シマノにグリスの使い分けを聞いてみた。自転車で使う場所、使わない場所

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ITさん
ITさん

わたくし、こんにちまで、ところかまわず、ねじ、というねじに、ぐりすを、とふして、いきてまいりました。

これまでありとあらゆる全ボルトに対して、何も考えずにグリスを塗布してきたのだが、どうやらそれは間違いだったようだ。間違いだと気づいたきっかけは、PINARELLOのマニュアルとHOZANのメカニカルアドバイス「危険なトルク管理」の情報だった。

まず、ホーザンのメカニカルアドバイスには、以下の注意書きあった。

  • シマノ取説はグリース塗布について”必要なところにのみ指示”がある。
  • カンパニョーロやシマノがネジ部にグリースを塗布することを禁止。
  • 締め付けトルク値は新品の状態で初めて締め付ける状態の数値。

そして、PINARELLOのマニュアルにも以下のような記述があった。

  • 今までは主にグリースを塗布する方法がとられてきました。
  • 現在では異音を軽減する目的にのみ使用します。
  • 自転車用に用いるネジには低強度で取外し可能な「ロックタイト222」

ITさん
ITさん

ぐ、グリスをぬらないだ、、と!?、そ、、、そんなはずはないっ!!

という気持ちを抑えきれなかったため、自転車パーツの大本営シマノのお客様サービスセンターに直接確認しグリスの使用に関する結果をまとめた。

ITさん
ITさん

電凸

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塗る場所

グリスを塗る箇所は、マニュアルでグリス塗布の記載がある箇所のみ。以下シマノ公式「マニュアル&技術資料」でグリス塗布の記載があるパーツの一例。

  • BBの左右アダプター
  • 右クランクアームユニット軸部の幅広部
  • ペダルネジ

↑の解説のように「右クランクアームユニット軸部の幅広部」だけグリスが必要だ。シャフトやアームとBBが触れる部分にはグリスが必要と書かれていないため、基本的には塗布の必要はない。

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塗らない場所

グリスを塗らない箇所は、マニュアルでグリス塗布の記載がない部分。以下シマノ公式「マニュアル&技術資料」でグリス塗布の記載がパーツの一例。どちらかというと、「塗りそうで塗らない」や「塗らなくても良かった」部分を掲載した。

  • ブレーキーローターのロックリング
  • スプロケットのロックリング
  • チェーンリングボルト
  • リアディレーラー取付けボルト
  • フロントディレーラー取付けボルト

めちゃくちゃ塗りたくなるものの、塗る指定がない箇所がチェーンリングボルトやロックリングだ。シマノのお客様サービスセンターいわく、特に「ブレーキローターのロックリング」はグリスを塗らないようにと強く言われた。

理由は、ブレーキングに伴うローターの熱でグリスが溶け出し最悪の場合制動できなくなるためだという。スプロケットのロックリングはそのような心配はないが、塗る必要はないそうだ。また、フリーボディにも塗る必要はない。

それらをふまえシマノの公式マニュアルを確認すると、意外とグリスを塗らない箇所が非常に多い。ただ、これは基本的な判断基準だ。様々な条件を考慮する場合、もう少し間口が広がる回答を頂頂いた。それは「固着防止」「腐食サビ」「異素材間の固定」についてだ。

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例外とマニュアルに記載がないもの

長年、ずっと気になっていたのが「PD-R9100」のグリスアップ箇所だった。PD-R9100でグリスが必要だと指示されている箇所は以下だ。

  • ペダル奥のボール9個部分。
  • 軸の先端部分。
  • ネジワン部分。

ずっと疑問だったのが、「ボール17個」にグリスの指示が無いため塗らなくても良いと思っていた。しかし、新品のPD-R9100を購入して中身をバラすとシマノプレミアムグリースが塗布してあった。マニュアルに記載が無いが、塗布してある―――。

本件についてもシマノお客様サービスセンターに伺ってみたところ以下のような回答が返ってきた。

ボール17個部分も強い力がかかる部分なのでグリスアップしてください

と。

いやまて、マニュアルに記載がない箇所はグリスアップ不要だ。確かにそう聞いたはずだ。矛盾を感じる気持ちを抑えつつも「マニュアルに書いていないのはなにか理由があるのでしょうか。」と再度聞き返した。

すると、意外な答えが返ってきた。

グリスを塗布する、しないの指定がそもそも記載されていないない時代のマニュアルも多々あります。理由は紙で配布される紙面の文字数掲載量というのもありますし、単純に書かれていない場合もあります。

ということだった。今後は紙からWEB移り、掲載できる文字数の情報量も増えていくためグリスアップに関する指示もより増えていく可能性があるということだった。「マニュアルにかかれていない!けしからん!」と騒ぎ立てる輩はSNSに今でも多いが、様々な理由で記載がされていない場合があるようだ。わからなかったら聞けばよい。

そして、グリスの指定がないものの、以下に紹介する症状や症状を勘案するとグリスを少量塗ったほうがよいと判断できる場合もあるそうだ。

  • サビと腐食を防ぐ
  • 固着を防ぐ
  • 異素材間の固定

「マニュアルに書いていないから絶対塗ってはいけない」というわけではなく、条件や目的によっては塗る場合もあるということだった。

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トルク問題

グリスの使用するしないに関係して気をつける必要があるのがトルク値だ。シマノのマニュアルで締め付けトルク値が指定されているが、「グリスあり」なのか「グリスなし」の場合なのかをよく確認する必要がある。

グリスが不要な箇所であるにも関わらず、ボルトにグリースを塗ってしまうとオーバートルクが原因で破損する場合もある。必ずしもトルクレンチを使用しているから安心とはいえない。ホーザンの「危険なトルク管理」にもある通り、グリスの必要不要をよく確認して組付け作業を行う必要がある。

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おすすめのグリス

B001XE15WO

シマノのおすすめのグリスはあるのか。お客様サービスセンターに確認したところ、なんとシマノのグリスをおすすめされた!(あたりまえや)

基本的にはシマノプレミアムグリスを使用することが推奨されている。

 

しかし、フリーハブのラチェット部分にはフリーハブグリスを使用してくださいということだった。プレミアムグリスは粘度が高くラチェットの開きがまれに負けてしまう(閉じっぱなしになる)ことがあるため粘度が比較的低いフリーハブグリスを使用することが推奨されている。

 

フリーハブを分解する機会がなければ、プレミアムグリスグリス1本持っておけば問題ないだろう。

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まとめ:とりあえずグリス、はNG。

「とりあえず、生」

のように何も考えずに乾杯はビール、という発想の人は要注意だ。ロードバイクの整備も同じで何も理解せずマニュアルも確認せずにグリスを塗ることは避けた方がいい。条件や目的を理解してグリスを塗る塗らないを判断する必要がある。

「お薬は用法・用量を守って正しくお使いください。」 と同じだ。薬のオーバードーズ(過剰摂取)によって命を落とす(機材を破損する)場合もある。

今回、シマノお客様サービスセンターに確認し得られた回答は、「基本的なあたりさわりのない回答」だ。プロショップによってはグリスの使い方、使い分けがあるとおもう。使用する量やグリス種類にもこだわりがあるだろう。

しかし、まずはメーカーが公式に出しているマニュアルをよく読み使用する、使用しないを正しく理解することから始める必要がある。

もしも「とりあえず、グリス」というロードバイク人生を歩んできた私のような方が本記事を読んでいたのなら、一人でもそのような不幸なサイクリストを生み出さないためにも、ぜひこの事実を伝えてあげてほしい。

もちろん、「前から知ってた」という感じで。

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