2025年10月1日、RovalはAlpinist CLX IIIを発表した。これは単なる新製品の投入ではなく、クライミングホイール技術におけるパラダイムシフトの可能性を示唆する、重大な技術的進歩である。
マーケティング上の主要メッセージは、1,131gという驚異的な軽さにある。しかし、このホイールセットの真の革新性は、その数値を可能にした製造技術、すなわちARRIS社製コンポジットスポークにこそ存在する。
Alpinist CLX IIIの登場は、これまで航空宇宙産業や工業分野の領域であった先進的な複合材製造技術が、マスマーケット向けの高性能サイクリングコンポーネントへとスケールダウンされ、応用された成功例として、ホイール設計の既存の常識に挑戦する転換点となる可能性がある。
CLX IIからCLX IIIへ何が変わり、何が革新的なのか。
CLX IIからCLX IIIへ
Alpinist CLX IIIの技術的価値を理解するためには、まずその前身であるAlpinist CLX IIとの比較から始める必要がある。
公称134gという大幅な軽量化は、単一の改良によるものではなく、ホイールシステム全体にわたる複数の要素の最適化によって達成された。その内訳を詳細に分析することで、Rovalの設計思想と技術的優先順位が明らかになる。
軽量化の源泉
134gの重量削減の内訳は、このホイールの革新性を物語っている。
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スポーク: 最大の貢献を果たしたのは、ARRIS社との協業によって生まれたRovalエアロコンポジットスポークである。このスポークシステムだけで、ホイールセット全体で103.5gもの軽量化を実現している。これは総削減量の約77%に相当し、CLX IIIの技術的ハイライトがどこにあるかを明確に示している。
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ハブ: 残りの約30.5gの軽量化は、新設計のRoval Low Flange (LF) ハブによるものである。前モデルのCLX IIが採用していたRoval LFDハブも、その前の世代から50g軽量化されていたことから 、Rovalがハブの重量削減にも継続的に注力していることがわかる。
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リム: 注目すべきは、リムの基本設計が完全に維持されている点である。リムハイト33mm、内幅21mm、外幅27mmという寸法は、CLX IIと全く同一である。これは、軽量化がリムの小型化や浅リム化によって達成されたのではなく、スポークとハブという構成部品の抜本的な見直しによってもたらされたことを意味する。
この事実は、RovalのエンジニアがCLX IIの33x21mmのリム形状を、クライミング性能とオールラウンド性能を両立する上で最適解であると判断したことを示唆している。
その結果、CLX IIIの開発におけるR&Dの焦点は、リムそのものではなく、それを支えるホイール「システム」へと完全に移行した。これは、確立された成功を基盤とし、最大の改善が見込める領域にリソースを集中させるという、成熟したエンジニアリングアプローチの表れである。
技術仕様比較
以下の表は、Alpinist CLX IIIとCLX IIの主要な技術仕様を直接比較したものである。
表1:仕様比較:Roval Alpinist CLX III vs. Alpinist CLX II
| 特徴 | Alpinist CLX III | Alpinist CLX II | 差分/分析 |
| 総重量(テープ/バルブ込) |
1,131g |
約1,265g |
-134g。 カテゴリーをリードする大幅な軽量化。 |
| リム寸法(ハイト/内幅/外幅) |
33mm / 21mm / 26.5mm |
33mm / 21mm / 27mm |
ほぼ同一。 実証済みのリム形状を継承。 |
| リム構造 |
カーボンクリンチャー(フックド) |
カーボンクリンチャー(フックド) |
変更なし。 幅広いタイヤ選択肢と高圧対応力を維持。 |
| スポーク |
ARRIS コンポジットエアロ |
DT Swiss Aerolite T-head |
中核となる技術的シフト。 材質と製造法が根本的に異なる。 |
| ハブセット |
Roval LF Hub w/ DT Swiss 180 EXP |
Roval Light Hub (LFD) w/ DT Swiss 180 Ratchet EXP |
反復的な改良。 さらなる軽量化を追求。 |
| 価格(セット) |
¥451,000 (税込) |
¥341,000(税込) |
大幅な価格上昇。 新技術のR&Dコストを反映。 |
この比較から浮かび上がるのは、Alpinist CLX IIIが単なるマイナーチェンジではないということだ。特に、価格の大幅な上昇は、単なるインフレや市場調整ではなく、ARRISの製造技術へのR&D投資とコストを直接反映している。
これにより、Alpinistシリーズは新たな市場階層へと移行し、Rovalがその性能向上にはプレミアム価格を正当化する価値があると確信していることを示している。
実測重量 1,120g!
実測重量は、フロントが518g、リアが602gで合計1,120gだ。なんとカタログ重量よりも11g軽いが、この重量はチューブレスバルブx2とリムテープx2を含む重量である。すべての部品を外した状態では1,100gほどになる。
ARRIS革命:コンポジットスポーク
Alpinist CLX IIIを定義づける特徴は、間違いなくARRIS社製コンポジットスポークである。
素材から製造へ
「カーボンスポーク」という言葉自体は新しいものではないが、ARRISの「Additive Molding™」は、従来の製造法とは一線を画す、特異なプロセスである。
この技術は、乾燥した連続炭素繊維に熱可塑性樹脂を含浸させ、プリフォーム(予備成形体)を形成し、最終的に金型で成形するという自動化されたプロセスに基づいている。
このプロセスの最大の利点は、繊維を応力ベクトルに沿って三次元的に精密に配向させることが可能になる点にある。これは、単純な引抜成形によるカーボンスポークや、Lightweight社製品に見られるようなモノコック構造とは根本的に異なるアプローチである。
このRovalとARRIS Composites社のパートナーシップは、サイクリング業界への戦略的な技術移転を象徴している。
ARRIS社は航空宇宙や産業応用をルーツに持つ企業であり 、Rovalは単に部品を調達するのではなく、全く異なる製造プラットフォームを活用することで競争優位性を確立しようとしている。
この協業はARRIS社のR&D責任者からRovalへの接触によって始まったと記されており、Rovalが従来のサプライチェーン(DT SwissやSapimなど)の枠外から、重量と強度の問題を解決するための革新的な技術を積極的に探求し、統合したことを示している。
Alpinist CLX iiiの特徴
Rovalが掲げる性能向上に関する主張は、この製造技術の優位性に裏打ちされている。
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「20%高強度」: この主張は、主に引張強度を指している。スポークの引張強度が高いほど、ホイールをより高いテンションで組み立てることが可能になる。高いスポークテンションは、横剛性の向上に直結し、ダンシングやスプリント時のパワー伝達効率とハンドリングの正確性を飛躍的に高める。スポークテンションがホイールをいかに剛性の高い構造体にするかという物理学的な原理が、この主張の背景にある。
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「103.5g軽量」: このシステム全体の重量削減は、特に「回転質量」の削減という点で極めて重要である。回転体の慣性モーメントは、質量と回転半径の二乗に比例する。これは、リムやスポークといった回転中心から遠い部分の質量を削減することが、フレームのような静止質量を削減するよりも、加速性能に対して不釣り合いなほど大きな影響を与えることを意味する。この物理原則こそが、CLX IIIが謳う「爆発的な加速感」の理論的根拠である。
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「よりスムース」: コンポジットスポークが路面からの振動をより効率的に吸収するという主張もまた重要である。これは、スポークの素材である熱可塑性複合材のマトリックスが持つ減衰特性に起因する可能性が高い。金属であるスチールとは異なり、複合材は特定の振動特性を持つように設計することが可能であり、これが乗り心地の向上とライダーの疲労軽減に貢献する。
さらに、ARRISスポークに使用されている熱可塑性樹脂マトリックスは、重量や強度といった性能面だけでなく、長期的な視点において重要な意味を持つ。
従来のカーボンフレームやリムで一般的に使用される熱硬化性樹脂とは異なり、熱可塑性樹脂は再加熱によって再溶融・再成形が可能である。
これは、将来的に修理可能性や、複合材産業全体の大きな課題であるリサイクル可能性への道を開くものである。現時点ではAlpinistのマーケティングポイントではないが、この根底にある材料選択は、製品のライフサイクルと持続可能性という観点から、将来的に大きな利点となる可能性がある。
スピードの解剖学
Rovalの主要な性能主張である「ツールマレー峠での5秒短縮」を物理学の原理に基づいて批判的に評価し、ホイールの現実世界での性能特性を文脈に沿って解説する。
「ツールマレー峠での5秒」の解体
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主張: プロライダーのデミ・フォレリングが、シミュレーション上でツールマレー峠を登坂した場合、Alpinist CLX IIIは前モデルのCLX IIよりも5秒速い。
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シミュレーションのパラメータ: このシミュレーションは、標高、勾配、ライダーの出力、システム重量、空気抵抗、転がり抵抗、駆動系の効率といった多岐にわたる要素を考慮した高度なものである。
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物理学に基づく妥当性検証: 一般的なサイクリングパワー計算機を用いて、この主張の妥当性を簡易的に検証する。
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静止重量の影響: 仮にシステム総重量を68kg(ライダー58kg + バイク7kg + 装備3kg)と仮定すると、134gの軽量化は総質量の約0.2%の削減に相当する。重力が主要な抵抗となる急な登りでは、同じ出力であれば速度も理論上約0.2%向上する。45分(2700秒)の登坂であれば、これは約5.4秒の短縮に繋がり、静止重量の削減だけでもこの主張が妥当な範囲にあることを示唆している。
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回転質量と加速の影響: しかし、このシミュレーションは「動的(dynamic)」であると明記されている。これは、単なる定速走行だけでなく、スイッチバックからの立ち上がりやアタックへの反応といった加速局面もモデル化していることを意味する。スポークによる103.5gの回転質量の削減は、これらの加速に必要なエネルギーを大幅に減少させる。したがって、5秒というタイム短縮は、静止重量の削減による定速登坂での恩恵と、登り全体を通じて繰り返される微細な加速の積み重ねによる恩恵(回転慣性の低減)との複合的な結果である可能性が高い。
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この「5秒」という主張は、マーケティングツールであると同時に、「軽快さ」や「反応性」といった抽象的な感覚を定量化する巧みな手法でもある。
ライダーは軽いホイールが「速い」と感じるが、その感覚を測定することは難しい。物理学的には、この感覚は回転慣性の低減に起因する。
Rovalの動的シミュレーションは、この複雑な動的挙動をモデル化し、「5秒」という具体的な結果を提示することで、エンジニアリング仕様とライダーの体験との間のギャップを埋めている。
仕様から乗り心地へ
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反応性: 低い回転慣性(スポーク由来)と高い横剛性(高強度スポークによる高テンションビルドが可能)の組み合わせは、加速時における即時性と「キレ」のある感覚、すなわちライダーが「反応性が良い」と表現する特性に直結する。
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ハンドリングと「ダンシング」: ダンシングで登坂する際、ライダーはバイクを左右に振る。横剛性の高いホイールは、この横方向の負荷による変形に抵抗し、パワーがホイールのたわみではなく推進力へと効率的に変換されることを保証する。また、ホイール自体の軽さは、バイクを左右に振る動作そのものを容易にし、このリズミカルな動きを助長する。クイックなハンドリングは、製品の特徴として明確に言及されている。
動的シミュレーションに焦点を当てている点は、現代のレースに対する深い理解を明らかにしている。グランツールの山岳ステージは、一定ペースのタイムトライアルではなく、加速、アタック、リズムチェンジが繰り返される。
このような動的な状況で優れた性能を発揮するホイールは、単に定速登坂に最適化されたホイールよりも大きな戦術的優位性をもたらす。
したがって、Alpinist CLX IIIは単なる「クライミングホイール」ではなく、「クライミングレーシングホイール」として設計されている。プレスリリースで「爆発的な加速感」や「曲がりくねった山岳ルートでの正確なコントロール性能」が強調されているのは、まさにこの設計思想の表れである。
現代クライミングホイールの技術
Alpinist CLX IIIのリム、ハブ、そして組み立て思想が、現代の高性能ロードサイクリングのトレンドとどのように整合しているのか。
リムプロファイルとタイヤの最適化
リムハイト33mm、内幅21mmという仕様は、現代のクライミングホイールにおける最適解の一つと言える。33mmというハイトは、重量と慣性を最小限に抑えつつ、ボックスセクションリムに比べてわずかながら空力的な利点も提供する、バランスの取れた選択である。
内幅21mmという設計は、特に28mmタイヤに最適化されている点が重要である。これは、クライミングタイヤの定義が根本的に変化したことを反映している。かつてクライマーは可能な限り細く軽いタイヤ(例:23mm)を選択したが、現在では転がり抵抗とグリップの重要性が広く認識されている。
28mmタイヤへの最適化は、Rovalの性能計算において、登りだけでなく、それに付随する平坦路や下りを含めたステージ全体での効率が重視されていることを示している。
実世界の路面では、より太いタイヤを低圧で運用する方が転がり抵抗が低いというデータが蓄積されており、プロトンもほぼ全面的に26-28mmタイヤへと移行している。Rovalは、このエビデンスに基づいたアプローチを採用し、システム全体として最高の効率を発揮するタイヤ選択にリム形状を適合させている。
フックド vs. フックレス論争
フックレスリムへのトレンドが強まる市場において、Rovalがフックド(Hooked)付きのリム設計を維持したことは、特筆すべき実用的な判断である。
フックドリムは、より広範なタイヤとの互換性を持ち、チューブ使用時には130psi、チューブレスでも110psiという高圧に対応可能である。これは、フックレス設計が要求する厳格なタイヤ適合性や圧力制限(CadexやEnveなど)と比較して、ユーザーにより多くの選択肢と安全マージンを提供する。
ハブと内部機構
新設計のRoval LF (Low Flange) ハブは、軽量化に貢献している。
内部機構には、DT Swiss 180 EXPとSincセラミックベアリングが採用されている。これは信頼性、低摩擦、そして迅速なエンゲージメント(36Tラチェット)で知られる最高級の選択であり、ホイールのプレミアムな位置付けと一致する妥協のない仕様である。
Alpinist CLX IIIの設計思想は、「最適化された実用主義」と要約できる。革新的なスポーク技術で限界を押し広げる一方で、リム(フックド)やハブ内部(実績のあるDT Swiss製)といった他の部分では、保守的でユーザーフレンドリーな選択を行っている。
Rovalは、フックレス化やより独自性の高いハブ設計によってさらなる軽量化を追求することも可能だったはずだ。しかし、彼らは現実世界での使いやすさ、信頼性、メンテナンスの容易さを純粋な性能と両立させることを選んだ。
これは、最先端技術をエンドユーザーにとってより利用しやすく、威圧感の少ないものにするための意図的な設計と言える。これは、レースで戦うためだけでなく、日常的に使用することも想定された製品であることを示している。
競合市場分析
Alpinist CLX IIIを超軽量ホイールカテゴリーの主要なライバル製品と比較し、それぞれの設計思想と価値提案を分析する。
競合製品
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Lightweight Meilenstein EVO: 伝統的なベンチマーク。スポークがハブとリムに接着されたフルカーボンモノコック構造を特徴とする。究極的な剛性で知られるが、非常に高価で修理が困難という課題も抱える。
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Cadex 36 Disc: エアロカーボンスポークとフックレスリムを採用した直接的な競合。重量対剛性比とシステム効率に焦点を当てている。
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Enve SES 2.3: 米国製の有力候補。非常に軽量なリムとフックレス設計で「山岳専用」を謳うが、スポークは従来のスチール製である。
市場は、同じ目標(究極のクライミングホイールの構築)を達成するために、異なる技術的哲学へと分岐している。
Lightweightは「統合モノコック」アプローチを代表し、CadexとRovalは「先進コンポーネント」アプローチ(スポークに焦点を当てる)、Enveは「洗練された伝統主義」アプローチ(スチールスポークを用いつつリムとハブを最適化)を採る。
Alpinist CLX IIIの成功は、特にARRISの製造技術を用いた先進コンポーネントアプローチが、性能、修理・整備性、コストの最良のバランスを提供できるかどうかの試金石となるだろう。
競合製品との比較
表2:Alpinist CLX III vs. 競合製品
| 特徴 | Roval Alpinist CLX III | Lightweight Meilenstein EVO | Cadex 36 Disc | Enve SES 2.3 |
| 重量 (g) | 1,131 | 1,380 | 1,302 | 1,222 |
| 価格 (USD概算) | 約$3,000 | 約$7,600 | 約$3,500 | 約$2,850 |
| 主要技術 | ARRIS コンポジットスポーク | モノコックカーボン | エアロカーボンスポーク | 軽量フックレスリム |
| リムプロファイル (ハイト/内幅) | 33mm / 21mm | 48mm / 18.2mm | 36mm / 22.4mm | 28-32mm / 21mm |
| リムタイプ | フックド | フックド | フックレス | フックレス |
| 保証/サービス |
限定生涯保証 |
5年保証 |
5年間の事故交換 |
生涯事故保証 |
この比較分析から、Alpinist CLX IIIが独自の市場ポジションを築いていることがわかる。カーボンスポークを採用する競合(Cadex)やモノコック構造のベンチマーク(Lightweight)よりも大幅に軽く、価格は前者と競合し、後者を劇的に下回る。
Enveよりはわずかに重いが、先進的なスポーク技術によってその価格差を正当化している。重量と価格を二軸のグラフにプロットした場合、Alpinist CLX IIIは極めて魅力的な象限に位置する。
かつては超高価格帯や妥協(例:チューブラー専用)を伴わなければ到達できなかった重量を、確立されたハイエンド市場の価格帯で実現しているのである。
各競合の設計にはトレードオフが存在する。Lightweightの剛性は伝説的だが、スポークが破損すればホイール交換となる可能性がある。Enveのスチールスポークは交換が容易だが、重量面で不利である。Cadexのフックレスリムは軽量化に貢献するが、タイヤの選択肢を制限する。
これに対し、Rovalの設計—交換可能なコンポジットスポーク(スペアが4本付属)、フックドリム、標準的なハブ内部機構—は、革新的技術の性能的恩恵を、従来の独自システムが抱えていた非整備性といった欠点なしに提供しようとする意図的な試みである。
これは、見識ある消費者にとって強力な価値提案となる。
まとめ:登坂の新たなベンチマーク
Alpinist CLX IIIは、単に「Roval史上最軽量のホイール」であるにとどまらない。これは、次世代の自動化された複合材製造技術を、主流のサイクリングコンポーネントに成功裏に統合した実証例である。
物語の主役はARRISスポークであり、その成功は同様の技術が今後より広く採用される道を開く可能性がある。
このホイールセットは、比類なき軽量性と、それに伴う加速性および反応性の向上という約束を果たしている。性能に関する主張はシミュレーションに基づいているものの、その根拠は確かな物理原則に裏打ちされている。
クリンチャー/チューブレス対応、整備可能なハブといった現実世界での実用性を備えながら、量産クライミングホイールの新たなベンチマークを打ち立てたと言える。
¥451,000(税込)という価格は、紛れもなくプレミアム製品であることを示している。しかし、競合製品と比較した場合、その価値提案は非常に説得力がある。
2倍以上の価格が付けられるホイールに匹敵、あるいはそれを凌駕する重量と技術を提供している。その価値は、ヨーロッパのブティックブランドが要求するような極端な価格を支払うことなく、カテゴリーをリードする最先端技術を手に入れられる点にある。
Alpinist CLX IIIに見合う理想的なライダーは、以下のように定義できる。
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登坂を最優先し、機材からの即時的かつ具体的なフィードバックを重視する、パフォーマンス志向のライダー。
- 回転質量の物理学を理解し、加速性能とダイナミックなライディングにおける測定可能なアドバンテージのために、プレミアムな投資を厭わない見識ある消費者。
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究極のクライミング性能を求めつつも、整備可能なハブやフックド・チューブレスリムがもたらす実用性と汎用性を依然として要求するライダー。
結論として、Alpinist CLX IIIは、単に軽くなっただけでなく、より堅実に進化したことで、確かに「頂点を再校正」した。それは、重力との闘いにおける、新たな基準の幕開けである。












