しい。
それは、物価の上昇や海外の賃金上昇、世界情勢も相まって上昇しなければ立ち行かなくなる状況になってきているのだろう。ただ、日本人の所得は上昇するどころか年々減少していく一方だ。反比例するように、自転車の価格が上がっていくのだからもはや簡単に手が届くような代物でもなくなりつつある。
これから、確実に中古車市場は盛り上がっていくことは間違いない。そして、玉石混交の中古車市場であるからこそ、「認定中古車」という付加価値を持つ今回のスペシャライズドの事業拡大は、トレックやジャイアントといった自社ストアを持つブランドも追従してくる可能性がある。
メーカーの新規販売が落ち込めば、利益拡大を図るために直販に舵を切っていくかもしれない。そして、自社のストアで新車を買い換えるユーザーに対して、バイクの買い取りを行い、認定中古車として販売する循環システムを構築するのは合理的と言える。
業界初の認定中古車の行末は、輪界全体が注目しているはずだ。
スペシャライズドの認定中古車の一覧はWEBから確認することができる。RAPIDEとかわりと安いんだよなw