Yoeleoのホイールには抵抗があった。
回転抵抗の話ではなく、Yoeleo(ヨーレオ)というブランドそのものへの抵抗だ。昨今の中国系ブランドは、巧みなプロモーションと、考えられないような低価格で自転車機材を数多くリリースしている。
中国ブランドの機材はいまだ玉石混交の状況にある。サイトの作りや写真の見せ方がうまいだけに、手に取るまで製品の善しあしがわかりにくい。そして、使い物にならない製品の方が実際には多いのだ。
今回紹介するYoeleoのホイールは、Yoeleoの方から直接依頼があったことが発端だ。機材レビュー後に返却することと、記事の内容は保証しないという条件で今回のレビュー記事を書いている。
テストしたのは、Yoeleo SAT DB PRO NxT SL2シリーズのC35、C50、C60の3種類だ。各ホイールはリムハイトが異なるため特徴も異なるのだが、一気に試すことで相対的な違いを読み取っていく。いまだ謎に包まれたYoeleoのホイールは本当に使えるのか。
平地から山岳まで走り込み、Yoeleo SAT DB PRO NxT SL2の真価を問う。
手の込んだリム設計
「リムはどちらで作っているのか」
どのメーカーに対しても決まってこの質問をする。大抵外注しているが、Yoeleoは独自に作っているという。Yoeleoはフレームメーカーでもあるため、構造が単純なリムを作ることなど朝飯前なのだろう。
2007年頃、Yoeleoは海外向け自転車ブランドのOEM事業が主力だった。長年のOEM経験から2011年にYoeleoが設立された。Yoeleoのブランド名は創業者のレオ氏にちなんでいる。自転車のブランドとしては比較的歴史が浅い企業だ。この10年弱で急速に知名度を上げてきている。
リムについて話を戻すと、以下の特徴がある。
- オフセットリムとシンメトリックリムを使い分けている
- リムベットホールがない
- 内幅23mm
- 東レのHI-MODカーボンファイバーT800を使用
素材よりも何よりも、注目したいのはリムの設計だ。リムプロファイルがよく考えられている。現代のタイヤ設計に合わせたリムプロファイルだ。大手メーカーであっても、いまだ21mmのリム内幅の設計が残っている。
Yoeleoホイールのリム内幅23mmだ。現代のタイヤ設計や低圧運用で求められている理想的な設計である。
大手ブランドで23mm以上の設計といえば、2021年に登場したボントレガーのAeolus RSLが先駆けだ。2021年当時、ワイドタイヤの性能を最大限に引き出す設計を実装していたわけだから、革新的だったことを覚えている。


SAT DB PRO NxT SL2のリム外幅は32mmのワイドリムだ。比較的広めのリムは、Zipp105%の法則に沿えば30cのタイヤに最適化されている。

対応タイヤ幅は25c以上とあるが、推奨タイヤ幅が28c~47cとあるとおり、28Cか30,32cのタイヤを使うことでホイールシステムの性能を最大限引き出せる。
リムに使用されているカーボン素材は、東レのHI-MODカーボンファイバーT800だ。ハイモジュラス高弾性カーボンは、従来のカーボン繊維よりも変形しにくく剛性が高い製品が作れる。
Yoeleoはホイール専業メーカーではないのだが、リムに関してはよく考えられている。リムベットはスポークホールレスでリムテープが不要だ。穴をあけたとしても重量の削減効果はわずかで、むしろテープの方が重量が増してしまう。
リム側面と同じくリムベットもユニディレクショナルカーボンを使用している。
Nepestのようにリムベット側に12kカーボンを用いて、スポークホールを掘削する際のササクレを低減するアプローチもある。Yoeleoホイールの場合はスポークホールレスであるため、軽量なユニディレクショナルカーボンを使用した方が外周を軽く仕上げられるメリットがある。
そして、リムハイトごとにリムシェイプを使い分けており、設計がよく考えられている。
- C35:オフセットリム
- C50:オフセットリム
- C60:シンメトリックリム
C35とC50に使用されているオフセットリムは、左右非対称にプロファイルされたリムだ。リムの中心からオフセットされてスポーク穴があけられている。もともとは、マウンテンバイク用のリムで採用されていたが、現在ではロード用やグラベル用でも主流になっている。
左右非対称のリムプロファイルは、スポークの交差角度が是正されるため左右のスポークテンションのバランスを取れる。この仕組みはディスクブレーキ用ホイールでは特に重要で、駆動側と制動側のテンションが均一に近づいていく。
一般的には、横剛性が向上する傾向にあり、縦方向のコンプライアンスも改善するが、厳密にはスポークパターンやハブ設計、スポーク種別(ストレート、Jベンド)の方が剛性への影響が大きい。
一方で、オフセットリムは左右対称リムと比較してスポークテンションの総和が高くなる。そのため、リムに耐久性を持たせる必要が考慮される場合が多く、リム内周側のカーボンの積層を増やす対策が行われる。デメリットは重量が増すことだ。
今でも積極的にオフセットリムを作っているDUKEやReynoldsのリムを確認しても、シンメトリックリムと比べるとアシンメトリックリムの方が重量が増している。
オフセットリムは、スポークの張力が均一に近づくためスポークが緩みにくくなるメリットがある。
対して、C60に使用されているシンメトリックリムはオフセットリムと比べて軽く作れる。リムハイトが高い場合は、左右のスポークテンション差が縮まっていく傾向にあるため、重量、スポークテンションなどを考慮してC60は左右対称のシンメトリックリムを採用したのだろう。
それゆえ、C60とC50のリム重量はわずか10g(±3%)しか変わらない。
- C35:375g
- C50:410g
- C60:420g
また、スポークホールもリムごとに角度が変わっている。ハブ側のスポークホールに対して、直線的にスポークが結ばれる。リムとハブをひとつのホイールシステムとして考えたすばらしい設計である。
悔しいが、Yoeleoはフレームメーカーながらホイールのことをよく理解している。でなければ、大手メーカーでも内幅21mmの最中、あえて23mmでリムプロファイルを作ったりしない。ましてや、リムハイトごとにオフセットリムやシンメトリックリムを使い分けたりしない。
わざわざコストがかかる面倒なことをやる。Yoeleoの中にはホイール好きがいるのかもしれない。
そこで、Piller Wing 20 Aeroかよ
Yoeleoの開発者が相当なホイール好きだと確信したのは、スポークの選定だ。
Piller Wing 20 Aeroは過去にCX-RAYと比較し実験データで良好だったため、ホイール組に使用していた経緯がある。
鉄スポークでホイールセットを作ろうと考えた場合、性能、剛性、空力が最高レベルのCX-RAYを使いたい。しかし、値が張る。では、もう少しグレードを落としていくと、スポーク1本当たりの重量が5~6gほどになる。
ディスクブレーキ用のスポーク数は48本なので、単純に1.5g増加すると72gも増える。例えば、『1,400g』と『1,328g』のホイールがあったらどちらを選ぶだろうか。1,328gのホイールを選ぶだろう。軽量性を求めていくと、数十本以上使うスポークの重量はバカにならない。
そして、安い丸スポークを使うとエアロが犠牲になる。となると、軽くて剛性が高いホイールを組むとしら、結論はCX-RAYがいい。
DTSWISSであればAeroLightなども候補に挙がるのだが、こちらも値が張る。「CX-RAYを使いたい!」と、価格と性能のジレンマの中でコストを抑えつつも性能を追い求め、各社のスポークを丹念に精査していくと、PillarのWing 20 Aeroが徐々に浮かび上がってくる。
PillarがCX-RAYを意識していると思うほど、それぞれのスポークはよく似ているのだ。左の値がCX-RAYで右の値がWing 20 Aeroだ。
- 重量:4.36g:4.30g
- 引張強度:280~300kg/f:260~280kg/f
- 寸法:2.0-0.9-2.0:2.2-1.2-2.0
単純に重量を軽く見せたい場合でもPillar Wing 20 Aeroは効果がある。それだけでなく、引張強度も申し分ない。寸法はニップル側がCX-RAYよりも0.2mm太く強度が増している。
厚みは0.3mm太いのだが、実は”Wing”の名にあるとおり、翼状の特殊な設計になっている。CX-RAYのような「きし麺状」のスポークとは異なるのだ。
Pillarによると、Wingはだ円形の形状により市場のどのスポークよりも最高レベルの空力性能を備えているという。素材のT302+(スウェーデン鋼のSandvik材)は品質もよく剛性も十分だ。CX-RAYをしのぐ空力性能と軽さを合わせ持ちながら、コストも抑えられる。
Yoeleo SAT DB PRO NxT SL2の価格帯で最大限の軽さと空力性能を求めた場合、Piller Wing 20 Aeroが最適解になるのは大いに同意する。YoeleoはPillar推しかと思いきや、ニップルはちゃっかりと、安心堅実なド定番のSapim Secure Lockを使っている。
はいはい、そこはSapim Secure Lockだよね、とホイール好きは首を縦に振る。
Sapimを使いたい苦悩の中でPillarを使いながら、ニップルだけはPillarではなくSapim。やはり、Yoeleoの開発者には相当なホイール好きがいるに違いない。
Yoeleo 230 SP CL DB NxT(36T)ハブ
ここまで、優れたリム設計、絶妙なスポーク選定とくるとハブにも期待してしまう。組み方を確認してみよう。
- フロント:DSラジアル、NDSタンジェント
- リア:DS/NDSタンジェント
フロントのドライブ側(DS)はラジアルだ。タンジェント組の方がスポークが仕事をするので良いとは思うのだが、左右のスポークテンション差を是正するためにあえてラジアルにしたのだろう。
フロントホイールの組み方は非常に悩ましい部分で、左右タンジェント組の場合は駆動方向に対して効率的なスポーク配置になる。しかし、左右のスポークテンションが大きく変わる。それゆえ、オフセットリムを使うことでスポークテンションをいくらか是正できる。
Yoeleo SAT DB PRO NxT SL2はオフセットリムながらも、フロントのNDS側はラジアル組で完全に左右のスポークテンションをそろえにかかったのだろう。ここは設計者の苦悩がかいま見られる部分ではあるが、スポークテンションをそろえることを優先したと推測できる。
さて、組み方以外にも注目したいのはハブ重量だ。前後で270gは非常に軽い。軽量といわれているDTSWISS DT180 EXPでも前後274gだ。
- DT180 EXP:274g
- DT240 EXP:298g
- Yoeleo 230 SP CL DB NxT:270g
Yoeleo 230 SPもスターラチェット方式の36Tで、DTSWISSの特許切れ技術を流用している。Nepetst、CRW、Magene、Farsportsなど中国系ホイールブランドのどれもが特許切れのスターラチェット技術を使っている。こなれた技術で安心といえば安心だ。
ハブメーカーは不明だが、スプロケットのアンチバイトシステムが搭載されているところを見るとNovatechかもしれない。Yoeleoはカーボンの技術は高いが、金属加工やハブメーカーではないため逆にNovatechの方が安心ではあるが。
ひとつ懸念点としては、センターロックの交差がやや粗かった。手でディスクローターを押し込めないほどだった。ロックリングを締めこめば固定はされるのだが、外すときに苦労する。
それ以外の作り込み部分で気になる点はないが、前後270gという重量を実現するために何を削ったのか気になるところではある。フリーボディーなのか、それともハブシェルなのか。
いずれにしても、Yoeleo 230 SP CL DB NxTハブは、世の中に出回っている軽量ハブの中でもトップクラスに軽い。それが、15万少々のホイールに搭載されているのだから恐ろしい時代である。
インプレッション
ここまで、SAT DB PRO NxT SL2のリム、スポーク、ハブについて詳細に確認してきた。
見る限りSAT DB PRO NxT SL2を構成する部品のどれもが、十分すぎるほどの作り込みだった。しかし、どんなに設計が良くても走らせてダメなホイールは多く存在している。そこで、C35、C50、C60実際に試していく。3モデルの違いから選ぶ最適な「空力×軽量」の方程式はあるのか。
C35/C50/C60の3モデルが表現しているのは、単なる「リムハイトの違い」ではなく「戦略の違い」だ。モデル別に最適なライダー像と設計思想を探っていく。
その前に、タイヤチューニング
YoeleoのSAT DB PRO NxT SL2を使う際に注意したいのはタイヤ選定だ。25cは使えないことはないが、特別な理由がない限りは使わない方がいい。同じく、2021年4月にAeolus RSL51(内幅23mm)が登場したときは、タイヤチューニングに難儀した。
内幅23mmに25mmのナローなタイヤを取り付けると、数字上は左右に1mmの余白しかないタイヤサイドウォールと内幅がツライチに近づいていく。使えないことはないのだが、空気圧をいつも以上に下げないと21mm内幅で使っていた動きをしなくなる。
Aeolus RSL51のレビューでも記したが、28cか30cのタイヤがベストだ。そして、内幅が広がったことによって、タイヤ内部の体積が増える。したがって、空気圧を下げないと21mmでベストだった乗り心地に戻らない。
結局、21mm内幅を使っていたときよりも0.7Bar近く下げた。今回のテストでは装備を含めた体重60kg、バイク重量6.8kgでフロント3.83 Bar、リア 3.95 Barにした。
余談だが、2023年に沖縄市民210kmを制した井上亮選手のタイヤ空気圧も3.8 Barだったと記憶している。あのときは雨だったが、しっかりとチューニングすると現代の機材はこのあたりの空気圧に落ち着く。
海外の80kg近いライダーが空気圧4~5Bar台だ。6Bar~7Barほど入れるのは、もはや旧石器時代のチューニングなので注意しよう。
C35:山岳特化型
- ヒルクライム向け
- 急坂で加速力を失いたくないクライマー
- 重量:1260g(リム重量375g)
- シチュエーション:ヒルクライムやアップダウンが激しいコース
重量勝負ならC35だ。クライマーに人気のROVAL Alpinist CLXが1248gということを考えるとその差はわずか12gだ。Alpinistは32mm、C35は35mmということを考えると優秀である。10%を超える坂で試したが、明らかに登りに軽快さがある。
ほとんどAlpinist CLXに寄せてきた設計だが、リム内側が23mmということもあり28cのタイヤを取り付ければ30mmを余裕で超える。
実は、C50の後にC35を使ったこともあり慣性のなさ、減衰スピードが速すぎることが気になった。裏を返せば、C35に求められる特徴を正確に反映しているともいるだろう。
リムプロファイル的に空力性能は望めないが、遅いと感じることはない。気にしていた剛性感の不足は感じないが、久しぶりに35mmハイト、375gのリム、23mm内幅、鉄スポーク、スポークが長いホイールを使ったため、軽さと柔らかさを感じた。
この柔らかさ(といっても硬い)は、実質的な剛性の低さとイコールではない。23mm内幅のため通常よりも0.7Barほどエアボリュームを下げていること、最近はカーボンスポークばかり使ってきたことから、相対的な差として感じたのだろう。
大柄でパワーのある男性ライダーにはC35が物足りないかもしれない。小型軽量のクライマー、小柄な女性などはオールラウンドホイールとして使うことが合うかもしれない。ただ、高速域の減衰スピードは相当なので、用途やホイールを使うシチュエーションを間違えないようにしたいホイールだ。
C50:高速万能型
- 何でも1本でこなす
- 迷ったらC50
- 重量:1320g(リム重量410g)
- シチュエーション:ロードレース全般
C50を使うと、50mmハイトはオールラウンドホイールだということを実感させてくれる。まるで、空力と軽量の黄金比を実現したTarmac SL8のようにバランスがいい。リム重量がそこそこ軽いため、立ち上がりの加速感もあり、速度を乗せてからの減衰スピードも緩やかだ。
惰性で進ませるならC60には劣るが、今回のモデルの中で迷ったらC50を買っておけば後悔はしないだろう。気になったのはフロントホイールのあおられやすさだ。C35とC50に共通している左右非対称リムの宿命でもあるのだが、横力に弱い特徴がある。
ROVAL RAPIDE CLX(51/60mm)やBontrager Aeolus RSL51、Princeton Carbon WorksWake 6560、ENVE5.6、ENVE4.5、CRW5060、CRW5055、CADEX ULTRA50、Cosmic Ultimateとフロントにディープリムを備えたホイールを使ってきたが、C50は特にあおられやすい印象だった。
できれば良いことを書きたいのだが、C50に関しては横風耐性がそこまで優れていない可能性がある。補足すると、オフセットリムと、北風が強い日にテストしたという悪条件も重なったのかもしれない。
更に都合が悪いのは、同時に持ち込んで相対比較したROVAL RAPIDE CLX IIは、数あるホイールの中で最も横力耐性があり、あおられにくいホイールである。それゆえ、C50のあおられやすさが相対的に大きく感じた原因かもしれない。
ROVAL RAPIDE CLX IIは強風が吹いていても本当に安心感と安定感がある。使っていている間、突風が吹かないかおびえながら走らなくても良いのだ。
C50の空力性能はわからないが、あおられやすさに目をつぶれば50mmハイトとしては走りも軽く、登るので15万円の価格帯を考えれば納得しなければいけない仕上がりと言える。剛性感も至って普通。可もなく不可もない。
強いていえば、昨今のカーボンスポークホイールの縦にも横にも駆動方向にも硬いホイールと比較すると、ヌルいと感じるかもしれない。しかし、ENVE 4.5やPrinceton Carbon Works PEAK4550でCX-RAY、ROVALやARC 1100系でDT AeroLightをしばき倒していると、まぁ鉄スポークはこういう乗り心地だよねと納得するだろう。
C60:穴場
- 見た目に抵抗がなければC50よりもC60がいい
- C50と登りに差は無し
- 重量:1330g(リム重量420g)
- シチュエーション:ロードレース全般、タイムトライアル、かつ風の強い日
期待していなかったコイツが一番いい。
ふだんからPrinceton Carbon Worksの65mmや、ROVAL RAPIDE CLX IIの60mm、Craft Works Racingの60mmを使っているのもひとつの原因かもしれないが、C60の走りは好みだ。
SAT DB PRO NxT SL2シリーズで唯一のシンメトリックリムだが、同日にテストしたC50よりも直進安定性が高いと感じた。厳密にいうと、横風耐性がC50よりも確実に高い。Princeton Carbon Works Wake6560も横力耐性が高いホイールとして知られているが、わりと良い勝負をすると思う。
不思議な話であるが、オフセットリムとシンメトリックリムでここまで差が出るとは思わなかった。正直、信じられない(C50のときだけ横風が強かったのか?)。新しい知見が得られて感動している。C50は明らかに左方向からの風であおられやすさを感じた。したがって、風向きにもよると思う。
C60はそれほどあおられないと感じたのは、粘っこさを保ちながらホイールが押されるような動きをするためにある。
横力に弱いホイールというのは、ある角度と風の強さに達したときに、急にホイールの横力がスパイクするように変動する。このときに「持っていかれる」と感じる。ただ、横力の負荷の波が小さい場合は持っていかれにくいと感じる。
C60はROVAL RAPIDE CLX IIと遜色のない横力耐性があると思う。重量も1330g、420gでC50と10gしかリム重量が変わらない。
登りも平たんも走らせた感じは同じだが、威圧感のある60mmリムは平地での減衰スピードが非常に緩やかだ。重量的にもC50と大差なく登りでC60とC50の差を見分けるのは事実上不可能だろう。しかし、平たんで高速域に達すれば、C60の方が走る。
高速域に達したときにあおられにくさを考え、速く走ることを考えるのならばC60を選ぶ。というのが個人的な結論になる。
C60であっても短時間なら登坂性能を犠牲にしない。Yoeleoホイールの真のオールラウンダーはC60だ。特徴はPrinceton Carbon Works Wake6560に近いと思う。あれに23mm内幅のタイヤの快適性を付け足した感じだ。
面白いのはリアのかかり方で、C60の方がスポーク長が短いにもかかわらず、シンメトリックリムの影響なのかC50よりも更にヌルく感じる。寛容というか、張りがないというか、これまたカーボンスポークばかり最近使っていたのもあるがROVAL RAPIDE CLX IIよりも明らかにヌルい。
スポークテンションはある程度の張力が保たれていれば剛性に変化がない。デイモンリナード氏のホイール試験でも実証されている。構造上の問題なのかは定かではないが、同一タイヤ、同一チューブ、同一空気圧で使ってもC50よりもC60のリアの方がヌルかった。
しかし、「相対的に見て」という話の範囲で、比べないと違いは分からない。色々なホイールを使わないとわからない差で、実走では誤差として丸められる。大きな違いは生まないだろう。
実測重量比較
モデル | リムハイト(mm) | 重量(g) | 実測重量 | リム内幅(mm) | リム外幅(mm) |
---|---|---|---|---|---|
C35 | 35 | 1260g | 1258g(-2g) | 23 | 31.8 |
C50 | 50 | 1320g | 1319g(-1g) | 23 | 31.8 |
C60 | 60 | 1330g | 1345g(+15g) | 23 | 31.8 |
まとめ:くやしいが、良いホイール。
失礼な話ではあるが、Yoeleoのホイールをなめていた。
どうせ、写真映えやインフルエンサーたちが使うような、見せかけだけのスペックだろうと思っていた。しかし、23mm内幅を使ってくるのはなかなか良い設計だな、と思いつつYoeleoのホイールを構成する部品のひとつひとつに向き合っていった。
これまでENVEやPrinceton Carbon Works、LightweightやMavic Cosmic Ultimateなど最高峰のホイールばかり使ってきて、相対的にほぼ無実績かつ無名に等しいYoeleoのホイールを使うのは乗り気ではなかった。
しかし、どうだろう。
リムごとに設計を微妙に変え、大手メーカーでも追いついていない23mm内幅設計でタイヤ性能を引き出し、コストダウンを図れるスポークでPiller Wing 20 Aeroを使う。価格に対して引き出せる限界性能に達しており、合理的かつ最適なパーツ選択であると認めざるをえない。
重量も軽く、ハブも十分に機能している。フロントはDS側がラジアル組であるものの、スポークテンションを優先したと考えるならアリだ。
Yoeleoのプロモーション戦略もあると思うが、どうしてもYoeleoのホイールはインフルエンサーやYoutuberたちの『姿』が強かった。見せ方の好き嫌いはあると思うが、私ならヨノツ氏や池川が、限界に近い世界で苦しみながらYoeleoホイールと戦っている『姿』をもっとアピールしたい。
このホイールは、そういう世界で活躍できる性能がある。
Yoeleoはネット販売だけではなく日本に担当者がおり、国内の約200店舗の提携サイクルショップで購入し整備ができるのもメリットだ。
鉄スポークを使ったカーボンリムホイールというカテゴリーなら、設計、価格、性能を考えて悪くはない選択肢になると思う。プロやホビーレーサーから、手軽にホイールをアップグレードしたいユーザーまで、確かな走りを約束するホイールに仕上がっている。
Yoeleoによると、購入の際に『yo10off』を入力すると10%OFFになるとのこと。
