カーボンスポーク、カーボンハブボディ、45mmで重量はわずか1,255g。
MAVICのホイールで最高の称号である「ULTIMATE」。現代のディスクロード用に開発された「COSMIC ULTIMATE 45 ディスク」は3年の歳月をかけて開発が行われた。
ひとつひとつフランスでハンドメイドされる新しいホイールは、「重量」、「剛性」、「空力」の3つのバランスをとるために、最先端の技術が投入されている。新しいカーボンスポークやカーボンハブシェルの採用で、ホイールの重量はわずか1,255gだ。
MAVICによれば、この究極のホイールは慣性が小さく、横剛性が高く、そして無駄を排除したカーボンリムとスポークの組み合わせで軽量性、耐久性、空力特性のバランスが高次元で取れているという。
まさに、「MAVICが考えた最強のホイール」だ。
新しいCOSMIC ULTIMATE 45は、リムハイト45mmのディスクブレーキ専用クリンチャータイヤとチューブレスタイヤにも対応する。リムベッドに穴が開いていないため、リムテープが不要だ。そのため、使い勝手がよくさらにテープ分の軽量化も図れる。
今回の記事は、自ら「究極」と銘打ったCOSMIC ULTIMATE 45 DISCに迫る。
フランス製、ハンドメイド
COSMIC ULTIMATE 45 ディスクは、フランス東部のアヌシーにあるMAVICの新本社で、ひとつひとつ手作りされている。大手メーカーのカーボンホイール製造といえば、中国や台湾にシフトしているのが現状だ。
MAVICはコスト増という問題を理解しながらも、「ULTIMATE(究極)」の名にふさわしいホイールを母国フランスで生み出すことに信念を貫いた。
COSMIC ULTIMATE 45 ディスクは、通常の手組みホイールとは全く異なる複雑な「手組み」が行われている。カーボンファイバーは5種類使用し、ひとつのホイールに対して71個の部品を用いて作られている。
ホイールの組み立ては、MAVICの精鋭部隊10名のチームが行っている。ホイール組み立てにおける工程、組み立てる工具や機械もすべてMAVICの精鋭部隊が設計している。組み立てには技術が必要で、1人あたり3〜4か月のトレーニングを受け作業を行っているという。
ひとつのホイール組み立てには、熟練した技術者でも8時間程度かかるという。さらにカーボンを釜に入れて焼き上げる作業を加えると、全工程に1.5~2日を要するという。
そのため、「COSMIC ULTIMATE 45」には、誰が製造に携わったのか、ホイールを製造・組み立てた人の名前を示すラベル、制作時に使用したカーボンファイバーのオフカットが添付されている。
保守的な、設計。
COSMIC ULTIMATE 45の設計は、MAVIC自身も認める「保守的な設計」だ。根本的な設計思想は「剛性」、「重量」、「扱いやすさ」のバランスを取ることだという。昨今、どの自転車メーカーも「重量と空力」や「剛性と重量」といったバランスをうまく取る設計に躍起になっている。
新しいULTIMATEも同様だ。一見すると1,255gという45mmハイトらしからぬ重量の軽さに目が行く。しかし、極端な軽量化を何よりも優先しているわけではないという。その代わりに、慣性と横方向の剛性のバランスをとることで、ホイールが優れたオールラウンド性能を発揮できるようにしている。
軽さは確かにサイクリストに好まれる要素のひとつだ。しかし、カーボンの積層を減らし、軽くしすぎるとその分剛性が低下してしまう。COSMIC ULTIMATE 45の設計は、剛性をできるだけ高めつつ、そのうえで重量を減らすアプローチをおこなった。
この「バランス」という考え方は、ホイール細部の寸法にも表れている。フック式リム、内幅19mm、外幅28mm、ハイト45mmという設計は現代のリムトレンドと比較すると相当保守的だ。
ENVE 新型SESが25mm内幅を採用し、30mmを超えるスーパーワイドリム、CADEXはフックレスを標準としている。それらをふまえると、新しいULTIMATEは保守的と言わざるをえない。
しかし、MAVICはバランスを考慮した上で25C~32Cのタイヤを使うという前提でさまざまなバランスを考慮しULTIMATEで最適化している。
耐久性の向上
COSMIC ULTIMATE 45はホイール全体の重量としては軽量にみえるが、ハブの重量は従来よりも増加した。前作のチューブラーモデルと比較すると、大きなベアリングを採用している。
スルーアクスル化やディスクブレーキ化によって、ハブにはこれまで以上に剛性と耐久性が要求されるようになった。そのため、従来よりも大きなベアリングを採用し重量が増したものの剛性が高められた。
ハブは外側から見るとすべてカーボンシェルに包まれている。中身は軽量なアルミニウムのアクスル、ラチェット、ベアリングが収められている。
ハブ構造
COSMIC ULTIMATE 45のハブはMAVICのインスタントドライブ360 フリーホイール テクノロジーが採用されている。超軽量、超高効率のインスタントドライブは、フリーホイール非接触の大型ラバーシールが採用されているため、摩擦を抑え転がりが非常に小さい。
また、QRMオートベアリングプリロードテクノロジーによって、ベアリング内部の隙間に対して与圧が自動調整される。そのため、負荷がかかっても遊びが発生せずベアリングの性能を最大限に引き出す回転性能が保証されている。
カーボンスポーク
COSMIC ULTIMATE 45で最も特徴的なのはカーボンスポークだ。MAVICがR2R(リム・トゥ・リム)と呼ぶカーボンスポーク構造が採用されている。スポークはリムの片側から始まり、ハブシェルに巻き付いてから、リムのもう片側に挿入される。
カーボンスポークを使用する場合、このR2R方式が部品点数がすくなく高いテンションをかけられるため最強の構造と言われている。
R2R技術を採用したホイールは、見た目はスポークが「2本」に見える。しかし、実際には「1本」のスポークで構成されている。カーボンスポークを使った場合、Lightweightにも採用されているR2R構成が最上級の構造だ。
CADEX、VORTEX、LUNといったブランドもカーボンスポークを使用しているが、交換式のカーボンスポークを使っているうちは、R2R構造は超えられない壁といえる。
MAVICは、R2R技術により、常に均質な150daNの張力が発生し、「完璧な」ホイールアライメントを実現すると主張している。リムとスポークは一体型整形ではなく、CNCと熱処理を施したアルミニウムのインサートが、スポークとリムをつないでいる。
COSMIC ULTIMATEは一見すると完全一体成型のように思えるが、スポークを接着しリムにネジ止めしているためスポークをすべて切断し、取り外してリムだけを再利用できるメリットがある。
あまり起きてほしくない事態ではあるが、ホイールの部品が壊れたときに修理のアプローチや手段が増える。
MAVICによれば、接着されたスポークは6000Nの引っ張りに耐えることができという。
過酷な試験をクリア
COSMIC ULTIMATE 45 ディスクは非常に過酷なテストをクリアしている。MAVIC本社に専用テストエリアを設けて、様々なテストが行われた。スポークの衝撃テストや負荷テストは何百回も行われ、その結果、新型のカーボンスポークは従来と比較して4倍の強度を備えていることが判明している。
それゆえ、MAVICはすべてのカーボンホイールに生涯保証を付けている。
重量
COSMIC ULTIMATEのフロント実測重量は575gだった。
COSMIC ULTIMATEのリア実測重量は683gだった。前後合計で1,258gだ。カタログ重量よりも若干重い。
インプレッション
「ULTIMATE=究極」といえど、乗って、走らせなければ、真の価値はわからない。
床の間に飾っておいてあるうちは「究極」かもしれない。カタログでスペックを眺めているうちもそうだ。それらは、机上や測定装置の上だけの話であって、ライダーが使って得られる価値やアドバンテージとは関係のない話だ。
だからこそ、COSMIC ULTIMATEに注ぎ込まれた技術がライダーに何をもたらすのかは走らせなければわからない。COSMIC ULTIMATEは、他のホイールを一掃し、駆逐するほどの性能を秘めているのか。それとも、スペックだけが究極で使い勝手の悪いじゃじゃ馬なのか。
テストはいつものコースを使って、複数のホイールを持ち込んで実走を繰り返し行った。
今回、COSMIC ULTIMATE 45を見定めるため相対比較として使用したホイールがある。まずはマージナルゲインを追求するイネオスが使っていたことでも有名な、プリンストンカーボンワークスのWAKE6560だ。巡航性能や空力性能といった部分に秀でている。
もうひとつは、ROVALのアルピニスト CLXだ。クライミング目的で非常に軽量でヒルクライマーに人気のホイールだ。実測重量は1248gほどでCOSMIC ULTIMATEと近い重量だ。そのため、重量観点で最もライバルとしてふさわしいホイールのひとつといえる。
機材は絶対評価できないため、相対的に性能を判断するしかないが、ホイールから感じ取った走りの特徴も交えつつインプレッションを行った。
ヒルクライムで最強か?
COSMIC ULTIMATEを走らせてまず感じたことがある。1,255gという数字以上に登りの軽快さを体感できる。とにかく、登りが軽い。テストした環境は、大阪でも屈指の激坂である五月山だ。序盤から斜度13~17%、瞬間最大21%の激坂が1Kmほど続く。
これまで、この激坂区間をありとあらゆるホイールで登ってきたが、COSMIC ULTIMATEは最も軽快に登っていけた。ホイールが1,255gというのはホイールの完成重量であって、リム重量は400g前後だと思う。
リム重量とハブの重量バランスでホイールの回転性能は変わるが、MAVICが言う「高次元のバランス」はリム、ハブ、スポークといった部品の組み合わせを、確かに高い次元で最適化したのだと思う。
登りの「軽さ」というのは、重量という要素ひとつだけでは決定されず、剛性や設計などさまざまな条件が複雑に絡み合い決定する。ただ軽いだけのホイールにありがちな、「どこか進ませにくい感じ」がCOSMIC ULTIMATEには感じられない。
COSMIC ULTIMATEはヒルクライムに非常に適したホイールだと思う。ピークや大体のゴールまでの時間が決まっている場合など、全力を出せば良い時間があらかじめわかっている場合に適したホイールだ。この特徴は裏を返せば、片道燃料的な特攻スタイルのホイールといっていい。
しかしながら、後ほど別の章で記すが、ゴールまで何があるのかわからない長距離のロードレースでは少々この特徴は裏目に出ると思う。踏み込んだらすべての力を余すことなく推進力に変えてしまう特徴がゆえ、扱い方によってはデメリットもある。
特にその剛性だ。
力を逃さない罠
軽さとあわせてはっきりとわかるのが、完全剛体のような剛性感だ。カーボンスポークのホイールにありがちな、ガチガチで力の逃げ場がない特徴がある。Lightweightも同じで、雑な踏み方をするとすぐにそっぽを向く。
スピード、トラクション、パワーなど「どれくらいの力を、どれくらいの時間かけるか」を明確にしないと、すぐにトラクションが抜けてしまう。雨上がりの登りでリアが滑ってしまうことが何度もあった。
リムの外周が軽いことが理由なのか、それとも力を余すことなくパワーを回転に変換してしまうのかは定かではない。いつもと同じ感覚で踏み込んでいたところ、後輪がズルっと行くことが何度もあった。
ホイールの進ませ方は繊細そのものといっていい。
このときばかりは、付き合い方が難しいと感じたホイールだ。乗用車の感覚でスポーツカーの操作するとスピンや、急なハンドリングになってしまう。あの感覚と似ている。だからこそ、登り一発や、一定時間一定のパワーをかけるような走りのほうがCOSMIC ULTIMATEは得意なのだろう。
力を逃さないがゆえ、「逃げない力のかけ方」を体得する必要がある。
空力性能の意味
COSMIC ULTIMATEの風洞実験結果はすでに各社から発表されており、カーボンスポークホイールにおけるメジャーブランドの比較が行われている。空力性能の良い順番で並べると以下のとおりだ(数字が若いほど空力が良い)。
- CADEX ULTRA 50
- MAVIC COSMIC ULTIMATE 45
- Lightweight MEILENSTEIN EVO
次に剛性が高い順は以下の通りだ(数字が若いほど剛性が高い)。
- Lightweight EVO
- MAVIC COSMIC ULTIMATE 45
- CADEX ULTRA 50
以下は実測重量だ。
- Lightweight EVO:1,247g
- MAVIC COSMIC ULTIMATE 45:1,249g
- CADEX ULTRA 50:1,356g
これ以外にもさまざまなホイールがある。その中でも、最高峰に位置するホイールだけ抜粋している。この結果を見ると、COSMIC ULTIMATEはバランスがよく取れたホイールだといえる。空力も2番目、価格も2番目、かといって重量はLightweightにあと2gと肉薄している。
これら、リムハイトが45~50mm前後のホイールで最も空力性能が良いCADEX ULTRA 50に迫る空力性能、Lightweightとほぼ同一の重量であることを考慮するともはや、25mm~40mm程度でローハイトの軽量ホイールの存在意義はなくなってしまう。
ALPINISTとCOSMIC ULTIMATE
「軽さ」だけにフォーカスすると、ROVAL ALPINIST CLXが競合製品としてあがる。クライミング目的で非常に軽量でヒルクライマーに人気のホイールだ。実測重量は1248gほどでCOSMIC ULTIMATEと近い重量だ。そのため、重量観点で最もライバルとしてふさわしいホイールのひとつだ。
ただ、ALPINIST CLXはリムハイトが低く空力性能が非常に悪いことが知られている。双方の重量比較において、数値上の大小の意味はあるかもしれないが、どちらのホイールを選べばよいのかという質問に対しては、迷いなくCOSMIC ULTIMATE一択だ。
どうしても数値的な魅力でALPINIST CLXを選びたいと思うかもしれない。ただ、性能や走りを考慮すると、COSMIC ULTIMATEがすべてにおいて勝っている。
もちろん、「価格」もだ。
COSMIC ULTIMATEは50万オーバーであるため、そもそもALPINIST CLXと比較することがおかしいかもしれない。かかっているコストも、構造も異なる。それでも「クライミングホイールを1本決戦用」として考えた場合、COSMIC ULTIMATE以外には現状、勝るホイールがみあたらない。
長距離レースを考えたとき
長距離レースにCOSMIC ULTIMATEを使うのかと問われると、素直にそうだとは言えない。むしろ、微妙だ。先程記した「終わりがある程度予測できる」場合に、残りの燃料を使い切っていくような場合には特に強いと思う。
しかし一方で、レースの行末が不正確で見通しがつきにくい場合は、集団内で脚を残したり、体力を温存したりする必要がある。そのようなシチュエーションにおいて、ホイールに求められるのは脚を止めていても回ってくれる慣性だったり、度重なるアタックに耐えうるしなやかさだったりする。
COSMIC ULTIMATEにそのような要素が皆無というわけではない。ただ、別のホイールのほうが長距離のレースを走るための性能が優れていると感じた。100km以上のレースを走る場合はあえてCOSMIC ULTIMATEを使う必要はないと思う。
そのような場合は、
- BONTRAGER AEOLUS RSL51
- ROVAL RAPIDE CLX
- WAKE6550
- ENVE 6.7 or 5.6 or 4.5
- CADEX ULTRA 50
- DTSWISS ARC 1100 62 or 50
これらのホイールを選ぶほうがよほど合理的だ。
悩ましき空気圧設定
完全無欠のホイールだと思ってしまうCOSMIC ULTIMATEにも、使ってみると「これはいけてないな・・・」と思わずにはいられない設計がある。それはリム内幅だ。
「内幅19mm」
という、MAVICが謳う保守的な設計は、言い方を変えると「時代遅れの設計」だ。本当にこの19mmが残念すぎて、夜も眠れないほどだった。最低でも21mm、できればBONTRAGER AEOLUS RSLの挑戦的な23mmという設計にしてほしかった。
COSMIC ULTIMATEは内幅を19mmにしたがゆえ、究極になりそこねたと感じてしまった。23mmのフックドで「ULTIMATE」に昇華できたところ、リム設計が古すぎてそれ以外の類まれな先端技術が台無しになってしまった感が否めない。
ここまで言うのには理由がある。19mmという旧石器時代の設計(失礼)は、現代の25c以上の最新タイヤを使う上で相性が悪い。使えないこともないが、21mm~23mmのリム内幅でのタイヤ運用になれてしまうとその快適さ、タイヤの乗り心地などを、COSMIC ULTIMATEで再現するのは難しくなる。
実際に何ヶ月かチューニングを試したところ、COSMIC ULTIMATEはタイヤの空気圧セッティングがシビアすぎると感じた。どんなセッティングをしても最後まで乗り心地が尖ったような、ガラスを針の先でなぞるような鋭さがどうしても最後まで抜けなかった。
この傾向は、内幅23mmのAEOLUS RSL51は逆の方向を行く。リム内幅低圧で運用しても、19mm内幅で高圧を入れたときのような転がりの低さがある。COSMIC ULTIMATEは空気圧調整が非常にシビアだ。もはや19mmという設計は変えられない。
だからこそ、タイヤとタイヤ空気圧でチューニングを煮詰めていく必要があるのだが、COSMIC ULTIMATEは最近のハイエンドホイールのなかでも特に、チューニングの当たり値、スイートスポットがとても狭いと感じた。
COSMIC ULTIMATEで最も残念な点はリム内幅だ。支配的なタイヤの性能を左右してしまうリム内幅だけが、心残りだ。
MAVICCOSMIC ULTIMATE 45 ディスク仕様
- 重量:1,255g(ペア) 575g(フロント) 680g(リア)
- 素材:カーボンファイバー
- 高さ:45mm
- 内幅:19mm
- 外形寸法:28mm
- ディスクブレーキ専用
- テープなしチューブレスプロファイル
- スポーク:R2Rユニディレクショナルカーボンファイバー10本
- ハブ:12×100スルーアクスル(フロント)、12×142スルーアクスル(リア)(オプションQRアダプター)
まとめ:究極であることは間違いない。
「ULTIMATE = 究極」と名付けられたホイールは、構造、剛性、重量とMAVICが持ち得る最高の技術を結集して生み出された。カーボンスポークをハブに沿わせるR2Rや、45mmながら軽量ローハイトホイールに迫る軽量性など、完全無欠のホイールなのだと乗る前にイメージを膨らませていた。
しかし、実際に使ってみると現代のタイヤ性能を最大限に”引き出せない”リム設計や、高剛性がゆえのトラクションをかける難しさは、Lightweightに代表される超高剛性ホイールに共通する「走らす難しさ」が感じられた。
遊びがなさすぎるがゆえ、走らせるために技術を要する結果となった。
しかし、タイヤ選定、空気圧調整、COSMIC ULTIMATEの特徴を生かした走らせ方を身に付けさえすればCOSMIC ULTIMATEは新の「究極」になるはずだ。要するに、乗る側にも乗るための技術を要求する「物言うホイール」なのだ。
買うだけでは、COSMIC ULTIMATEの真の性能は全く引き出せない。引き出すためには、ホイールの特徴やタイヤの性質など物理的な性質の理解、そして入力に対して一切の無駄を省き出力する、正確無比な「入力情報」を与えつづける必要がある。
少しでも方向性が狂えば、性能をスポイルしてしまうデメリットも秘めている。それゆえ、扱えたときの快感は特別なものがある。だからこそ、「究極」の冠がつけられたホイールにふさわしいとさえ感じた。
万人にはおすすめできない、上級者向きのホイールだ。ただ軽いから、かっこいいからと言った理由でCOSMIC ULTIMATEを使うことはやめておいたほうがいい。タイヤ選定、空気圧調整など突き詰めて「究極」にたどり着ける人が使うべきだ。
COSMIC ULTIMATEは、ホイールが乗り手を選ぶ。
いわば、ドラクエで言うところの「選ばれし者しか抜けない伝説の剣」だ。その”勇者”に選ばれるべく、己を磨き、たゆまぬ機材への探究を行える者こそ、このホイールを使うのにふさわしいサイクリストと言えるだろう。