新型AEROADの空力性能が判明した。前作と比べて2Wの空力性能が改善した。既に空力性能が高止まりしているエアロ系ロードバイクにおいて、フレーム単体で2Wもの改善をしたことは大きな意味を持つ。
風洞試験は、新型AEROADと旧型AEROADにDTSWISS ARC 1100 50を組み合わせた状態で行われた。新型AEROADに標準搭載しているARC50のセッティングに旧型を寄せた形だ。「新型AEROADとARC50の組み合わせは、旧型AEROADとARC62の空力性能と同等」というCANYONの主張を確認する意味も込められている。
結果は以下の通りだ。
- 新型AEROAD(ARC 50):205W
- 旧型AEROAD(ARC 50):207W
純粋にフレーム単体の空力性能が2W向上した。頭打ちになっているエアロ系ロードバイクにおいて”大幅”な空力性能の向上と言える。
旧型AEROADにDTSWISS ARC 1100 62を取り付けた状態の風洞実験結果は202Wだ。ホイールの違いによる空力を考慮すると、新型AEROADとARC 62の組み合わせは200Wに迫る空力性能になると想定されている。
- 新型AEROAD(ARC 62):200W(想定)
- 旧型AEROAD(ARC 62):202W
- 新型AEROAD(ARC 50):205W
- 旧型AEROAD(ARC 50):207W
200W、202Wはどちらもグランツールで投入されているバイクにおいて最速だ。CANYONの「プロトン最速」は紛れもない事実になる。200Wの空力性能は、これまでの空力ランキング2位のSTORCKのAerofastを超えて、1位のSIMPLONのPRIDE2(199W)に1W迫る勢いだ。
ホイールを交換することで、5Wも空力性能が改善されることは信じられない結果だ。ホイール単体で風洞実験を行ったとしてもここまでの空力性能差は生じない。ARC 62とAEROADは同時にSWISS SIDEが開発した。そのため、空力的な相性が良く、相乗効果で空力性能が改善された可能性はある。
一方で、「新型AEROADとARC50の組み合わせは、旧型AEROADとARC62の空力性能と同等」というCANYONの主張は明確に否定された。新旧の間には3Wの空力性能差がある。それでも、前作を凌ぐ空力性能が新型に備わっていることは明らかだ。
他社ブランドが、エアロボトルやエアロハンドルといった小手先の空力開発に留まるなか、純粋にフレームだけで空力改善を成し遂げたのは偉業と言える。
見た目の変化が無いと揶揄されているが、それは速さへの本質ではない。
剛性テストも実施されている。
- ステアリングヘッド剛性 (N/mm):107 → 83
- 横剛性フォーク (N/mm):53 → 71
- シートポスト垂直剛性 (N/mm):188 →173
- ボトムブラケット剛性 (N/mm):74 → 69
バーチカルコンプライアンス(垂直方向の変形のしやすさ)は良い方向に改善された。ハードな乗り心地から若干コンフォートになった。BB周りのしなやかさも向上している。前作よりもBB周りの剛性がマイルドになった。
対して、ヘッド周りの剛性は低下しているが、フォークの剛性は向上している。新型AEROADのインプレッションでも「乗りやすくなった」「コンフォートになった」と指摘した。インプレッションの内容は、数値が表している内容と一致しており、答え合わせができた形だ。
新型AEROADは確実に空力性能が向上した。バイクは縦方向の突き上げ感がやわらいだ。ステアリング周りの安定性はさらに向上した。見た目は変わらないが、見た目を変えるための変化ではなく、目には見えない「速さ」への変化を遂げていた。
これらの進化は、CANYONの愚直な開発姿勢が伝わってくる結果だ。
空力面、剛性面、重量面で優秀な成績を収めたAEROADは、TOUR誌上最高のスコアタイの「1.5」を獲得した(値は小さいほど良い)。このスコアを獲得したバイクはS-WORKS TARMAC SL8しか存在していない。
新型AEROADは、本質的な速さのために進化した。見た目のわかりやすい変化に騙されず、本質を見抜ける玄人のサイクリストだけに新型AEROADは響くのかもしれない。