これほど便利なローラーが存在していたのか……と感心してしまった。出会ってすぐに、注文してしまったのだ。それは、ミノウラの「ハイブリッドローラー FG220」である。本製品と出会い、レースの取り組みが劇的に変わっていった。
ハイブリッドローラーFG220でできることは、他のローラーと大差はない。しかし、レースに向かい、ウォーミングアップをして、レースを走り終えて帰るまでに1つの物語がある。
ネット上にはハイブリッドローラーFG220に関する情報がほとんど無かった。ハイブリッドローラーFG220には「使う」以外にも便利な機能が詰め込まれているので、知られずに埋もれてしまうのはもったいないと感じた。本記事では、カタログ上に書かれていない魅力的な部分にスポットをあててみたい。
今回は、日本が誇るサイクルトレーナーブランドのミノウラが新たに販売したハイブリッドローラーFG220を試す。ハイブリッドローラーFG540を別の記事でインプレッションしたが、FG220はさらにコンパクトで軽く持ち運びが便利になった。まったく新しいハイブリッドローラーFG220に迫っていこう。
インプレッション
しかしまぁ、ローラーに施された「細やかな配慮」に心底関心してしまった。日本人が生み出すものづくりの良さはここにある。しかし、日本メーカーの細かすぎる配慮は時としてユーザーに伝わりきらない。もったいない話である。
ハイブリッドローラーFG220を購入して感じたのは、カタログを眺めているだけでは本製品の良さが全く伝わってこなかった。これでは、素晴らしい製品が、プロモーションが巧みな製品に負けて埋もれてしまう。
そこで、カタログ上では伝わってこない優れた点を記してみたい。
ハイブリッドローラーFG220の第一印象は、「ちっさなローラー」だった。しかし使用すると、印象がガラリと変わった。本ローラーにはウォーミングアップを行うまでに「物語」がある。
マンション住まいだと、1Fの駐車場まで降りて機材を運ぶ必要がある。機材や荷物を運ぶ回数を、どれだけ減らせるかが悩みのタネだった。厄介なのは「ローラー」だ。今までミノウラ V270をウォーミングアップに使用していた。トレーニングにも使え筐体は鉄製で頑丈だ。ダイヤルと負荷用ワイヤーも付属し負荷も十分だった。
しかし、持ち運びは重たくバランスも悪い。負荷用のワイヤーがだらりと垂れ下がって、ズルズルと引き釣りながら持ち運ぶこともあった。階段を降りる時に、ワイヤーを踏んでしまうこともあった。
FG220を使い始めてから、持ち運びの苦労とお別れした。FG220は「持ち運ぶこと」を初めから想定しているのだ。本体を折りたたむと専用のバックにすっぽりとおさまり見た目もコンパクトである。負荷用のワイヤーも存在しないので、スッキリとした印象だ。
専用バッグの外側は頑丈なナイロン素材を採用しており、内側はクッション材で覆われている。以前、固定ローラーを両手で運んでいたがFG220は片手で持てるので、ホイールバッグも余計に運べるようになった。FG220の重さは小学生でも運べるほどだ。
車への積み込みを考えると、固定ローラーは余計な出っ張りやイビツな形のせいで、トランクのスペースを余計に占領していた。他の機材と接触しないようにタオルや毛布を緩衝材代わりに敷いて養生が必要だった。
FG220は車のスペースを無駄に消費する心配は皆無だ。専用バッグが長方形なのでスペースを必要としない。固定ローラーに占領されていた空間は、驚くほど拡張された。大人数のチームで移動する場合トランク内部のスペースを有効活用できるので嬉しい効果だった。
FG220をウォーミングアップ用ローラーとしてチームで揃えれば、まるで「テトリス」のように平積みできる。また、相乗りさせてもらう場合も車のスペースを気にせずひっそりと積み込むことができる。
専用バッグはレース会場内の移動時も活躍する。持ち手をはずしてリュックサックのように使えるのだ。駐車場でウォーミングアップアップをするのもよいが、できればレースを見ながらウォーミングアップをしたい(特にシクロクロスはその傾向が強い。)
背中にFG220をかついで移動し、観戦ポイントで組み立ててウォーミングアップをおこなう。オフィシャル的にはリュックサックのような使い方を想定していないが、選手にとって便利な使い方だとおもう。
固定ローラーの場合、フロントホイールの高さを調整する台座が必要だ。FG220はハイブリッドローラーなので不要である。遠征の際にフロント台座を自宅やレース会場に何度忘れてきたことか……。その心配は皆無である。
ウォーミングアップ後は本体を折りたたんで、あっという間にしまい込める。片付けてレースへ出場だ。終わった後は背負って車まで戻ればいい(決して現地に忘れないように!)
レース後は疲れているので荷物の積み込みも面倒だ。FG220は小さくて軽いので持ち運びで苦労することもない。重たい固定ローラーは片付けるのが面倒だ。帰宅後は部屋の隅に置けばいい。収納を考えても部屋のスペースを無駄に使うこともない。
私の友人は「自宅でローラーを使わないので、車の中に保管している」という話をしていた。ウォーミングアップ専用で割り切りった使い方であれば余計にFG220を試して欲しい。車内のインテリアを損なわないし(高級車の方にとっては重要なポイント)スペースも取らない。
レース会場へ輪行する場合もFG220は活躍する。固定ローラーは持ち運べないから、宿に送っていた。難点は運搬用のダンボールが都合よく見つからないし、重くてかさばる。ところがFG220は宅急便で送る際も秀逸だ。
全日本シクロクロスの野辺山は雪が予想されたため車を使わずに輪行した。ローラーは伝票を付けて送ったが、大阪からの送料は1,000円程だ。ローラーを持っていく手間を考えると、安価に送れるのはありがたい。ここまで「持ち運び」「ウォーミングアップ専用」といった利便性の話題に費やしたが、次章からFG220の性能や機能面に触れる。まずは「負荷」についてだ。
負荷
固定ローラーと比べると、相対的に負荷は弱い。頑張って回しても300W程だった。負荷の仕組みは自重式タイプで、ローラーとドラムの加圧調整が不要だ。後輪に体重を加えることで負荷を生み出している。前方にポジションをとるとやや弱い負荷がかかり、後方に重心を移動すると少し負荷が増す。
直径79mmの極太ローラーを採用していることで、タイヤの食いこみがほぼ発生しないため、タイヤが磨耗しにくいメリットがある。
負荷の調整はONとOFFの2段階だ。負荷について補足すると、自重がローラーに直接加わる構造のため強いトルクをかけるとタイヤがスリップした。FG220で許容する負荷は最大300W程だ。それ以上求めるならば固定ローラーか、FG540を選択するしかない。
負荷が物足りない人も居るだろうから、400W程まで対応してくれると嬉しい。負荷は2~3段増しでもいい。2~3段はミノウラの固定式ローラーV270のダイアルをイメージしている。FG220の負荷を考えるとウォーミングアップや、軽いフィットネス領域の使用をオススメしたい。
騒音
騒音問題で注意するのはタイヤ選びだ。使用するタイヤによって騒音は異なるので注意が必要だ。例えば、オフロード用のノブ付いたタイヤを使用すると、どんなローラーでも騒がしい音をあげる。Continental GP4000SIIは他のタイヤよりも静かなので参考にして欲しい。
より静かなのはContinentalのホームトレーナー専用タイヤだ。適切なタイヤを使用すると騒音は気にならない。FG220の騒音はほとんど気にならない。鉄の固定ローラーと比べると軽量性やコンパクトさに重きを置いているので、静粛性はホドホドだ。
家で使う事を想定しても十分に静かだと思う。ローラーの騒音は使用するタイヤで変わるので、専用品を用意しておこう。ローラー専用タイヤに関する記事は以下を参考にして欲しい。
トレーニング用に使えるか
トレーニング用とウォーミングアップ用のローラーを使い分ける余裕がないとしたら、1台で2役使うしかない。ハイブリッドローラーFG220をトレーニング用途で使えるかは、想定している負荷次第につきる。300W程までのトレーニングであれば十分使用できる。
負荷の上げ方は高速に回す必要がある。マグネット負荷式とは違い低回転でトルクをかける使い方はできない。SFRなどトレーニング用途次第で対応できない場合もある。高負荷を期待するのは止めておいたほうがいい。
300W程で十分ウォーミングアップは可能だが、パワーの高いライダーや高負荷でウォーミングアップを行う場合は不満かもしれないので注意したい。
FEEDBACK社製ローラーと比較
ハイブリッドローラーFG220のアイデアの原型は、FEEDBACK社やグロータックのGT-ROLLERに近い。見ての通り構造も似ている。FEEDBACK社製ローラーと本製品どちらがよいかと聞かれたら、FG220を強くお勧めする。価格も手頃だし、保守パーツの入手も容易だ。
FEEDBACKのローラーが優れているのは、アルミ削り出しの作りや、スタイルの良さだ。ハイブリッドローラーFG220に「限定ブラックレッドミノウラカラー」なんてカラーバリエーションも期待したい。日本メーカーの弱点は、遊び心や見た目の良さが足りないように思う。
保証を考えると国産メーカーは安心だ。FEEDBACKのルックスの良さや作りの良さは捨てがたいが、やりたいこと(運搬~ウォーミングアップ)はFG220で実現できる。FG220の販売以前は、FEEDBACKを検討していたが候補から落ちた。
外見が似ているグロータックGT-ROLLERと比較すると性質が異なっている。GT-ROLLERは、バランスをとりながらトレーニングを行う「矯正器具」の側面が強く、コンセプトが異なっている。ローラーには長所や短所があるので、使用する用途を明確にし、ローラーを選択して欲しい。
改良が望まれる部分
FG220はコンパクトにまとめたソツがないローラーだ。しかし、改良を施せば化ける可能性がある。改良を望む部分を記載してみたい。
1つめ。負荷が弱い。負荷が物足りないと感じる場合があるので、もう2~3段上の負荷を希望する。負荷モードは2段階で十分だ。マグネット方式で言えばいうなら4か5はほしい。おそらく2程度の負荷しかかけられない。
2つめ。野外で使用する際に設置する地面の環境に影響を受けた。フラットな駐車場やコンクリートは気にする必要はないが、芝や砂利場の使用はセッティングの際水平にすることが難しい。「水平なのかどうか」がまったくわからないのが不安だ。
回転式の足は微妙な高さ調節が可能だが、ローラーの水平度合いの調整は乗ってみないと全く状況がつかめない。FG220のローラーを地面に対して水平に設置することは重要だ。少しでも傾くと、タイヤがローラーの端に追いやられる。く
1つのアイデアとして、「水平器」を貼り付けて対応した。水平器を見ながらローラーの足をうまく調整して、水平を出せるようにした。フォーク側で水平の調整はできない。布を敷いて水平を出している。
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ドラム部が低いので、設置する際に砂利や砂を取り除いて使用する必要がある。もしくは、平らなマットを敷いてもよさそうだ。リア側の足の高さはもう少し高くてもよいと感じる。
3つめ。9mmのクイックレリーズと15mmのスルーアクスルに対応しているので、シクロクロス、マウンテンバイク、ロードバイク、ピストバイクと幅広く対応する。ロードバイクやシクロクロスのスルーアクスルの規格は、前後12mmがデファクトスタンダードになろうとしているので、12mmの対応は急務だ。
12mmスルーアクスルのバイクはまだ多くないが、今後増えていくことは間違いない。今後、シクロクロスバイクの規格を変えて12mmスルーアクスルフォークにするとFG220が使用できなくなるのが悩みだ。
2017/12/20 訂正:オプションで12mmが使用できるそうです。(ミノウラFG220)
4つ目。専用バッグは持ち運びがとても便利だ。機能アップを望むと価格を押し上げてしまう恐れがあるが、バック内部の緩衝材をもう少し増やしてもいい(しかしながら改良の優先度は最も低い)。送る場合はタオルを詰めたが、なんら破損はなかった。
専用バッグは手持ちには十分だ。ワガママを言えば、リュックサックのように担げると嬉しい。
2017/12/20 訂正: ビチステンレのあんなちゃん情報によると担ぐことを想定してるつくりだそうです。写真はケンサクさん。
FG220商品仕様
ミノウラハイブリッドローラーFG220
- 製品重量:6.1 kgs
- 対応ホイールベース:930mm~1,200mm
- 適合ホイールサイズ:26インチ~29インチ(装着時水平は700Cのみ)
- 適合ホイールベース:930~1,200mm
- ON・OFFの2段階負荷調整
- 9mmのクイックレリーズと15mmのスルーアクスルに対応。
- 15/110mm ブーストハブには、別売りフォークマウントで対応。
- エラストマー内蔵で、フォークにやさしく自然なペダリングが可能。
- ロードバイク・シクロクロス・マウンテンバイクまで幅広く対応。
- 100%組み上げ状態で工場より出荷、組立不要ですぐに使用可
- 付属品:専用バッグ
- 保証期間:1年
- 40,000円(税込)
まとめ:携帯性と持ち運びに優れたローラーの決定版
重要なセッティング方法を書き忘れていた。説明書も不要なほどシンプルである。少しだけセッティングを解説する。前輪を外して、フロントフォークを「フォークマウント」に固定する。後輪をローラーに乗せてホイールベースの調整をして完了だ。セッティングはとても簡単だ。
後輪は固定しないので、リアエンドの形状やフレーム材質にしばられない。ロード130mm、シクロクロス135mmや142mm、MTB142mmと複数台所有してもローラー選定に悩まないだろう。
FG220はあらゆる場面で活躍してくれる。ローラーとしての用途もさることながら、利便性やきめの細かい使い勝手の良さも見過ごせない。利便性でハイブリッドローラーFG220の右に出る競合製品はそう多くない。
最後にもう1つ、ダメ押しでFG220の捨てるところのない機能を紹介して本記事を締めたい。些細なことだが、FG220は玄関のドアストッパー代わりにも使える!(←そこ)一気に荷物を部屋に搬入する際に、扉を開きっぱなしにしておけるというのはのは便利だ!
FG220は本来のローラーの性能もさることながら、自社・他社製品との差別化を明確にしたローラーだ。ZWIFT専用で使っても良いだろう。目的に特化したFG220は軽量性と省スペースを兼ね備えたローラーの決定版である。