SuperSix EVO 4 インプレッション 「快適なレーシングバイク」という矛盾

4.5
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ホイールの相性問題で65mmから50mmに変更した。EVO4はホイールを選ぶ。

ホイールの相性問題で65mmから50mmに変更し繰り返しテストを行った。EVO4は、ホイールを選ぶ。

ほんとうによくわからないバイクだ。

SuperSix EVO 4(以下EVO4)を乗り込み、試した。良いのか、合うのか、乗り初めは素性がよくわからなかった。ただ、乗り込んでいくうちに、「もしかしたら」という思いが湧き上がってきた。

感覚によって感知されることができ、事実として、文字として扱うことができるような思いでは決してなかった。ただ、「EVO4はこういうバイクなのではないか」という、マト外れでもなく、マトの中心からわずかにそれたEVO4の輪郭のようなものがみえてくる。

前編から続く今回の中編は、EVOを走らせて感じたことを、ひとつひとつ記していく。

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コンプライアンス:ハイエンドにしては快適

山岳地帯をメインで走った。

ロングライド用でも、良いんじゃないか。

EVO4に乗ったときに直感的にそう思った。Canyonの新型Enduraceと比べるとEVO4はコンプライアンスが50%以上悪いが、VENGEやAEROADと比べるとコンプライアンスが20%以上も良い。

数値だけでは、良し悪しを単純に評価できないことも理解している。純然たるハイエンドレースバイクとして考えてみれば、EVO4はライダーに対して優しさがある。EVO4に乗ってから、地面からの突き上げ感が減ったように感じることが多くなった。こいつは確かに疲れにくいかもしれない。

LAB71の塗装、うつくしい。

「EVO4は静かだ」

こんな表現のレビューを多く見かけた。「ほんまかいな」と、消費者の心をくすぐるだけのレトリックだと思っていた。しかし、あながち嘘ではない。縦方向にチェーンのバタつきが減ったように感じたし、リアディレイラーにスタビライザーが付いたような錯覚も経験した。

これも、プラシーボかもしれないということもわかっている。ただ、EVO4はそんな勘違いを多く経験してしまうバイクだ。だから、よくわからない。勘違いなのか、バイクの性能がはっきりと現れている証拠なのか。断定ができないのだ。

後に、ハイプロファイルとの相性が悪いことに気づく。

タイヤと空気圧は統一しているため足回りの影響はない。Bテンションボルトの締め量も一緒だからチェーンテンションに違いもない。あとは、振動がタイヤとホイール伝わり、フレームに到着したあと、振動がどこに向かって消えていくかだけだ。

音はエネルギーだ。音は物体を振動させたりする。運動エネルギーも音に変わる。EVO4は地面からの突き上げや、微細な振動をどこかに隠して消し去る。

消え先が、フレームやシートポストで収まるのか。それともライダーまで伝わって、身体をゆさぶり、振動を人間が吸収するまで消えないのか。EVO4はライダーに振動が伝わる前に、フレーム、フォーク、シートポストを総動員して都合の悪い情報をどうにかもみ消そうとする。

某、中古車販売店のように。

photo:CANNONDALE

前側、後側、いったいどちらでもみ消しているのか。乗って情報を細かく拾い集めた感じは、リア側のような気がする。たとえば、ひとつの段差を通過する際、フロントタイヤを通過した段差が次にリアタイアを抜けていくとき、上下の動きが違う。

当然、前後の重心バランス、空気圧、体重配分など影響は多岐にわたるが、それでも、リア側のほうが振動が小さく感じた。AEROADはもっとガツンとリアからの突き上げがくる。EVO4はそれがない。

シートステーとチェーンステーが交わる部分は、ドライブ側とノンドライブ側で造形が大きく違う。意図的なのかは定かではない。厳密に特定し、断定はできないもののリアバッグ全体で振動をいなし、もみ消すように働く。

総じて、レーシングバイクにしては快適性が高い。もしかしたら、プロはさらにハードな乗り心地のバイクを好むかもしれない。一方で、何日もかけてステージを走るプロライダーの意見を製品に反映すると、EVO4の特徴になるのかもしれない。

快適性は魅力的だ、でもエンデュランス系バイクには乗りたくない、できれば速そうなレーシングバイクに乗りたい。アンバランスで見栄を張った嗜好願望を叶えたい。であれば、EVO4はうってつけの存在だ。

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登り:AETHOSに迫る

登りに連れていきたいバイク。

登りを速く駆け抜けたいなら、バイク重量よりもエアロよりも自分の体重を減らしてパワーを高めるほうが手っ取り早い。異論はあるかもしれない。どうしても、登りに適したバイクを探しているならAETHOSがよい。

AETHOSは軽さだけが独り歩きしているが、評価されるべき性能はそこではない。AETHOSは登りを走るとき、蓄積した感情の力が素早く発散していく。新車にはじめて乗ったあの日に感じていた気持ちの高鳴りが、登っているあいだ中、ずっと響いている。

登りが楽しいバイク、それがAETHOSだ。

スペシャライズド Aethos インプレッション。わかるひとだけに、わかればいい。
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あ、AETHOSのレビューではなく、EVO4の登りについて話を戻そう。

EVO4の登りはというと、登るために必要な力をクランクに入力する際に、そこまで踏み込まなくもリアタイヤがよく回ってくれる感覚がある。意識と進み量のずれが少ない。AEROADは強い踏み込みで走る特徴がある。SL8は重量の軽さを考えると、踏み込みと進み具合に若干のズレを感じてしまい、登りづらい。

S-WORKS TARMAC SL8 インプレッション もはや、ターマックではない。
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EVO4において「進む」と感じるような、ペダリングの入力領域の幅はきっと広いのだろう。最も脂の乗っている区間は、時計の10時付近から徐々にパワーを与えて2時頃までだ。それ以降も決してパワーの入力を休ませること無く、ぐるんと回転させるように回すとよく走る感じがする。

 

AEROADは、あるポイントにおいて瞬間的に大きなパワーをかけるとよく走る特徴がある。EVO4は雑巾を絞り込むように、360度全方位的に力をかけるような回し方をするとよくかかる印象がある。

たとえば、シクロクロスでぬかるんだドロの坂道を登るとき、パワーをかけすぎるとトラクションが抜けて「ズルっ」と後輪が滑る。タイヤのトラクションを失わないように、路面にパワーを伝えて進むためには、瞬間的なパワーで踏み込むのではなく、力を細かく分散させなければならない。

EVO4がよく走ると感じるのは後者の方法だ。だから、一定のペースを刻みながら登るようなシチュエーションに向いていると感じたのだろう。EVO4の軽さからくる進み量は、想像と予想している量と大きなズレがない。

むしろ、踏み込みに対してバイクが10進むと予想するところ、10.5ぐらい進み、予想を上まわる走りの良さがある。何度も引き合いに出して申し訳ないのだが、AETHOSの登りは10の予想に対して11進むようなスペシャルなバイクだ。

EVO4はAETHOSの登り心地には及ばない。しかし、近い登坂性能を持っていて総合的な平坦、登り、アップダウンのコースを走ることを想定した、いわゆる「オールラウンドバイク」として考えると登りは一級品といっていい。

登りが好きなライダーで、とはいえオールラウンドに使いたい、やるなら登りで勝負したい人に合うバイクだ。一方で、平坦番長、高速域からさらにスプリント勝負になると別のバイクがいい。次章でふれる。

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平坦:AEROADと変わらんが・・・

平坦はそこそこ、可もなく不可もなくといったところだ。

特別に速くはない。EVO4よりも空力が良くて速いバイクはほかにある。ハイエンドバイクの中でいうと、空力性能は普通で中央値、埋もれていると言っていい。AEROADのような、空気の壁を一枚超えるような、吸い込まれていくような速さもない。

平坦の高速域から、もう一歩抜け出るときの「踏めばまだ速度が上がる」という期待、余白、速度がもっと上昇していく可能性や能力をそれほど感じない。40km/hを超えても同じだ。

一方で20~30km/h前後の速度域だと、世界最速クラスのAEROADと遜色ない走りをする。違いはわからない。EVOに限った話ではなく、ハイエンドエアロ系ロードバイクに共通する話だ。0km/hに近づけばなおさらだ。

このレンジのバイクは、踏み込んだ瞬間で進みが良いと感じることもない。それ以降の速度域になると、前を進むために必要な力を多い、いま一歩速度を上げきれない気分になってしまう。

EVO4は独特のしなやかさ、BBまわりの剛性などが影響しているのか、はたまたヘッドチューブが長い事で、上半身が起きやすい(ライダーの空力が悪化する)結果なのか。複合的な要因が組み合わさって、一つの原因に絞れない解釈の難しさがある。

平地巡航はそれなりにするし、ドラフティング中は足を止めても減速するなんてこともない。ただ、プラシーボ効果なのかAEROADほど空力が効いていると「思えない」錯覚があり集団内に居るときでも脚を回してしまうことがある。

つまるところ、EVO4は抜けるような速さを求めるようなバイクではないことだけはわかった。良くも悪くも、オールラウンド。尖らず、無難で、そこそこ走る。

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コントロール:癖がある

EVO4で初めて下りコーナーに差し掛かったとき、外側に車体が流れて膨らんでいくような感じを受けた。自分が想定しているラインよりも、少し外側にバイクが逃げるような動きを感じた。

コントロールを失うほどの変化でもなく、ハンドルを切り直す必要もない動きだったが、バイクの動きと想定していた意識の間にズレを感じた。

結局、1日中EVO4とライドをしているとこの不思議な違和感は徐々に消えていった。今ではまったく気にならず、支配下に置けるようになった。あえて書こうかと迷った特徴ではあるものの、あえて犯人探しをするならEVOのジオメトリが少なからず影響しているのかもしれない。

EVO4のトレイル量は適正な値、58mmを示している。トレイル量だけでは全てを語れないが、クイックすぎるAEROADから乗り換えたことによって、相対的な変化を感じてしまったのかもしれない。EVO4を扱うときには、以前よりも意識的に早めにハンドルを切るようにしている。

あれこれ試していると、EVO4は特徴的な下りをすることが徐々にわかってきた。Dogma FともAeroadとも違う、EVOだけに感じた下りの体験だ。

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EVOの下り、ってなんだ?

photo: CANNONDALE

「SuperSixEVOは下りが良い」

という話や記事を見かけるが、「Dogmaは下りが良い」という話も散々聞いてきた。私の視点で言わせてもらうと、単純に下りを速く駆け抜けることだけを考えたらTARMACが一番好みだ。次にDogma、続いてSuperSixEVOだ。

PINARELLO DOGMA F 開発資料から読み解く設計思想
イタリア北東部のトレヴィーゾでGiovanni Pinarelloによって設立されたPinarelloは、1952年の設立以来、今日至るまで最高品質のバイクを作り続けている。 Pinarelloの名を聞けば、歴史上の偉大なサイクリストたちが残した数々の伝説的な勝利を思い出すことができる。 1975年にジロ・デ・イタリアで初優勝して以来、Pinarelloは、オリンピック、世界選手権、モニュメント・...
PINARELLO DOGMA F インプレッション 芸術と技術が諧調する至極のバイク
1952年、イタリア。ジョヴァンニ・ピナレロ氏によってPinarelloは設立された。半世紀以上、誰もが認める最高のバイクを生み出している。 Pinarelloの名を聞けば、歴史上の偉大なサイクリストたちが残した、数々の伝説的な勝利を思い出すことができる。 1975年にジロ・デ・イタリアでPinarelloのバイクが初優勝して以来、Pinarelloは、オリンピック、世界選手権、モニュメント・クラ...

AEROADの下りは悪くはないが、良いとも言えない。ステアリングが敏感であるため、直進していてもハンドルを真っ直ぐにしておくために、微調整をし続ける必要がある。

下りはテクニックや好みの問題もある。一概にフレームひとつで片付けられる単純な話ではない。ハンドル幅やステム長の影響も大きい。一例として捉えておいてほしい。

先程「速く駆け抜けるなら」と書いたが、別の切り口でみるとEVO4は「安心して」速く駆け抜けるならNo.1だ。

EVO4は下りの安心感がある。例えるなら、タイヤを25Cから28Cに変えて空気圧を落としたときのようなフロントの安定感がある。実際にはタイヤは変えていないものの、ホイールベースやフロントセンターが長いためか、タイヤと地面の設置状況が明瞭で下りで安心感が感じられる。

photo: CANNONDALE

フロントセンターは、ライダーの重心がボトムブラケットとフロントホイールの間のどの位置にあるかを大きく左右する。リアセンター(チェーンステー)の長さが(ディスクロードは415mm)一定であれば、フロントセンターが長いほど、平地ではフロントホイールに加わる重量が軽減される。

急な下り坂やテクニカルな地形への対応に重点を置くバイクは、下り坂での重量配分の違いに対応するため、(比較的)長いフロントセンターに設計されることが多い。

EVO4はホイールベースも長い。長いほど高速走行時の安定性は高くなるが、ハンドリングが遅くなったり、一般的に反応が悪くなったりする。ホイールベースが短いと、一般的にバイク全体がより操縦しやすくなるが、高速走行時の安定性が低下する可能性がある。

このあたりの設計が「EVOの下り」に影響しているかもしれない。

バイクを頼りにできる安心感は総じてEVO4に軍配があがる。走りたいラインのために、バイクに対して能動的にコントロールをする必要がないし、感覚的にあまり難しいことを考えずに慣れれば意図したラインをトレースできる。

例えば、Tarmacは敷いたレールの上を走るような、スケートの歯を氷に食い込ませてズラさないような走りをする。乗り手が能動的に細かく指示出しながら走る前提だ。

どちらが良いのかは好みが分かれる。私は下りが苦手なのでEVO4のように安心感のあるバイクが好きだ。

これが「SuperSixEVOの下り」というのなら、ジオメトリからくる安定感の話をしているのだろう。しかしながら、Dogma Fに乗っても残念ながらピドコックのように下れないし、EVO4に乗ったからといって下りが安定するとも限らない。

ライダーの下手を補うような特徴ではなく、バイクの挙動の話なのでそこはお忘れなく。

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適したレース

photo: CANNONDALE

難しく、悩ましくも、考えることが楽しい話題に移ろう。

レースで使う機材を考えたとき、「6.8kgで世界最速の空力性能」ならそれでいい。物理的には、それ以上でも、それ以下でもない。速く走ることだけを考えたときに、重量と空力が最も重要なファクターであり、結果に結びつくものである。

あとは、己のパワーを高めるなり、減量すればいい。

と、面白くもなんともない、あまりにも直接的な話である。しかし、これらの要素だけでは単純に機材選定の判断ができない。バイクとの相性も考慮する必要がある。

また、昨今のバイク(フレーム)はホイール、タイヤ、空気圧のチューニング次第でバイクの印象が大きく変わってしまう。特にタイヤとホイールが組み合わさった結果との相性が重要になってくる。

EVO4とホイールの相性ではっきりとわかったのは、リムハイトが高くなると相性が悪化する。私物のPrinceton Carbon Works WAKE 6560を付けて走ったところバランスが悪すぎた。結局、借りていたDTSWISS ARC 1100の50mmを取り付けて事なきを得た。

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純正のホログラム50SLはDTSWISS製だというから、相性としては間違っていなかったのだろう。むしろ最適解だ。ARC 1100とは別のホイールも試しているが、どうやらフロント側に50mm以上のホイールは合いそうにない。次章で記す。

EVO4が得意なレーススタイルを考えてみようとおもったのだが、守備範囲が広すぎて定めきれない。だから、逆に「使いたくないレース」を考えた。

「EVO4を使うなら他に良いバイクがある」と考えられるのは、クリテリウム、平坦メインのロードレースにあえてEVO4を引っ張り出す必要はないと思う。バイクのかかり方や、足あたりを考慮すると、もっと「スカッ!」とかかるバイクのほうがいいと感じてしまった。

具体的には、パワーをかけると進んでくれるように感じる反応が良いバイク、TARMAC SL7だったり、新型PROPELだったり、PROPELはカーボンスポークのULTRA50の影響も大いにあるが、ああいうバイクのほうがこの手のレースで使いたいと思ってしまう。

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意外かもしれないが、長時間ハイスピードで駆け抜けるエンデューロ系は結構適している気がする。EVO4の空力性能はそこそこながらも、長時間の運動を考えると、体に優しく、快適で、空力性能がほどほどなバイクは稀有(けう)な存在だ。

これが、AEROADになると確かに速いが身体にやさしいかと言われるとそうではなく、むしろ、ライダーのレベルによっては疲れてしまうかもしれない。後半にむけて体力を食いつぶした結果、タイムが遅くなる。

アマチュアのレースであれば、オキナワだろうと、ニセコだろうとEVO4だけでいい。SL8だっていい(むしろ、この2台は最適だ)。このレベルバイクになると、軽量かつ、ある程度の空力性能を備えている。どんぐりの背比べだ。好みの問題、宗教だ。

辛辣な言い方になるが、バイクに足かせになるのはむしろ自分自身、バイクの性能を100%引き出せないライダーの能力だ。バイクに見合うライダーにまずはなったほうがいい。わたしは、なれていない。

EVO4の快適な特徴が活かせるのは、先程あがった長時間レーススタイルだとおもう。細かな振動や、突き上げなど、何時間もかけて少しづつライダーに蓄積されていく悪影響を、他のバイクに比べれば少しは減らしてくれるかもしれない。

練習のロングに連れて行くのも、EVO4は良い足になると思う。これまでハイエンドモデルがハードすぎて合わなかった人は、EVO4に乗ってみると、考え方や体の感じ方が変わると思う。

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相性のよいホイールは

EVO4とPCW6560の相性は良くない。

55mm以上のハイプロファイルは相性が悪い可能性が高い。

バイクとのバランスによるものだと考えられるが、PCW WAKE6560とかなり相性が悪い。こういう特徴もあるのだと、逆に経験できてよかった。勉強になった。あまり体験できない経験だった。

イネオスが使う”うねったリム”プリンストンカーボンワークスWAKE6560 インプレッション!
記事の要約 WAKE6560はイネオスが契約外で使い始めたことで一気に有名になったプリンストンカーボンワークス製のホイールだ。ガンナ(ineos)が世界選手権TTで使用して優勝、2021年のツール・ド・フランスにも投入された。この”うねり”は、2011年にDimitrios Katsanis氏が提出した特許「US10611188B2」が元になっており、同社は独自に数値計算からシヌソイド(正弦曲線)...

借りていたDTSWISS ARC 1100 50mmを取り付けると、めちゃくちゃいい。ARC 1100は純正のHOLLOWGRAM R-SL 50とほぼ中身が一緒(DTSWISS製)だという。新型SUPERSIX EVO用に開発され最適化されているだけある。

DT Swiss ARC 1100ホイール SWISS SIDEの開発コンセプトでわかった最速ホイールの秘密【前編】
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DTSWISS ARC 1100 DICUT 最速のホイールはどのようにして生み出されたのか【後編】
ARC 1100 DICUTホイールセットでは、あらゆるコンポーネントの見直しが図られ開発がいちから行われた。AERO+リムの再設計、空力的に最適化された180 DICUT Ratchet EXPハブ、および2つの改良型エアロスポークにより、Dragとステアリングモーメントが大幅に低減された。
DTSWISS ARC 1100 DICUT ホイール 50mm 62mmインプレッション
DTSWISS ARC 1100の性能や作り込みなど魅力的かつ優れたホイールだ。ホイール市場は刻々と変化しているが、DTSWISSのホイールが今後注目されてくることは間違いないだろう。

バイク全体の振り回しや走りを考慮すると、EVO4には50mm前後が妥当なのだろう。

AEROADには60mm以上のホイールを付けてもなんとも思わなかった。EVO4にはそれが当てはまらない。とにかく、バイクが扱いにくくなる。具体的には、直進しているときは良いが、左右に動かしたときの、かったるさ、重さ、床に落ちた米を踏んで足裏に粘りつくような気持ち悪さがある。

リズムを刻むダンシングなんて絶対にしたくないほどに、バランスが崩れる。

軽量なフレーム重量によるものなのか、独特の安定性にふったジオメトリからくるものなのか。原因を1つに絞ることは難しい。とにかくハイプロファイルとの相性が悪すぎる。

使うなら50mm以下のホイールが良い。それで解決だ。純正をそのまま使えばいいだろう。こだわりがなければ、純正から変更する必要はない。ホイールを変えるならCADEX ULTRA 50などやや硬めのホイールが良さそうだ。無難に冒険したくなければ、C50やARC1100の50で良いと思う。

硬めのカーボンスポークホイールとも相性が良さそうだ。ただ、55mmハイト以上のホイールはバランスが破綻する印象がある。やめておこう。

クラス世界最速!CADEX 50 ULTRA DISC インプレッション!
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1290g!Magene EXAR ULTRAカーボンスポーク採用の軽量ホイール1199ドルで登場!
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ポジション変化、快適だが疲れる理由

EVO4に変えてからサドル高に変化があった。高くしてまた下げた。どうもポジションが合わない。

私のポジションはTARMAC SL3時代からほとんど変わっていない。RETULを何度も行い、VENGEやAEROADにも受け継がれ、最近ではidmatchでポジションを2度も出したがなんと1mmも変わらなかった。そういうポジションだ。

Aiが導き出す!idmatchバイクフィッティングを受けた結果を公開!ロードとCXポジション
idmatchは、Aiが自動でポジションを導き出すフィッティングシステム。ライダーのペダリングをモーションキャプチャし、最適なポジションを導き出してくれる。システムは全て自動で動き、ハンドル高やサドル高さがリアルタイムで変更されていく。最適なクランク長、クリート位置が瞬時に算出される。世界中の機材が何万とデーターベースに登録されており、最適なバイクモデル、サドル、ハンドル、ステム、の銘柄とサイズが...

ところがEVO4になって、このポジションがしっくりこなかった。VENGEやSL7、Dogma F、AEROADでも起こらなかった事態だ。具体的にはサドルが低く感じられた。走っていると前モモにずっと違和感が残ることが多くなった。

ポジションの数値は変わらないし、専用のポジショニング装置で1mm狂わず調整したのにもかかわらず、低いサドルに座っているような感覚がずっと残っていた。ペダリングの最中にかかとが落ちるようになってしまった。

結局色々と試して、サドル高を2mm上げたところ前モモの違和感は無くなってパワーが出せるようになった。EVO4はたしかに快適なのだが、ポジションを見直さないと逆に疲れてしまうことがわかった。質問でも私と同様の症状が出ている人がいた。

最初はソフトで乗りやすい印象だったのですが、ロングライドするとだいぶ脚にきます。 これはフレームが硬いからでしょうか?

バイクは柔らかい。快適すぎる。最近のハイエンドエアロ系ロードバイクでEVO4より柔らかいバイクは無いと思って良い。

ただ、これまでのポジションをそのままEVO4に移植すると、なぜか脚にくる位置になってしまうようだ。私はかかとの位置が下る症状が出た。その場合はサドルを上げることで対処したが、フィッティングはもう一度行ったほうが良さそうだ。

その後、idmatchやMyVelofitなど一時は5mm高くなったが、あれこれ試して結局いつものポジションから1mmだけサドルが上がった。

Aiが最適なポジションを導く!MyVeloFit フィッティングはスマホひとつ、自宅で簡単に調整デキる時代に
Aiが自動で最適なポジションを導いてくれる。スマホで撮影したペダリング中の動画をアップするだけ。センサーもマーカーもフィッターも不要。スマホとローラーがあればいつだってできる。自宅で簡単に最適なバイクポジションが導き出せるのがMyVeloFitだ。 まずは、動画をみたほうが話が早い。 これ、iphoneで撮影してアップしただけやで。。。センサーもマーカーもなんもいらん。なんもいらん。Aiがここから...
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長時間の高速ロングライド向き?

レースバイクのEVO4をロングライドで使ってほしくないとCannondaleは思っているかもしれないが、私は大いに賛成だ。むしろ最近のハイエンドロードバイクのなかで、最も使いやすく乗りやすいのはEVO4ではないのかと思っている。

ジオメトリも素晴らしく、女性にもおすすめできる。小柄な日本人のサイズでも美しい。それでいて、あえて快適性をもたせたフレーム剛性と、下りでの安定性がある。賛否両論、使い道によってはネガティブかもしれないがヘッドチューブも長く、攻撃的ではないリラックスしたポジションが取れる。

あのTREK Emondaよりも数値上はしなやかなのだから、ガチガチのレーシングバイクを嫌煙してきた人にこそEVO4に乗ってほしいと思う。ちなみに、Emondaの空力は224W、EVO4は207Wだ。そして、重量はEVO4のほうが軽い。

TREK Emonda SLR DISCインプレッション 「矛盾」のセミエアロロード
「エアロロードバイク」と「軽量ロードバイク」の境界線があいまいになってきている。TREK Emondaの登場で真っ先に感じたことだ。 メーカーの方向性として、エアロダイナミクスに特化したバイクと、軽量性を売りにしたバイク。あえて、2つにカテゴライズする意味は本当にあるのか。軽量ロードバイクはエアロ化が進み、一方でエアロロードは軽量化へすすむ。次第に両者の関係性や特徴はあやふやになり違いはわずかにな...
TREK EMONDA SLR vs S-WORKS TARMAC SL7 相対比較インプレッション
「本当に米国ブランドのバイクなのか」 TREK EMONDA SLRを初めて見たときにそう感じた。フレームを形成する曲線や造形は、まるでフランスやイタリアのバイクのようだった。塗装はコルナゴのパマペイントを彷彿とする美しさをまとっていた。EMONDAは心を惑わすばかりの、なまめいて美しい姿で存在していた。 手にした試乗車を見たとき息を呑んだ。このバイクは一体いくらなのだと。 Emondaを購入する...

快適性だけでなく、長距離をこなせる走りやすさと、高速移動、ルートの過程に登場するアップダウンも平均点以上にこなすのがEVO4だ。レースに使うことを想定して設計されたはずだが、「レーシングバイクを快適に長く乗りたい」という矛盾する要求に答えてくれる。

珍しいバイクだ。

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まとめ:後半へ

photo: CANNONDALE

今回の中編はインプレッションをお伝えした。考えられるあらゆる角度からEVO4を掘り下げた。後編はこまかなチューニングや「ここがダメ」系の話を紹介していく。そして、なぜEVO4は人気なのか。

理解を妨げる「なにか」は、この記事を書いているときには見えてこない。ただ、ぼんやりと、”EVO4だけ”では説明がつかないのだと考えるようになった。

EVOの初代から、現代のEVO4へ。受け継がれる道のりは、締めくくりへとむかう。

CANNONDALE SuperSix EVO LAB71インプレッション 前編 「何か」が仕組まれたバイク
最も人気があったのは、初代だろうか。 2011年、初代SuperSixEVOが発表されたとき、凄まじい熱狂があった。フレーム重量が695g、ピーター・デンク氏(SL8、AETHOSを開発)が開発、各社が血眼になって競い合っていた重量剛性比、剛性に相反する乗り心地の良さ、初代はあらゆる面で他社の数歩先を進んでいた。 リクイガス時代のサガンが乗っていたことも話題だった。この頃のサガンを、いまの選手で例...
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キャノンデール初のエアロロードSYSTEMSIX HI-MODをインプレッションした。気になる重量、EVOとの比較、そして元Cerveloのエンジニアのデイモン・リナード氏の開発アプローチを探る。
CANNONDALE SUPER SIX EVO インプレッション 2世代目にあえて迫ろう。
ざっくり言うと↓ 過激な軽量化は影を潜めた。 美しきケーブルルーティング。 バランスの良いオールラウンドバイク。 各社の軽量バイクが出揃った今だからこそ、”あえて”軽量バイクの代名詞エボに迫ろうと思う。そして2世代目は一体何が変わり、一体何が新しいのだろうかと問うために。 初代SUPER SIX EVO HI-MODが発表されたとき、一種の熱狂に近いものがあった。フレームは700gアンダーという驚...
【最終結論!】エアロロードと軽量バイクどちらが速いのか? エボ VS システムシックス
深い海の奥底で、宝物を発見したような気分だ。キャノンデールの新型エアロロードバイクSYSTEMSIXを調べていくうちに、興味深い開発ヒストリーを初めて知ることになった。そこにはSYSTEMSIXの技術情報だけにはとどまらず、速く走りたいと願うサイクリストたちにとって有益な情報であふれかえっていた。 今回の記事は、キャノンデールのSYSTEMSIXとSUPER SIX EVOを比較したさまざまな実験...
SuperSix EVO
これぞロードバイク。軽量カーボンフレームで、滑らかで、超高速。ロードレーサーが満足する進化。

 

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