安さを含めた評価、という但し書きは中国製パワーメータの宿命だった。
中国製パワーメーターを評価するとき、これまでは必ずといってよいほど価格が前提に置かれてきた。絶対的な完成度ではSRMのような欧州ブランドに及ばなくても、価格を考えれば十分に優れている、と。
そのような「安さを含めた評価」が、多くの中国製パワーメーターに与えられてきた。中国製パーツは「価格の割に良い」と「価格に関係なく良い」の2段階、中国製パワーメーターは長らく前者にとどまっていた。
しかし、NEXGA S1は少し様子が違う。
NEXGA S1は、単に安価なスパイダー型パワーメーターではなかった。公称測定精度は±1%、重量は公称95g。ANT+とBluetoothのデュアル通信、IPX7の防水性能、USB-C充電、最大180時間のバッテリー駆動を掲げ、保証期間は2年だ。
16ビットADC、自動温度補正、インテリジェントゼロ補正、左右バランス表示にも対応する。ケイデンスの検出には6軸ジャイロセンサーを使用し、振動の多い路面でも安定した測定を狙った設計である。
注目すべきなのは、こうした仕様がカタログ上の主張だけにとどまらず、比較実験において、Favero Assioma Pro RLにかなり近い測定結果を示したことだ。
定常走行だけでなく、約800Wから1,200Wのスプリント、約40rpmの低ケイデンス、180rpmを超える高ケイデンス、短いペダリング停止と再開、気温が28℃から40℃まで変化する約4時間の実走まで、さまざまな条件で比較が行われている。
その結果を見て、筆者は早速NEXGA S1を購入した。今回の記事では、製品特性を整理するとともに、Panda Podiumが公開したワット数を一つずつ再計算し、Assiomaとの測定差を検証する。そのうえで、筆者自身の実走で得た印象を重ねていく。
パワーメーターとは、脚が生み出した仕事を数字へ翻訳する装置である。翻訳には必ず訳者の癖が残る。問うべきは、その癖が小さいかどうかだけではなく、癖が一貫しているかどうかだ。その視点で読み進めてほしい。
95gの筐体に収められた設計
NEXGA S1の基本構造は、クランクとチェーンリングの間に装着するスパイダー型である。ペダルやクランクアームではなく、左右の脚から伝わった合成トルクをスパイダー部分で測定する。
ラインアップには、Easton Cinch、SRAM 3ボルトおよび8ボルト、ROTOR ALDHU、Shimano MTB用104BCD、トラック用144BCDなど、複数の仕様が用意されている。
一方、一般的なShimanoロードクランクへ、そのまま取り付けられる製品ではない。購入時には、使用するクランクの固定方式、ダイレクトマウント規格、BCD、チェーンライン、チェーンリングとの互換性を確認する必要がある。
主要スペック
| 項目 | 公称値・仕様 |
|---|---|
| 測定方式 | スパイダー型(左右合成トルク) |
| 公称精度 | ±1% |
| 重量 | 95g |
| 通信 | ANT+/Bluetooth |
| 防水 | IPX7 |
| 充電 | USB-C、満充電約2時間 |
| 駆動時間 | 最大180時間(15分充電で最大50時間) |
| ケイデンス検出 | 6軸ジャイロセンサー |
| その他 | 16ビットADC、自動温度補正、インテリジェントゼロ補正、左右バランス表示 |
| 保証 | 2年 |
USB-C充電、180時間駆動
充電にはUSB-C端子を使用する。独自形状の充電ケーブルを必要としないため、日常的な使いやすさに加えて、遠征や旅行へ持ち出す際に「忘れるケーブルが1本減る」という利点がある。
ただし、実際の駆動時間は、気温、使用時間、ANT+やBluetoothの接続状態、スリープからの起動回数、バッテリーの経年劣化などによって変化する可能性がある。180時間という数字は上限であり、約束ではない。
6軸ジャイロセンサー
一般的な加速度センサーと比較して、荒れた路面や強い振動の影響を受けにくく、クランクの回転を安定して捉えることが設計上の狙いである。
ただし、6軸ジャイロセンサーを採用していること自体が、ケイデンス測定の正確性を保証するわけではない。実際の評価では、急激な回転数の変化、ペダリング停止、再始動、高ケイデンス、低ケイデンスにおける応答を見る必要がある。
Assiomaと比較
Panda Podiumの比較実験では、Cannondale CAAD14にNEXGA S1のEaston Cinch仕様を取り付け、155mmのCybrei DUBカーボンクランクと組み合わせている。比較対象には新品のFavero Assioma Pro RLを購入し、最新ファームウェアへ更新したうえで使用したとされる。
Assiomaは左右のペダルに搭載されたセンサーによって、それぞれの脚の出力を測定する両側計測型だ。NEXGA S1は左右の脚からクランクを経由してスパイダーへ伝わった合成トルクを測定する。
両者は測定位置も測定方式も異なる。そのため、表示値が完全に一致しないからといって、直ちにどちらかが不正確であるとは判断できない。
なお、NEXGA S1とAssiomaの差に、チェーンやチェーンリングによる駆動損失がそのまま含まれるわけではない。どちらもチェーンへ動力が伝わる前の位置で測定しているためだ。
一方で、測定位置、トルクの検出方法、ケイデンス処理、データの平滑化、タイムスタンプの違いは、瞬間値や平均値に影響する可能性がある。
データの前提条件
掲載データは、2026年6月時点におけるNEXGA S1の最新ハードウェアと最新ファームウェアで取得されたものと説明されている。開発期間中には複数の個体をテストし、改良を重ねてきた経緯も語られている。
したがって、公開された結果は初期試作品ではなく、改良後の仕様を評価したものだ。
ただし、記事で確認できるのは主にグラフ、区間平均、最大値である。元のFITファイルやCSVデータは公開されていないため、1秒単位の詳細な統計解析を第三者が再現することはできない。
誤差率の考え方
原則としてAssiomaの測定値を比較基準とし、NEXGA S1の値からAssiomaの値を引いた差を、Assiomaの値で割って百分率に換算している。
ただし、この計算で求められるのは、Assiomaに対するNEXGA S1の相対差である。Assiomaの数値が真値であることを証明するものではなく、NEXGA S1の絶対誤差を直接示すものでもない。
異なる2台の測定値が1%違った場合、NEXGA S1だけがずれている可能性もあれば、Assiomaだけがずれている可能性もある。両方が真値に対して反対方向へずれている可能性も残る。
基準とは、真実そのものではなく、私たちが真実の代わりに信頼すると決めた何かである。絶対精度を検証するには、校正済みのトルク計や、測定精度に定評のあるスマートトレーナーなど、第三の測定基準を加える必要がある。
40分間走行で平均値が1W差
約40分間にわたって190W前後を維持した定常走行では、NEXGA S1の平均パワーが190W、Assioma Pro RLが191Wだった。差はわずか1Wである。Assiomaの191Wを基準に計算すると、相対差は約0.52%となる。
Panda Podiumの記事では、この差が0.9%と記載されている。しかし、掲載された190Wと191Wという整数値から通常の方法で再計算すると、差は約0.52%だ。
表示前の小数値が使われている可能性は残るが、仮に最大限の丸め誤差を見込んでも(189.5W対191.5Wで約1.04%)、少なくとも掲載値だけから0.9%という数値を一意に導くことはできない。
定常走行における0.52%差の意味
40分間の平均値が1W差に収まったことは、一定出力を維持するトレーニングにおいて重要な結果である。
仮にFTPが250Wのライダーで同じ0.52%の差が発生するとすれば、約1.3Wに相当する。テンポ走、スイートスポット、FTPインターバルなどでは、実用上ほぼ同じ測定基準として扱える水準である。
パワーメーターでは、瞬間的な数値が一致すること以上に、一定時間の平均値が安定して一致することが重要になる。トレーニング負荷、TSS、正規化パワー、FTP評価などは、継続的に記録されたデータを基礎として計算されるからだ。
最大パワーの差は約2.31%
同じ40分間のテストで記録された最大パワーは、NEXGA S1が339W、Assiomaが347Wだった。差は8Wであり、Assiomaの347Wを基準にすると約2.31%となる。
Panda Podiumの記事では、この最大パワーについても1%以内と説明されている。しかし、掲載された339Wと347Wから計算する限り、1%以内という説明は成立しない。
ただし、最大値は平均値よりも記録タイミングの影響を受けやすい。
数秒以下の出力変化では、1秒区間を切り取る位置が少し違うだけで最大値に数ワットの差が生じる。したがって、最大値に約2.31%の差があったことだけで、NEXGA S1の測定精度が低いと判断することはできない。
約800Wのスプリントでは2W差
約800Wのスプリントでは、NEXGA S1が804W、Assiomaが806Wを記録した。差は2Wであり、Assiomaの806Wを基準にすると約0.25%となる。記事の約0.3%差という説明は、再計算結果と整合する。
高トルクが加わり、出力が瞬間的に立ち上がる条件で2W差に収まった結果は、スパイダー型パワーメーターとして非常に良好である。
Assiomaが1秒早い?
比較グラフでは、Assiomaのパワー変化がNEXGA S1より約1秒早く表示されているように見える場面があった。
ただし、これがNEXGA S1のセンサー応答の遅さを示しているとは限らない。実際の反応差なのか、2つのファイルを重ねる際の同期の問題なのかを断定していない。
公開されたグラフだけを根拠として、NEXGA S1には1秒の測定遅延があると結論づけることはできない。
ピーク値の一致だけでは動的精度を断定できない
804Wと806Wという最大値の一致は有力な評価材料である。しかし、スプリント中の動的性能を判断するには、ピークに到達するまでの立ち上がり、ピーク後の減衰、5秒平均、10秒平均、区間全体の積算仕事量まで比較する必要がある。
今回の記事ではグラフによる視覚比較は行われているが、これらの数値は掲載されていない。頂点が重なることと、山の形が重なることは同じではない。
40rpm~190rpmのケイデンス変化
比較実験では、約40rpmという低いケイデンスに加えて、約180rpmから190rpmという非常に高いケイデンスでスプリントが行われた。
出力はおよそ400Wから600Wの範囲であり、いずれの条件でもNEXGA S1とAssiomaは、1秒程度の時間ずれを除けばほぼ同じ推移を記録したと報告されている。
極端な低ケイデンスでは、1回転あたりに大きなトルクが加わる。一方、極端な高ケイデンスでは、短い時間にクランクの回転とトルク変化を処理する必要がある。
両方の条件でAssiomaに近い推移を示したことは、NEXGA S1が広いケイデンス範囲に対応できる可能性を示している。
6軸ジャイロセンサーの優位性
高ケイデンスと低ケイデンスのテストは、回転数の測定範囲を確認する材料にはなるものの、路面振動に対する優位性を直接証明した実験ではない。
ジャイロセンサーの効果を厳密に評価するには、荒れた舗装、石畳、グラベル、ローラー台など、振動条件の異なる環境で比較する必要がある。
2秒ごとのペダリング停止と再開
テストでは、2秒間ペダリングし、2秒間完全に停止して、再び2秒間ペダリングするという極端なストップ・アンド・ゴーも行われた。
この区間では、Assiomaがペダリング停止中にも0rpmを報告しない場面が複数あった一方、NEXGA S1は停止をより一貫して0rpmとして記録した。この結果だけを見れば、短い停止の検出についてはNEXGA S1の方が正確に見える。
1Hzでは難しい
ただし、両機器のデータは1Hz、つまり1秒単位で記録されている。
2秒周期で停止と再開を繰り返す現象を評価するには、時間分解能が十分とはいえない。記録区間の境界とペダリング停止のタイミングが重なるかどうかによって、0rpmとして記録される回数が変わる可能性がある。
対応するパワーデータにも両者の不一致が見られたが、公開された情報だけでは、どちらの処理が実際のペダリングを正確に反映していたか判定できない。
一方、ストップ・アンド・ゴーの直後に行われたスプリントでは、両機器が再び近い数値を示した。短時間の停止検出で差が生じても、その後のパワー測定に持続的なずれが残らなかった点は重要である。
28℃から40℃まで
約4時間の長時間テストでは、開始時の気温が28℃、記録された最高気温が40℃だった。手動ゼロオフセットは走行開始から約15分後に一度だけ実施され、その後は再校正されていない。
停止と再発進を含む変化の多い走行を終えた時点で、NEXGA S1の平均パワーは130W、Assiomaは127Wだった。差は3Wであり、Assiomaの127Wを基準にすると、NEXGA S1は約2.36%高く記録したことになる。
2.5%差という説明は、丸めを考慮すればおおむね整合する。
3W差と2.36%差
3Wという絶対差だけを見れば小さい。しかし、平均パワーが127Wと比較的低いため、百分率では約2.36%になる。仮に同じ3W差が250Wで発生すれば1.2%、300Wであれば1.0%となる。
数字は嘘をつかないが、分母の選び方は物語を変える。低い平均パワーに対する百分率だけを見て、長時間走行の精度が大きく悪化したと判断するのは適切ではない。
一方、公称精度±1%という仕様と比較すれば、NEXGA S1とAssiomaの差がその範囲を超えていることも事実である。
この結果からいえるのは、NEXGA S1が4時間の実走で破綻したということではなく、定常走行の0.52%差より、長時間走行では平均値の差が拡大したということだ。
温度ドリフト
走行中の気温が28℃から40℃まで変化しているため、温度変化によるドリフトが疑われる。しかし、公開された区間平均だけで、3Wの差を温度ドリフトと断定することはできない。
気温の上昇に合わせて両機器の差が徐々に拡大したのか、停止後や再始動後に差が生じたのか、走行全体を通じて約3Wの一定差だったのかが示されていないからだ。
温度補正を厳密に評価するには、時間経過に沿った気温、NEXGA S1とAssiomaの差、ゼロオフセット値を並べて分析する必要がある。
最大パワーは約1.37%差
最大パワーは、NEXGA S1が791W、Assiomaが802Wだった。差は11Wであり、Assiomaの802Wを基準にすると約1.37%となる。記事の約1.5%差という説明は、丸めを考慮すれば妥当である。
1,200Wスプリントでも平均値は1%以内
高出力スプリント後のドリフトは、GP Lamaことシェーン・ミラー氏がスパイダー型パワーメーターのレビューで繰り返し指摘してきた論点である。実験ではNEXGA S1、Assioma、CYCPLUS T3の3台を使った比較を行っている。
約1分間の区間には1,200W前後のスプリントが含まれ、3台の区間平均は240W、241W、242Wだった。最小値と最大値の差は2Wであり、242Wを基準にすると約0.83%となる。
最大値は1195W、1200W、1234W
3台が記録した最大パワーは、1195W、1200W、1234Wだった。最小値と最大値の差は39Wであり、1234Wを基準にすると約3.16%となる。記事では約3%差と説明されており、概算として妥当である。
1,200W前後の出力が1秒程度しか維持されていない場合、各機器が1秒区間を開始するタイミングが異なるだけで最大値は変化する。パワーメーターが10Hzで記録できればこの問題は小さくなるだろう。
39Wの差をそのままひずみゲージの測定誤差とみなすべきではない。
高出力後にズレが残らない
このテストで重要なのは、瞬間最大値よりも、1,200W前後の負荷を与えた後の挙動である。3台はスプリント前に近い値を示し、高出力を与えた後にも再び近い推移へ戻った。
少なくとも今回使用された個体と実験条件では、高トルクによってゼロ点が恒久的にずれ、その後のパワーが継続的に高く、あるいは低く表示される現象は確認されなかった。
低価格帯のスパイダー型で最も警戒すべき弱点に対して、明確な反証が示されたことは、平均値の一致以上に意味がある。
スプリント後を6分間では最大1W差
ランダムな走行と複数のパワーサージを含む約6分間の区間では、3台の平均パワーが207W、207W、208Wだった。最小値と最大値の差は1Wであり、208Wを基準にすると約0.48%となる。
瞬間最大値では約3.16%の幅があった一方、1分平均では約0.83%、6分平均では約0.48%に収まった。測定時間を長くするほど各機器の差が小さくなる。
これは測定の世界の小さな真理でもある。一瞬を切り取れば、どの装置も少しずつ違うことを言う。しかし時間を与えれば、装置たちは同じ物語へ収束していく。
トレーニングやレース分析で、瞬間最大値ではなく5秒、30秒、1分、5分といった時間別平均出力で比較すべき理由がここにある。
比較実験の数値を整理
| テスト | 指標 | NEXGA S1 | 比較対象 | 差 | 計算値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 40分定常走行 | 平均 | 190W | 191W | 1W | 約0.52% |
| 40分定常走行 | 最大 | 339W | 347W | 8W | 約2.31% |
| 約800Wスプリント | 最大 | 804W | 806W | 2W | 約0.25% |
| 約4時間実走 | 平均 | 130W | 127W | 3W | 約2.36% |
| 約4時間実走 | 最大 | 791W | 802W | 11W | 約1.37% |
| 1,200W含む約1分(3台) | 平均 | 240W/241W/242W | 2W | 約0.83% | |
| 1,200W含む約1分(3台) | 最大 | 1195W/1200W/1234W | 39W | 約3.16% | |
| 高出力後を含む約6分(3台) | 平均 | 207W/207W/208W | 1W | 約0.48% | |
2台比較はAssioma基準、3台比較は最大値基準で算出した。
誤差率の不整合
Panda Podiumの記事は、NEXGA S1の測定性能を判断するうえで有用なデータを提供している。一方、記事本文に記載された一部の誤差率には、掲載されたワット数から再現できない部分がある。
- 190W対191Wは、再計算で約0.52%。記事の0.9%とは一致しない。
- 339W対347Wは、再計算で約2.31%。記事の「1%以内」とは一致しない。
- 804W対806W、130W対127W、791W対802Wは、記事の概算とおおむね一致する。
興味深いのは、不整合の方向が一定ではないことだ。前者は製品に不利な方向へ、後者は有利な方向へずれている。意図的な誇張というより、編集上の粗さと読むのが自然だろう。
こうした不整合は、NEXGA S1の測定結果そのものを否定するものではない。ワット数の掲載値が正しいのであれば、読者側で誤差率を再計算できるからだ。
ただし、精度を論じる際には記事中の百分率をそのまま引用せず、元のワット数から再計算した値を使うべきである。精度を問う記事ほど、自らの計算にも精度が求められる。
工場出荷時の個別校正
NEXGAは、各個体を出荷前に高精度トルクセンサーと比較し、低出力、中出力、高出力の各領域を含むダイナミックキャリブレーションを行うとしている。この校正で1%以内に入った個体だけが出荷され、箱を開けると最初に個別の校正レポートが目に入る。
低価格パワーメーターで見落とされやすいのは、設計上の公称精度よりも、製品ごとの個体差である。レビューに使用された1台が正確でも、市販品の測定値に大きなばらつきがあれば、量産製品としての信頼性は成立しない。
全数検査と個別レポートが量産品にも一貫して適用されるのであれば、NEXGA S1の大きな価値になる。
出荷時の精度と長期安定性は別問題
校正レポートが証明するのは、原則として工場出荷時点の性能である。それだけで数カ月後、数年後の測定精度や耐久性まで保証されるわけではない。
ストレインゲージの固定状態、接着剤の経年変化、温度補正、内蔵バッテリー、防水シール、USB-C端子などが長期間にわたって安定するかどうかは、今後の使用実績を待つ必要がある。
パワーメーターの価値は、購入直後に正しい数値を示すことだけでは決まらない。時間は、あらゆる精密機器にとって最も容赦がない。
価格だけで選ぶ製品ではなくなりつつある
これまで中国製パワーメーターには、価格差が大きいから多少の不正確さは許容するという評価が少なからず存在していた。NEXGA S1が示した測定結果は、その前提を変える可能性がある。
40分間の定常走行ではAssiomaとの差が約0.52%、約800Wのスプリントでは約0.25%だった。1,200Wのスプリントを含む約1分間の3台比較では約0.83%、高出力後を含む約6分間では約0.48%に収まっている。
28℃から40℃まで変化した約4時間の実走では平均値の差が約2.36%まで拡大したが、絶対差は3Wにとどまった。最大パワーも約1.37%差であり、長時間の実走で大きく破綻したとはいえない。
少なくとも公開されたデータを見る限り、NEXGA S1には安さ以外にも選ぶ理由が存在する。
まとめ:NEXGA S1は十分に正確で、さらに安いのか
NEXGA S1は、「中国製だから安い」のではなく、「十分に正確で、さらに安い」と評価される可能性を持ったパワーメーターである。
公開された比較実験で最も評価すべきなのは、平均パワーがAssiomaへ近かったことだけではない。
約40rpmの低ケイデンス、180rpmを超える高ケイデンス、約800Wから1,200Wのスプリント、短時間のペダリング停止と再開、28℃から40℃まで変化する約4時間の走行まで、広い条件で出力の変化を追従した。
そして何より、1,200W前後の負荷後にも3台の平均値が再び近い数値へ戻り、持続的なゼロ点ドリフトが確認されなかった。
一方、公称精度±1%が、すべての使用条件で実証されたわけではない。約4時間の実走では、Assiomaとの平均値の差が約2.36%まで拡大している。
元データが非公開であること、約1秒の時間差の原因が不明であること、個体差を判断できるデータがないこと、記事中の誤差率の一部は掲載値から再現できず、精度を論じる際には元のワット数を基準にすべきである。
NEXGA S1は、実績あるSRMなど欧州ブランドのパワーメーターを完全に置き換えた製品ではない。長期耐久性、個体差、保証対応、ファームウェア提供については、今後の検証が必要だ。
しかし、「価格を考えれば悪くない」という但し書きを外し、「測定性能を理由に選べる製品」と評価できる境界線には達しつつある。
パワーメーターに求められるのは、真実を語ることではなく、同じ嘘をつき続けないことだ。昨日の250Wと今日の250Wが同じ重さを持つこと。その一貫性があってはじめて、数字は努力の記録となり、成長の物差しとなる。
今回公開された実験結果を見る限り、NEXGA S1への答えは条件付きながら肯定的だ。短期的な測定精度は価格を言い訳にする必要がない水準にある。次に問われるのは、その物差しが数カ月後、数年後も同じ長さを保っていられるかどうかである。




















