タイムトライアルやトライアスロンの機材は、一分一秒を削るために多額の資金が必要になる場合が多い。特にフレームやホイールといった機材は、新車の自動車が買えるような価格展開が普通だ。そのような価格帯で販売されていたとしても、この種目の競技者は全く驚かないだろう。
そのような機材情勢と逆行するように、今回紹介するFLO CYCLING社は低価格で他社に負けないホイールを開発している。カーボンディスククリンチャーの価格は$599だ。通常、3-4倍もの値段が着いてもおかしくない機材である。
そのあまり知られていない、FLO CYCLINGについて詳しく見て行く。ラインナップはディスクホイールから90mmディープまで幅広く展開しているが、はたして安かろう悪かろうなのか。
FLO CYCLINGとは
FLO CYCLING社は2009年に発足したまだ歴史が浅い企業だ。(FLO CYCLING)発足人はわずか二人だった。ただ優秀なエンジニアサイクリストで、高級なホイールに対抗しようと、安価で高性能なホイール開発を始める。
確かに安価なホイールを展開しているが、ただ安価といえどホイールの研究開発は他のホイールメーカーに劣ることはない。風洞実験室で得られた空力データーと共に、最適なリム形状と、リムハイトで作られたホイールは他社のホイールと比べてもエアロダイナミクス的に劣ってはいない。
FLO CYCLINGの研究開発
FLO CYCLINGは風洞実験室で計算流体力学(CFD)を使用し、いくつかのフェアリング形状を設計しテストを行った。最終的に、プロトタイプの車輪を開発するまでに至った。計算流体力学の際、CD-adapco社のスターCCM+数値流体力学ソフトウェアを用いて計算されている。
そのソフトウェア上でまず、仮想風洞環境が作成し、3次元CADで様々なリム形状をテストした。風洞実験室は実験時間に比例して、多額の費用がかかる。そのため仮想風洞実験室をソフトウェア上に用意した。自転車に受ける風は多岐にわたるため、風速やヨー角を変更し何度もテストを繰り返した。
最終的には、サイクリストが外で実走するというプロセスを経て、ホイールを作り上げている。
FLO CYCLING WHEEL ラインナップ
実際のホイールのテスト結果は上記の通りだ。やはりディスクが一番エアロダイナミクスに優れており、次いで90mmのディープリムになる。
FLO DISK WHEEL
FLOでひときわ目を引くDISK WHEEL。価格は$599と非常に安い。安すぎる。重量もそこそこ良い。HEDのディスクのように、中心部は凹んでいる。リムブレーキ面から緩やかに膨らみ、ハブにかけて絞られた形状だ。
- 重量:1260g
- リム幅:24.4mm
- 最大幅:27.2mm
- タイプ:クリンチャー
- 素材:カーボン
なお通常のスポーク組ホイールにカーボンファイバーをかぶせた構造のようだ。カラーは18展開で、オーダーの際に指定できる。
FLO 90
90mmのリム幅も用意されている。価格は$474と非常に安い。安すぎる。セット販売はなく、全てフロントやリアを別売している。
どうやら、リム幅24.4mmと最大幅27.2がCFD解析で産出されたエアロダイナミクスに特化した形状のようだ。カラーは18展開である。
FLO 60
60mmのリム幅も用意されている。価格は$474と非常に安い。安すぎる。開発と製造はことなるがおそらく中国生産なのだろう。
こちらもどうやら、リム幅24.4mmと最大幅27.2がCFD解析で産出されたエアロダイナミクスに特化した形状を踏襲。カラーは18展開。
FLOはZippを意識か
どうやら、FLOはzippを意識している様子だ。こちらのリム断面の比較はzippとされている。断面図を確認するとフルカーボンクリンチャーではないようだ。コスミックカーボンやコスミック40と同様に外周はアルミになっている。
その分外周の重量は重くなるが、タイムトライアルは重量よりもエアロダイナミクスなので気にすることはないかもしれない。
どうせコスミックカーボンと同じ構造なら安くてワイドなリムのFLOに惹かれてしまう。
なお、ハブは普通のタイプだ。Chosenのハブに似ているがベアリングを日本のEZOを、使っているところからもしかしたらnovatecかもしれない。
まとめ: FLO CYCLINGは現在予約待ち
DISKと90mmの構成がこちらだ。これで11万のセットである。海外のトライアスリート雑誌で紹介されてから人気が出てきているようだ。
今年販売を拡大しているが、どうやら雑誌に紹介されて以来品切れが続いている。したがって現在は予約待ちになっている。前ディープ、後ろディスク(しかもクリンチャー!)のセットで11万とは、破滅的に安い。
自社生産、直販をするとこれくらいの値段でも利益が出るのだろう。代理店、ショップ、問屋といろいろはさんだ結果が自転車のありえない金額なのかもしれない。私はTTバイク用に購入を考えているが、やはり使ってみないことにはわからない。
風洞実験から、自社開発まで幅広く手掛けるFLO CYCLINGの機材は安かろう悪かろうではないようだ。実際に使ってみないとわからないところではあるが、「失敗してもいいや」と思える前後セット11万の廉価版高性能ホイールなのである。
ちなみに、こちらの創業者二人は似ているが、双子ではない。
河出書房新社
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