チェーンの洗浄の洗浄方法は数多くあるが、セラミックスピード社やFriction Facts、イズミチエンといったメーカーが推奨している洗浄方法に共通していることは「超音波洗浄」を行う方法だ。超音波洗浄は目に見えないレベルの細かな汚れまで除去してくれる。
早速手順だ。
- 超音波洗浄に洗浄剤とチェーンを入れる
- 5分間洗浄する
- 溶剤を捨てる
- 水を入れる
- 5分間洗浄する
- 水を捨てる
- チェーンを野菜水切りで回す
超音波でミクロの汚れが落ちるしくみは、振動子が生み出した超音波振動によって水中に目に見えない気泡(キャピテーション)が無数に発生する。その気泡のはじける瞬間にでる衝撃波が手のとどかない微細なすき間の汚れを粉砕して、布やブラシ、水流では落ちない汚れを取り除く。
先般紹介したチェーンの摩擦抵抗の話の中にもあるとおり、摩擦が生じているチェーン内部狭い奥の部分にはそもそもブラシが届かない。この箇所の洗浄に対して効果があるのが、ミクロレベルで洗浄を行える超音波洗浄機なのだ。
超音波洗浄機
わたしが使用している超音波洗浄は、オムロンのSW5800だ。2018年に購入してからほぼ毎週(シクロクロス期間中は週2回以上)使用しているのだが、5年以上使用しても壊れるどころか、パワーも落ちていない。
価格も6,000円前後と非常にお安くなっている。
使用する際のコツとしては、超音波洗浄の中に別の容器を入れて洗浄をおこなうことだ。チェーンを洗浄する溶剤は、フィルタクリーナーや灯油など攻撃性が高いものが多い。そのため、超音波洗浄本体にダメージを及ぼさないようにワンクッションはさんでおいたほうがいい。
別の洗浄用の容器を入れる
超音波洗浄機の容器に直接溶剤をいれるのは、洗浄機へのダメージと溶剤を節約するために避けた方がいい。別の容器を入れてから、超音波洗浄機の本体に水をいれる方法がおすすめだ。これまで以下の容器や素材を試してきたので、それぞれのメリット・デメリットを紹介する。
- ペットボトルの底部分だけ切り出した容器
- ガラス瓶
- タッパー
- ジップロック
ベストな方法としては、ペットボトルの底部分を切り出した容器を用いる方法だ。SILCA研究所も「ゲーターレードのボトル使うのがクール」と言っている。ガラス瓶は重量があって、さらに手が滑りやすく、ガラスを割ってしまっていらい使用を控えている。
タッパーは、超音波洗浄機に合うちょうどよい形がなく、素材が分厚いため振動が届きにくかった。ジップロックは袋のマチ(奥行き)がなく、チェーンを洗うためには適していなかった。また、使っているうちに破けてきたため、耐久性を考えると適していない。
その点、ペットボトルの底部分は軽量、持ちやすい(たいていボコボコしている)ハサミやカッターで高さ調整ができる、薄い、透明、汚れても替えがきく、なにより最終的にはプラごみとして捨てる物なので替えが容易で、ゴミを有効活用できるというメリットがある。
フィルタクリーナー
洗浄する際の溶剤は、入手性の関係からエーゼットのフィルタクリーナー(青)を使用している。
価格も安く大量に使えるのでおすすめだ。
野菜水切り
溶剤で洗浄したあとは、水に入れ替えて再度超音波洗浄を行う。そうすると、チェーン内部に残っているフィルタクリーナーの溶剤がドバドバ出てくる。黒い汚れが水の中に出て来なくなったら終わりだ。たいてい、超音波洗浄を5分動かせばチェーン内部に残量している溶剤も出尽くす。
チェーンを水から取り出したあと、最後に重要な仕事がある。チェーン内部に残っている水分を排出することだ。チェーン内部の水分を除去する方法はいくつかある。
- コンプレッサーやエアダスターで吹き飛ばす
- 水置換性のオイルを塗布
- トースターで焼く
- 洗濯機で脱水をかける
- 野菜水切り機にかける
この中で水分を除去するために最も効果的なのが、以前紹介したエアダスター方式だ。しかし、準備の手間や騒音の問題、水分が広範囲に吹き飛んでしまうなどデメリットも多い。
ラスペネなどの水置換性オイルを使用するのも効果的ではあるが、別の潤滑剤を使うことを考慮すると水置換性オイルも使えない。トースターで水分を飛ばすという方法も効果的なのだが、わずかに残留しているフィルタクリーナーの匂いが部屋中に充満し、食品に使用できなくなるためおすすめできない。
洗濯機の脱水モードも効果的なのだが、こちらも残留しているわずかなフィルタクリーナーの匂いが洗濯ドラム内に残り、衣類に匂いが移るため全くおすすめできない。
最近、重宝しているのが最後の「野菜水切り機(サラダスピナー)」だ。
愛用している野菜水切り機「パール金属 Rotary Fresh 野菜水切り器 C-57」はわずか500円程度ながら、遠心力で水気を十分に飛ばしてくれる。エアダスターほどは水分の除去ができるわけではないが、それでも十分すぎるほどにチェーン内の水分を排出してくれる。
コツは、チェーンをウェスやキッチンペーパで包んで、できるだけ容器の外側に沿うように配置することだ。あとは思いっきりぶん回して水分を排出する。最後に包んであるウェスを使ってきれいにチェーン表面を拭き取って終わりだ。
¥3,980
電動のサラダスピナーもある。最強はエアダスターなのだが、騒音など気にする方は手動、もしくは電動サラダスピナーがおすすめだ。
まとめ:細かな汚れも簡単洗浄
ここまで紹介した手法は、チェーンを取り外して行う必要がある。そのため、ミッシングリンクを使っているという前提で取り外しのひと手間がある。それでも、ブラシなどではチェーンの僅かなスキマまでは決して届かない。
このスキマに対して洗浄できる方法は、超音波洗浄機を使う方法が最も手軽だ。
毎回この方法を行うのは手間がかかるが、チェーンの摩擦抵抗を減らし、チェーンの寿命を伸ばせるメリットを考えるとやって損はない「ひと手間」だ。レースに出る方や、マージナルゲインを追求される方は、定期的に洗浄を行ったほうが良いだろう。
わたしは、シクロクロスシーズン中に毎週行っていたが、なれてくるとそこまで手間とは感じなくなる。むしろ、ブラシでは決して取り除くことができない細部のヨゴレのほうが気になってくる。そのわずかなヨゴレは抵抗になり、チェーンの寿命を縮めているのだ。
超音波洗浄機と野菜水切りを用意すれば、誰でも簡単にチェーンをきれいにすることができ、回転もスムーズになる。なにより、明日走り出すことが待ち遠しく楽しみになる。ブラシによるチェーン洗浄は「表面的な洗浄」しかできていない。
今回のチェーン洗浄方法で、ぜひともミクロの単位でヨゴレを取り除き、チェーンの性能を100%引き出してみてほしい。