これまでシングル用のチェーンリングはWOLFTOOTH製を使っていた。しかし、円安のあおりを受け、価格が高騰し、さらに入手性も悪くなって追い打ちをかけた。
チェーンリングのコストは重要だ。ナローワイドになるとなおのこと摩耗が激しくなる。1シーズンないし、2シーズン目には確実に使い物にならない状態になってしまう。できれば安くて、入手性が高く、それでいて耐久性もほしい。そんな相反する都合のいいチェーンリングをずっと探していた。
価格を抑えることを考えると、まっさきに「中華」を探すのがここ最近の流れになっている。ただ、探すのに苦労した。玉石混交の中華製品は安かろう悪かろうがほとんどで、大部分がゴミだ。さらに、シマノがクランクアームの形状を変えてしまう互換商売をしているため対応商品も少ないのが現状だ。
最新のクランク形状に合う、シマノの互換性に追従したチェーンリングが必要だった。そんな中、「良い中華認定」できたのがDECKASチェーンリングだ。
今回の記事はDECKASチェーンリングを紹介する。わずか1500円ながら、WOLFTOOTHから変更しても違いがわからない性能を備えたナローワイドチェーンリングだ。
DECKAS v2チェーンリング
DECKASは、中国のFOVNO社が展開するブランドだ。SRAMのAVIDみたいなもんだ。
FOVNO社の主力商品は車載用の自転車ラックだ。同社は、パイプの切断や加工などCNC加工を得意としており、自転車用のクランクやブレーキ、チェーンリングなどを製造している。今回紹介するDECKASのチェーンリングは多くのラインナップの中の一つだ。
DECKASのナローワイドチェーンリングは第2世代目(v2)だ。第1世代のナローワイドチェーンリングをベースに多くの最適化が施され、機能と性能が大幅に向上している。完全CNC一体成型で作られており、歯の底にスラッジ排出溝が追加され、チェーンオイルのカスが堆積する問題を改善している。
また、ナローワイドの歯は長歯と短歯の設計が摩耗の比率に最適化された形状と厚みになっている。この設計により、チェーン脱落防止効果を長時間もたらしている。DECKASのナローワイドチェーンリングは、現在市販されているほとんどの自転車チェーンに対応している。
製品仕様とラインナップは以下の通り。
- 対応:Shimano 110bcd 4arm
- 材料: アルミニウム合金
- 歯数:36t (56g) 、38t (66g) 、40t (74g) 、42t (83g) 、44t (87g) 、46t (96g) 、48t (106g) 、50t (117g) 、52t (128g)
- 厚さ: 4mm
- カラー: ブラック
- Bcd: 110mm
- 互換性: R9200, R9100, R9000, R8100, R8000, R7100, 4700, 5800, 6800, r2000, r3000
なぜDECKASのチェーンリングなのか?
理由は2つある。どちらの理由も幅が狭まった12速チェーンの相性問題に起因している。
理由1:DECKASは12速のミッシングリンクに唯一対応しているナローワイドチェーンリングだから。
理由2:ワイルドネイチャーやマイアミの場合、12速のチェーンに砂が堆積すると歯がチェーンの間に引っかからず、リンクを押し上げてしまいチェーンが脱落する事象が発生する。DECKASはこの事象が起こりにくい形状。
以下のPCD110 4-armナローワイドチェーンリングは理由1をクリアしない。12速で使用できない。
- STONE
- PASS QUEST
- ANRANCEE
- VXM
- GOLDIX
上記メーカーはシマノ用12速に対応していると言いながら、12速用のミッシングリンクに対応していなかった。ナローワイドの歯が厚すぎて、ミッシングリンクに噛み込み、そのままチェーンリングがチェーンを巻き上げてしまう不具合が100%発生する。
11速なら問題はない。ただし、12速チェーンはミッシングリンクとチェーンリングの幅が合わず食い込み、巻き上げてしまうため使用できない。
色々と試した結果、解決策としてはシマノチェーンにSRAM用のクイックリンクを使用することで解決した。しかし、シマノチェーンにSRAMクイックリンクを使用するのは精神衛生上あまりしたくない。
色々とテストをして、最後の6枚目に安すぎて避けていたDECKASが”当たった”。理由1については、そもそも11速以下なら本問題は生じない。ただし、12速を使用するのならばDECKASのナローワイドチェーンリング一択だと思う。
理由2は、昨年マイアミでDNFを食らった理由だ。使用したのはWOLFTOOTHのチェーンリングだ。ワイルドネイチャーやマイアミの場合、12速のチェーンに砂が堆積すると歯がチェーンの間に引っかからず、リンクを押し上げてしまいチェーンが脱落する事象が発生する。
11速では確認していないが、現場で確認したところ12速の場合はチェーンリンク内に堆積した砂が邪魔をして、チェーンリングがチェーンを持ち上げてしまう。だいたい20分走る徐々に堆積してこのトラブルが発生する。
メインバイクは試走中は良かった。しかし、試走中に徐々に体積していった砂は、レーススタート10分ほどでしきい値に達した。砂が堆積しチェーン落ちが多発した。
サブバイクも25分ぐらいで同様の事象に陥った。WOLFTOOTHのチェーンリングの長い歯の形状は尖っておらず台形だ。この幅が悪さをして、砂が堆積したチェーンを、チェーンリングが持ち上げてしまう。
この事象から、納得したのがSRAMの牙のようなチェーンリング形状だ。引っかかるように2段階の歯形状になっているため、引っかかったあとにチェーンの間に食い込んで行ってくれる。DECKASは先が尖って、富士山のような排出構造により砂や堆積したゴミを押しのけてくれるためこの心配も不要だ。
インプレッション
前の章でほとんどインプレッションらしいものをしてしまったので、あとは実践に投入してどうだったのかという話に移る。
ナローワイドのチェーンリングはこれまでフォリアーズ、WOLFTOOTH、ストロングライト、GRX、SRAM EAGLE、SRAM RED、ROTOR、AbsoluteBlack、RIDIAと使ってきた。玉石混交といえば、先程使えなかった"石"に該当するチェーンリングも含まれている。
10月から、メインとサブのシクロクロスバイクにDECKASのチェーンリングを使用してレースを走っている。結論から言うと、チェーン落ちは1回もしていない。実際に手に取るとわかるのだがチェーンリングは非常に固いため、WOLFTOOTHと比べて柔らかいなんて思うこともない。
チェーン離れが悪いナローワイドのチェーンリングもまれに存在しているが、チェーンリングの歯形状が富士山状になっており、チェーンの出入りがスムーズに行われている。先が尖っている形状のため、先程の理由2にもあったようなチェーンを押し上げてしまうようなこともない。
ナローワイドの場合、長い歯の形状が台形ばかりのためDECKASのような尖った形状のナローワイドは貴重だ。
また、ワックス系のチェーン潤滑剤との相性も良い。どのように相性がいいかと言うと、歯と歯の間(谷部分)にスラッジ排出溝が追加されたため、チェーンオイルのカスが堆積しづらくなっている。
排出されたワックスの残りカスはチェーンリングの外側に綺麗に排出されている。そのため、先の尖った工具でワックス剤を取り除くだけで掃除がしやすくなった。
価格が1500円と非常に安いため、1シーズン使ったら新品に取り替えるというプチ贅沢な使い方も可能だ。
まとめ:安い、快適、使えるチェーンリング
「良い中華」シリーズの中でも、DECKASチェーンリングは「かなり良い中華」だと思う。正直な話、10倍以上高価なWOLFTOOTHのチェーンリングと同じ用にDECKASも使える。
WOLFTOOTHのチェーンキャッチャーは先般の記事でも紹介した通り非常に優秀だ。できればWOLFTOOTHのチェーンリングと組み合わせたいが、チェーンリングはDECKASでいい。むしろ、砂を走る際はWOLFTOOTHと12速の組み合わせはトラブルが発生した。
DECKASはいまのところ、チェーンリングを持ち上げるような事象は発生していない。
また、DECKASは入手性の高さとやすさも魅力的だ。1500円という安さは、1シーズン使ったら新品に変えるというプチ贅沢ができる。摩耗の状況を見ていると、1シーズンは確実にもつ耐久性が確認できている。摩耗の程度はWOLFTOOTHと比べても遜色ない。
現実的には他のチェーンリングと同様に2シーズンは使えると思う。耐久性、価格、使いやすさを考えてもDECKASのチェーンリングはおすすめできる「とても良い中華」だった。