1150g! カーボンスポークが”巻きつく”Partingtonホイール インプレッション

3.5
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Partingtonは全く新しいカーボンスポークの構造を備えたホイールだ。カーボンスポークはハブに巻き付けられておりリムと接合されている。ホイールの剛性は3種類から選べる。重量は最軽量モデルが1150gで、剛性を高めたモデルでも1,304gと軽量だ。リムハイトは39mmと44mmの組み合わせて中庸な設計になっている。剛性が高いモデルでも乗り心地は非常に優しい。レース向きではないが、ロングライドやエンデュランス系にマッチするホイールだ。

・軽量
・剛性が3種類から選べる。
・超高剛性でLightweightよりも硬い
・前後異型リム
・優しい乗り心地

・64万円と高価
・汎用的だが明確な使用用途が定まらない
・高剛性とは感じないしなやかさ

第3のカーボンスポークホイールとして登場したPartington(パーティントン)ホイールは、これまでにないユニークな構造を採用している。Partingthonが開発したホイール重量はディスクブレーキながら、わずか1,150gだ。Lightweight Meilenstein C 24Dが1,380gだから230gも軽く仕上がっている。

しかし、Partingtonのホイールで注目すべき点は重量ではない。これまで、どのホイールもなし得なかった革新的なカーボン技術が盛り込まれている。1つ目はホイールの剛性をカスタマイズできること。2つ目はカーボンスポークがハブに「巻きつけられている」ことだ。

Photo: Partingthon

ブーメラン状に変形したカーボンスポークは、ハブに巻き付くように配置されている。

Photo: Partingthon

Partingtonホイールを生み出した創設者Jon Partington氏は、イギリスの自動車産業とモータースポーツ産業で機械設計とエンジニアリングの経験を積んだ。そして、オーストラリア・ビクトリア州のディーキン大学で高度複合材料の博士号を取得している。

Partington社の特徴はホイールの構想から、詳細設計、構造分析、材料特性分析、金型設計、金型製造、部品製造、テストといった作業を一貫して自社で行っている。すべての工程を内製化することで、既存の制約に縛られることなく自由度の高いホイールを生み出すことに成功した。

Photo: Partingthon

今回の記事は、Partington(パーティントン)ホイールをインプレッションした。開発に5年を要し、軽量かつ、革新的なカーボンスポーク構造を備えた第3のカーボンスポークホイールを探る。

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特殊なホイール構造

Photo: Partingthon

Partingtonのホイールの最大の特徴は、独自のカーボンファイバースポークデザインだ。ブーメランのようなU字状のカーボンファイバースポークは、ハブシェルに巻きつくように配置されている。リム内部に配置したスポークアンカーとカーボンスポークが接合され、テンションを上げる構造になっている。

Photo: Partingthon

一見すると、20本のスポークから成り立っている(ように見える)。しかし、実際には10本のブーメラン状のカーボンファイバースポークで構成されている。カーボンスポークで似たような構造としては、Lightweightやコスミックカーボンアルチメイトのスポークデザインがある。

Lightweightやコスミックカーボンアルチメイトは、1本のカーボンファイバースポークがハブの側面を横断するように直線的に配置されている。Partingtonのスポークデザインは既存の構造とは異なり、ブーメラン状のカーボンファイバースポークがハブに引っ掛けられ、互いに引っ張り合うことでテンションを高めている。

Photo: Partingthon

Partingtonホイールは、3つの異なる剛性をオプションとして選択できる。Partingtonホイールで最も剛性の高いオプションは、Lightweightマイレンシュタインよりも剛性が高いデータが得られている。中程度のオプションはライバルよりも剛性がやや低く、そしてより剛性の低いオプションは、より軽いライダー向けに特別に用意されている。

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重量

リムハイトは、フロントが39mmでリアが44mmだ。重量は520gと630gと非常に軽量である。剛性を高めたバージョンはカーボンの積層を変更しているため、重量が増す。実際に筆者が使用したPartingtonホイールは、合成を高めたモデルでありフロントが595g、リアが709gだった。

44r-rear-rim-profile-black 39r-front-profile-diagram-black

リムハイトは前後で異なる形状が採用されている。新型ENVE SESやROVALのように前後でリムハイトが異なる。フロントリムは、横風であおられないように丸みをおびたリムプロファイルを採用。リアリムは駆動効率を優先し、強度と剛性の向上を狙ってわずかに3角形のプロファイルだ。

リム内幅は21mm、外側は26.5mmプロファイルを採用している。リムプロファイルはMAVICのUSTロードチューブレスに適合している。チューブレスタイヤの使用と同様に、クリンチャータイヤやチューブも使用することが可能だ。

リムの内部は、高密度のPMI(ポリメタクリルイミド)フォームコアが詰め込まれている。この特殊な高密度PMIフォームにより、非常に薄いカーボンでも強度の高いリムを作ることが可能になった。

Partingtonによれば、剛性を高めるためにカーボンの積層を追加する方法よりも、ポリメタクリルイミドフォームコアを使用するほうが軽量かつ、強度と剛性のバランスも高くなるという。

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インプレッション

Partingtonの話の前に、これまで使ってきたカーボンスポークを採用したホイールを振り返った。

Lightweight、CADEX 50 ULTRA、コスミックカーボン、VORTEXと使ってきたが、カーボンスポーク系のホイールはどれも特徴的な乗り心地がある。LightweightやCADEX 50 ULTRAは(タイヤが支配的であるものの)特に硬く感じたホイールだ。

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現在並行でインプレッションを進めているCADEX 50 ULTRAは、おそらく現代のホイールが到達できる最高レベルの性能だと感じた。現状、購入できるホイールの中で価格と性能のバランスに最も優れている。重量、空力性能、走りとあらゆる総合性能が突出していた。

VORTEXを借りて使ってみたところ、合わなかった。構造や考え方は良いのだが、硬すぎるのか、スポーク本数が少ないのか、はたまたリムが重いのかはわからないが「走りにくいな」と感じたホイールだ。正直、どうしても安価なカーボンスポークホイールがほしければ買ってもいいと思う。

Partingtonのホイールの結論としては、レース用のホイールかと思いきやどちらかといえば、快適性を感じるホイールだった。そして、高剛性モデルながら、どのホイールとも異なるしなやかな乗り心地が特徴的だ。レース用途でPartingtonを考えているのならば別なホイールがいい。

確かによく走るし、加速感も感じる。しかし、リムハイトが低いことによる慣性の無さと、剛性が高いモデルであるにもかかわらず、非常に優しい不思議な乗り心地は好みが分かれると感じた。順高性能は、PRINCETONやROVAL CLX50といったディープリムには当然劣る。

かかりがよく、大容量のパワーをかけてスプリントするようなシチュエーションを考えるとPartingtonは心もとない。いや、剛性値を考えると十分なほどに受け止める器を持っていることは理解している。

それでも、Partingtonの性能を考えると振動をいなしてくれる独特の優しさのほうが光る。このホイールの特徴はレース向けではなく、エンデュランスや快適性を求めるライダーに向いていると感じた。むしろ、グラベルなどに向いているのではないかと思ったほどだ。

その根本的な原因が、ブーメラン状のカーボンスポークをハブに引っ掛け、ハブを引っ張るという特殊な構造の影響なのか、それとも、手が切れそうなほどに薄く分厚いスポークのせいなのかはわからない。空力性能を考えても、ARC 1100やRAPIDEのほうが単純に優れていると思う。

タイヤは、メインホイールからそのまま付け替え、いつも使っているパナレーサーのデジタルプレッシャーゲージを用いて調整しているため、タイヤの支配から若干ではあるが逃れるように調整しているためタイヤの影響は少ないと見ている。

そもそも、50mmハイト前後のリムが好みという別のバイアスがかかっている可能性もあるが、フロントが39mmでリアが44mmというミドルハイトは設計を考えてもエアロ系ではなくオールラウンドだ。この絶妙とも、微妙ともいうべき設計は使用用途を明確に選べないところが、逆に悩ましい。

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まとめ:構造は優秀、ただ用途が不明瞭

昨今の機材の進歩はめざましく、カーボンスポークホイールは珍しい機材ではなくなった。しかし、Partingtonホイールはカーボンの繊維をブーメラン状に曲げ、これまでにない特殊な構造を生み出した。

「リムとハブを何らかの方法で引っ張り合う」というホイールの基本的な仕組みを覆すことはできない(MAVICのコンプレッションホイールがあるものの)。しかし、構造体として考えるとハブの外周全体を抑え込むことによる剛性の向上など、ホイールの基本的な仕組みをうまく利用したホイールと言える。

ただ、リムハイトが39mmと44mmという組み合わせは、使用用途が明確に定まらないという悩みもある。「オールラウンド」という自転車業界が好きな「どっちつかず」の都合のいい表現はホイールにとって逆に足かせになると感じている。

ホイールはエアロか軽さかどちらか2極化しており、中間的な立ち位置で50mmハイトの空力が良いホイールで軽量性をあわせ持つホイールが好まれやすい。Partingtonのリムハイトと性能はオールラウンドをさらにぼかした印象を受けた。

極論を言うと狙い所が非常に定まらないという特徴がある。乗り心地に関しては数値が示す剛性値の高さとは裏腹に非常に身体に優しいと感じるホイールだ。それゆえ、レースホイールではないというのが結論で、逆にグラベルや自転車に乗ることを楽しむという方面に合うホイールだと感じた。

だからこそ、「レース機材」として間違った先入観を持ってPartingtonのホイールを使ったためホイールの本質的な部分の解釈によどみが生じてしまったのだろう。

以上のポイントを差し引けば、構造上優れたホイールであり、乗り心地も優れたホイールだ。なお、国内に代理店ができたようで価格は64万円だという。国内でこの価格を出すのならば、私はCADEX ULTRA 50やPRINCETONを選択するとはっきりと書いておきたい。

総じて、厳し目のレビューになってしまったが独特の構造とこれまでにないホイールを求めているライダーは一度Partington試してみても良いかもしれない。

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