Lightweight MEILENSTEIN ART登場!究極の回転体は、次世代に。

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2025年7月、ドイツのLightweightは、同社史上「最も先進的なホイールセット」と位置付けるMEILENSTEIN ARTを発表した。4年以上の開発期間を経て、ドイツのフリードリヒスハーフェンで製造されるこのホイールは、なぜ市場に投入されたのか。

それは、ワイドリム、チューブレス、そして優れた空力性能という現代ロードバイクの潮流に、ブランドの核である超高剛性と軽量性を融合させるという戦略的目標を達成するためである。

その実現手段として、特許技術「Alpha Rib Technology」を中核に据え、約120万円という最高級価格帯で、技術的優位性を求める層に新たな価値基準を提示する。今回の記事では、この革新的なホイールシステムの技術的本質と、何が新しく革新的なのか、それがもたらす性能を深く掘り下げていく。

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革新の核心

Lightweight MEILENSTEIN ARTは、単なる既存モデルの改良ではない。

それは、ブランドの伝統的な設計思想を根本から見直し、現代の要求性能に最適化するための体系的な技術革新の結晶である。本章では、その技術的特性を構成要素ごとに分解し、革新の核心に迫る。

主要諸元と設計思想

MEILENSTEIN ARTは、ブランドの代名詞であった「ヒルクライム特化型」というイメージからの脱却を図り、軽量性、空力性能、剛性の三要素を高次元でバランスさせた「オールラウンド・パフォーマンスホイール」として設計されている。

従来のナローなVシェイプリムとは一線を画し、ワイドタイヤに最適化された現代的なリムプロファイルを採用することで、あらゆる走行状況で最高のパフォーマンスを発揮することを目指している。

その設計思想は「空力、構造、制御の完璧な交差点」という言葉に集約されており、技術仕様のすべてがこの思想を具現化するために統合されている。

Lightweight MEILENSTEIN ART 主要技術仕様
項目 仕様
公称重量(前後セット) 1,190 g (±3%)
重量(前/後) 550 g / 640 g
リムハイト 45 mm
リム内幅 / 外幅 22.9 mm / 28.6 mm
タイヤ形式 チューブレスレディ(フックド、シームレスリムベッド)
推奨タイヤサイズ 28 mm以上
スポーク フルカーボン 20本(前後)、R2Rデザイン
ハブシステム Penta-Fly / DT SWISS EXP 180
ブレーキシステム ディスク(センターロック)
最大許容重量 120 kg
国内参考価格(税込) Standard: 約1,150,000円 / Schwarz ED: 約1,230,000円
保証 5年間保証、クラッシュリプレイスメント

Alpha Rib Technology (ART) の構造解析

MEILENSTEIN ARTの最も画期的な技術革新は、特許取得済みの内部構造「Alpha Rib Technology (ART)」である。これは、従来の中空またはフォーム充填構造とは異なり、リム内部にカーボン製の骨格(リブ)を一体成型する技術だ。

このリブ構造は、リムの断面を内部から補強し、コーナリング時などに発生する横方向の負荷に対する剛性を劇的に向上させる。これにより、ライダーはより正確なハンドリングと効率的なパワー伝達を享受できる。

さらに、ARTはスポークとの結合方法も変革した。フルカーボンスポークは、この内部リブ構造に直接接着される。これにより、スポークの繊維が曲げられることなく自然な荷重経路を維持し、素材の引張強度を最大限に引き出す。

結果として、素材疲労を低減し、ライダーと路面とのよりダイレクトな接続感を生み出す。この技術的ブレークスルーにより、前世代のMEILENSTEIN EVOと比較して190gもの軽量化を達成しながら、強度と剛性を向上させるという、相反する要素の両立を可能にした。

空力性能:Drag Reduction Shape (DRS)

MEILENSTEIN ARTは、空力性能においても大きな進化を遂げている。新設計の「Drag Reduction Shape (DRS)」は、リム内幅22.9mm、外幅28.6mmという現代的なワイドプロファイルと、丸みを帯びたブラントノーズ形状を特徴とする。

これは、横風での操縦安定性に課題があった旧来の狭いV字形状プロファイルからの完全な脱却を意味する。 このプロファイルは、数値流体力学(CFD)シミュレーション、実験計画法(DoE)、そして風洞実験を駆使して開発された。

その目的は、単に正面からの空気抵抗を低減するだけでなく、あらゆるヨー角(横風の角度)において安定した空力特性を発揮することにある。

Lightweight社は、このDRSによって前モデルのMEILENSTEIN EVOと比較して空力効率が20%向上したと主張しており、これはブランドにとって大きな前進である。

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 構造的特徴:R2RスポークとPenta-Flyハブ

ホイールシステム全体の剛性と反応性を決定づけるのが、スポークとハブの構造である。MEILENSTEIN ARTは、この点においても独自の設計思想を貫いている。

R2R (Rim-to-Rim) デザイン

Lightweightの伝統的な特徴であるR2Rデザインは、ARTとの相乗効果によって新たな次元に達した。各フルカーボンスポークは、リムの一方からハブを貫通し、もう一方のリムまで一本の連続したラインで結ばれる。

この構造は、テンション調整のためのニップルやネジといった機械的な接合部を排除し、重量を削減すると同時に、経年劣化による緩みや破損の潜在的なリスクを取り除く。

Penta-Fly ハブ

新設計のPenta-Flyハブは、ディスクブレーキの強力な制動力とスプリント時の高トルクに対応するため、オーバーサイズ化されたアルミニウム製フランジを備えている。

この五角形(ペンタゴン)形状のフランジは、横剛性とねじり剛性を高め、パワー伝達とブレーキング制御を向上させる。ハブボディ中央部は空気抵抗を低減するために小型化されている。

内部機構には、高い信頼性とメンテナンス性で定評のあるDT Swiss EXP 180を採用しており、プロレベルの性能と実用性を両立している。

素材と製造プロセス

MEILENSTEIN ARTの卓越した性能は、先進的な素材技術と精密な製造プロセスによって支えられている。

LCC (Lightweight Custom Composite)

ホイール1本あたり500m以上のカーボンファイバーと70枚以上の精密にカットされたカーボンプライを使用する、独自の積層技術である。各層は、剛性、反応性、長期耐久性のバランスを最適化するように精密に設計されており、効率と乗り心地を向上させる。

RCT (Reusable Core Technology)

ARTの複雑な内部リブ構造を含むリム形状を成形するために使用される内部コア(型)は、硬化後に抽出され、再利用される。このサステナブルな製造プロセスは、技術的な精度を維持しながら廃棄物を削減し、環境負荷を低減する。

フィニッシュ

外観は、従来の織り目が見えるカーボン(ウィーブンカーボン)から、単一方向性(UD)カーボンの滑らかなマット仕上げへと変更された。これは、単なるデザインの変更ではなく、内部の精密な積層プロセスを反映した、現代的な美学の表現である。

このホイールの設計は、独立した特徴の集合体ではなく、深く統合されたシステムである。

市場はより広く、より空力的なホイールを求めていたが、Lightweightの旧来の設計では、単に幅を広げるだけでは重量と剛性の面で大きな犠牲を伴った。この構造的課題を解決したのがARTである。

ARTの内部支持構造があったからこそ、現代的なDRSプロファイルを、重量を過度に増加させることなく実現できた。そして、ARTがあったからこそ、伝統のR2Rスポークをより強固な内部構造に結合させ、新しい形状でも伝説的な剛性を維持することができた。

したがって、ARTは数ある特徴の一つではなく、Lightweightが設計思想を転換させ、軽量性、剛性、空力性能を同時に達成することを可能にした、まさに基盤技術なのである。

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剛性感と反応性

MEILENSTEIN ARTの剛性感のチューニングは、ペダルを踏み込んだ瞬間、パワーが即座に推進力に変換される感覚は「瞬時(Instant)」と表現されることが多い。ダンシングやスプリント時にもブレーキローターが擦れる音は一切発生しない超高剛性だ。

前章で解説したPenta-Flyハブのねじり剛性と、ARTリム構造がもたらす高い横剛性の直接的な現れである。Lightweightが長年培ってきた比類なき剛性という伝統は、この新しいホイールにも確かに受け継がれている。

コーナリングと横風耐性も向上している。特に横風の中での安定性は、MEILENSTEIN ARTが旧世代から最も進化した点の一つだ。安定性に優れたDRSエアロプロファイルと高い横剛性の組み合わせにより、強い横風を受けても車体が「押しやられる感覚がない」とされている。

結果的に、ライダーは安心してラインを維持できる。これは、旧来のVシェイプリムが横風に弱いとされてきた弱点を完全に克服したことを示している。高速コーナーにおいても、ホイールがたわむことなく圧力を受け止め、狙ったラインを正確にトレースできる自信をライダーに与える。

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現代のタイヤシステムへの対応

タイヤ装着とメンテナンスや実用面の設計も改良がおこなわれている。リム内側にスポークホールが存在しないシームレスなリムベッド構造のため、チューブレスタイヤの装着時にリムテープを必要としない。

これにより、タイヤの装着が容易で、一度装着すれば即座に気密が保たれ、空気圧も安定して維持される。また、ハブ内部にDT Swiss EXP 180を採用したことは、実用性における大きなメリットである。

この機構は信頼性が高く、補修部品の入手も容易なため、専門のメカニックであれば誰でもメンテナンスが可能である。さらに、カセットスプロケットと同様のロックリングでブレーキローターを固定できる新設計は、見た目のスマートさと整備性の向上に貢献している。

MEILENSTEIN ARTのエンジニアリングが単なる理論上の主張にとどまらず、実際の走行体験において明確で優れた効果として体現されていることを示している。ARTによる剛性感、DRSによる安定性、そしてシステム全体で実現された絶妙な乗り心地。

技術的な設計思想と路上でのパフォーマンスがこれほどまでに一致している例は稀であり、エンジニアリングの成功を雄弁に物語っている。

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メリットとデメリット

いかなる製品も、その設計思想と技術的選択の結果として、固有の長所と短所を持つ。MEILENSTEIN ARTも例外ではない。本章では、これまでの分析を踏まえ、そのメリットと考慮すべきデメリットを客観的に評価する。

メリット

  • 比類なき剛性とハンドリング精度: Lightweightの伝統である圧倒的な剛性に、現代的なハンドリング特性が融合。ペダル入力に対する即時の反応性と、高速コーナーでのブレのない正確なライントレース性能を提供する。
  • 現代的な空力性能と横風安定性: 旧世代から飛躍的な進化を遂げた空力性能は、トップレベルのエアロホイールに匹敵する。特に横風に対する安定性は卓越しており、ライダーに高い安心感とコントロール性をもたらす。
  • 卓越した乗り心地: 極めて高い剛性を持ちながら、多くの超高剛性ホイールに見られる過度な硬さや突き上げ感がない。反応性、路面情報、快適性が見事に調和した、独自の洗練された乗り心地は高く評価されている。
  • 優れたエンジニアリングとブランドの権威性: 「Made in Germany」の品質、ARTに代表される革新的かつ効果的なテクノロジー、そしてプロ選手がスポンサーシップではなく購入してまで使用してきた歴史が物語る、Lightweightブランドの揺るぎない権威性と所有する喜び。

デメリット

  • 極めて高額な価格設定: 日本国内での販売価格が110万円を超えるMEILENSTEIN ARTは、市場で最も高価なホイールセットの一つである。その性能を享受できるのは、ごく一部の限られたユーザー層に限られる。
  • 修理不可能なスポーク構造: 接着されたR2Rフルカーボンスポークは、一般的なショップで振れ取りや交換を行うことができない。スポークの破損は、原則としてメーカーへの返送修理を意味し、これは長期的な所有におけるサービス性の観点から大きな懸念点となる。
  • 重量はもはやクラス最軽量ではない: 1,190gという重量は非常に軽量であることに疑いの余地はないが、もはや絶対的な最軽量の称号を保持しているわけではない。Partingtonのような新興ブランドや、Lightweight自身のOBERMAYERシリーズは、これを下回る重量を実現している。これは、ブランドの主要な価値提案が変化したことを示唆する。

特に重量に関する点は、Lightweightというブランドのアイデンティティの再評価を促す。かつてブランド名は「絶対的な軽さ」とほぼ同義であったが 、MEILENSTEIN ARTは意図的にその路線から一歩踏み出した。

1,190gという重量は、現代市場が要求するワイドなDRSリム、堅牢なPenta-Flyディスクブレーキハブ、そしてチューブレス対応といった機能を追加した結果であり、これらはミニマルなホイールと比較して本質的に質量を増加させる要素である。

この変化を予見し、Lightweightは重量と空力のバランスを示す独自の指標「Aero-Mass Index」を導入することで、議論の焦点を純粋な重量から統合的なパフォーマンスへと移行させようとしている。

したがって、その重量は単なるデメリットではなく、ブランドが「最高のオールラウンドホイール」の座を狙うために行った、意図的なエンジニアリング上のトレードオフと解釈するのが妥当である。

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まとめ:MEILENSTEIN ARTの市場における価値

Lightweight MEILENSTEIN ARTは、ブランドの歴史における重要な転換点を示す製品である。これまでの設計を総合すると、このホイールセットは、現代のオールラウンド・パフォーマンスホイールの新たなベンチマークを確立することに成功したと言える。

Lightweightが伝統的に持つ強み(圧倒的な剛性、ドイツ製の品質)と、現代に不可欠な要素(空力性能、ワイドリム互換性、チューブレス対応)を見事に融合させ、個々の技術の総和を上回る、統合された走行体験を創出した。

競合製品との比較において、その価値はより明確になる。

例えば、Zipp 454 NSWが鋸歯状のSawtoothリムによる空力安定性を、Enve SES 4.5が多様なハブ選択肢を持つシステムとしての柔軟性を追求するのに対し、MEILENSTEIN ARTの価値命題は「完全な構造的統合」にある。

リム、スポーク、ハブが一体で接着されたモノコックに近い構造は、従来の組み立て式ホイールでは再現不可能な、独特の剛性感とダイレクトな乗り心地を生み出す。 このホイールの対象層にとって、その価値は単なる走行性能にとどまらない。

それは、Alpha Rib Technology(ART)という、カーボンホイール構造におけるパラダイムシフトを体現したエンジニアリングそのものにある。極めて高額な価格は、市場で最も技術的に先進的かつ統合的に設計されたホイールシステムを入手するための対価として、このニッチな市場においては正当化されるだろう。

今後の展望として、MEILENSTEIN ARTで導入された技術、特にARTは、Lightweightの将来の方向性を決定づけるだけでなく、ハイエンドホイール市場全体に影響を与える可能性がある。

このホイールは、性能の最前線がもはや単一の指標(軽さ、空力など)の極端な最適化ではなく、複数の属性をいかに高度に統合するかに移行したことを示している。

重量、剛性、空力性能という、これまでトレードオフの関係にあった要素間の矛盾をARTが解決したことで、次世代の「究極の回転体」への道が拓かれた。MEILENSTEIN ARTは、単なる芸術品(ART)ではなく、未来のホイールテクノロジーの礎(ART)なのである。

Lightweight
Performance elevated. Precision-built carbon wheels trusted by cyclists who demand speed, control, and technical excellence.
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